

2022年までに倍増計画も
世界でたったの3900頭… 野生のトラはなぜ絶滅危惧種になってしまったのか?
新R25編集部
日本でも動物園の王者的存在で、プロ野球の球団アイコンだったり、アパレルのモチーフになったりするトラ。実はこのトラ、なかでも野生のトラは全世界でたったの3890頭(2016年時点)しかいないって知ってましたか?
しかも、「絶滅危惧種」として「国際自然保護連合(IUCN)」のレッドリストにものっているのだとか…。
今回、そんな野生のトラを保護するために「世界自然保護基金(WWF)」とタッグを組んだ世界的プレミアムビールブランド「タイガービール」の取り組みについて取材してきました!
野生のトラはなぜこんなにも少なくなったのか?
インタビューに答えてくれたのは、タイガービール インターナショナル ブランドディレクターのヴィーナス・テオさん(写真左)とWWF タイガーアライブ イニシアチブリーダーのマイク・バルツァーさん(写真右)

編集部・N
まず、野生のトラが世界に3890頭しかいないってことに驚きです。我々のグループ会社の社員数くらいですから…
そんなに少ないなんて知りませんでした。

テオさん
あら! じゃあ今回のキャンペーンは、すでに成功ですね(笑)。
だって、野生のトラが絶滅危惧種で保護すべき生き物だということを、広く知らせることが目的なのですから。

編集部・N
今回のキャンペーンって、世界的ファッションブランド「KENZO」とコラボした限定商品の発売ですよね。

テオさん
そうです。キャンペーン名は「RARE STRIPES」。
8頭の野生のトラの生涯からインスパイアされたTシャツやパーカーなどのデザインを、4人の気鋭アーティストに依頼しました。
GINZA SIXのKENZOストアで買える「RARE STRIPES」の限定コレクション
限定コレクションについているQRコード(写真オレンジ部分)をスマホで読み取ると、モチーフとなった野生のトラのストーリーが見られる仕掛けも

編集部・N
それにしても、野生のトラはどうしてそんなに少なくなったのですか?

バルツァーさん
理由は2つあります。1つ目は密猟です。野生のトラは皮から牙まですべてに需要があって、犯罪組織が違法取引をする対象なんです。
密猟に関してはトラだけでなく、トラのエサである野生のシカやイノシシなどもターゲットになっているので、それも野生のトラ減少の一因となっています。

編集部・N
もうひとつはなんでしょうか?

バルツァーさん
トラが生息する森林や草原の破壊です。私たち(WWF)のミッションは、そのような密猟や環境破壊にストップをかけ、トラに対する需要を減少させることなんです。

編集部・N
年間にどれくらいのトラが犠牲に?

バルツァーさん
正確には把握できていません。そもそも、野生のトラが生息する国はロシア、インド、中国など複数あります。
特に、東南アジアの熱帯地域は個体数の確認自体が難しいし、国によっては公式にトラの調査がおこなわれていないところもありますから。

編集部・N
密猟が減らない一番の理由は何でしょうか?

バルツァーさん
相変わらず需要があることです。犯罪組織が密猟し、高値で売買できる市場がしっかりあるということが問題なのです。

バルツァーさん
おもに野生のトラが生息する各国の政府が、保護したり組織を摘発したりするために予算を投じるべきなのですが、それが十分ではない。
そうなると、野生のトラを保護するレンジャー(森林警備隊)も育成できず、摘発する警察も手が回らなくて脅威にさらされつづける…という悪循環が生まれるんです。

編集部・N
トラってそんなに需要があるんですか? 毛皮くらいしか思いつかないですが…

バルツァーさん
トロフィー(頭部を剥製にした飾り)や牙を使ったアクセサリー、また、漢方の材料としても需要が絶えないんですよ。
トラが少なくなると我々の生活にどう影響がある?
Dudarev Mikhail/shutterstock.com

編集部・N
一部の強欲なお金持ちの犠牲になっているんですね…
野生のトラがいなくなると、私たちの生活にどういう影響がありますか?

バルツァーさん
逆にお聞きしたいですね。あなたは、どうなると思いますか?

編集部・N
うーん。直接的には影響がないように思えますが、大きな視野でみると生態系が崩れて自然破壊につながる…とか?

バルツァーさん
すごくイイ答えです!私たちが保護しているのは野生のトラだけではないんです。
トラが暮らす森林や草原といった自然環境の保護もしています。それは同時に、そこに暮らす絶滅の危機に瀕した種々の生き物や、トラのエサになる動物を保護することになる。
野生のトラを保護するということは、あなたが言った「生態系」を守り、自然環境を保護することなんですね。
「アジア人にとっての強さと美しさの象徴として、トラを守りたい」

編集部・N
タイガービールとして野生のトラの保護活動をしようとしたきっかけは、やはりブランドロゴがトラだからですか?

テオさん
名前がきっかけにはなっていますが、それだけじゃありませんよ。
私たちはタイガービールというブランドを愛しています。トラは姿形、存在自体がとても美しいでしょう?
約80年前から、私たちは世界的なプレミアムビールのアイコンとして「タイガー」とともに歩んできましたが、アジア人にとってトラは肉体的、精神的な強さと美しさの象徴なんです。

編集部・N
確かに、日本でもトラは強さと美の象徴として、昔から日本画やアパレルなどで好まれています。

テオさん
そうですよね。ですから、私たちはまず、WWFと一緒にトラについて学ぶことからスタートしたんです。
そのなかで、野生のトラが絶滅の危機に瀕していること、トラがいなくなることが私たちの生活にどう影響するかを知りました。

テオさん
先ほどバルツァーさんがおっしゃったように、トラの絶滅で生態系が崩れ、自然環境の破壊につながり、人間も危機にさらされてしまうんです。
ですから、トラをアイコンとしているビールブランドの責任として、保護活動をサポートする立場をはっきりととらないといけないと考えたわけです。
具体的にどうやってトラを増やそうとしている?

編集部・N
2022年までの6年間で野生のトラを倍増させることを目標にしているとのことですが、具体的にどうやって増やすんですか?

テオさん
タイガービールとしてはまず、WWFがトラの保護や育成活動に必要な資金を提供すること。もちろん、単なる資金提供だけではありません。

テオさん
私たちは世界ナンバーワンのプレミアムビールブランドですので、ブランドのネームバリューを使ってより多くの人々に野生のトラの現状を伝えること、彼らを保護することの意義を世界に広めていく義務があると考えています。
世界中のマーケットにリーチしているブランドだからこそのミッションなんです。

バルツァーさん
密猟からトラを守るWWFの活動としては、レンジャーを育成して数を増やす、保護区をつくってトラの生息地域を確保するなどがあります。
野生のトラの重要な生息地であるアジアは経済発展がめざましいですが、道路や鉄道のための開拓と同時に、トラが生きる環境が破壊されているのも事実。

編集部・N
なるほど…

バルツァーさん
そんなアジアでどうやってトラを保護するか。そう考えたとき、世界中はもとより、アジア圏で影響のあるブランド、タイガービールとのタッグは不可欠だったんです。
消費者が保護活動に参加するハードルを下げる“仕掛け”とは?

テオさん
ブランド力をいかして単に世間に気づきを与えるだけでなく、消費者にアクションを起こさせることも重要です。アクションというのは、トラの保護活動への参加のこと。
今回発表したKENZOとコラボでは、「RARE STRIPS」のコレクションを購入するとそれがトラの保護や育成活動への資金となり、消費者もプロジェクトに貢献することができるんです。

編集部・N
実際、「RARE STRIPS」コレクションの売上金の何%がWWFに寄付されるのでしょうか?

テオさん
100%です。

編集部・N
全部ですか!? それは私たちも貢献している実感がありますね!
KENZOとのコラボ以外に、タイガービールブランドとして取り組んでいることはありますか?

テオさん
そもそも2年前にWWFとタッグを組んで始めた「Tx2」プロジェクトでは、年間100万USドル、6年間で600万USドルの資金提供を約束しています。

編集部・N
日本円だと約6億6800万円(※)…すごい!
※2018年7月20日時点のレートで換算

テオさん
ほかには、タイガービールを出荷する際の段ボールやラベルに「野生のトラを救おう」とメッセージを入れるなど、商品の流通でも目にとまるようなこともやっていますよ。

編集部・N
なるほど! 「RARE STRIPS」のコレクションを買う以外に、私たちが貢献できることはありますか?

テオさん
「野生のトラを救おう」「密猟をやめさせよう」というメッセージを、より多くの人々に広げることがもっとも重要です。
この記事を読んでいるみなさんが、コレクションを購入してダイレクトに貢献してくださるのはもちろん、メッセージの拡散に協力いただけることを願っています。
動物園やモチーフなどで我々の生活にも馴染みがある野生のトラがこんなにも危機にさらされ、保護活動が国際レベルでおこなわれているなんて意外でした。
こうした保護活動に直接関わることはハードルが高そうな印象があったけど、「購入したら100%寄付される」って分かりやすいキャンペーンがあるのはありがたい!
そして、今回の記事でお話いただいた事実を知って拡散するだけでも、野生のトラの保護活動に貢献できる…! まずは、できることからやってみたいですね。
〈取材・文=新R25編集部/撮影=オカダマコト〉

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