事務所で唯一の“NGなし”タレント!?
仕事を選ばないのは、挫折があったから。朝日奈央が「なんでもやりきる女」になるまで
去年から今年にかけて「バラエティ界でもっとも躍進した女性タレント」は、この人だと言って過言ではないでしょう。
今回お話をうかがったのは、アイドルグループ「アイドリング!!!」を卒業し、現在はタレントとして活躍している、朝日奈央さん。
「事務所で唯一NGなし」のタレントだという朝日さんは、バラエティでの体当たりな「やりきり力」が話題です。なぜそこまで振り切ることができるのか?
そのウラには、自分の夢をすっぱりと諦めた過去の「挫折」がありました。
〈聞き手:天野俊吉(新R25編集部)〉
都内某所にある事務所の一室にお邪魔した取材陣。取材予定時間の少し前に、「いや~、すいません、私なんかで…。いいんですか本当に!」と言いながら朝日さんが入ってきました。
天野
朝日さん
大丈夫ですか、間違いじゃないですか~?
天野
朝日さん
ずっと「私にはコレというものがない」って思ってて。まあそれもみんなよく言うと思うんですけど! 悩みすらもみんな言ってる悩みっていうね(笑)。
モデルの夢を諦めた挫折経験。「有名になってファッションショーに出る!」
天野
朝日さん
天野
朝日さん
小6で『ラブベリー』(徳間書店)のオーディション受けて、卒業式の日に合格の電話が来て。本当かな? 夢じゃないかな? ってすごくうれしかったのを覚えてます。
朝日さん
事務所に入るってことは、モデル以外のお仕事もすることもあるんだって気付いて。「あれ、アイドル(アイドリング!!!)のオーディション来たぞ」みたいな。
天野
朝日さん
ファンの人も怖そうだし、ずっとかわいくいなきゃいけないし…と思ってて。自分は男の人に好かれるようなタイプじゃないから、全然合ってないと思って、すごい泣いてました。
でもオーディションに行ったら行ったで、めちゃくちゃ楽しかったんですけどね。
天野
朝日さん
『ラブベリー』が2012年に休刊しちゃって、次はほかの雑誌に出たい…って思って「あと何キロ痩せるから、○○のオーディション受けさせてください」って、事務所の人にお願いしてました。
天野
朝日さん
結局モデルとしては体型的に難しかったんですよね。
理想でいえば、大人な雑誌のモデルという“次のステップ”にいきたかった。でも、そういうモデルさんに会うとわかるんです。「脚の長さも顔の小ささも全然違う。そりゃ無理だ、次いけねえわ」って。
ちゃんと諦めました。うーん、無理でしたね~…(小声で消え入るように)。それが21歳ぐらいのときです。
天野
朝日さん
だから私は、バラエティでもなんでも、絶対にちゃんと頑張らなきゃいけないんです。「仕事を選ばない」って言われますけど、選んでるときじゃないんですよ。
グループアイドルでは、誰もサビを歌わない!? 「やりきる」を学んだアイドル時代
天野
朝日さん
私、もともと歌もダンスも本当に苦手で、「私なんかがアイドルでいて大丈夫かな」って、ずっと思ってたんですよ。
天野
朝日さん
逆にヘタでも元気に踊ってれば、観てる人にすごい喜んでもらえるって、先輩のダンスを見てて気付いたんです。
「最終的には、上手い下手っていうよりやりきるしかないんだ」って。
天野
朝日さん
朝日さん
20人ぐらいいると「まあバレないっしょ!」って。音声さんにはバレてるんですけど(笑)。
天野
朝日さん
そのおかげか、アイドリング!!!最後のライブで、スタッフさんに「頼ってるから」って言ってもらえたんですよね。まあ嘘かもしれないですけど…(笑)。
バラエティでは毎回「スベるかも」と思っている…。「自信がない」ゆえの慎重さ
天野
朝日さん
特に「松丸代打オーディション」(朝日さんは「変なおじさん」の踊りや、下ネタの「謎かけ」を披露)は、その後会う人会う人から「見ましたよ~!」って。
現場でもみんなすっごい笑ってくれたので、「ああ、やっぱりやりきってよかった」と思いましたね。
天野
朝日さん
これ本当にウケんのか!?って、1回冷静に考えちゃうんです。
天野
朝日さん
でも、「私なんかがいろいろ考えるより、笑いのプロが考えてくれたんだからそれを信じて頑張ろう」って。
天野
朝日さん
私、まだあんまりバレてないんですけどものすごいポンコツなんですよ。
パッと振られたときに考えてたんじゃ、絶対反応できないです。番組中はずっと必死で「今振られたらどう答えよう」って考えてるんですよ。「あ、これ私にも来そうだな」っていう流れをひたすら察知してます。「今アイドルの話してるから振られそうだな」とか。
不器用なんで準備が必要なんですよね。
テレビでやる以上、アイドルだって面白いものを。「私は“升野育ち”です」
朝日さん
『アイドリング!!!』の番組はずっと升野さんがMCだったんですけど、「若いからって、“恥ずかしい”とか“できない”はないからね」ってずっと言われてました。
天野
朝日さん
朝日さん
普通の番組だったら「か~わ〜いい~」みたいになってなんとなく終わりだと思うんですけど、升野さんはダメ。
今考えればたぶん、それだと「アイドルのファン」以外の人からすると面白くない、テレビでやるんだからちゃんと面白いものにしなきゃダメだってスタンスだったんだと思います。
天野
朝日さん
中2からその環境にいたんで、自然と「やりきり力」が強くなったんだと思います。あれから10年ですからね。私は完全な「升野育ち」ですね。
「3番目ぐらいに好き」でもいい。「喜んでもらえるなら、全力でやる」
朝日さん
天野
朝日さん
でも途中から、“それで幸せになってくれるんなら、それでもいいかな”って思い始めたんです。
天野
朝日さん
今もそれは変わってないです。
取材終わり、今後の目標を聞いてみると「求められてることを頑張る」ほかには、「ハワイっぽいカフェで働きたい(笑)」とのこと…。
何度も「ありがとうございます」と言いながら、エレベーターまで見送ってくれる姿には、こちらが恐縮してしまいました。
「喜んでもらえるなら、なんでもやりきる」というポリシーを聞いて、芸能界内外から彼女を評価する声が多い理由がよくわかった気が。
――しばらくは、“朝日奈央の躍進”が止まることはなさそうです。
〈取材・文=天野俊吉(@amanop)/撮影=池田博美(@southsidehiro)〉