ビジネスパーソンインタビュー
「自分がサボリ魔だって自覚している」
10年以上書いている"反省ノート"。山里亮太「努力をやめたいなんて1ミリも思わない」
新R25編集部
「努力」って難しい。
学生時代は、部活や受験勉強など明確な目標があって、それに向かって頑張ることはできても、社会人になるとつい頑張ることを忘れてしまうんですよね…(もちろんボクも)。
そんな中、41歳になっても泥臭く努力しつづける先輩がいました。南海キャンディーズの山里亮太さんは、ツッコミのフレーズやお笑いに毎日向き合う、芸能界屈指の努力家なんです。
今回はそんな山里さんに、「なんで努力できるの?」「どうして続けられるの?」ということを、真正面から聞いてみました。
〈聞き手:福田啄也(新R25編集部)〉
ほぼ毎日つけている反省ノート。その中身とは…?
福田
ボクが山里さんをすごいなって思ったのは、2014年に放送していた『もっとたりないふたり』(日本テレビ)で、「常に反省ノートを書いている」という話を聞いてからです。
そのノートには、具体的にどんなことを書いているのでしょうか?
山里さん
「その日の反省」「自分のよかったワードやツッコミ」「ほかに何が言えただろうか」「ほかの人のコメントで『こんな考えあったんだ』と気づいたこと」などですね。
それらをほぼ毎日書いています。
福田
ほぼ毎日…!ちなみに昨日はどんなことを書いたんですか?
山里さん
昨日は、ロケでディレクターに「ちょっと撮れ高が足りないので、もう少し撮影しますね」って言われたんですよ。そのことに対する反省点を書きました。
福田
反省ポイントとしてはどんなところになるんでしょう?
山里さん
「撮れ高が足りてない」ってことはつまり、そこまでの収録で合格ラインを出せてないってことじゃないですか。ボクのワードやツッコミが、ディレクターさんの満足に達していなかった。それがめちゃくちゃ申し訳なかったんですよ。
帰ってから、「あそこはもっと鋭い言葉を考えればよかった」「そもそも自分の準備不足だった」ってことを書き殴りましたよ。
昨日のことを思い出してちょっと自己嫌悪に陥る山里さん
福田
…そんな反省を毎日続けているんですか?
山里さん
はい。あとは、嫉妬とかも書きますね。
ほかの芸人が新しい番組をはじめると、「そっかぁ、俺は声をかけてもらえないんだ…似たようなことやってるんだけどなぁ…」って。そこに対して「自分に何が足りないか」っていう分析をします。
福田
(ネガティブの根が深い)
「そっかあ、オレは呼ばれないんだ…」
「サボったらオレは終わる」という危機感をいつも持っている
福田
そのノートっていつから書いているんですか?
山里さん
2006年くらいですかね? もう60冊以上はあると思います。
福田
12年以上も続けているんですね! サボろうと思ったことはなかったんですか?
山里さん
いっつも思っていますよ。「今日はもう寝てしまおう」とか「飲みに行っちゃおう!」って。ただ、サボるとすぐに結果に出ちゃうんですよね。
収録中に「あっ、今のワードはもっと尖らせることができた」「この切り替えしのパターンは考えておくべきだった」って自分でわかるんです。
「やっぱり飲み会に行かなきゃよかった」って思う瞬間があるそうです
福田
なるほど。サボらないように何か工夫していることってありますか?
山里さん
まずは、自分がサボり魔だって自覚することです。サボっちゃう自分を当たり前だと思う。そしたら、どうすればサボらないか…ってことに考えが回ります。
ボクの場合は、「サボったらオレは終わる」っていう危機感をいつも持っています。
というのも、『M-1グランプリ2004』で準優勝した後に、マネージャーが付いてくれたんですけど、その方が「この状況で努力しないと、すぐに消えてしまうよ」と諭してくれたことがあったんですよね。
福田
すごいマネージャーさんですね!
山里さん
鼻が高くなってしまう時期によくぞ言ってくれた!って感謝してますよ。
さらに、そのマネージャーはボクがサボり魔だとわかっていたので、常に挑戦するようなライブを持ってきてくれたり、ラジオという環境を用意してくれたりと、サボれない状況を作ってくれました。
うまくいってないのは、努力の方向が間違っているから
福田
努力しつづけてもうまく実を結ばない…という人も多いと思うのですが、山里さんは努力することをやめたくなる時期ってなかったんですか?
これだけやってもダメならもう無理だなって。
山里さん
それはないですね。努力してうまくいかないときは、「まだ足りない」って思うんですよ。それか、努力の仕方が間違っているかもしれないって考えます。
福田
努力の仕方、ですか。
山里さん
ボクがまだ「足軽エンペラー」(「南海キャンディーズ」の前のコンビ)だった頃は、相方に説教ばかりしていたんですよ。
「オレは足軽エンペラーの事をこんなに熱く考えているんだぞ」って話すことで、自分は頑張っていると錯覚していたんです。
福田
それが間違った努力だったと。
山里さん
自分自身は何もやっていないんだから、売れるわけないですよね!
相方を3時間怒っている間に、ネタ書いたり、面白いこと考えたりした方が得に決まってますよ。
福田
ちなみにその相方の人とはどうなったんですか?
山里さん
限界に達した相方がブチギレて、自転車を投げつけられました。
今はもう和解できたそうです
山里さん
人を怒るという努力が間違っていたと気づいてからは、努力の仕方を変えてみました。
人をやっかんで引きずり落とそうって思う時期もあったんですけど、それもマイナスでしかない。
結局、呆れるほど自分のレベルを上げるしかないんですよ。
福田
それが今の山里さんの努力の仕方につながっているということですね。実際に努力が実を結んだって実感できたのはいつ頃だったんですか?
山里さん
だいたい『スッキリ』(日本テレビ)で天の声をやり始めたころ(2009年)です。テリー伊藤さんに、「君っておもしろい人だったんだね」って言われたんですよ。
その時までボクは、静ちゃんの相方かアイドルオタクの気持ち悪いやつっていうイメージだったんです。
そのイメージが覆った時は、「ああ、努力を続けていてよかった…!」って思いました。
他者からの評価が最高のガソリン
福田
反省ノートを書くこと以外に、何か努力していることってありますか?
山里さん
自分に求められているものをちゃんと認識して、そこの精度を上げる鍛錬。これは欠かさないようにしています。
MCを任されているなら大御所と渡り合うツッコミ、深夜のバラエティならキレのあるワードを考えるとか。
求めてもらっているなら、そこに対して「山里ならここまで応えられるよ」っていうのを見せたいんです。
福田
芸人って「自分の笑いを追求できればいい」みたいな職人気質な方が多いイメージですが、山里さんはその真逆なんですね。
山里さん
ボクが1番意識しているのは、「人からどう見られているか」ってことなんですよ。
確かに、自分たちのお笑いを突き進むストロングスタイルな芸風には憧れますけど、ボクにはできません。
福田
どうしてですか?
山里さん
人に褒められたいからです。人からの目線をめちゃくちゃ意識しているので、「自分たちの笑いを突き詰めるだけでいい」とは思えない。
人から褒められることで、「ありがたいな」って思ってテンションが上がるタイプですから。
「人から褒められると、それがガソリンになって努力できるんです」
山里さん
だから、「努力を続けるのって辛くないの?」って聞かれることがありますが、辛いという気持ちと、この辛いことをやって褒めてもらえるっていう気持ちを天秤にかけると、3:7で褒めてもらえるという気持ちが勝つんですよね。
努力は自信を保つ行為。だからやめたいなんて思わない
福田
ここまでお話を伺ってきましたが、努力している話を惜しげもなく話してくれるのが意外でした。
山里さん
確かに芸人って、努力しているところを見せるイメージがないですよね。
ボクも抵抗はありますが、「これだけ努力しています」って世間に見せちゃうことで、自分をより追い込めると思っているんですよ。
福田
どういうことですか?
山里さん
ボクはサボり魔ですから、これからも色んな言い訳を作ってサボろうとします。
でも、このインタビューを読んだ人は、きっとこれからボクがテレビで話しているときに、「これが山里の積み上げてきたワードか」って厳しい目線を持つはずです。
だからそのハードルを越えるために、絶対にサボるわけにはいかねえな…って思えるんですよ。
このインタビューも、サボらなくなるきっかけになりますね
福田
最後に、山里さんってこれからもずっと努力しつづけるんですよね。それってキツイなって思わないんですか?
山里さん
全然! むしろこの生活が一生続けられたら幸せだなって思います。
だって努力をしなきゃいけない環境があって、そのために努力しつづけて、それで褒めてもらえるっていうサイクルがずっと回っていくって最高じゃないですか!
福田
それを言い切れるってすごいですね…
山里さん
努力って、目的を成し遂げる行為であり、自分の自信を保つ行為でもあると思うんですよ。「オレはこんな努力をちゃんと続けているぞ」っていう自信の貯金になる。
毎日反省ノートを書き続ける理由も、「今日も1日頑張ったな」っていうことを可視化できるようにする作業なんです。その作業って意外と睡眠をよくしてくれるんですよね(笑)。
だからやめたいなんて1ミリも思わないですよ。
福田
なるほど…自分のなかでも、努力の捉え方がちょっと変わった気がします。
今日はありがとうございました!
おわりに
「ファイナルファンタジーでたまねぎ剣士っていうのがいるんですけど、あいつは何もしないと最弱ですが、最後まで鍛え上げると最強の戦士になるんです。それってめちゃくちゃかっこいいじゃないですか」
最後にそう語ってくれた山里さん。
「凡人が天才と渡り合うには、自分を鍛え上げるしかない」という彼の行動と哲学は、ボクらを突き動かしてくれる教えになるはずです。
〈取材・文=福田啄也(@fkd1111)/撮影=長谷英史〉
山里さんの新刊(7月6日発売)はこちら!
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