「童貞であることに興味を持たれるのが不思議」

なんでセックスしなきゃダメなの? 絶食系男子・こんどうようぢが語る恋愛への違和感

恋愛
「草食男子」という言葉が初めて世の中で使われたのは、2006年のこと。世の中の価値観はどんどん変容しているけれど、恋愛に重きを置かない“非恋愛男子”の立ち位置は依然として窮屈そうだ。

恋愛に興味がない男子は「男らしくない」と咎められ、昭和世代は「最近の男はだらしない」としかめ顔。男性の恋愛観は更新される気配が見えない。

でも、本当に「恋愛をしない」ことは男らしくないことで、「セックスをしたくない」ことは責められることなのだろうか。「草食」「肉食」とジャンル分けすることに、いったい何の意味があるのだろうか。

そんな話をしてみたくて、この人に会いにいってみた。こんどうようぢくん、25歳。
読者モデルとして世に出て、タレント活動やオリジナルブランド『DING』のプロデュースなど多方面で活躍する彼は“イケメンなのに童貞”ということでも広く知られている。

その様子から“草食系”を超えて“絶食系”なんて呼ばれることも。「据え膳食わぬは男の恥」の価値観が今なお残る男社会で、彼はなぜ“セックスしないこと”を貫いてきたのだろうか。

「浮気をする人のほうがよっぽどヘン」「ボクが恋愛をしないのは、単に面倒くさそうだから」

こんどうようぢくんがメディアに出るとき、いつも「奇異」な存在として扱われる。これだけ美しい容姿をして、女性に不自由はしなさそうなのに、どうして25歳にもなっていまだ童貞なのか。

「結婚する相手としかセックスはしたくない」という彼の主張に、周囲が目を丸くして「絶対ウソでしょ!」と驚きの声を上げるのが、定番のパターンだ。

「ボクからするときちんとした相手がいるのに浮気をする人の方がよっぽどヘン。でも世間的には、ボクの考えのほうが少数派みたいですね(笑)。それでおかしいって責められちゃうのは、なんだかなあと思います」
彼は努めて何でもないような口調でそう話しはじめた。話しぶりは穏やかで、人当たりも良く、断じて“非モテ”に属するタイプではない。だけど、彼の関心は恋愛に向いてはいない。

「なんでかって言うと、面倒くさいのが一番の理由。よく女友達からも話を聞くんです、『LINEが返ってこない』とか『他の女と遊びに行ってる』とか。そういう愚痴を聞いてあげること自体はイヤじゃないんですけど、そのたびに思っちゃうんですよね、面倒くさそうだなって」

嫉妬とか独占欲とか、コントロールしきれない感情に心をかき乱されるのは恋愛の醍醐味でもある。だけどこんどうようぢくんは、そんなネガティブな感情に支配されている周囲を見るたびに、「それって本当に幸せなんだろうか」と疑問を感じずにはいられない。

「もちろん中にはいるんですよ、すごく楽しそうに恋愛をしている人も。でも、そういうのってごくまれな話。そんな運命の相手を見つけるのって、相当手間もかかるし時間もかかる。本当に相性のいい人と出会うためにも恋愛経験を重ねた方がいいって勧める人もいるけれど、ボクには必要性を感じない。そのプロセスが面倒くさいんです
制御できない感情に振り回されるくらいなら、今のようにマイペースにのんびり暮らしているほうが幸せ。それが、こんどうようぢくんが「恋愛をしない」理由のひとつだ。

「恋人と友達と何が違うの? たぶんそれは、セックスをするかしないかだけ」

こんどうようぢくんは言う。

「とはいえ、恋愛をしたほうがいいんだろうなってことはわかります。ボクも年をとってきたし、孤独死したらどうしようとか、将来が不安になることもある。わけのわからない寂しさを感じる日だってもちろんあります」
そんなとき、こんどうようぢくんは仲の良い友達と遊びに行って気持ちを晴らす。普通の人は心の隙間を恋人で埋めたくなることもあるが、彼にとってそれは友達でも十分代用可能なのだ。

「よく思います。『恋人と友達と何が違うの?』って。みんなが恋人と過ごして楽しいと感じていることって、友達とでもできることがほとんど。だったら友達でいいじゃんって思うんです。たぶん違いがあるとしたら、セックスをするか/しないか、だけですよね

「おじいちゃんもおばあちゃんも幸せそう。だからセックスしなくたって、幸せな関係は築けるはず」

彼は自ら核心に触れてきた。「こういうことを話すのは女性に失礼だと思うんですけど…」と何度も注意深く断った上で、本音の本音を聞かせてくれた。

「昔、ノリでAVを見せられたことがあるんですけど、正直に言うと、 ちょっと抵抗がありました。男性も女性も、なんだか欲望の塊に見えちゃって。本当に女性には申し訳ないんですけど、 ボクは性的興奮を感じませんでした」

そもそもこんどうようぢくんは、セックスを愛情表現とは捉えていない。彼にとって、セックスはあくまで生殖行為。それ以外の目的でセックスをしようとは思わない。

「だから『セックスを通して愛を感じるんだ』と力説されると、やっぱり面倒くさいって思っちゃう(笑)。ボクは、もっと別の方法のほうがよっぽど愛を感じます。街をぷらぷら歩いているときに相手に似合うものがあったら、普通の日だけどプレゼントしてあげるとか。愛情表現は言葉でもキスでもハグでもいい。セックスである必要を感じられないんです
だから、セックスをしないと本当の愛が生まれない、なんて思いもしない。

「だって、おじいちゃんとおばあちゃんが仲良く歩いているのを見たら、すごく幸せそうに見えるじゃないですか。そのふたりは、絶対にもうセックスはしてないですよ。だから、セックスをしなくたって幸せな関係は築けるはず。なのにどうして、セックスをしなくちゃ幸せじゃないって言うんだろう。そこが全然わかりません」

「ボクは誰に対しても偏見がない。だから、童貞であることに興味を持たれるのが不思議なんです」

おそらく、こんどうようぢくんだけが“まれ”というわけではない。「いい年して彼女がいないのはおかしい」とか、「女が出来ればお前も変わるよ」とか、余計なお節介に煩わしさを感じていたり、男女の場に無理やり連れていかれてウンザリしている人はきっとたくさんいる。

「ボクも昔はヤル気満々の男女が集まる飲み会に誘われていました。でもやっぱり全然楽しくはなかった。好きでもない女の子からボディタッチされるとイヤだなと思ったし。そういう生きづらさみたいなのを抱えていた時期はありました
「草食」「絶食」とカテゴライズされることに、疑問を感じた時期もあった。

「ボクは誰に対しても偏見がないんです。『ワンチャンあるかも』って盛り上がっている男子を見ても特に何も思わない。だから、彼女がいないことや童貞であるなど、どうしてまわりの人がこんなに興味を持つんだろう、と不思議でした。何がダメなのか今でもよくわかりません」

「傷つくことを言われても、実はみんな本気じゃない。だから右から左に流せばオーケーです」

そんな周囲の奇異な視線から自分を守る最善策は、何か言ってくる人とは不必要に絡まないことだという。

「ボクの価値観を無視して、自分の考えを一方的に押しつけてくる人と絡まなくなったら、だいぶラクになりました。それでいいと思うんですよ。諦めるのってすごく大事。仮に傷つくことを言われたとしても、実はその人もそこまで本気で言ってるわけじゃない。だから何を言われても、『そうですね』と表面的に同意だけして、あとは右から左に流せば、それでオッケーです
お金も時間も、全部自分の趣味に費やしたい。そんな“恋愛しない男子”は、決して無気力でも臆病なわけでもない。ただ、幸せの優先順位が違うだけだ

「将来的なことを考えたら、恋愛はしておいた方がいいんだろうなとは思います。でも、恋愛以外に楽しいことがたくさんあるから、そっちが優先でいいじゃないですか。もし恋愛してないことを指摘されてウンザリしている人がいるのなら、そんなことは気にしないで、自分の好きなように生きたらいいと思いますよ」
彼の透き通った肌も、色素の薄い目も、たしかに普通の男の子という枠組みからは外れているのかもしれない。だけど全部、自分が好きだからそうしているだけ。

恋愛もセックスも知らないこんどうようぢくんは、決して男として「遅れている」わけでも「劣っている」わけでもない。むしろ自分にとっての幸せが何かを知っている、とても賢い男の子だった
〈取材・文=横川良明/取材・編集=葛上洋平(新R25編集部)/撮影=森カズシゲ〉