チームづくりの決定版『THE TEAM』より

“雰囲気”をマネジメントするコツは? チーム崩壊の「4つの落とし穴」とその対策

仕事・ビジネスby 新R25編集部

「チームには、情熱や信頼が必要だ」

このように、これまでは個人の経験や感覚で語られがちだった「チーム」。

学校でも会社でも、チームづくりについて体系的に学ぶ機会はほとんどないと言っても過言ではありません。

“個人を輝かせる”チームの重要性が増している今こそ、「精神論」や「経験則」ではなく、理論的で再現可能な「法則」でチームを語ることが必要だ。

そんな思いをもって、モチベーションエンジニア・麻野耕司さん(リンクアンドモチベーション取締役)が「成功するチームとは何か」を科学的に解き明かした著書『THE TEAM 5つの法則』より、メンバーの力を最大限に引き出す「チームの法則」の数々をご紹介します。

チームを崩壊させる「落とし穴」

チームは2人以上の人間が共通の目的を実現するためにつくられます。

当然、1人ではその共通の目的が実現できない、もしくは誰かと一緒に取り組んだ方が実現しやすくなるから、人はチームをつくるはずです。

しかし、時にチームをつくったことによって、1人だったら100のパフォーマンスを出せるメンバーが100より少ない80や60のパフォーマンスしか出せなくなることがあります。

これをチームの「割り算」のパフォーマンスと呼びます。

なぜ、そのようなことが起きてしまうのでしょうか?

それはチームが落とし穴にはまってしまうからです。今回は、「チームの落とし穴」の数々を紹介し、その対応策を解き明かしていきます。

①「自分1人くらい」という落とし穴(社会的手抜き)

社会的手抜き」という心理学用語があります。20世紀初頭のフランスの農学者マクシミリアン・リンゲルマンの名前からリンゲルマン効果とも言います。

リンゲルマンは集団が大きくなればなるほど、1人あたりのパフォーマンスが低下するという現象を明らかにしました。

例えば、チームで庭の草むしりをするとします。

3人のチームでやれば10時間かかる作業だとすると、10人でやれば3時間で終わるはずです。

しかし、実際には10人でやると3時間以上かかってしまうのです。

これはチーム全体が「“自分1人くらい”という落とし穴」にはまってしまっていると言えます。

草むしりの例で言うと、3人のチームの時は「自分がやらねば」と思っていたメンバーが、10人になったとたんに「自分1人くらいやらなくても大丈夫だろう」と思ってしまうということです。

「自分1人くらい」という落とし穴への対策

この落とし穴にはまらないためには、メンバーの「当事者意識」を高めることが重要です。

メンバーの「当事者意識」を高めるために最も無駄なのは、「当事者意識を持て!」と言うことです。

そうではなく、「当事者意識」が高められる仕組みをチームの中に埋め込むことが大切です。

当事者意識を埋め込むためのポイントは3つあります。

当事者意識を高めるためにコントロールすべき1つ目のポイントは「人数」です。チームの人数は少なければ少ないほど、ひとりひとりの当事者意識は高まります。

チームの人数が一定以上に達したら、チームを分化させ、大きなチームの中に小さなチームが複数あるという状況にした方が良いのです。

2つ目のポイントは「責任」です。ひとりひとりの「責任」の所在が曖昧であれば、当然ひとりひとりの当事者意識も低下していきます。

責任範囲」と「評価対象」を明確にする必要があります。

3つ目のポイントは「参画感」です。様々な意思決定が自分とは関係ないところで進んでいると、チーム全体のことが段々と他人事のようになっていきます。

多数決」や「合議」という意思決定手法を適宜取り入れることで参画感を持たせることが可能です。

「リクナビ」「ゼクシィ」「スーモ」などのメディアを展開するリクルートは、社員のモチベーションが高い会社として知られていますが、創業者の江副浩正氏は、様々な手法を用いてメンバーの「当事者意識」を高めることに成功しています。

例えば、PC(プロフィットセンター)制という施策では、会社の中の一つ一つの職場を会社と見立てて、P/L(損益計算書)をつくらせました。

人事部のようなスタッフ部門であっても、人事部が会社のために採用した人数が増えれば人事部の売上が増える、逆に人事担当の人数が増えるごとに人件費や家賃が増える、というような管理会計ルールをつくり、毎期の決算で部署ごとにP/Lを算出させたのです。

また、NewRINGという施策では、会社に対して新規事業のプランを提案する機会を全社員に提供しました。

そして、NewRINGを全社をあげて盛り上げたのです。これにより、会社の未来は経営陣だけが描くのではなく、自分たちも描いていくんだという意識が広がったようです。

リクルートは「責任」を明確にし、「参画感」を高めることで「当事者意識」を高めることに成功した好例と言えるでしょう。

チームが「“自分1人くらい”という落とし穴」に陥らないように、メンバーの「当事者意識」を高め続ける必要があります。

②「あの人が言っているから」という落とし穴(社会的権威)

社会心理学者ロバート・B・チャルディーニの世界的ベストセラー『影響力の武器』で紹介されている、人間の意思決定に誤った影響を与えてしまう要因の1つに「権威」があります。

肩書や経験などの“権威”を持つ者に対して、人は信頼を置く」ことから、その分野において知名度の高い組織や発言力のある人などの意見に従ってしまう、という心理のことです。

チームにおいては、この「権威」が思わぬ形で悪影響を及ぼしてしまう時があります。

“あの人が言っているから”という落とし穴」です。

それは肩書や経験のあるメンバーに他のメンバーがやみくもに従ってしまい、個人であれば決してしないような間違った意思決定をしてしまうことです。

この落とし穴により、個人のパフォーマンスが下がってしまいます。

「独裁」という意思決定方法を間違った形で運用したり、多用しすぎると、この「“あの人が言っているから”という落とし穴」に陥りやすくなります。

特定の意思決定者が決めることに慣れすぎてしまい、メンバーが持っている情報を十分に共有しないまま、意思決定が進んでしまうことがあります。

また、意思決定者に対して誰も意見を言わない状況が続くと、思考が深まらないまま、浅い思考で意思決定をしてしまうこともあり得ます。

また、「心理的安全」がきちんと醸成されていなければ、「どうせ言っても無駄だ」「言ってもまた否定される」などのメンバーの主体性をそぐ感情がメンバーの中で強くなってしまいます。

結果として「あの人が言っているから」という受動的な態度が助長されていきます。

「あの人が言っているから」という落とし穴への対策

この落とし穴にはまらないためには、チームの中に「議論」というプロセスを埋め込むことが重要です。

時に肩書や経験にとらわれずにフラットに議論する場を設けたり、メンバーから意思決定者に提案するような場を設けることで、この落とし穴に陥るリスクを減らすことができます。

独裁」という意思決定手法も、最終的な意思決定を1人でするという手法であって、決して途中の議論をしてはならないということではありません。むしろ意思決定の前の議論は、過度に時間をかけすぎるものでなければ、適切な「独裁」の助けになります。

短期間で急成長を遂げたIT企業のサイバーエージェントでは、この「議論」のプロセスを経営チームにうまく組み込んでいます。

あした会議」という役員合宿では、それぞれの役員が社員たちとチームをつくって、社長に対して新規提案をします。その提案にGOサインを出すのは藤田社長ですが、実際に沢山の提案がこの合宿で可決されます。

サイバーエージェントが藤田社長のトップダウンの意思決定スタイル役員の積極的なコミットメントを両立している好例です。

チームが「“あの人が言っているから”という落とし穴」に陥らないように、「議論」をチームの中に適切に埋め込む必要があります。

③「みんなが言っているから」という落とし穴(同調バイアス)

行動経済学は経済学に心理学的要素を組み込んだ学問分野です。

従来の経済学では、人は合理的かつ功利的な判断のもとに動くとされていました。功利的とは、選択肢の中で最も得するものを選ぶことを言います。

このような自己の経済利益を最大化させることを唯一の行動基準とする人間のことをホモ・エコノミクスと呼びます。

ただ現実にはこのようなホモ・エコノミクスは存在しません。何故ならば、人間は感情で動く生き物であり、時に非合理的な行動を選択してしまうからです。

そこで、伝統的な経済学では説明のつかない人間の非合理的な行動について、心理学的な見地も念頭に置きながら理論的に説明する試みがなされるようになりました。

それが行動経済学です。

行動経済学では「同調バイアス」というバイアスが提唱されています(ハーディング効果とも呼ばれます)。

その選択から得られる経済的合理性だけではなく、周囲の人々と同じ選択をして安心感を得たいという同調性が人間の判断に影響を与えるということを指します。

行列ができている飲食店を見つけると、特にその飲食店に行きたかったわけではないのに行きたくなってしまうことなどは、まさに同調性バイアスにかかっていると言えるでしょう。

ある実験では、ドッキリカメラで騙される人が病院の診察室に行くと、みんなが裸だったというドッキリを仕掛けたところ、騙される人が周囲の人に合わせて裸になったという面白い結果もあるようです。

チームにおいて、この同調バイアスが悪い方向に発揮されると、個人で活動したら100のパフォーマンスをあげる人が、他のチームメンバーが50や60しかパフォーマンスをあげていないのを見て、「みんなもやっていないから」という理由でパフォーマンスを下げてしまうということが起こり得ます。

自習室に勉強しに行ったら、みんなが雑談ばかりしているので自分も雑談してしまい、勉強がはかどらなかった、というようなことは至る所で見かけます。

この落とし穴にはまらないためには、チームの「雰囲気」を意識的にマネジメントすることが重要です。

同調バイアスがあることにより、人間はチーム全体の「雰囲気」に引きずられて自らの態度を決めるからです。

人は物事に対する態度を、自らの意思だけでなく周囲の態度によって決めるという「日和見主義」的な部分を持っています。

チームの方針に対してポジティブな人が2割、フラットな人が6割、ネガティブな人が2割いるとします。

ネガティブな人が2割から3割になった場合、チームはポジティブな人が2割、フラットな人が5割、ネガティブな人が3割にはならないことが多々あります。

フラットだった人たちがポジティブな人よりもネガティブな人が多いのを見て、ネガティブな態度へ変えることがあるからです。

結果として、放っておくとネガティブな人が増え続けるということがあります。

一度ネガティブな態度の人がマジョリティ(過半数)を握ってしまうと、みんなが同調バイアスを発揮し、ネガティブな態度に追随してしまうので、チームの「雰囲気」を変えることが非常に難しくなります。

一方で、チームにポジティブな態度の人ばかりでもチームは良くない方向に進むことがあります。周囲の顔色を見ながら何でもかんでも賛成するようなチームは時に状況判断や意思決定を間違えるからです。

チームの方針に対して一定のネガティブな態度のメンバーが存在することは思考停止に陥らないためにも必要なことです。チームの雰囲気はポジティブすぎてもネガティブすぎてもいけないのです。

「みんなが言っているから」という落とし穴への対策

「雰囲気」をマネジメントするためには、「スポットライト」と「インフルエンサー」の観点が重要です。

スポットライト」はチーム内である態度のメンバーに光をあてることで、実態よりも全体的にポジティブな人が多い、ネガティブな人が多いと感じさせてチームの雰囲気をコントロールするアプローチです。

インフルエンサー」はチーム内で特に他のメンバーに影響力の強いメンバーに個別に働きかけ、転換させることでチームの雰囲気をコントロールするアプローチです。

リクルートは創業者の江副浩正氏やNo.2だった大沢武志氏が東京大学の教育学部教育心理学科出身だったということもあり、組織づくりにこうした心理学の知見をふんだんに取り入れていました。

特に社内コミュニケーションを重要視し、表彰式や社内報を通じて、仕事に前向きに取り組む人にスポットライトをあてることに力を注いできました。

また、創業者の江副氏は、社員が経営の方針に対してポジティブになりすぎることは、ひとりひとりの独立心をそぐと考え、社内コミュニケーションを担当するチームには「社内ジャーナリズム」を求めたと言います。

決して経営に媚びることなく、時に政権を批判するジャーナリストのように社内コミュニケーションチームが経営に批判的なメッセージを発信することで、経営や周囲に流されすぎずにひとりひとりが自分で考える雰囲気を社内に醸成しようとしていたのです。

チームが「“みんなが言っているから”という落とし穴」に陥らないように、「雰囲気」をマネジメントする必要があります。

④「あの人よりやっているから」という落とし穴(参照点バイアス)

行動経済学では「参照点バイアス」というバイアスも提唱されています(アンカリング効果とも呼ばれています)。

最初に提示された数字や印象が参照点(アンカー:船のいかり)となって強く残り、その後の印象や行動に影響を及ぼすことを指しています。

例えば、ある会社が新規で開発したある商品Aが1万円で販売されたとします。その1年後に別の会社から類似の商品Bが5000円で販売されたら、多くの人が「安い」と感じるでしょう。

しかし、それは商品Aが参照点となって判断しているだけなので、商品への客観的な評価ができているとは限りません。

このような心理作用がチームにおいてマイナスに働くことがあります。

本来は100のパフォーマンスを出せる人が、隣のチームメンバーが60しかパフォーマンスを出していないので、自分も60くらいでいいか、と意識的・無意識的に考えてしまうのです。

特にリーダーはメンバーの参照点になりやすいです。

リーダーが遅刻しているから自分も遅刻して良い

リーダーがきちんと人の話を聞いていないから自分も人の話を聞かなくて良い

などと都合の良い参照点としてメンバーがリーダーを使うことも多々あります。

「あの人よりやっているから」という落とし穴への対策

この落とし穴にはまらないためには、チームの中で「基準」を明確に示すことが重要です。

意義目標」「成果目標」「行動目標」「責任範囲」「評価対象」などについて、それぞれのメンバーにどれくらいの「基準」を求めるのかを曖昧にせずに明確に提示することです。

またそれだけでなく、チームの中で誰が「基準」を満たしているのか、満たしていないのかを共有することで、自分に都合の良いメンバーの成果や行動を参照点にさせるのではなく、チームとして「基準」にすべきメンバーの成果や行動を参照点にする必要があります。

プロ野球チームの阪神タイガースは1985年の日本一以降、1987年から2001年まで15年間で10回も最下位になるという「暗黒時代」でした。

しかし、2003年に星野仙一監督のもと、阪神タイガースは18年ぶりのリーグ優勝を果たします。その後は毎年優勝争いに加わる強豪チームとなり、2005年にも岡田彰布監督のもと、リーグ優勝しています。

この阪神タイガースの復活には選手の中にある「基準」が影響していると言われています。

阪神タイガースは弱くても関西では非常に人気のある球団で、選手はファンや支援者から、言葉を選ばずに言うと甘やかされていたようです。

そんな中で、選手も甘えた姿勢を持ってしまい、ちょっとしたことで弱音を吐いて練習を休んでしまうことも多かったと言います。

しかし、そんな状況が、ある選手の加入で変わります。

金本知憲選手です。

金本知憲選手は連続試合フルイニング出場の世界記録(1492試合)を持っている「鉄人」と呼ばれた選手です。

トリプルスリーと呼ばれる打率3割、本塁打30本、30盗塁を成し遂げた、打ってよし、走ってよし、守ってよしの三拍子揃った選手であることももちろん素晴らしいのですが、

阪神タイガースの他の選手に大きく影響を与えたのは、どんな状況であったとしても、練習や試合を休まずにストイックに野球に取り組む姿勢でした。

金本選手の加入によって、チーム全体の「基準」が変わり、選手たちの野球に取り組む姿勢が変わり、チーム全体の成績も変わっていきました。

「基準」が変わることにより、チームが変わった好例だと言えるでしょう。

チームが「“あの人よりやっているから”という落とし穴」に陥らないように、「基準」を明確に示す必要があります。

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「自分のチームづくりがいかに整理されていなかったか、情けなくなった。もっと早くこの本に出会えていたら」(元サッカー日本代表監督・岡田武史)

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