ビジネスマンなら使わない手はない!

キャリアアップのための学習費用も負担してくれる!「社会保険」のスゴさを解説(3)

お金
新R25ではこれまで2回に渡り、社労士・ファイナンシャルプランナーの井戸美枝(いど みえ)先生に「R25世代でも知っておくべき社会保険の基礎知識」について話を聞いてきた。
最終回はビジネスマンがもらえる嬉しい給付金や、老後じゃなくても受け取れる年金について紹介したい。最後まで読んで損ナシの内容です!

〈聞き手:渡辺将基(新R25編集長)〉

失業時、最低3カ月は退職前の給与の50%以上が受け取れる「失業手当」

渡辺:ビジネスマンに関係する社会保険と言えば「失業保険」がありますが、まだ転職をしたことがない人だと、どんな制度なのかよく知らない人も多いかもしれません。

井戸:本当は「失業手当」って言うんですけど、失業したときに次の仕事を探すまでの生活費という形で手当が出ます。

渡辺:どれくらいの生活費がもらえるんでしょうか?

井戸:それは年齢や退職直前の給料、辞めるまでの勤続年数によって変わってきます。

渡辺:読者にできるだけ近いイメージということで、25歳で3年勤めて年収300万円だった場合であればどうでしょうか?

井戸:30歳未満かつ勤続年数が5年未満なら、給付期間は約3カ月(90日)です。リストラや倒産が退職理由の場合は、もう少し給付日数が増えますけど。

年収300万円くらいだと、給付率は(辞める直前の給料の)60〜70%ですね。

渡辺:なるほど。それだけの生活保障があれば、会社を辞めてからでもじっくり転職活動できそうですね。

井戸:ただし、自己都合で会社を辞めた場合は、退職してから給付まで3カ月くらいかかってしまうんです。

渡辺:なるほど。それは人によってはちょっと苦しいかも…

井戸:実際には在職中に転職活動をする人がほとんどですよね。なので、私は若い人たちにはむしろ「教育訓練給付金」ってのを知っておいてほしいんですよ。

キャリアアップのための学習費用の一部を負担してくれる「教育訓練給付金」

渡辺:教育訓練給付金?

井戸:はい。キャリアアップ支援として、勉強費用の一部を負担してくれる制度なんです。

渡辺:会社の福利厚生じゃなくて、社会保険にもそんな制度があるんですね。

井戸:はい。雇用保険の給付制度です。教育訓練費(勉強にかかった費用)の20%、最高10万円まで支給されます

渡辺:それは自分で本を買ったりした場合とか、勉強費用であればなんでも負担してくれるんでしょうか?

井戸:いや、厚生労働大臣の指定を受けている講座の受講のみが対象になります。

渡辺:なるほど。まぁそうですよね。具体的にはどんなものがあるんでしょうか?

井戸:よく「教育訓練給付金対象」とか電車の広告とかにも書いてあったりすると思うんですが、有名なのは英会話のイーオンとかECCとか。
※画像は「ECC外語学院」のスクリーンショット
井戸:ほかにも簿記やFP(ファイナンシャルプランナー)、社労士などの資格取得を目指す講座などいろいろあるので、教育訓練講座検索システムで探してみるといいと思いますよ。

渡辺:へー、かなりたくさんの対象講座があるんですね。自分はこれまで資格取得の勉強をしたことがないので知りませんでした。

民間の保険に入る前にチェック! 高齢者になる前に受け取れる「年金」も

井戸:あと最後に知っておいてほしいのは、年金ですね。

渡辺:R25世代に年金?

井戸:年金って高齢者になってから受け取る「老齢年金」のイメージが強いかもしれないですけど、ほかにも被保険者が病気やケガで生活や仕事が制限される場合に受け取れる「障害年金」や、亡くなってしまった際に遺族に支払われる「遺族年金」というものがあります。これらはすごい保障が手厚いんですよ。

渡辺:高齢者になる前でも受け取れる「年金」があるんですね。

井戸:そうです。年金には保険料を納めた期間によって(収入によらず)金額が決まる「基礎年金」と、現役時代の収入によって変動する「厚生年金」がありますが、厚生年金はかなり計算が複雑なので、今回は基礎年金だけについて話しますね。

まずは「障害年金」について。障害には1〜3級まであるんですけど、もし2級だと認定されたら、それ以降40年間保険料を払いつづけた場合にもらえる老齢年金の満額が受け取れるんです。

この金額は毎年少しずつ変動していますが、今だと年間77万9300円です。月6万5000円くらい。1級だとその1.25倍の金額がもらえます。それにくわえて、子ども2人までは1人につき約22万円が受け取れます。

渡辺:なるほど、それは手厚いですね。会社員であればそこに厚生年金もプラスされると。

ちなみに、1〜3級というのがどの程度の状態なのかイメージできないのですが、やはり対象者の数はかなり少ないんでしょうか?

井戸:重度ではありますけど、1〜2級だけで日本に180万人もいるんですよ。ガン患者の数が160万人くらいなので、それより多いんです。

自分で障害者だと言わない人も多いので、なかなか知られていないんだと思います。ガンでもうつ病でも障害認定されます。

渡辺:ガン患者の人数より多いんですか。となるとこれは大事な制度ですね。

ちなみに、遺族年金のほうはどんな制度なんでしょうか?

井戸:遺族基礎年金も同じで、自分が死亡した時点で子どもがいる場合、遺族に年間77万9300円、くわえて子ども2人までは1人につき約22万円が支払われます。子どもが2人いたら、遺族に月10万円くらいの所得補償があるという感じですね。

渡辺:さすがに遺族が十分に暮らしていける金額ではないと思いますが、民間の「就労不能保険」とか「死亡保険」への加入を検討する際、今回知った障害年金や遺族年金があることを知らないと無駄に高い保険に入ってしまいそうだなと思いました。

井戸:そうですね。日本の社会保険はかなり充実しているので、受けられるサービスや保障をきちんと理解したうえで、足りない分を民間の保険で埋め合わせると良いと思います。

渡辺:なるほど。この度は貴重でわかりやすいお話をありがとうございました!

〈取材・文=渡辺将基(新R25編集長)〉
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※本記事では会社員が加入している社会保険について説明しています。個人事業主(フリーランス)などの場合は、加入対象となる保険の種類やサービス内容が異なります。

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