物事に没頭できる「フロー心理」とは?

ヒントは“大縄跳び”!? 専門家に聞いた「ストレスをモチベーションに変える方法」

仕事・ビジネス2018.09.18by 新R25編集部

「ストレス」といえば、イヤな上司やハードな仕事など、ビジネスマンにとっては天敵でしかないもの。できることならなくしたいですよね。

でも、まったくストレスがない状態が続いたら幸せか? と言われれば、それはそれで競争心も闘争心もなくなりそうな気もします。もしかしたら適度なストレスはビジネスマンにとって必要なのかも

今回は、そんな仮説をストレスマネジメントの専門家にぶつけてみました!

【水木さとみ(みずき・さとみ)】多摩大学大学院客員教授。法政大学社会学部卒業、各種心理療法を修得し、横浜市立大学医学部口腔外科学講座、同精神医学講座、東京医科歯科大学頭頸部心身医学講座にて心理療法を実践。医学博士の学位を取得。東京医科歯科大学頭頸部心身医学講座臨床講師を経て、心理学・行動科学・心身医学に基づく実践的な研修・講演を数多く全国的に普及している

編集部・N

編集部・N

先生、今日はストレスとの上手な付き合い方をお伺いしたいです。

水木先生

水木先生

私たちはストレスのない状態で暮らすわけにはいきません。逆境のなか、どうやって自分の力を最大限に発揮できるか? その手段として「ストレスマネジメント」があるんですよ。

ストレスって実は悪いものばかりではない。「プラスに変えられる良いストレス」もあるんです。

編集部・N

編集部・N

やはりそうですか!

病は気から!? 「予期する不安」が身体に与える影響とは

水木先生

水木先生

まず、「ストレスとは何か」ということから説明しましょう。

仕事をしていくなかで、好ましくない出来事に遭遇することがあります。そして、そこにはさまざまな感情が生じます。思い通りにいかなくなってしまった際に生じる苛立ちや焦り、見通しが立たなくなってしまった際に生じる不安など。こうした感情を「陰性感情」といいます。

陰性感情は、身体にさまざまな影響を与えることが知られています。ですので「ストレスは身体に悪い」と言われるんですね。

編集部・N

編集部・N

ネガティブな感情は、やっぱり身体にも影響を与えるんですね…

水木先生

水木先生

たとえば、1986年の心身医学のテキストに掲載された事例で、漆(うるし)かぶれの患者さんを被験者としたものがあります。

被験者の両腕に0.8%の漆の液を塗布するものなのですが、本人には、「右腕に漆」「左腕にアルコール」と伝えるんです。

そうすると、左右の腕で出る反応が明らかに違う。同じ人間の生体で同じ成分を同じ量だけ塗っているにもかかわらずです。

編集部・N

編集部・N

どうしてそんな反応の違いが起こるんですか?

これは「予期不安」と呼ばれる反応です。この患者さんは漆かぶれ持ちなので、「右腕に漆を塗られる」と言われた途端、頭のなかで「かぶれる」「いやだ」と考えてしまうんです。

水木先生

水木先生

それにともなう不安が身体に影響して、左腕に比べて右腕の反応が大きくなったわけです。ストレスが身体に悪影響を与える例といえます。

ほかにも過呼吸など、パニック発作と呼ばれるものがありますね。これも「予期不安」の一種。

本当は何でもないことでも、電車に乗ると「また呼吸ができなくなるんじゃないか」「倒れるんじゃないか」と頭の中でいろんなことを「予期して」不安に陥り、身体に悪い反応が起こってしまうんです。

物事に没頭する「フロー心理」に導くことで、仕事のストレスはモチベーションに変わる

編集部・N

編集部・N

陰性感情が予期反応を引き起こしてしまうわけですね。

では逆に、「良い」ストレスについても教えてください!

はい、厳密には“ストレスを「良いもの」に変える考え方”といったところでしょうか。

興味深いマウスの実験があります。輪の中を走りつづけるマウスを見たことがあると思いますが、なんと1日8kmも走りつづけることができます。

ただ、人間が意図的に操作して「走らされる状況」になったマウスは2kmで高血圧を起こすのです。これはストレスによる反応なんですよ。

水木先生

水木先生

人間も同じで、自分が「面白い」と感じたり夢中になったりすることって、延々と続けていられるけれど、「やらされてる」「やらなければ」と感じることは30分でもしんどいですよね。

しんどい状態が続くとストレスも増幅し、病気になる
こともあります。

編集部・N

編集部・N

仕事だと「やらなければ」のほうが圧倒的に多いです…

水木先生

水木先生

自らの気持ちを高め、モチベーションにつなげるには、チクセントミハイ博士が提唱した「フロー心理」が有名です。

フロー心理」とは、“時間も空間も忘れて夢中になれる状態”のことです。

編集部・N

編集部・N

その「フロー心理」に達するためには、どうすればいいんでしょう?

嫌いな仕事だったりしたら、難しいですよね。

水木先生

水木先生

コツは「自己効力感」です。

自己効力感…?

水木先生

水木先生

何らかの難しい課題に直面したとしましょう。自らの内面に、成し遂げられるという思いや自信、確信が得られる感覚を自己効力感といいます。

そもそも、人の行動を決定づける要因として「先行要因」「結果要因」「認知的要因」の3つが挙げられます。

なかでも自己効力感を高めるためには「先行要因」がもっとも重要とされています。

これは、行動を起こす前に「できそう」という予期を感じる要素です。この予期を強化すればするほど、行動のモチベーションが強まるんです。

編集部・N

編集部・N

「できそう」と思うと、仕事に没頭できる…!?

水木先生

水木先生

何の根拠もなく思うだけではダメですよ(笑)。

「できそう」という予期には、自らのなかに「できる!」という強い感覚が湧きおこることが必要なんです。

水木先生

水木先生

小学生のころに大縄跳びやったことあるでしょ? あれって「自分の番で失敗したらどうしよう」とプレッシャーを感じると引っかかることもあれば、「あ、いまこの流れに乗ればいけそう!」って感覚のまま飛んだら成功することもある。

これはまさに、「先行要因」の例です。

編集部・N

編集部・N

なるほど! 納得感があります。

仕事の場で、「先行要因」を利用して没頭するにはどうすればよいのでしょうか?

水木先生

水木先生

具体的にいうと、高い目標があるとき、そこに向かうまでにいくつか「小さな目標」を掲げること

それに全力で取り組み、スモールステップで進みながら達成感が得られることで「フロー心理」に入れると思いますよ。

編集部・N

編集部・N

クリアできそうな「目の前の目標」を掲げることでモチベーションが醸成される、みたいなことですかね。なるほど。

ビジネスのピンチを乗り切るには「ストレスコーピング」の幅を広げること

編集部・N

編集部・N

ちなみに、いつもポジティブでストレスを感じないような人なら、「フロー心理」なんて考えなくていいんでしょうか?

水木先生

水木先生

ストレスを感じない「楽観的思考」は、ある意味良いことなのですが、そうした思考が過度にはたらくと問題解決に至らず、あまりに大きなストレスが押し寄せてくることでパニックになってしまうというデメリットがあるんですよ。

たとえば、これまでは大きな失敗もトラブルもなく、楽観主義で仕事をこなしてきたビジネスマンがいるとします。

編集部・N

編集部・N

そんな人がいたらあやかりたい…

水木先生

水木先生

その人が、これまでのように「なんとかなる」という楽観主義ではどうにもならない大きなトラブルに直面した。そうすると、これまで受けたことのないようなストレスを感じ、どうしていいかわからない状態になるわけです。

楽観的な考え方は強みでもありますが、こうした状況になると、弱みに変わる
わけです。

水木先生

水木先生

ただ、こういうときは新たな行動パターンや習慣を身につけるチャンスでもあります。

編集部・N

編集部・N

なるほど。

水木先生

水木先生

人は仕事のなかで生じたさまざまな失敗やトラブルなどを通して学びながら、新たな考え方や行動パターンを身につけることで「ストレスコーピング」、つまりストレスの対処法にも幅が広がります。

それはすなわち、問題解決力が高まり、タフになれることを意味します。

編集部・N

編集部・N

やはり、ある程度のストレスは必要なのですね。

水木先生

水木先生

そうです。ストレスを悪いものとしてとらえるのではなく、自分の行動パターンや考え方を広げ、自らを成長させてくれる要因であることに気づいてほしいんです。

ストレスとうまく付き合っていくことが大事なんです。

ストレスを力に変え、自らを成長させる

今回教えていただいた「ストレスマネジメント」の考え方を忘れずにいれば、これからは逆境でも仕事を楽しめる気がしてきました!

〈取材・文=新R25編集部・N/写真=いしかわゆき(@milkprincess17)〉

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