ビジネスパーソンインタビュー
LINEの新卒採用で“思わずひざを打った“逸話も
田端信太郎「俺がグラっとくる若手は、ユニークなことをユニバーサルに語れるヤツ」
新R25編集部
気候も寒くなってきて、テンションも下がりめになる10月。せめてモチベーションを上げようと田端信太郎さんの著書『ブランド人になれ!』(幻冬舎)を読んでたら、若手ビジネスマンに向けたこんな一節がありました。
『ブランド人になれ!』P.40(幻冬舎)より「意識だけ高い奴にはなるな。優雅に見える成功者の表面だけをなぞるな。自覚的に汗をかけ」
数々の企業でマネジメントや採用などにも携わってきた田端さんは、「いい人材」「ダメな人材」をどのように見分けているのでしょうか?
願わくば、「いい若手」の条件だけ聞いてそれをマネしたい!
ということで、10月は「いい若手の条件」をテーマに語ってもらいました。
〈聞き手:天野俊吉(新R25編集部)〉
【田端信太郎(たばた・しんたろう)】株式会社ZOZO コミュニケーションデザイン室本部長。NTTデータを経てリクルートへ。フリーマガジン『R25』を立ち上げ、創刊後は広告営業の責任者を務める。その後ライブドア、コンデナスト・デジタル、NHN JAPANを経て、2018年3月から現職
天野
新卒の採用をはじめ、転職や部署異動などで面接されることもあると思うんですが、田端さんが面接して「コイツはいい!」と思う若手の特徴を教えてください!
田端さん
LINEでもZOZOでもそうなんだけど、「なんでこの会社に入りたいんですか?」ってきくと「これからスマートフォンの時代が…」みたいなつまんないこと言う人が多い。『日経ビジネス』の劣化版か、“大学入試の小論文の模範解答”みたいな(笑)。
そうじゃなくて、俺がグラッとくるのは「ユニークなことをユニバーサルに語れる」ヤツだね。
天野
ユニークなことを、ユニバーサルに…どういうことですか?
田端さん
たとえば、「自分は本当にモテなくてスケベで…欲求不満でした。それが、親がスマホを買ってくれたことでエロいものを見られるようになったんです!」って言われたら、「心から言ってるんだな」って思うじゃん。たとえが下ネタで恐縮だけど(笑)。
それをさっきの「スマホ時代」につなげれば、「借り物じゃないユニークな体験」と「普遍性のあるユニバーサルな事象」の両方があるストーリーになる。
天野
たしかに、エピソードに“血が通ってる”感じですね。
田端さん
そうそう。特に俺は「借り物じゃない」ってことを重視します。
だって「借り物」だったら、そいつじゃなくたっていいんだから! そいつを採る理由にならないもん。
なぜ「ピエロ」がLINEを受ける? 思わずひざを打った「面接謎かけ」
天野
過去、田端さんが見てきたなかで「ユニークなことをユニバーサルに」語ってきた若者っていましたか?
田端さん
そうだな…
もう何年か前の話になるけど、LINEの採用面接をやったときに1人いたね。
ガチャッて面接室のドア開けたら、すげえ真面目な顔して座ってる男子がいるの。でもよく見たら、ピンク色のパーティ用みたいなふざけたメガネかけてる。思わずプッと吹き出しちゃった。
天野
パーティ用のメガネ…?
田端さん
何それ?ってきいたら、彼は「ピエロ」をやってたんですって。顔にメイクして、パントマイムする。メガネはその小道具だったみたい。
それで、「自分はアメリカに行ってストリートでパフォーマンスをしたり、ボランティアで施設に行ったりしてました」って語りだした。
天野
へえ…
田端さん
それがどうLINEに関係あるんだろう?って思ってたら、「ピエロの一番のルールは喋っちゃいけないこと」なんだって。
「自分はピエロとして、言語に頼らないコミュニケーションでいろいろな人を楽しませてきました。LINEのスタンプというのも、まさに言語を超えたコミュニケーションだと思います」って言うの。だからLINEでスタンプの仕事をしたいと。
天野
ほ~、なるほど!!
田端さん
「なるほど感」あるじゃん!
これって、「謎かけ」ができてるんだよね。「ピエロとかけてLINEと解く、その心はスタンプです!」っていう。
彼自身のユニークな体験と、非言語コミュニケーションの重要性というユニバーサルな視点が合わさっている。思わずひざを打つよね。
面接には謎かけの要素を…! 転職活動中の人は要メモです
田端信太郎が考えるダメな若手は…「ちっぽけなプライドが仕事より上回る」ヤツ
天野
逆に、田端さんが「コイツはダメだ」って思う若手もいるんですか?
田端さん
俺が一番嫌うタイプはね…
田端さん
たとえば部下に、「あの人にメール送った? FAX送った?」ってきくじゃん。うっかり忘れてても別にいいんだよ。若者だっていろんな仕事があるんだから。
ダメなのは、本当は忘れてたのに「はい、送っときました」とか言って、そこから10分後ぐらいにこっそり送るヤツだね。
直感的に、「こいつウソついてんじゃないか?」って思ってしまう。
天野
あ~、あるあるな気がします(笑)。上司はピンとくるんだ…
田端さん
今どき使わないけど、仕事でFAXがよく使われてたころは、何気ない顔してファックスの送信履歴見てたね(笑)。
そうすると、3人に1人か4人に1人ぐらいは、案の定送ってないヤツがいるんだよ!
天野
結構いるんですね(笑)。
田端さん
その瞬間俺は激怒ですよ。「お前! なんでそんなちっちゃいウソつくんだ!?」と。
表情に怒りが表れてくる田端さん。コワいっす
田端さん
うっかり忘れただけなら、そんなこと俺だっていくらでもある。
でも、「なんでそんなところでちっぽけな自分のプライドを守るんだ!?」って言いたい。自分のプライドがチームの仕事より優先しちゃってるじゃん。
天野
チームプレーに悪影響をおよぼしてしまうと。
田端さん
俺は、上司ってのは部下のケツふいてナンボだと思ってるけど、ウソつかれてたらケツのふきようがないんだよね。
優秀とか無能とかの次元じゃない。あえて断定的に言うけど、ヘンに学歴が高い人ほどそうなんだよ。
天野
なんでそうなっちゃうんでしょうね…。「自分の評価が減点される」って気持ちはちょっとわかります…
田端さん
余計なお世話かもしれないけど、そういうヤツは、早めに言ってわからせてやらないとって思っちゃう。
新卒1年目ならまだいいけど、こんなん5年目とか10年目でやってたらホント飛び蹴りレベルだよ!
飛び蹴りはカンベンしてください
若手は勝手に行動すべき。問題が起きたときだけ責任を取るのが上司の仕事
田端さん
あと、優秀な若手は勝手に行動するよね。
ZOZOでも入社2、3年目ぐらいの若いコが、営業のために社長の前澤を引っ張り出すこともある。
天野
部下の立場からすると、どこまで勝手に行動していいのかって難しいなと思ってしまうんですが…
田端さん
いや、基本的に部下は勝手に動くべきなんです。
上司は部下の動きをいちいちチェックするためじゃなく、何かあったときに責任取るためにいるんだから。
田端さん
ちょっと前に麻生(太郎)さんが、決裁した内容を「見てない」とか言って国会で問題になったでしょ。(※2018年4月12日、閣議に提出される行政文書の決裁について「読まずに判を押すこともある」と発言)
それに対して「財務大臣として見ないのはありえない」とか批判もあったじゃない。
でも俺は、見てなくていいと思うんですよ。
天野
いいんですか? 内容を確認してからOKを出すものじゃ?
田端さん
あのね、世の中に「見きれないような量の“稟議”を見る立場」になったことある人って3%ぐらいしかいないと思うんだけど、財務大臣が、まわってくる稟議全部に目通してたら何日あっても終わらないですよ。
天野
そういうもんなんですか…。じゃあ麻生さんに責任はないと?
田端さん
いやいや、そこが大事なところで、ハンコ押した以上は責任から逃げちゃいけないんですよ。
上司として、部下のやることすべてをチェックする必要はない。でも責任を問われたら「見てないけど自分の責任です」っていうのが正しい態度です。
上司が部下のことをチェックするのは「秘伝の経験則」によるもの
田端さん
たとえばさ、上司に何かの決裁や稟議を求めて、いつもはすんなりOKされるのに、たま~に差し戻されることってない?
天野
ありますね~。「えっ?」ってすごい戸惑います…
田端さん
部下としては「ハズレくじ引いたな」って感じだと思うんだけど。
「どういうときに差し戻すのか」「どういうときに部下の行動をチェックするのか」って、オープンにしないその上司なりの経験則や鉄則があるんだよね。とんかつ屋の秘伝のソースみたいな(笑)。
たとえば俺なら入社してすぐの人の上げたものは「ふむふむ」って全部見る。別に疑ってるわけじゃないんだけどさ。
天野
なるほど…きちんとチェックしてるような、してないような絶妙な感覚なのかな…
田端さん
俺がまだ20代のころ、リクルート時代の上司に田中耕介さんって人がいてさ。喫茶店で打ち合わせしたコーヒー代の領収書を経費精算で出したら、電話がかかってきたの。
「田端ァ! お前、あの領収書の件…」っていうから「えっ?」って。せいぜい2000円ぐらいの領収書だからなんてことないんだけど、反射的に「ヤベッ」てなるじゃん。
天野
ドキッとしちゃいますね。
田端さん
そしたら、「こんなやっすい店で打ち合わせしてたらアイデアもしょぼくなるで! せっこいな~お前!」って言うんだよ(笑)。
普通は「こんな領収書切れない」とか言われるんだろうけど、「もっと高い店行け」って逆サイドに来たからびっくりしちゃって、俺も直立で「すいません、今度からもっといい店に行きます!」とかいって(笑)。
ま、見てないように見えて、上司はその人なりのルールで部下のことを見てるってことだね。
「いい若手」についてのお話を聞きつつ、「部下をチェックする上司の視点」についてもお伺いすることができました。
要約してしまえば、「自分の言葉で語り、上司を気にせず動く」のが、R25世代にとっての正しい働き方。
今度から僕も、打ち合わせは高めの喫茶店でしようと思いました。って違うか。
〈取材・文=天野俊吉(@amanop)/撮影=葛上洋平(@s1greg0k0t1)〉
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