ビジネスパーソンインタビュー
自分を客観視できれば、たいていのことはうまくいく
「3つの視点を持ちましょう」ジャパネット創業者・高田明が教えてくれた“稼げる人の条件”
新R25編集部
一代で、日本中が知る通販会社をつくりあげた、「ジャパネットたかた」創業者の高田明さん。
昨日公開の記事「高田さん、“街のカメラ屋さん”が1000億円規模の会社になれたのはなぜですか?」では、そのアイデアの源泉と、組織マネジメントについて教えてくださいました。
本日のテーマは、「お金」。
高田さんは、通販事業に乗り出す前には3億にも満たなかった会社の年商を、20数年で1700億円を超える企業に成長させたという“成功者”ながら、あまり「お金」について語っているイメージがありません。
高田明さんが考える「お金の哲学」についてお伺いしてきました!
〈聞き手=於ありさ〉
【高田明(たかた・あきら)】ジャパネットたかたの創業者であり、同社のテレビ・ラジオショッピングのMCとしても知られる。2015年1月16日を持って社長職を退任。現在は株式会社A and Live代表取締役および株式会社V・ファーレン長崎代表取締役社長を務めている。(※「高田」の実際の表記は「はしごだか」)
ジャパネットたかた創業者・高田明さんの総資産は? 使い道は?
ライター・於
大変聞きにくいんですが、ジャパネットの社長時代、年収はおいくらでしたか…?
あまりの気まずさに秘書さんのほうに目をそらす
高田さん
それが、わからないんですよ…
僕、お財布持ち歩かないんで。
ライター・於
財布を持たない!?
高田さん
持つ必要を感じないんです。たくさんのモノを売ってきた私がこんなことを言ったら、全国の皆さんに叱られてしまうかもしれませんが…そもそも物欲がないんです(笑)。
まじっすか…
高田さん
時計にも車にも興味がなくてね。
社長のときに、社用車がベンツだったんですよ。それで、「こんな高い車じゃなくて、軽自動車でいいよ」って社員に言ったんですよ。
社員は「まあまあ、安全のためですから」という感じで、相手にしてくれなかった(笑)。そのくらい興味がないんです。
ライター・於
本当に物欲がないんですね。
高田さん
そうですね。食欲もそれほどないんですよ。
朝は食べないし、昼は妻のお弁当、夜は遅いから軽くしか食べないので、1日1食半しか食べない。
ずいぶん長く佐世保に住んでいるのに、飲食店も、ラーメン屋さんとちょっといいお店の2つしか知らないですからね。飲み屋さんもなじみの1軒がしまっていたら、どこに行けばいいかわからない…
モノを売るのはうまいのに、自分が買うことには全然興味がない高田さん
高田さん流の「お金の稼ぎ方」は“税金”?
ライター・於
今日は、高田さんの「お金の哲学」をお伺いしたいんです。
R25世代が身につけるべき、「稼ぐ哲学」があれば教えてください。
高田さん
そうですね~…
「何のために稼ぐのか」を明確にすべきでしょうね。
高田さん
会社に入ると「利益を出せ」って口を酸っぱくして言われるでしょ?
あれってなんで利益を出さなきゃいけないか考えたことありますか?
ライター・於
なんのために…給料をもらうためですか?
高田さん
いえ、税金を納めるためなんです。
ライター・於
税金…? ちょっとモチベーションが上がらないのですが…
高田さん
税金というと言い方がわかりにくいかな。
お金を払って自分たちが生活、仕事をするための基盤をつくる。人はそのために働いて稼ぐんですよ。税金を払えば、道が舗装されるし、老朽化した橋が修繕されるでしょう。
会社でもそうですよね。自分たちの夢を実現するために、資金を蓄えなければいけない。ジャパネットでいうと、2001年に自分たちで番組を放送するために、自社のテレビスタジオを建設しました。
高田さん
まわりからは、「建物は建てられても制作のプロが1人もいない。無理だ」と反対されましたが、未来への投資として必要なことだったと思います。
あのときスタジオを建てていなければ、今のジャパネットはないと確信しています。
若い人も、お金を稼いで自分に投資したり、仕事しやすい環境を整えたりすると思えばいいんじゃないでしょうか。そのために稼ぐ。その繰り返しで自分を成長させ、大きくしていけるといいですね。
ライター・於
なるほど、「取られる」ってことじゃなく、「自分のインフラ整備に投資する」って意味での「税金」なのか…
能からの学び。「3つの視点」を持つ人は成長する
ライター・於
ほかに、「稼ぐ哲学」ってありますか?
高田さん
あとは、「視点を3つ持つ」人は成長するでしょうね。
「我見」「離見」という言葉を聞いたことはありますか?
ライター・於
いえ、初めて聞きました。
高田さん
これは、能の言葉なんです。能楽を大成した世阿弥は、能を舞うときに「3つの視点がある」と説きました。
演者が舞台から観客を見る、すなわち自分から相手を見るのが「我見」。観客が演者を見る、相手が自分を見ている視点が「離見」。
そして「離見の見」は、俯瞰するように舞台と客席全体を見る視点、つまり全体を客観的に眺める視点をいいます。
高田さん
テレビショッピングを例に挙げると「これはすごい商品ですよ」と自分の言いたいことだけ説明するのは「我見」。
多くの人は、この「我見」だけになっているのかもしれません。
だから「なんで買ってくれないんだ」と思うし、成績も上がらない。
ライター・於
一人よがりになってしまってる、と…
高田さん
そうです。だから、「離見」の視点を持つ。「この値段なら買ってもいいな」「こんな商品なら自分の生活にあってもいいな」というお客さまの生活目線ですよね。
そして、番組に出ている自分と、それを見ているお客さまを俯瞰する「離見の見」の視点で、「この状況なら、どう伝えるのがベストか」を考えるんです。
ライター・於
なるほど! そんな考えでテレビショッピングをされてたんですね!
たしかにいくら便利であろうと、自分にとってのメリットがなきゃ「買う」にはならないです。
高田さん
もっといえば、何かを売るときだけじゃないですよ。
上司と部下の関係、先生と生徒、親子、恋人…物事には何にでも対極があります。
そのときに「自分の常識」だけで物事を考えるのではなく、相手の心を思いやり、自分を客観視することができれば、たいていのことはうまくいくのではないでしょうか。
高田さん
僕は、そうやって常にテレビの前にいる人のことを想像するのがクセになっているのかもしれませんね。
見てくれてる人に「ジャパネットの番組を見て元気になった」と言ってもらえるのが一番うれしいですよ。
ライター・於
実は、私のおばあちゃんも高田社長の大ファンなんです。どれくらい好きかというとメールアドレスに「japanet takata」って入れてるくらい!(笑)
高田さん
おお! そういう話を聞くと“この仕事をしていてよかったな”って本当にうれしいです!どうかよろしくお伝えくださいね!
「あ! あとでおばあちゃんに送る写真撮りましょうよ!」って優しすぎます…
サッカークラブの経営に名乗り出た理由は?
ライター・於
高田さんの最近の活動で話題になったのが、サッカークラブの社長就任です。
2017年、V・ファーレン長崎の累積赤字が3億円に達していて、選手への給与支払いも厳しい経営状況だと報道されました。そのタイミングで、V・ファーレン長崎をジャパネットホールディングスの子会社化し、高田さんが社長に就任したのは、なぜなんでしょうか?
「サッカーが好きだから」「V・ファーレン長崎が好きだから」というだけでは決意できなかったかなとも思うのですが…
高田さん
ジャパネットが以前からスポンサーをやっていたご縁もあり、ジャパネットホールディングスの現社長の、長男・旭人からの相談があって、決断しました。
応援してくれるサポーターや子どもたちがいる以上、県内唯一のプロスポーツクラブを潰すわけにはいかないと思ったんです。
ライター・於
サポーターのために必要なことだと感じたんですね。
高田さん
それにV・ファーレン長崎を通して、日本を元気にできるのではないかとも思いました。
ライター・於
「生活基盤に投資する」というお話とも、どこか通じるような…
高田さん
そうですね。サッカーがきっかけで街が盛り上がる、国内外からもたくさんの人が訪れる、その様子を見て故郷を愛する気持ちが湧く、若い人たちもこの街で暮らしたいと思う、雇用の問題を解決する…
そんな「地方の元気」を長崎から発信できれば、ゆくゆくは日本全国の活性化、地方創生にもつながるのではないか。
大げさかもしれませんが、そんな想いを持って、サッカークラブの社長を引き受けることにしました。
ライター・於
すばらしい…いちサッカーファンとして、V・ファーレン長崎のお話が聞けてよかったです。
ジャパネットの社長を退任されても、信念を持って活動されているんですね。
高田さん
そうですよ! サッカーの仕事は、ある程度形ができたら後は若い人に任せて、そんなに長くはやらないかもしれませんが、僕自身はまだまだ現役で、あと47年、ギネス記録の117歳まで生きるつもりですからね(笑)。
さ、そろそろ時間ですかね。 好き勝手話しちゃいましたけど、これで記事になりますか?またお会いしましょう! 次は、スタジアムで!
「サッカーもビジネスも同じ、勝ち負けだけじゃなくて、その先に信念があるか」ということを何度も話してくれた高田社長。
これまで無意識的に「稼ぎたい!」って思っていたけど、「稼いで何がしたいの…?」と言われたら、きちんと答えられない自分がいることに気づかされました。
「税金を払うこと」や「営業で売り上げを上げること」も同じ。モチベーションが上がらないときは「なぜ必要なのか」という原点に立ち返ってみてもよいのかもしれませんね。
最後に…高田さん!おばあちゃん、写真送ったらめっちゃ喜んでくれましたよ!!!
〈取材・文=於ありさ(@okiarichan27)/編集=天野俊吉(@amanop)/撮影=為永直樹〉
V・ファーレン長崎の情報はこちらから!
高田さんが代表取締役社長を務めるV・ファーレン長崎。チームについてはもちろん、2019年Jリーグマスコット総選挙で2位となったヴィヴィくんにもぜひご注目を!
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