時代を生き抜く羅針盤『新・魔法のコンパス』より

本業を収入源にしてはいけない。ボクが「複業」をすすめる理由

キャリア
「僕たち人間は“知らないものを嫌う性質”を持っている」

現代の革命家・キングコングの西野さんはそう話します。しかし、「なんかよく分からないけど、怪しい」と蓋をしてしまったモノのなかに未来は眠っています。

今回は、激動の現代にあっても変わらない「お金」や「広告」のルールについて、自身の経験をもとにわかりやすく書かれた西野さんの著書『新・魔法のコンパス』のなかから、しなやかに時代を歩くための羅針盤となる4本の記事をお届けします。

「本業=メイン収入」「副業=サブ収入」の常識を疑え

ここらで「本業」について一緒に考えたいと思う。

キミは「本業」について真剣に考えたことがあるかな?

「本業」って、なんだろう?

多くの人は、「本業=メイン収入」「副業=サブ収入」みたいな感じで決着をつけているけど、キミはどうだ?

もしキミがこの感じで「本業」と「副業」を捉えていると、この先、結構厳しい戦いになってくると思うよ。

どういうことか説明するね。

メインの収入源を別に用意して、ライバルと差をつけろ

ノベルティー」って知ってる?

あまり聞きなじみのない言葉だよね。

ザックリ説明すると、企業が自社商品の宣伝を目的として、それらの名称を入れて無料配布する記念品のこと。

ラジオのリスナープレゼントで貰える番組のタイトルロゴが入ったステッカーがあるじゃない? あれが「ノベルティー」だね。

あのステッカーは、パソコンに貼ってもらったり、車に貼ってもらうことを目的としていて、ステッカーを見る度にラジオのことを思い出してもらって、番組の試聴につなげているわけだ。

あのステッカーは番組の「宣伝装置」なんだよ。

起業家さん達が出しているビジネス書も、それ。

自社のサービスにつながるようなビジネス書を書き、その本の印税をすべて「広告費」に回し、ひとりでも多くの人に本を読んでもらい、自社の顧客獲得につなげている。

厳密に言うとビジネス書を無料配布しているわけではないので、「ノベルティー」とは言い切れないんだけど、起業家は皆「無料配布しても構わない」と考えている。ボクもそうだよ。

事実、ボクの前作『新世界』(KADOKAWA)はネットで全ページ無料公開している。
印税が目的ではなく、「認知を拡げて、顧客を増やすこと」が目的だからだ。

ボクやビジネス書を書く起業家さん達は「作家」ではなく、「ノベルティー作家」と言える。

世の中には本の印税で生きている「作家」と、自社のサービスを書いた本の印税を宣伝費に回して、自社のサービスのお客さんを増やしている「ノベルティー作家」がいる。

こうなってくると、「本業=メイン収入」としてしまっている「作家」さんは、かなり分が悪い(※作品の内容は個人の好みなので、それは一旦横に置いておいて、ここでは収入面の話)。

別に収入源を持っている「ノベルティー作家」は、印税から、自身の作品に「広告費」を出すことができる。

印税が収入源になっている「作家」は、自身の作品に「広告費」を出すことができない。

当然、世の中に広まりやすいのは、「ノベルティー作家」の作品だ。

皮肉にも、ここが、本業をメイン収入にしている人間の弱点となるわけだ。

収入源をどこに置くか?

これは何も作家さんに限った話じゃないよ。

たとえば、テレビギャラをメインの収入源にした「テレビに出なきゃ食っていけないタレント」と、「○○の宣伝になるのであればテレビギャラなんて1円も要らないですよ」と言えちゃう「テレビに出なくても食っていけるタレント」は、どっちが強いかな?

より良い条件でテレビに出られるのはどっちか?」を考えると、おのずと答えは出てくる。

もうキミの中で答えは出てるよね?

キミの収入源はどこだ?

キミの目的に対して、キミの収入源は今の場所で合っているか?

「専業」か「兼業」か、「複業」か

働き方には3つの選択肢がある。

専業」か「兼業」か「複業」のどれかだ。

キミの人生は、どこまでいってもキミのものだから、

職業をひとつに絞る「専業家」になるべきか、

メインの職業とサブの職業を持つ「兼業家」になるべきか、

それとも複数の職業を掛け持つ「複業家」になるべきか、

その答えを決めるのはキミ自身だ。

キミの人生の責任を取ることができないキミ以外の人間が、キミの決断に口を挟むべきではないとボクは考えている。

ただ、もしアドバイスを求められたら、今の時代なら、ボクは「複業」をオススメするかな。

それはボク自身が、これまで複業の恩恵をたくさん受けてきたからだと思う。

転機となった「25歳」

ボクの人生の転機は忘れもしない。

『はねるのトびら』(フジテレビ系)というレギュラー番組がゴールデンタイムに進出して、日本で一番視聴率をとっていた25歳か26歳のころ(忘れた)。

そのころに限界を見て、テレビから軸足を抜いて、絵本を描き始めた

ま、その辺の詳しい話は『新世界』という本に書いたので、そっちを読んでね。

さて。何のアテもなく突然絵本作家になっちゃったわけだけど、絵を描くのが得意だったワケでもないし、出版のノウハウもコネもツテもない。

世界に目を向ければ、同世代で、すでに圧倒的な結果を出している絵本作家もいる。

ここからどうすれば、この糞ド素人が世界中の絵本作家をゴボウ抜きできるか考えるわけだけれど、考えて間もなく、「皆と同じやり方をしてしまうと、とても世界の頂点にはたどりつけないな」と結論した。

「位置について、ヨーイ、ドン!」の戦いは早々に捨てて、すでに世界中の絵本作家さんに自分が勝っている部分を探して、そこで戦うことにしたんだ。

とは言っても、こちとら、ど素人だ。画力も負けているし、出版のノウハウもコネもツテもない。

当たり前の話だけど、素人のボクは、プロの絵本作家さんに負けているところだらけだったんだよね。

でも、ただひとつだけ勝っている部分があった。

時間」だ。

ここでいう「時間」というのは、「ひとつの作品にかけることができる制作時間」のことね。

複業家に許された「無限の時間」

プロの作家さんは、その作品の売り上げで生計を立てているので、短いスパンで作品を発表し続けなければいけない。

一方、食うには困らない程度に売れている芸人だったボクは、絵本の売り上げがなくてもギリギリ生きていけるので、極端な話、ひとつの作品に10年かけることだってできる

専業家は、ひとつの作品に制作時間をかけることはできなくて、複業家は、ひとつの作品に極端な制作時間をかけることができるわけだ。

すぐに文房具屋さんに走って、市販されているなかで最も細いボールペンを購入して、絵本のストーリーも、「20ページ」ほどで完結する絵本が多いなか、ボクの絵本は「40ページ」。
つまり、制作時間が「かかるように、かかるように」作り方をデザインしたわけだ。

この作り方をしてしまったら、3~4年かかっちゃうよね」というコスパの悪い作り方を選んだ。

専業の絵本作家さんには、こういった作品を作ることができない。

収入が3~4年止まってしまうことになるからだ。

こうして、ボクは一冊完成させるまでに3年もかかってしまう『えんとつ町のプペル』のような作品を作れる切符をいただいたわけだけれど、

それはボクに「才能」や「センス」があったわけじゃなくて、ボクが「複業家」で、収入源を上手く整理して、時間を作れたからだ

そろそろ、まとめるね。

もし、今のキミの挑戦が上手くいっていないのであれば、それはキミの「努力不足」などではなく、キミの仕事のシステムにエラーがある可能性が高い

たとえば、「制作に3年をかける超大作絵本を作りたいのに、絵本の印税をメイン収入源にしてしまっている」といったシステムのエラー。

この場合、システムを改善しない限り、「超大作絵本を作りたい」という夢は一生叶わない

お金と真摯に向き合い、お金の常識を疑い、キミの目的に対して正しいアプローチをするんだ。

時にそれは「非常識」だと揶揄されてしまうかもしれないけど、キミの人生はキミのものだ。

キミの姿形や、キミが背負い込んでいるものは、ほかの誰とも違っていて、そもそも世間のルールとピッタリ合うわけがないんだよ。

常識なんて明日には変わるんだから、非常識で結構。

キミのルールで動くんだ

そのルールに悪意がなければ、少し時間はかかるかもしれないけど、世間は必ずキミを理解してくれるよ。

大丈夫。

西野さんの経験が詰まった『新・魔法のコンパス』で“時代の歩き方”を学ぼう

新・魔法のコンパス

新・魔法のコンパス

「発見だらけ。おそるべき具体性。なにより、今日からなんかやってみようという活力がみなぎった(又吉直樹)」

昨日までの常識が、今日非常識になる。

そんな激動の現代における「時代の歩き方」について西野亮廣さんが書いた『新・魔法のコンパス』。

逆境の乗り越え方からお金の稼ぎ方まで教えてくれる、挑戦するあなたへぴったりの一冊です!