ビジネスパーソンインタビュー
「大女優になって、事務所を辞めてやる!!!」
オーディションに落ちつづけた芳根京子。躍進の理由は「年イチの大喧嘩」と“3人4脚体制”
新R25編集部
2013年のデビューからわずか3年で朝ドラヒロインに抜擢され、2019年には日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞するなど、若くして大躍進をつづける女優、芳根京子さん。
誰だって芳根さんのようにハイペースに活躍したいものですが、なかなかそううまくもいかないもの。そこで今回は芳根さんに、逆境を乗り越えた経験や、最短距離で結果を出す努力論についてお聞きしようとしたのですが…。
これだけたくさんの成果を出しているにもかかわらず、芳根さんから「自分の力で乗り越えてきた」というようなお話は、一言も出てこなかったのです。
ほとんど自分の話抜きで語られる彼女の「躍進の理由」、ぜひご一読ください。
〈聞き手=ライター・サノトモキ〉
【芳根京子(よしね・きょうこ)】1997年生まれ。東京都出身。高校1年生のときにスカウトされ、芸能界入り。2013年にTVドラマ『ラスト♡シンデレラ』で女優デビューを果たし、翌2014年のNHK連続テレビ小説『花子とアン』では仲間由紀恵の娘役を演じた。絶賛公開中の映画『居眠り磐音』では、主人公・磐音の許婚を演じている
サノ
デビューから3年後には朝ドラ主演、2019年には日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞…これだけハイペースに活躍されていると、相当逆境もあったんじゃないかなと思うのですが…
芳根さんは、これまで逆境に置かれたときどう乗り越えてきたんですか?
芳根さん
あの…私、逆境あんまりないんです!
はい、ありませんでした! 最後までお読みいただき、ありがとうございました!(完)
サノ
いやいや、ちょっと待ってください!
さすがに何かありますよね!?
芳根さん
ごめんなさい(笑)。
ちゃんと言うと、私はそもそも自分が「苦しい」と思ってしまう状況を作らないように、先手を打つようにしているんです。
気持ちが落ちそうなときほど、ポジティブな母と話す
サノ
先手というと…具体的には何をするんでしょうか?
芳根さん
とにかく母と話します。
母はものすごくポジティブな人なので、相談すれば絶対にポジティブな言葉を返してくれるとわかっているんです。
芳根さん
たとえば、オーディションにまったく受からない時期とかはどうしても「苦しいなあ」と思ってしまったんですけど、母と話すことで「この作品とはご縁がなかったんだな」と素早く気持ちを切り替えさせてもらったり。
気持ちが落ちるとどうしても状況も悪化してしまうと思うので、自分の気持ちが落ちそうなときほど早めに母と話して、そういう循環を作らないようにしています。
サノ
すごい…22歳にして自分の心の守り方をしっかり把握している…
では今は、お母さまと2人3脚で逆境に立ち向かっていると。
芳根さん
あっいえ、私が頑張れているのはマネージャーさんがいてこそなので、3人4脚ですね!
年に一度は大ゲンカ!? 芳根さんを支える「マネージャー」の存在
サノ
マネージャーさん…どんな方なんですか?
芳根さん
デビューから6年以上お世話になっているマネージャーさんなんですけど、じつは今でも1年に1回は喧嘩をしてます(笑)。
サノ
年に1回!?
「今年はいつかなあってちょっとビクビクしてるんですけど…」
サノ
どういう内容で喧嘩になっちゃうんでしょう?
芳根さん
1年目は、「やる気あるのか!」から始まりました。
女優業を始めたばかりのころ、けっこう順調にオーディションに受かって調子に乗っていたら、あるときからパッタリ受からなくなってしまって。
サノ
ほうほう。
芳根さん
しばらくは放置されていたんですけど、デビューして1年くらい経ったタイミングでついに「今お前が辞めても、事務所にとって損も得もない!」と叱られてしまったんです。
そこで私もカチンときて、「だったら辞められたら困るくらい大きい女優になって、辞めてやる!!!」と泣きながら言い返しちゃって…
想像を軽くぶち抜いていく大ゲンカでした
サノ
めちゃくちゃ激しい…「もうこの人とはイヤだ!」とはならなかったんですか?
芳根さん
それはまったくなかったですね。
というのも、私はもし5回同じ喧嘩をしてるとしたら後半4回は意味がないと思っちゃうんですけど、マネージャーさんとの喧嘩は、内容がどんどん成長していると感じるんです。
芳根さん
今では「こういう作品に挑戦してみたい」とか、「こういう女優になりたいなら、今はこっちに力を入れるべきだ」とか、そういう本音をぶつけあえる唯一の存在になっているので、「マネージャーさん変わっちゃったらどうしよう」って思っちゃうくらい、信頼しています。
あっ! 大丈夫かな…洗脳とか思われちゃうかな…!?
ごめんなさい、めちゃくちゃ笑ってしまいました
マネージャーを信頼できたのは、「喧嘩が必ず完結する」から
サノ
でも、そうやってぶつかり合うときって、どうしても頑固になっちゃったりしませんか?
相手の言ってることが正しいとわかっていても、つい意見を曲げられなかったり…
芳根さん
私もすごく頑固です! だから今でも喧嘩するんだと思う。
でも、お互いに納得するまで意見を全部言って、喧嘩を必ずきちんと完結させるようにしてるんです。
お互い腑に落ちないと終われないタイプなので、絶対になあなあにしたり、ふわっとは終わらせたりはしたくなくて。
芳根さん
そうやって納得できるまでぶつかる時間をくださることが、私にとっては本当にありがたいんです。
そこで自分の主張ばっかり押しつけてくる人だったり、逆に私の意見を100%尊重するという人だったら、きっと今の私はいないと思うんですよね。
今までやらせてもらった作品のなかにも、マネージャーさんがいなかったら出演していなかっただろうなと思う作品もありますし。
サノ
どういうことですか?
芳根さん
出演のお話をいただいたとき、私が「今の自分じゃできない…」とか弱音を吐いたりすると、マネージャーさんが「できないとかじゃない!」って強く引っ張ってくださるんです。
マネージャーさんがいたからこそ出演できた作品がたくさんあるし、結果その作品が自分の未来につながることがすごく多いので、本当に信頼しています。
芳根さん
でもそれも、マネージャーさんがこの作品をやろうと思ったということは、「今の芳根なら演じられる」と少なからず期待してくれたということだと思うので、やっぱりうれしかったですね。
私も普段から全部をぶつけているし、今の私がどこまでできるかも、これから私がどうなっていきたいのかも一番知ってもらえてる人だと思えているからこそ、安心してお任せできるのかな。
サノ
前向きな言葉で支えてくれるお母さんと、闘争心に火をつけてくれるマネージャー…
芳根さん流3人4脚、両脇の2人の役割がまったく違うんですね。
芳根さん
たしかに全然違うかも…
なんだろう…前から腕をぐいっと引っ張って出口まで連れていってくれるのがマネージャーさん、それでも私がウジウジしてたら後ろから「ドーン!」と背中を押して、外の世界に飛び出させてくれるのが母、みたいなイメージです!(笑)
説明がものすごくお上手です
芳根さん
マネージャーさんの「何が何でも連れていく」くらいの力強さも、苦しくなりそうなとき私の意志を誰より尊重して、一歩踏み出す勇気をくれる母の存在も…どちらが欠けても私はバランスを崩してしまうんだろうなと思います。
「相手の心の行先は決めたくない」
サノ
お聞きしていてふと思ったんですけど、今後芳根さんが現場で後輩にアドバイスをするようなときは、お母さまとマネージャーさん、どっちのタイプでコミュニケーションをとりそうですか?
芳根さん
どうだろう…マネージャーさんのような「何が何でも連れていく」みたいな引っ張り方っていうのは、身近な人だからこそできることだと思うんですよ。
だから私は母のように、一歩踏み出す勇気を与えられる人になれたらいいなと思います。
芳根さん
誰かの相談に乗るときも、それこそお芝居をするときも同じなんですけど、私は「相手の心をこうやって動かそう」って決めつけたくないんです。
アドバイスや作品を受け取ったとき相手が何を感じるかは、人それぞれだから。
こちらで行先を決めるのではなく、何か一歩でも今悩んでいる場所から前に踏み出そうという気持ちが本人の内側に湧くような、そんな助言や表現ができたらうれしいな、といつも思っています。
サノ
(相手の心の行き先、つい勝手に決めちゃってるかも…)
芳根さん
だからこそ、作品も偏りたくないんです。今回の「居眠り磐音」のような本格的な時代劇もあれば、コメディもやりたい。もっといろんな役に染み込んで、いろんな表情を見せられる役者になっていきたいなって思います。
サノ
今回演じた“小林奈緒”も、まさに場面ごとにガラッと表情の変わる役どころでしたよね。
演じる上で、どんなことを意識されたのでしょう?
芳根さん
前半と後半で求められる表情がまったく違ったので、とにかく彼女がどんな思いだったかをひたすらにイメージして演じました。
そういう意味では、まさに今後「いろんな表情を見せられる役者」を目指していくうえで、自分をアピールできる一つの機会になったかなと思います!
サノ
僕、「べっぴんさん」のピュアでクリーンな演技で芳根さんを知ったんですけど、今回「居眠り磐音」であんな…ものすごく振り切った演技を見れて、とっても新鮮でした。
今後もどんどん新しい表情の芳根さんを観たい…観たいです!応援してます!!!
芳根さん
ありがとうございます!(笑)
インタビューがサノさんの思いの丈で終わるとは思わなかった!(笑)
おわりに
ご自身についてのインタビューで、これほど「誰かへの感謝」をお話されたのは芳根さんがはじめてでした。
自分を支えてくれる人、自分に発破をかけてくれる人。
そんなふうに両脇で支えてくれる3人4脚を見つけることができたら、僕たちビジネスパーソンも、凹んだとき、自信を持てないとき、少しだけ早く前を向けるかも。
芳根さん流3人4脚、自分だったら誰が思い浮かぶかなあ。
〈取材・文=サノトモキ(@mlby_sns)/編集=於ありさ(@okiarichan27)/撮影=二條七海(@ryuseicamera)〉
【芳根さんが出演する映画『居眠り磐音』は大ヒット上映中!】
そんな芳根京子さんは現在、5月17日(金)より公開されている映画『居眠り磐音』で、松坂桃李さん演じる主人公・坂崎磐音の許婚・小林奈緒を熱演されています。
お母さまとマネージャーを心の支えに前に進みつづける芳根さんのように、愛する磐音への思いだけを胸に己の人生を歩む奈緒。心震える磐音と奈緒の愛の形、ぜひ劇場でご覧ください!
映画『居眠り磐音』公式サイト|大ヒット上映中
時代小説累計発行部数6500万部超の佐伯泰英作品が待望の初映画化!!
(C)2019映画「居眠り磐音」製作委員会
公式SNSで最新記事やあしたの予告をチェックしよう!
ビジネスパーソンインタビュー
「実家のお店がなくなるのは悲しい… 家業を継ぐか迷ってます」実家のスーパーを全国区にした大山皓生さんに相談したら、感動的なアドバイスをいただきました
NEW
新R25編集部
「俯瞰するって、むしろ大人ではない」“エンタメ鑑賞タスク化してる問題”に佐渡島庸平が一石
新R25編集部
社内にたった一人で“違和感”を口にできるか?「BPaaS」推進するkubell桐谷豪が語るコミットの本質
新R25編集部
【仕事なくなる?そんなにすごい?】“AIがずっとしっくりこない”悩みへのけんすうさんの回答が超ハラオチ
新R25編集部
情報はインターネットがベスト、という考えに異を唱える。学生発信「金沢シーサイドFM」の挑戦
新R25編集部
いろんな仕事をこなす「ゼネラリスト」は目立てない? サイバーエージェント2年目社員の悩みにUUUM創業者が喝
新R25編集部