ビジネスパーソンインタビュー
中肉中背、メガネ、小日向文世似の57歳に救われた
ハイスペ男性との結婚を焦っていた元アイドルが、おっさんと同居して見つけた“家族観”
新R25編集部
現在、フリーライターとして活躍する大木亜希子さん。
高校生のころから芸能界に身を置いていた彼女は、その後、AKB48グループのアイドル「SDN48」に所属し、紅白歌合戦出場も果たします。
【大木亜希子(おおき・あきこ)】1989年生まれ。2005年、双子の姉・奈津子とともに芸能事務所・研音にスカウトされ、芸能活動をスタート。2010年、アイドルグループ「SDN48」のメンバーとして活動を開始。2012年に卒業。2015年から、Webメディア『しらべぇ』編集部に入社。2018年から、フリーライターとして活動している
しかし驚くべきは大木さん、昨年から「他人のおっさん」との同居生活を始め、そのおっさんに「ちょっぴり人生を救われた」と語るのです。おっさんの名は「ササポン」。57歳。
いろいろと疑問が尽きないので、ご本人に話を聞きました…!
〈聞き手:天野俊吉(新R25編集部)〉
中肉中背、メガネ、小日向文世似。他人のおっさんとの共同生活
大木さん
今日はよろしくお願いいたします。大木と申します。
天野
よろしくお願いします! 聞きたいことがいろいろあるのですが…
まず、同居している男性ってどんな人なんでしょうか? 見た目とか。
大木さん
見た目は「中肉中背・メガネ」ですね。「世の中の57歳男性を平均化したらこうなる」みたいな…
あ、小日向文世さんにちょっと似てます。
天野
いい人そう。
大木さん
もともと一軒家を持っていて、いろいろな人と家をシェアして生活していたらしいんですよ。
私の姉も以前シェアしていて、姉から紹介されて今の生活が始まったんです。
私は6畳の部屋に住んでいて、お互いそれぞれ仕事をして別々の生活をしながら、たまに一緒にご飯を食べたり、テレビを観たりしてます。
大木さん
私、2年前ぐらいから、仕事や恋愛や…いろんなことに疲弊してしまったんですよ。
電車に乗ろうとしても、ホームに立ったまま一歩も動けない。心療内科に行っても病名がわからない。
そんな私を見かねて、姉が「この人と住んだら」と紹介してくれたのが、同居している男性・ササポンなんです。
天野
めちゃくちゃきかれる質問だと思うんですが、恋愛感情が芽生えたり、異性の関係になったりすることは…
大木さん
絶対ないですね。
失礼いたしました
「昼は地下アイドル、夜は業界の飲み会」だったモラトリアム時代
天野
そこに至るまでに、どういう経緯があったんでしょうか?
大木さん
そうですねえ、ちょっと、私が芸能界に入ったところからかんたんに説明させてください。
まず、中3から芸能事務所に入って、芸能コースのある学校に行ったんです。最初はうれしかったけど、なかなか大変で。
クラスメイトは放課後になったらみんなライバル。毎日体重測定があったから、授業が終わったら区民プールに行って泳いでました。
天野
毎日ですか…!
大木さん
バーターで各局の連ドラにブチこんでいただいたけど、それが一周しちゃうと「さあどうすんの?」。演技の技術も何もないわけなので…
いつでも普通の女子に戻れるように、と思って、奨学金借りて短大に入りました。
天野
それで2012年にアイドルになって、「一斉卒業(グループ解散)」になったという流れなんですね。
その時点でまだ22歳ですから、かなり激動ですよね。
大木さん
そこからはモラトリアムで、昼は地下アイドル、夜は食事のお誘いとか業界の飲み会に行くという生活。
バイトもしてたんですよ。「顔バレしないように」と思って、顔を隠せるホテルのベッドメイキングのバイトを。
アイドル時代の自分のファンが泊まっているところに遭遇し、「私は何をやってるんだろう?」と思ったこともあったとか
大木さん
アイドル時代の仲間がテレビで活躍してたり、結婚してたりして「自分はどうなるの?」って悩みました。
それで、ブログに書いていた文章を褒められることがあったので、“書くお仕事”ができないかなと思って、Webメディアの記者に応募したんですね。
面接では「自分の人脈を生かしてインタビューができます」とかそれらしいことを言ったと思いますよ(笑)。
25歳で会社員に。仕事は楽しかったけど、「小休止」できなかった
大木さん
なんとか採用してもらって、優秀な人たちに混じって、25歳から記者として働き始めたんです。それがすごく楽しかったんですよ。
今まで名刺交換すらできなかったのに、できることがどんどん増える感覚で。
「これできる?」って言われると、何も考えずに「できます!」って言って、後から「ヤベエできない…」って焦ってましたね(笑)。翌日までなんとか調べたり。
天野
わかるなあ…仕事を覚えるのが大変だけど楽しい段階ですよね。
大木さん
ただ、そこまではよかったんですけど、やれば褒めていただける環境だったからこそ、自分のキャパシティを超えてしまったんですね。
最近、『小休止のすすめ』という本を読んだんですけど、そのなかでタレントのヒロミさんが「自分にも他人にも200%を求めて疲弊して、結果10年間芸能界を休んだ」っていう話があって、まさにその感じでしたね。
私は小休止できず、潰れてしまったんです。
「ハイスペ男性と対等に恋愛できるはず」自分を取りつくろって、本音が言えなくなった
天野
大木さんのnoteを読んでると、「男性の前で自分を取りつくろっていた」という記述がよく出てきますよね。そういう異性関係のストレスもあったんでしょうか?
大木さん
そうですね。それまでずっと“顔で勝負する社会”で生きてきたというコンプレックスがあって。もちろん、本当は内面も非常に大事な職業なんですけど。
会社員になったときは、「元アイドルで、さらに今は記者として頑張ってる私。ようやくハイスペ男子と対等に恋愛できる!」って思ったんですよ。
ハイスペ男子に認めてもらって、結婚して養ってもらう…というアラサー女子が夢見るゴールを目指せると。
「ゴール! いっちょあがりだ!って」
大木さん
一方で、「私は、業界の飲み会にいたような、お金持ちの男性にバッグを買ってもらう女子とは違う」とも思ってたんです。
東京でカッコいい仕事をして“自分の足で立ってる”という優越感に浸りたかったんですね。
天野
お金持ちの男性に選ばれたいけど、自分だけの力でも生きていたいという…
大木さん
すっごい矛盾ですよね!
「自分のグレードを上げたらすごい人とも対等に話せる」と思ってたのに、「この人に選んでもらわなきゃ」と思ったら何も本音が言えなくなるっていう。
ガチガチに気を張ったまま、「他人のおっさん」との同居をスタート
大木さん
それで、私は疲弊してしまったんです。朝起きて、ベッドから起き上がることもできない状態でした。
見かねた姉がササポンを紹介してくれたのが、2018年の春です。
天野
彼と同居することで、どのように救われたんでしょうか?
大木さん
私はガチガチに気を張っていて、「結婚相手を見つけてすぐ出ていってやる」と思ってました。でも彼は本当に自然体。基本放っておいてくれるんですよ。
何を話すでもなく、テレビで『相棒』を観てたり、1人でピアノを弾いたり。見た目は普通のおじさんですけど、クラシック音楽を愛するような内面の美しさがあるんですよ。
そういう態度に接していて、久々に「素の自分」が出せたんですね。
天野
なるほど…
大木さん
あと、仕事でちょっと悩んだときにアドバイスをくれるんです。
「このプレゼン資料、フォントが小さい」とかちょっとしたことなんですけど、これって上司や親に言われたらうっとおしいし、友だちに言われてもピンとこないと思うんですよ。
でも、ササポンに言われると素直に聞けるんです。
天野
それは、アドバイスが的確だから?
大木さん
というより、「他人として、バランスよく一線を引いてくれるから」だと思います。
これ、どの人間関係にも当てはまることだと思うんですよね。「言ってほしくないことは言わない」とか。
そういう快適な距離感を、ササポンが教えてくれてる気がするんです。
天野
素朴に疑問なんですが、ササポンはなぜそのような「他人との共同生活」を続けているんでしょうか?
やっぱり孤独感があって、誰かと一緒に住みたい…という感じですか?
大木さん
いえ、逆なんです。「自分はすごく孤独に強い」と言っていて、1人でも楽しいし、趣味もあると。
「1人で立っていられる人だからこそ、誰と生活しても大丈夫」なんだと思うんです。
自分のなかにさみしさがあふれてないからこそ、バランスが取れるんですね。
仕事も恋愛も、執着心を捨てられるように。忘れ上手になれた
天野
ササポンとの同居によって、恋愛観も変わりました?
大木さん
変わりましたね。
今までは「自分のことだけを見つめてほしい」「マメに連絡してほしい」っていうことばかり考えていたのが、相手に執着しないようになりました。
天野
なぜ、執着心を捨てられるように?
大木さん
同居によって“魔法”が起きたわけじゃない。でも、ササポンにちょっと「こんなことがあったよ」って言えるだけで、苦しい気持ちを軽くできる。“忘れ上手”になったと思うんです。
今は自分を取りつくろうことはやめて「自分はこんな人間です。よかったら連絡してください」ぐらいの感覚ですね。
大木さん
仕事も同じです。それまでは「自分がなんとかしなきゃ」って思って焦っていた。
今はフリーランスですが、ようやく「できないこともある」って言えるようになったんです。
天野
「結婚を焦っていた」という話もありましたが、今はどうですか?
大木さん
うーん、正直、「焦る気持ちがゼロになった」ってことはないですね。
でも、そういう強迫観念を感じてもいいと思えるようになった。
さみしさとか焦りがなくなったら新しい人間関係をつくろうと思わないし、このモヤモヤはあっていいんだっていう境地なのかな。境地っていうとエラそうですけど(笑)。
「家族だからこうすべき」という“べき論”を捨てた家族のかたち
大木さん
というわけで、現在時点で私とササポンは、血のつながりはないけど「家族」になりつつある…という感じです。
天野
なるほど…
最初は「他人のおっさんと同居」って正直理解できなかったんですが、ひとつの家族のかたちなんですね。
大木さん
家族の問題で苦しんでいる人っていっぱいいると思うんですけど、多くが「家族だからこうしなければ」「こうしてもらわなければ」みたいな「べき論」が原因だと思うんですよね。
それに対しては「“べき”にしばられない家族のかたちがあったっていいじゃん」と言いたいです。
ササポンのことを「家族」ということもありますけど、べつに言い方は「一緒に住んでる人」でもいい。そういうユルさがあってもいいんじゃないかな。
天野
「家族愛」っていう言葉がありますが、大木さんとササポンの間には、そういうものが生まれているんですか?
大木さん
うーん、「愛」とかいうとなにか違うんですよね(笑)。
そういう言葉じゃなくて、あえていえば「淡々」みたいな。彼が淡々と見守ってくれるから、私も淡々と頑張れる。そういう距離感ですね。
他人のおっさんとの共同生活を送る元アイドル。
字面だけ見れば不思議でいっぱいでしたが、お話を聞いていると、誰もが持つ葛藤を解決するヒントを教えられているようでした。
「こういう生活を発信するようになってから、SNSで『じつは私も、他人と住んでるんです』ってメッセージが来るんです」という大木さん。
すでに我々の知らないところで、「他人との同居」に救われている人たちが増えているのか…?
2019年は今一度、「家族」のかたちをとらえ直すべきタイミングなのかもしれません。
〈取材・文=天野俊吉(@amanop)/撮影=中山駿(@nk_shun)〉
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