ビジネスパーソンインタビュー
そんなに成長しつづけて、正直疲れないの…?
ノリと「たまたま」が、意外と大事。超エリート起業家に聞く“爆速で成長する方法”
新R25編集部
あなたは、仕事を通してどれぐらい「成長」できていますか?
成長と言われても、日々の仕事でいっぱいいっぱいだししんどそうだし、そんなに上ばかり目指せない…と考えるR25世代のビジネスマンは多いようです。
でも、なかにはまったく立ち止まることなく、成長しっぱなしに見える人もいます。今回紹介する人も、そんな1人。まずは、経歴をご覧ください。
2014年3月
東京大学卒業
2014年4月
外資系コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社
2016年
同社マネジャーに就任(同社史上最年少)
2017年10月
入社3年半でマッキンゼーを退社
2017年末
自社「キャディ株式会社」を設立し、創業1年で10.9億円の資金調達を完了
読んでるだけで成長痛に身悶えしそうな、この超高速キャリアアップの主が、今回のインタビュイーである加藤勇志郎さん。
今回は加藤さんに、「なんでそんなに圧倒的に成長できるの?」という疑問を胸に、成長のためのさまざまなコツを教えてもらいました。
〈聞き手:ライター・浅田よわ美〉
【加藤勇志郎(かとう・ゆうしろう)】キャディ株式会社・代表取締役社長。マッキンゼー・アンド・カンパニーを入社3年半で退社後、アップル米国本社のシニアエンジニアとして開発をリードしていた小橋昭文さんとキャディ株式会社を設立。製造業の受発注プラットフォ―ム「CADDi」というサービスを提供し、テクノロジーで産業を変えることを目指す
Q.「自分の天職がわからず、仕事に打ち込めない…」
ライター・浅田
そもそもなぜマッキンゼーに入社しようと思ったんですか?
加藤さん
学生時代から「産業を変えるようなビジネスをしたい」と思っていました。
産業には無数の課題があるなかで、社会課題を一つでも多く解決し、社会的なインパクトを出したいという思いが強かったからです。
マッキンゼーの仕事は、各産業を代表する企業の経営者課題の解決を図ることなので、入社すれば、社会課題を知ることができる。しかもそれらをグローバル目線で学べると考えました。
筆者は学生時代何をしていたっけ…内省はあとにしよう
ライター・浅田
読者の大半は、加藤さんみたいに「やりたいこと」が明確じゃないかもしれません。どうしたらそんなふうに「自分の天職」を見つけられるんでしょうか?
加藤さん
いや、やりたいことは分からないのが普通です。
僕自身、学生時代は、まわりの人たちと比べて「明確な軸がない」というコンプレックスが強くありました。
ライター・浅田
え、そうなんですか?
加藤さん
学生時代の僕の軸は「なるべく大きな社会課題を解決したい」。これ、すごくフワッとしていると思いませんか(笑)?
今でこそ、製造業に特化したクリアな課題設定がありますが、同期や友だちは当時から「総理大臣になりたい」「アフリカの特定地域の、このような原因で起こる貧困を解決したい」と明確な軸を持っていました。でもそれは、本当にすごいことだと思います。
起業家って、原体験を重要視されがちなんですが、僕はそんな強い原体験がなくても、何か突き詰めていくなかで課題認識や興味を持っていけばいいと思っています。
ライター・浅田
すごい原体験、ふつうの人にはそんなにないですもんね…
加藤さん
じつは僕も、もともと一番関心を持っていたのは音楽でした。
ライター・浅田
そうなんですか!? 今のお仕事からすると想像もつかないんですが…!
加藤さん
まあそう見えるかもしれませんけど(笑)。
当時は目の前の人が喜んでくれるのがうれしくて音楽活動に取り組んでいました。でもそのあと、大学時代の事業開発の経験を通して、より多くの人に喜んでもらいたいと思うようになったんです。
そのような想いを究極まで最大化したものが、「社会課題の解決」なんじゃないかと。
ライター・浅田
なるほど。ただそもそも、何を突き詰めるべきか?について悩んでいる人が多いと思うのですが…?
加藤さん
うーん、そういう人にアドバイスとして言うなら、「悩まなくていい。なんでもいい」と言いたいです。
釣りが好きなら釣りについて、寝ることが好きなら睡眠について深掘ってみればいい。どうしても浮かばなければ、「自分はこれに興味がある」と1つ枠組みを設定すればいいでしょう。
決めたあとに「本当にそのことに興味があるんだ」と自分に思い込ませられるかが重要なんだと思います。
ライター・浅田
思い込ませる…?
加藤さん
はい。枠組みを決めたらまずは徹底的にそれについて調べてみる。
たいていのモノは、知れば知るほどそこに潜む課題が明確になってくるので、どんどん面白さが増して、自然と興味を持てるようになっていきますよ。
加藤さん
そうやって前向きにトライを積み重ねるうちに、何かをうまく「興味がある」と思い込めたなら、あとは、自分の枠に入ってきたものは何でも勝手に面白いと思えるようになりますよ。
A.好きなことを深堀しろ! 何も浮かばない人も「おれはこれだ」と思い込んで深堀りすれば、面白さはあとからついてくる。
Q.組織で評価されるようになるには、どうすればいい?
ライター・浅田
その後加藤さんは、マッキンゼーへ入社されて、最年少マネジャーになるという実績を残されましたよね。そんなふうに組織で評価されるためには、どうすればよいのでしょう。
加藤さん
僕が優秀だと感じる人は、“たまたま”をちゃんとモノにしている人が多いです。
色んな人が色んな課題を抱えながらボヤいているわけですが、それを“たまたま”耳にしたときに、ボヤキに隠された機会をちゃんとキャッチすることが大事だと思います。
ライター・浅田
キャッチするために意識されていることはありますか?
加藤さん
キャッチするには、受け取るアンテナが必要です。
たとえば僕の場合、「社会課題として面白いかどうか?」というアンテナを立てていました。そうすると、少しでも関連している情報は「これも面白い!」と、どんどんひっかかってくるようになったんです。
ライター・浅田
アンテナを生かして、“たまたま”をモノにしたエピソードはありますか?
加藤さん
1年目のときに訪問したメーカーのお客さんが「IoTって最近流行りはじめているよね」と話されたことがありました。
※IoTとは
Internet of Thingsの頭文字を取った単語。日本では一般的に「モノのインターネット」と言われる
加藤さん
「IoTという新しいテクノロジーと、製造業という古い業界をかけ算することで何か面白いことができないかな」というお話で。
当時まだ日本でIoTのプロジェクトはなかったんですが、僕も前々からIoTには興味がありました。
ライター・浅田
アンテナに引っかかった瞬間ですね。
加藤さん
そのとき僕はたまたま社内でも超優秀でノリがいい役員のプロジェクトにメンバーとして入っていたんですが、その役員が「勇志郎、やればいいじゃん!」「一緒にやるか!!」と声をかけてくれたんです。
たまたまそこにいた加藤さん
加藤さん
そんなささいなきっかけから、役員と二人三脚で日本に知見がないIoTのプロジェクトの情報を海外から集めて、提案を繰り返す日々が始まりました。
ライター・浅田
役員はなぜ、新人の加藤さんにそんな声がけをされたのでしょうか?
加藤さん
完全にノリじゃないですかね。
ただ、こういういわば「ノリ」に本気で対応していると、“たまたま”のチャンスがめぐってきやすい。いわゆる「昇進」のような、組織で抜擢されるタイミングも大抵はそうです。
ライター・浅田
おお!
加藤さん
自分が抜擢していただいたのも、ほぼ「ノリ」と「たまたま」。
2年目になったあるとき、急に同じ役員が言ったんです。「勇志郎、もうお前マネージャーやれ! グローバルで!」と。
マッキンゼーにはアナリスト、アソシエイト、マネージャーという順に役職が上がっていくんですが、そのとき、僕はまだ一番下のアナリストだったんですよ…
ライター・浅田
急に2個上の役職は重荷すぎますよね。さすがに断られたんですか?
加藤さん
「じゃあやります!」と答えました。
なんと。ノリがいい
加藤さん
これが結果的に昇進においても成長の点でも圧倒的に自分が高められたプロジェクトのスタートになるんですが、このプロジェクトがなんと10名くらいのグローバルチームで動く重要なものだったんです。通常マッキンゼーの提案のチーム編成は3~4名です。
ライター・浅田
グローバル。英語は堪能だったんですか?
加藤さん
全然。むしろ苦手です。
ただ何事も物事を知るには表面をなぞるのではなく、足をつっこまないとダメだと思っているので。
ライター・浅田
結構破天荒な一面が見えてきましたね。
加藤さん
そのプロジェクトリーダーの1人は、スタンフォード大学時代に、ある大統領当選時のゴーストライターをやっていた、ロジカル思考が具現化したような人でした。
さらにもう一人のリーダーには、もともとアメリカ海軍の特殊部隊のマネージャーをやっていた人もいて…湾岸戦争のときにドラム缶の中で2日間を過ごしながら、部下を全員殺されたりという強烈な経歴を持つ人です。
強烈すぎる…
加藤さん
その2人がいるプロジェクトにジョインすることイコール死です。
絶対に超ハードな案件になるとわかっているからこそ、誰もやりたくない。過去彼らと働くなかで、心が折れて辞めてしまった人もいます。
ライター・浅田
今聞いているだけで、私の心が折れそうです…
加藤さん
それから1つ解くのに3カ月はかかるようなクライアントの課題を「15個ある。2週間で解け」と言われたり、お客さんへのプレゼンに向けて入念に準備していった資料を、開始30分前に一気に書き直されたり。
もちろんプレゼン後は鬼詰めです。
その時期は毎週飛行機に乗るたびに「この飛行機が落ちたら楽になれるのにな」とか思っていました…
ライター・浅田
聞いてるだけでつらい。
加藤さん
逆にいえば、そのような入社2年目では普通ありえない、鍛えてもらう機会に恵まれたわけです。
「2年目だからこれぐらいだろう」というキャップを自ら勝手にかぶせることなく、むしろ強制的に、2つ3つ上のポジションで働く基本姿勢を叩き込まれました。
最終的には、そのプロジェクトが安定したあと、プロジェクトリーダーが「勇志郎をマネージャーにしろ!」と日本オフィスに直談判していたらしいです。
ライター・浅田
すごくいい話…! サクセスストーリーだ。
加藤さん
1年目で新規提案する機会に恵まれたのはたまたまでしたが、その“たまたま”をキャッチできたことが、マネジャーになる大きなきっかけになったと思います。
ぜひ何かひとつ自分のアンテナを立ててみてください。
A.アンテナを立てて「たまたま」をキャッチ! やりはじめたら本気でのめり込め
Q.「フツーより速く成長するには…?」
加藤さん
成長のために大切なことが、もうひとつあります。
ライター・浅田
なんですか?
加藤さん
期限を決めることです。たとえば僕はマッキンゼーを3年で退社することは、最初から決めていました。
ライター・浅田
最初から! そうなんですか!?
加藤さん
期限を決めることで焦燥感を生むことが目的でした。
「3年後までには社会課題を見つけて起業するんだ、普通にやっていたら間に合わない!」という想いから立てたアンテナが自然と長く伸びて、情報収集力も行動力もどんどんアップされていったように思います。
ライター・浅田
なるほど。じゃあ一般的によく言う、3年目が転職のタイミングというのはあながち間違いじゃないんですね…
加藤さん
あ、そこは誤解があると思います。
ライター・浅田
え?
加藤さん
矛盾することを言いますが、僕はめちゃくちゃ重要なことのひとつに“仁義”があると考えています。
だから仁義に反する「3年経ったら辞めます」みたいな態度は違うと思うんです。個人のために会社があるわけではないですから。
ライター・浅田
はい。
加藤さん
僕が決めていたのは「3年で辞める」ではなく「3年でインパクトを出して、辞めても誰もが称賛してくれる人になる」ということ。
なんとなく3年経ったから辞めるのと、そういう姿勢で3年を過ごすと誓うのとでは、全然意味が違いますよね。
その約束を守るためにも「3年で最大のインパクトを出す」という目標は、自分自身に言い聞かせつづけていました。そうやって自分を追い込んだら、結果を出さずにはいられなくなりますから。
A.期限を設けて自分を追い込みつつ、“仁義”を持って働け!
そんなに急成長しつづけて、正直疲れないんですか?
ライター・浅田
最後に聞きますが、そんなに急成長を続けて、疲れませんか? 正直休みたいとか辞めたいとか思ったことはありませんか?
加藤さん
思わないですね。頑張っているわけじゃなくて、仕事がめちゃくちゃ面白いと思ってやってますから。
むしろ前職でも現職でも、会議で「面白いな~~!」と思う課題が出ているのに誰も手を挙げないときには思います。なぜやらないのか?と。
ライター・浅田
なぜやらないのか…!
加藤さん
僕は課題を発見してそれを深堀りしていくのがすごい好きなので、土日もそれをやっているだけです。
自分が思うことを、他人の意見なんか気にせずに深堀りすればいいんです。
ライター・浅田
自分がやりたいと思うことを新しくはじめることで「意識高い」って揶揄されたり、友だちに「なんか変わったね」と思われたりしても、そんなことは気にしなくていいと。
加藤さん
「意識高い」という揶揄は、まわりを見ずに“自分だけを見ている”ような人が言われてしまうんだと思います。
マザー・テレサのようにまわりのために行動している人がどんなことを言っても、「意識高いなw」なんてバカにされないですよね。
加藤さん
重要なのは「本当にそう思ってるかどうか」と「誰のためにそれを思ってるか」なんです。
何をするにも、自分の承認欲求をモチベーションにしているなら駄目でしょう。
ベクトルが本当に他人や社会に向いていたら、言葉だけでなく、日々の行動にもその想いがあらわれますから、否定的なことを言う人なんて身近にはいなくなります。
僕はキャディ株式会社を設立して1年になりますが、3年後には、加工品をアジアでナンバーワンに扱える会社にしたいです。その先には、製造業のサプライチェーン全体を支えるインフラを作りたい。本気でそう思っていますし、それで製造業という大きな市場が持つ課題が解決されたなら、日本が、世界が変わると信じているんです。
スーパーエリートな加藤さんは、会ってみると、「こんな人が会社の上司だったらいいのにな」と思える人でした。
もし今自分の働き方、進む方向などに悩みながらこの記事を読んだ人は、加藤さんの教えに沿って、まずはアンテナを高く張って、“たまたま”を生かす意識を持って仕事に取り組んでみてはいかがでしょうか。
それではまたー!
〈取材・文=浅田よわ美(@asadayowami)/編集=天野俊吉(@amanop)〉
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