ビジネスパーソンインタビュー

「旦那観察日記」で新境地を開拓。はあちゅうに“日常をコンテンツ化する秘訣”を聞いた

第三者目線を持つにはどうすればいい?

「旦那観察日記」で新境地を開拓。はあちゅうに“日常をコンテンツ化する秘訣”を聞いた

新R25編集部

2018/11/29

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AV男優・しみけんさんとの夫婦生活をサルのイラストで綴った「旦那観察日記」が大好評のはあちゅうさん。「人生全部コンテンツ」をモットーに次々と新しいコンテンツを生み出しつづけている彼女ですが、

「自分の身の回りで起きた出来事なんて、発信して面白いのかな?」

「発信力をつけたいけれど、つぶやくことが思い浮かばない…」

などと思っている人も多いはず。

そんな発信上手になりたいR25世代のために、「日常をコンテンツ化する秘訣」について、はあちゅうさんに聞いてみました。

〈聞き手=あつたゆか〉

発信力をつけるために、刺激的な日常を送るべきですか?

ライター・あつた

はあちゅうさんの旦那観察日記、大人気ですね。

はあちゅうさん

ありがとうございます。(インスタの投稿を転載している)アメブロで最近、1日114万アクセスまでいったんですよ。

ライター・あつた

すごいですね…!

“個人の時代”と言われるようになり、はあちゅうさんのように発信力をつけたいと思っている人って多いと思うんです。でも私も含め、「何をつぶやいたらいいのかわからない」という人も多くて…

やっぱり発信力をつけるためには、はあちゅうさんのように面白い日常を送るべきなんでしょうか?

はあちゅうさん

日常に大きな差はないと思いますよ。

ライター・あつた

え…でもはあちゅうさんはインフルエンサーだし、やっぱり特別な経験をすることも多いんじゃないですか?

はあちゅうさん

お仕事としてたまに非日常な体験をすることはありますが、毎日は続けられません。

私は「日常」をコンテンツにしているので、どちらかというと、日々の生活の中で自分の好奇心に敏感になることの方が大事なんじゃないかと思います。

ライター・あつた

好奇心に敏感になる…たとえばどんなことでしょうか?

はあちゅうさん

なんでもいいんですよ。「気になっていたパン屋さんに行ってみた」とか「好きな映画を観に行った」とか。

自分の日常から大きく逸脱しない範囲でも、新しい発見はあるじゃないですか。

ライター・あつた

言われてみれば、はあちゅうさんの発信は「気になっていた本を読んでみた」「通販でこんなものを買ったら便利だった」というつぶやきも多いですね。

はあちゅうさん

そうなんです。だから日常に大きな差があるわけではないし、無理して日常を特別なものにする必要はないと思います。

映画や本の感想を投稿するときは、「サビ」を意識する

ライター・あつた

とはいえ、自分の感想を発信しても面白くないのでは…と思ってしまいます。

映画や本の感想をつぶやくコツってありますか?

はあちゅうさん

私は、サビにフォーカスしてツイートするようにしていますね。

ライター・あつた

サビ…?

はあちゅうさん

だいたいひとつのコンテンツから吸収できる学びって、2〜3個だと思うんですよね

映画を観ている間はずっと楽しいし、細部で面白いところや注目すべきところはたくさんあると思うんですけど、覚えているセリフって2〜3個じゃないですか。

ライター・あつた

そうですね。

はあちゅうさん

だから1ツイートの中でその映画をオススメするときは「どこが一番の共感ポイントだったんだろう?」「どこを切り取ったら、他の人も観に行こうと思うだろう?」と考えて、サビだけを抽出するようにしていますね。

ライター・あつた

たしかに、はあちゅうさんのツイートはサビがうまく抽出されているから気になりますね。

とはいえ、はあちゅうさんでもネタ切れしそうになることはあるんじゃないですか?

はあちゅうさん

日常で発信している範囲ではないですね。

ライター・あつた

さ、さすがです。

はあちゅうさん

「どうしてもつぶやくことがない…」という人は、日常が単調になっていて、インプットが足りない状態なんだと思います。

別に特別な体験をする必要はないですが、そういうときは人に会ったり本を読んだりして、脳を刺激するのがおすすめです。

第三者目線を持つには、とにかくたくさんアウトプットすることが大事

ライター・あつた

話題の「旦那観察日記」についてもお伺いさせてください。もともと夫婦生活を漫画化したいと思っていたんですか?

はあちゅうさん

いえ。もともとあのInstagramアカウントは、iPadでイラストを描くための練習用アカウントだったんです

ライター・あつた

え! そうなんですね。

はあちゅうさん

はあちゅうサロンのメンバーがiPadでイラストを描いていて、私も一緒に楽しみたいなと思ったことがきっかけです。

一番最初に投稿されたサルの絵。「#iPad」「#iPad芸人」のハッシュタグがついていることから、本当にiPadでのイラスト練習用だったことが伺える

はあちゅうさん

夫婦のサルの絵をアップしたら思った以上に「いいね!」されて、「もっと描いてください!」という反応があったんです。「じゃあ次は2コマにしてみようかな」と思って描いたら、「もっと読みたい!」と言ってもらえて。

そうしているうちに、漫画形式に落ち着きましたね。

ライター・あつた

なるほど。はじめる前に特に他の夫婦漫画を読んで参考にされたとかは…?

はあちゅうさん

特にないですね。

最初から型を決めるよりは、「これは反響がいいな」「こういうハッシュタグをつければいいんだな」と反応を見ながら投稿をアップデートしています。

ライター・あつた

ネタをアウトプットするときはどんなことを意識してるんですか?

はあちゅうさん

自分が「面白い」と思うことと、第三者が見て「面白い」と思うことが重なるネタを探すようにしていますね。

ライター・あつた

自分だけが「面白い」と思うだけじゃダメだと。

はあちゅうさん

そうですね。私は日常の中で自分が「面白い」と感じる出来事に遭遇したときは、「これはどうして面白いと感じるんだろう?」と客観的に分析するようにしています。

「彼のこの発言は、こういうふうに普通とズレているから面白いんだろうな」とか「AV男優の裏側が見れるから面白いんだな」とか。

日々のSNSの発信やネットサーフィンで“人がどんなことに共感するか”を研究して、磨いている感じです。旦那観察日記はそれを絵で表現してみた感じですね。

ライター・あつた

そういう第三者目線の感覚って、どうやったら身につくのでしょうか? 一朝一夕にはできなさそうですが…

はあちゅうさん

とにかくアウトプットです

アウトプットしつづけてると、自分が面白いと思うことと世の中が面白いと思うことのすり合わせができるようになっていくんです

そうやって第三者の目線が身につくと、「このツイートはだいたいこれくらいの反響があるだろうな」と、ある程度予想がつくようになります。

ライター・あつた

そもそもアウトプットしないと、どのネタが反響があるのかもわからないままですもんね…

はあちゅうさん

例えば友だちのグルメインスタグラマーさんは、もともと友だちと撮ったツーショット写真などもインスタに上げてたのですが、友だちとの写真を一切なくして食べ物だけを投稿するようになってから一気にフォロワーが増えたと言っていました。

自分が今やっていることを常に疑いながら、数をこなして、磨くといいと思います。

やはり毎日アウトプットしないと反応がわからないので、方向性を変えてみたり、ファンの人と丁寧にやりとりをしてニーズを探り出すのは大切だと思います。

すぐアウトプットできそうなものはメール、いつ使うかわからないものはノートでネタを管理

ライター・あつた

旦那観察日記は、毎日3投稿されていますよね。他のお仕事もあるのにかなりストイックだなと思うのですが、コンテンツを量産するコツがあれば教えてください。

はあちゅうさん

私は、ネタを思いついたら「Captio」というアプリを使って、未来の自分にメールをするようにしています。

ライター・あつた

普通のメモ帳ではダメなんでしょうか?

はあちゅうさん

私、メールの未読がある状態って気持ち悪くて。

普段使うメールの受信箱にネタが記載された未読のメールが順番に並んでいると、「消化しなきゃ!」という気持ちになってくるんですよね。

「肉食べるの妨害」などの気になるネタがチラッ

はあちゅうさん

「メールの未読数=ネタのストック数」になるので、最近は漫画を書いたらメールを消すのが日課になっていますね。

ライター・あつた

「投稿しないと気持ち悪い」という状況まで持っていっているのがすごい。

はあちゅうさん

本でも、自分の目の前に未読の本が積まれていたら「読まなきゃ!」とプレッシャーになりますよね。

それと同じで、「ネタを描いたらメールが既読になる」と思うと執筆のスピードが上がるんです。

ライター・あつた

自分の執筆スピードの上げ方を理解して、実践されているのがさすがです…

ちなみに、小説のネタなどもこうやって未来の自分にメールしているのでしょうか?

はあちゅうさん

小説のネタは、ノートに書くことが多いですね。

私、ノートは2冊持ち歩いていて「メモ用」「清書用」に分けているんですよ。

ライター・あつた

「清書用のノート」ってどういうことですか?

はあちゅうさん

まずメモ用のノートは、なんでも帳です。

気になったことや買おうと思ったもの、イラストなどとにかく思いついたら記入します。

メモ用のノート。サルのお尻の穴が書いてある…(笑)

はあちゅうさん

その中から「もしかしたら、これは将来的に小説やブログのネタになるかも」と思ったものを清書用のノートに書き写しています。

こちらが新しくしたばかりの清書用ノート

ライター・あつた

博報堂ケトルの嶋浩一郎さんも「一軍ノート」と「二軍ノート」を持っていると聞いたことがあります。

さきほどのメールとはどう使い分けをしているんですか?

はあちゅうさん

アウトプットする場所と形が決まっているものはメールですね。

旦那観察日記やnoteのネタなど、公開する場所が決まっていてすぐアウトプットできそうなものは未来の自分にメールを送ります。

ノートに書くのは、アウトプットするのがいつになるかわからないもの

「いつ使うかはわからないけど、自分の中にインストールしておきたいもの」は清書用のノートに書いています。

ライター・あつた

メールのほかに2冊のノートも使いこなしているんですね。

そうやって、まずは「日常をメモする場所を用意する」のが大切なのかもしれない…!

苦手な場所で発信する必要はないけど、先に諦めるのはもったいない

ライター・あつた

これは個人的な悩みなんですけど…プラットフォームごとに得意不得意ってありませんか?

例えば私だったら、Twitterでつぶやくのは好きだけど、Instagramやnoteはなんとなく苦手だなあと感じていたり。

はあちゅうさんはその辺をどう乗り越えているんしょうか?

はあちゅうさん

苦手なプラットフォームで無理やり発信する必要はないですよ。

ライター・あつた

そうなんですか?

はあちゅうさん

私の場合は「今日はいい写真が撮れたな」と思ったらInstagram、「今日はこんなこと考えたな」と思ったらTwitter。noteは更に膨らませたいことを発信したいときに使っています。

私は複数のプラットフォームを使い分けることが楽しくてやっているのですが、それを負担に感じる人は無理してやらなくてもいいと思います。

すべてのプラットフォームをまずは使ってみるのは大事です。ただ、そこからは自分に合うものだけを続けていけばいいのかなと思いますね。

ライター・あつた

よかった…! 少し安心しました。

はあちゅうさん

とはいえ、少しやっただけで「Instagramは苦手」「ブログはダメ」と諦めを先に持ってきちゃうのはもったいないのかなと思います。

たとえば私のInstagramのメインアカウントのフォロワーは5万人から伸び悩んでいたのですが、旦那観察日記を始めたらメインアカウントのフォロワー数も1日300人くらい伸びていったんですよ

ライター・あつた

意外なところから広がるんですね。

はあちゅうさん

そうなんです。

あと最近私はブログをやっていなくて、肩書きに「ブロガー」とあるのはちょっと詐欺だなと思っていたんですけど(笑)、旦那観察日記がアメブロに転載されることによって閲覧数が伸びて、アクセス数がいきなり大学時代の最高記録を超えたんですよね

「私、ブロガーに舞い戻った!」と思って(笑)

ライター・あつた

たしかに(笑)。

はあちゅうさん

なので、「このプラットフォームはダメだ」と思わずにまずはトライして試行錯誤を続けていると、意外なところから反響があったりします。

私のInstagramのメインアカウントも、日記にしてみたり、雑貨ばかり載せてみたりと、その時の気分で、方向性を何年もかけて変えているんです。

「もう私にはInstagram向いていないや」と諦めるんじゃなくて、切り口を変えて続けてみることも大切だと思いますね。

ライター・あつた

なんだか気持ちが軽くなったような気がします。

ちなみに、旦那観察日記がアメブロに転載されるようになってから、何か変化はありましたか?

はあちゅうさん

今まで私のことを知らなかった層の方が読んでくれていますね。

「はあちゅうさんとヒカキンさんを混同していました」「はあちゅうさんって男だと思っていました」なんて方もいるので、そういう方にも読んでもらえるのはうれしいですね。

ライター・あつた

そんな方がいるとは…インターネットの海は広いですね。

発信が上手くなる人は、「素直に吸収できる人」

ライター・あつた

はあちゅうさんの周りに、身の回りのことをコンテンツ化するのが上手いと思う方っていらっしゃいますか?

はあちゅうさん

林真理子さんですね。普通の人だと見過ごしてしまうようなことがエッセイの細部にあらわれていて、エピソードが豊富で、読みやすくて面白いんです。

大御所の作家さんの作品でも、すごく壮大なことを言っているのに心に届いてこないなって思うときがあって。そういうのってやっぱり身近なエピソードがないからなんですよね。

林さんは常に生のエピソードで上手く表現されるので、説教くさくなく読めて、かつ教訓があるから素敵だなあと思います。

ライター・あつた

身の回りからそういったエッセンスを拾える人とそうでない人の違いって、どこにあると思いますか?

はあちゅうさん

ボーッと生きているか、そうじゃないかですね。

ライター・あつた

うっ…バッサリいきますね。

はあちゅうさん

私の場合は小さい頃から作家になりたいと思っていたので、「いつか本を出版するときはこれを書きたい」と頭の中でシャッターを切るようにその風景を頭の中に焼き付けてたんですよ。

「発信したいと思っているか否か」で、日常の捉え方は大きく変わると思います。

ライター・あつた

今日はあちゅうさんの話を聞いていて、「発信しよう」という心構えこそが大切なんだと感じました。

最後に聞きたいのですが、発信が上手くなる人にはどんな特徴がありますか?

はあちゅうさん

素直に吸収できる人は伸びますね。

ライター・あつた

素直さ、ですか。

はあちゅうさん

たとえばはあちゅうサロンでも、一緒にイベントに参加して同じようなツイートをしているのに、拡散される人とそうでない人がいて。

発信が得意になっていく人は反響のあるツイートから学んで、自分の足りないところを研究しているんですよね。自分なりのエピソードを付け加えたりだとか、イラスト付きでわかりやすく要約したりだとか。

同じ情報を得ていても、自己流で凝り固まっちゃったり、「ふーん」て他人事のように素通りしちゃう人は全然伸びていかないですね。

ライター・あつた

考えてみると、自分の周りに発信上手な人の見本はたくさんありますもんね。

素直に発信をがんばろうと思えました。ありがとうございました!

今回はあちゅうさんから学んだのは、とにかく「アウトプットすることの大切さ」。

日常を面白くコンテンツ化するための近道などなくて、読者やフォロワーの反応を見ながら愚直に試行錯誤を繰り返していった結果が、今の彼女を作っているのかなと思いました。

来年2月に書籍化もされるという旦那観察日記。新たな一面を見せたはあちゅうさんのさらなる進化に目が離せませんね!

〈取材・執筆=あつたゆか(@yuka_atsuta)/撮影・編集=渡辺将基(@mw19830720)〉

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