冨田和成『営業』より

商品の名前を変えるだけで売上が2倍に。成約を決定づけるニーズ喚起の4大要素

仕事・ビジネスby 新R25編集部

同じやり方でも、時と場合によって結果が変わってしまうのが営業。

そのため、営業のノウハウは体系化されづらく、「やる気」「根性」といった精神論で語られがちです。

しかし、「トップセールスは皆、ベースとなる同じ考え方を持っている」と元野村證券“伝説のセールスマン”である冨田和成さんは主張します。

不確定要素の多い営業において必要な考え方とは、一体何なのでしょうか?

今回は、冨田さんの著書『営業』より、営業を有利に進める2つの考え方をお届けします。

営業

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ニーズ喚起の具体的な話をしよう。

課題解決型営業における最終的なプレゼンの形は「○○という理由から、あなたはこの商品を買うべきだ」という提言的なメッセージになる。

その因果関係に納得感があればあるほど、「どうしても買いたい」という衝動が湧き起こる。

この「○○という理由から」の部分をいかに強められるかが商談の結果を左右すると言っていい。

その一連の作業がニーズ喚起だ。

「この商品を買っていただけませんか?」という「お願い営業」とはまったくアプローチが異なる。

では、どのような提言メッセージなら相手に刺さるのか。

現役時代、私はそのことをひたすら考え、営業の本や交渉術の本も読み、売れる要素を因数分解していった。

その結果、導き出した結論は、ニーズ喚起の仕方には4つの要素があるということ。

そして、その条件を多く満たすほど成約率が高まることだった。

商談を決定づけるニーズ喚起の4大要素は次の通りだ。

①必然性
②効用
③実現可能性
④緊急性

これは新規開拓だろうと、販売員だろうと、ルート営業だろうと同じ。

セールストークを考えるときや提案書をつくるときに、これらの4つの要素をできるだけ盛り込めるようにしたい。

①必然性

因果関係のうち、特に相手の不安を喚起するもの

(例)痩せないと成人病になる恐れがあるから、ジムに加入すべきだ。

②効用

因果関係のうち、相手にとってプラスに働く側面を強調すること。必然性が不安の喚起なのに対して、効用は欲望の喚起とも考えられる。

(例)痩せたら長生きできるので、ジムに加入すべきだ。

③実現可能性

「誰でもできる」「確実にできる」「手間なくできる」といった、購入(や利用)に対する心理的ハードルを下げるうたい文句のこと。

ライザップのCMは「効用」とこの「実現可能性」を全面に押し出している。

いくら自分の抱える課題とそれに対する解決策がもたらす効果が明確になっていたとしても「本当にできるのか」とか「自分でもできるのか」といった不安を持っていたら、二の足を踏みやすい。

(例)このジムはダイエット成功率9割だから、加入すべきだ。

④緊急性

いま契約することの意義を強調すること

金融の営業を始め、すぐに気づいたことだが、金融商品という商品は、基本的に緊急性が低いものが多い。

すなわち「資産運用は確かに重要だけど、いままでやってこなくてなんとかなっているし、いまじゃなくていいよね」と思われるケースが多いのだ。

そこで背中を押すには、買い手の優先順位を上げる理由をつけないといけない。

(例)もうすぐ海やプールのシーズンだから、ジムに加入すべきだ。

このうちどれが相手のツボにもっとも刺さるかはケースバイケース。

だからこそヒアリングでは現状を把握するだけではなく、「どうありたいか」を入念に探らないといけないし、のちのプレゼンにおいてもそこを重点的に強調しないといけない。

「そこまで細かく考える必要があるのか」と思う人もいるはずだ。

でもこの4つの要素を意識しないと、顧客の反応を見たときに「あ、この人には効用が効きそうだ」とか「反応が悪いな。あ、緊急性の話をしていなかった」といったロジカルな戦略が立てられない。

当然、1回の面談から学べる量も少ない。

効用を喚起するときは内的報酬を意識する

4つの要素のなかの「効用」。

簡単に説明したが、実際はかなり奥深い。

どんな効用があると相手が喜ぶかは千差万別ではあるが、私が効用からニーズ喚起をするときに必ず意識していたのは、外的報酬内的報酬だった。

外的報酬とは、得られるものが自分の外からやってくる定量的なもの。

主にお金や地位のことだ。

内的報酬とは、得られるものが自分のなかからやってくる定性的なもの。

承認欲求、やりがい、充足感、自己統制感などだ。

もちろん、ビジネスの場面で経済的なメリット(外的報酬)を語らないことはありえないが、人のモチベーションはどんどん内的報酬にシフトしていると思っている。

たとえば資産運用の世界で顕著なのが社会貢献に対する欲求だ。

お金を運用することと社会貢献を同時に行えるソーシャルファイナンス系の商品(社会的インパクト投資)の市場は、ここ数年、急増している。

私が営業をしていた時代でも、大和証券が、南アフリカ開発銀行が発行する債券の名称を「ワクチン債」(正式には「予防接種のための国際金融ファシリティ」)に変えたことがある。

このとき、売上が倍くらいになったという。

また、私がいくら営業をかけてもなかなか商品を買ってくれなかった富裕層の顧客に、試しに地球温暖化対策株関連ファンドという商品を提案したら、あっさり買ってくれたこともある。

このように、外的報酬の話をしても刺さらなかった人に対して、相手の内的報酬をピンポイントで満たせるような話を切り出すことで、あっさり成約に至ることは決して珍しいことではない。

課題の伴走者になる

仮説の提示からニーズ喚起、そしてプレゼンに至る一連の流れで私が意識していたのは、答えを断定的に言わないで相手に気づかせることだった。

これはコーチングのメソッドから応用したことだ。

人を動かすことは難しい。

いくらメリットを理路整然と伝えても、相手にその気になってもらわないと、なかなか首を縦に振ってはくれない。

高額な商品・サービスを扱っているならなおさらだ。

だから課題を認識させるときも、必然性・効用・実現可能性・緊急性を示唆するときも、ソリューションを提示するときも、できるだけ本人が自ら気づくような形にするようにしていた。

そのとき使える万能なフレーズは「○○かもしれませんね」だ。

「ここが課題、かもしれませんね…

「ここが改善されたら、○○になる、かもしれませんね…

こうやって表現を丸くしながらも可能性を示唆することで、押し付けがましさが軽減される上に、「かもしれませんね…◯◯さんはどう思いますか?」とすれば、問いを相手にパスした状態にもなるので顧客本人が思案するきっかけになる。

そこでしばしの沈黙のあと「うん…そうだろうね。いや、絶対そうだ」と言ってくれたら大成功。

次回のプレゼン時には「前回、社長がご指摘になったように」と言えるようになる。

また、こうした表現を使うことで、一方的に持論を展開する営業ではなく、その場で一緒に課題解決に取り組む伴走者のような立場になれる。

それが生む信頼感のメリットもとても大きい。

静的な情報はニーズ喚起をした後に聞く

予算や決裁者のようなファクトのことを「静的な情報」と、私は呼んでいる。

それに対して、状況の変化にともなって揺れ動く、ゴールやニーズ、課題、解決策など、PDCAに関わるような要素を、「動的な情報」と呼んでいる。

たとえば、洋服を買いに行って店員から「いらっしゃいませ。本日のご予算は?」と言われたら、誰しもがその店を飛び出る。

でも、営業の現場では、アイスブレイクもそこそこにいきなり予算を聞く営業が実際に存在する。

おそらくプレゼンのことばかりに気がいって、「予算を聞かないと」「決裁者が誰か聞かないと」と焦っているのだろう。

確かに提案をつくる際には必要だが、それをアポの最初に聞いても大半の顧客は答えてくれない可能性が高い。

本来、こうした静的な情報はニーズ喚起が十分できてから聞くものだ

その段階になれば「いい提案をするために必要な情報」という位置づけになるので、顧客も出し惜しみするようなことはしなくなる。

あとはチェックシートでも使いながら一つ一つ聞いていけばいい。

ただし、ニーズ喚起ができていても開示されにくい静的な情報もある。

よくあるのはコンペで競合先を聞き出すようなケース。

顧客からすれば言っても得をしない情報なので、基本的に隠そうとする。

そうした情報であっても聞き出す方法がないわけではない。

たとえば、狭い業界で競合先が限られているなら「今回、○○社さんにもお声かけされていますか?」と聞けば、相手の反応を見ればすぐにわかる。

もし競合が多くてその作戦が使えない場合は、「アサインする担当者の参考にしたいので」とか「他社と提案がバッティングすることを避けたいので」といったように、その情報が提案の質の向上につながることを匂わせる文脈で聞けばいいだろう。

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「成果を出すには量をこなすしかない」というのが、営業の一般的なイメージ。

しかし、正しい“型”を学べば「エースもベテランも1年でブッちぎれる」と冨田さんは言います。

そんな営業の“型”が体系的にまとめられた『営業』。

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