アポを取るまでの「前工程」こそがキモ

営業の理想像はドラえもん!? “伝説のセールスマン”が語る「営業の極意」

仕事by 新R25編集部
若手が配属先されることが多い、「営業」という職種。

高い目標を前に叱責されるなど「キツい」という印象が強く、営業なんてやりたくない…と思っている人がいるかもしれません。

あるいは、いざ始めてみても成果がなかなか出ず「ツラいし向いてないかも…」と自信がなくなってしまうケースも多いよう(私も営業時代そうでした)。

そんな営業へのマイナスイメージを解消するべく、野村證券株式会社にて数々の営業記録を樹立し、最年少で本社のプライベートバンク部門や海外の経営戦略担当に抜擢された“伝説の営業マン”・冨田和成さんに「営業の極意」を聞いてきました。

・トップセールスマンになれた理由
・営業に向いてる人/向いてない人
・営業スキル(トークなど)を磨くコツ
・これから求められる理想の営業人材

など、営業を頑張りたい人にとってタメになるお話が詰まってます。

〈聞き手=篠原舞〉
【冨田和成(とみた・かずまさ)】神奈川県出身。一橋大学在学中にIT分野で起業。2006年大学卒業後、野村證券株式会社に入社。本社の富裕層向けプライベートバンキング業務、ASEAN地域の経営戦略担当等に従事。2013年3月に野村證券を退職。同年4月に株式会社ZUUを設立し代表取締役に就任。現在は複数のメディアにて連載を持つなど、本業とシナジーのある分野において金融専門家としての活動も行っている。著書に『大富豪が実践しているお金の哲学』『鬼速PDCA』『営業 野村證券伝説の営業マンの「仮説思考」とノウハウのすべて』などがある

“いいお客さん”を明確に定義して、アプローチしていた

篠原

篠原

野村證券の営業マンって、体育会系でゴリゴリのちょっと怖いイメージなんですけど…実際そうなんですか?
冨田さん

冨田さん

いや、それは世の中の先入観がだいぶ入っていると思います(笑)。

ただ、「数値が人格」というくらいの、いわゆる徹底的な成果主義の文化で育ちましたから、そういった意味からとらえるなら“ゴリゴリ系”と言えばそうかもしれません。

頑張ればどんどん機会をもらえるのは、僕みたいな人間にはすごくわかりやすくてよかったです。
篠原

篠原

まわりも成果に執着する文化のなかでトップセールスマンになるなんて、本当にすごいですね。冨田さんはどうしてトップになれたんですか?
冨田さん

冨田さん

3つ要因があると思っています。まず1つ目は、“いいお客さん”を見つけることにこだわっていたこと。

“いいお客さん”というのは、いわゆる大口顧客のことです。僕がいた会社の営業は、お客さんが運用している株式の手数料収入と、一定期間で預かっている資産(現金や株式)をどれくらい増やせたかなどで評価されていました。

全国に数千人いる営業のうち成績上位の先輩たちを見ていると、もれなく何十億円〜何百億も運用するお客さんを担当しているんですよね。

だからそういうお客さんをいかに開拓するかということを意識していました。
篠原

篠原

でも、とにかくお金を持っていればいいってわけでもないですよね?
冨田さん

冨田さん

もちろんです。仮説と検証を重ねて、“いいお客さん”を明確に定義していました

お客さんになりそうな企業のデータを分析し、検証した結果、「不動産業界・建設業界で、社歴が50年以上、かつ年商1億円以上の会社」が“いいお客さん”になりやすいとわかったので、そこを重点的にアプローチしていましたね。

実際そういった属性のクライアントから支店全体の大手顧客になるオーナーを何名も開拓しました。
出典

『営業 野村證券伝説の営業マンの「仮説思考」とノウハウのすべて』より

“いいお客さん”を探すフロー
篠原

篠原

営業するときって「数が大事だ!」と手当たり次第にアポ取りしがちなのに、ちゃんと分析してコツを言語化してるのはさすがとしか言いようがないです…
冨田さん

冨田さん

ニーズがあるかわからない100人にアプローチするより、ニーズがありそうな20人にアプローチをするのは当然ですが、選定を統計的に徹底してやっていたのは差別化になっていたんだろうな、と思いますね。

業務の幅を広げて提案し、信頼関係を築いた

冨田さん

冨田さん

次に、“特殊案件”にもこだわってました。たとえば人手が足りなくて困っているお客さんなら、採用のお手伝いなんかもしていましたね。
篠原

篠原

え!? そんなことまでするんですか?
冨田さん

冨田さん

お客さんの本当のニーズから逆算して、あらゆるソリューションを提案するのがモットーでした。

「普通はここまでやらないよね」という踏み込んだ提案をすることで、強固な信頼関係が築けて、結果的に売上も上がるんですよ。

あまりに手を広げて必死に提案・支援していたので、相当熱い奴って思われていたんじゃないかな。お客さんからも前職の役員からも、もはや「パッション」って呼ばれてましたしね(笑)。
篠原

篠原

パッション…納得しかないです(笑)。

いざというときのため社内の信頼関係を大事にしていた

冨田さん

冨田さん

トップ営業になれた最後の要因は、社内での信頼関係。これもかなり重要です。

実は僕、入社2年目の途中から100人近いの営業マンがいる支店でもすでにトップだったので、まわりから意見を言われることがほとんどなくなってたんです。

そういう状況もあって、先輩たちに「成果が全然出てませんね。新規開拓の時間もっと取るべきだと思いますよ」みたいに完全に生意気な態度をとってしまってました。
篠原

篠原

うわぁ、そんな後輩イヤだ…
冨田さん

冨田さん

そしたらあるとき、支店長に「冨田ぁー!!」って呼ばれ、そこからこっぴどく怒られまして。

「先輩たちにそういう態度をとったらダメだ。何かあったときにお前の足元がすくわれる。成果が出てるときほど謙虚にしろ。俺も同じ経験をしたことがあって、今は後悔している。お前にはそうなって欲しくない」と。この言葉をもらって変われましたね。
冨田さん

冨田さん

支店長は“伝説の営業マン”と言われるほど成果を出し続けてきた方だったので、実体験をもとにしたアドバイスだったんです。
篠原

篠原

「数字がすべて」というような会社でも、ただ成果を出していればいいってわけじゃなかったんですね。
冨田さん

冨田さん

数字として成果は出ていても、社内の人との信頼関係が築けていなければ本当にワクワクする仕事は任せてもらえないし、自分が新しいプロジェクトを立ち上げたときも協力してもらえない。

実際に支店時代のM&Aや為替スワップ、そして事業承継案件など本社のさまざまな部署の方々の後方支援をいただいたりしました。自分が本社に行ったり、海外の戦略担当になったりした際にもたくさんの方々に支えられました。

お客さんとだけでなく、社内のいろんな人との信頼関係も大事にしていましたね。

営業に向いてないのは、他責にしがちな人。成果を出す人は自責マインドが身についてる

篠原

篠原

バリバリ結果を出していた冨田さんから見て、営業に向いてる人と向いてない人ってどんな特徴がありますか?
冨田さん

冨田さん

大きな違いは「どれだけ自責で考えられるか」だと思っています。トラブルが起こったときに、他人のせいにしてしまう傾向がある人は、成果を出すチャンスを逃してしまうことになるのではないかと思うのです。

なぜなら、お客さんから対価をいただいているのに、何かが起きたとき「自分の責任じゃない」って他責な態度をとってしまったら信頼してもらえませんよね

明らかにお客さんの間違いだってわかってたとしても、会社の仕組みに穴が仮にあったとしても、怒っていたら怒らせたこっちの責任なんだ、そして担当者の自分の責任なんだと思えるかどうかが重要です。
篠原

篠原

いい人すぎませんか…? 私だったら逆ギレしちゃうかもしれません。
冨田さん

冨田さん

僕だってイライラすることはあります。でも「あなたの勘違いですよ」って言い返しても火に油を注ぐだけじゃないですか。

それに必ず“自分がもっとできたこと”はあったはずなんです。だから少なくともその場では、自分の責任だと思うようにしてました。

自責マインドが身につく3つの“魔法の質問”

篠原

篠原

でも無理に「自分のせいなんだ」と思い込むのを続けてると、ストレスがどんどん溜まっていつか爆発しちゃいそうですね。防ぐコツってあるんでしょうか?
冨田さん

冨田さん

そうならないようにする、“魔法の質問”があるんです。
篠原

篠原

魔法の質問…?
冨田さん

冨田さん

コーチング形式で質問を3つ考え、自分に問いかけてました。
➀「仮に今回のケースで自分にできることがあったとしたら、何だろう?」
➁「仮に、自分に非がある部分があるとしたら、どこだろう?」
➂「自分がいまの100倍優秀だったらできたことは何だろう?」
冨田さん

冨田さん

これらの質問を自分に投げかけると、自分をメタ認知できるようになります
篠原

篠原

なるほど。自分のことを客観的に捉えられるということですね。
冨田さん

冨田さん

はい。こういった質問で自分をメタ認知できれば、ムリなく自責のマインドが生まれてくるはず。

すぐに変わるのは難しいですが、自分に質問し続けていると徐々にスタンスが変わってくることが実感できる人は多いのではないでしょうか。
篠原

篠原

でも、そういうのって心にゆとりがないと、できなくないですか…?
冨田さん

冨田さん

そうですね。だから僕は土日にリラックスできるシチュエーションをつくって実践していました。

これは初めてカミングアウトするんですけど、ミスチルやサザンの曲のピアノやオルゴール版や自然の音を聴きながら振り返りの作業をやってましたね(笑)。
ゴリゴリ系の「パッション」さんがオルゴール聞くんだ…

他人からフィードバックをもらってメタ認知するコツ

篠原

篠原

魔法の質問以外に、自分をメタ認知するコツはありますか?
冨田さん

冨田さん

他人からフィードバックをもらうのがオススメです。僕もよく「自分のどういう部分を改善したらいいですか?」ってお客さんや社内の人に質問して歩いてました。
篠原

篠原

それならすぐにできそうです。
冨田さん

冨田さん

ただ、いいフィードバックをもらうためには2つのポイントを押さえなきゃいけません。

1つは「僕は成長したいんです」という姿勢を伝えること。悪い部分を指摘するときってどうしても遠慮が生まれてしまい、表面的な指摘にとどまることが多いんですよね。

なので「本当に成長したいので本音でお願いします!」というスタンスを相手に示しましょう。すると「それだったらきちんと指摘してあげよう」と本音で話してくれるはずです。
篠原

篠原

本音のフィードバックをもらうためには工夫が必要なんですね。
冨田さん

冨田さん

もう1つは、最初にいい点をほめてもらうこと。そのあとに改善点を指摘してもらいましょう。するとフィードバックする側はやりやすくなります。

受ける側としても、いきなり悪い点を挙げられると、いくら心の準備をしていたとはいえダメージを受けてしまい、素直に受け入れづらくなってしまいます。
篠原

篠原

ああ、たしかに心が折れちゃうこともありそうです。
冨田さん

冨田さん

さっきの「自分の責任だと考える」もそうだけど、メンタルが弱っているときにやるとキツいので、タイミングには気をつけましょう。

成果を出すには「お客さんと会う前」の工程の“型化”がキモ

篠原

篠原

成果を出すために必要なマインドは分かったんですけど、「明日から自責で生きるぞ!」と思っても難しいですよね。代わりにすぐ取り入れられるテクニックについても聞きたいです。
冨田さん

冨田さん

最初に言った“いいお客さん”とたくさん会うためには、アポを取るまでの「前工程」こそがキモなんですよね。

それなのに、なぜか多くの人は、アポを取った後の「後工程」のことばかり考えているんですよね。

「もし社長と会えたら、こんな話をしよう」みたいな。
篠原

篠原

う…たしかに私も営業をしていたころ、そういう妄想ばかりしてました…
冨田さん

冨田さん

でも、特に新規開拓の営業だと、アポが取れる確率はかなり低い。100件連絡して、下手したら1件もアポが取れないかもしれない。

それなのに、なんで会ってからのことばかり考えてるんでしょう? その時間のすべてを「会うためにはどうすればいいか」と考える時間に当てるべきです。
篠原

篠原

ツラい…じゃあ、前行程こそがキモだとして、どういう工夫をすべきなんでしょう?
冨田さん

冨田さん

あらゆる工程を“型化”しましょう
篠原

篠原

型化…ですか。具体的にはどんなものですか?
冨田さん

冨田さん

たとえば僕は「受付突破のための第一声」の型を持っていました。

新規営業の場合は、「つながないとマズい」と受付の方に思ってもらうことが、ボトルネックになりやすい受付突破率を大きく向上させます。

そのためのパターンの1つとして「この1週間の為替急変で大きな損失になっているのではと思いまして、その喫緊の対策のためお電話させていただきました」というフレーズがあります。
篠原

篠原

ポイントとなっているのはどの部分でしょう?
冨田さん

冨田さん

受付の判断を超えているうえに、会社の経営課題を解決してくれそうな雰囲気も伝わりやすい、というあたりですね。おかげで決定権を持つ担当者につないでもらえる確率が上がりました。

この場合はウソにならないようにインパクトのある提案をしないといけませんが、いろんな伝え方を模索すればターゲットやシチュエーションに合ったベストなものが見つかるはずです。
篠原

篠原

なるほど。いろんなパターンを試して、一番いいものをどんどん型にしていけばいいんですね。
冨田さん

冨田さん

はい。型にする対象はいくらでもあります。

立ち振る舞いやセールストーク、顧客リスト選定もすべて型化できます。営業の成果につながる要素を因数分解して、ボトルネックになっているところから改善しましょう。
出典

『営業 野村證券伝説の営業マンの「仮説思考」とノウハウのすべて』より

冨田さんが現役時代に使っていた図。営業成果を出すための課題を見つけるのに役立っていたそう
冨田さん

冨田さん

営業には奇抜なアイデアは不要です。型の数を増やして、ブラッシュアップしつづければ成果は必ずついてくるはずなので、ぜひ実践してほしいですね。

これからの営業の理想像はドラえもん!?

篠原

篠原

最後に営業という職業の今後について聞きたいです。最近よく「営業の自動化ツール」などを見かけるのですが、これからどんどん自動化が進んだら営業という仕事はなくなってしまうとお考えですか?
冨田さん

冨田さん

人数は減るかもしれませんが、人間がやる営業の価値は損なわれないと思います。
篠原

篠原

どういうことでしょう?
冨田さん

冨田さん

そもそも営業には、2つの役割があると考えています。それは「ビジネス的信頼関係の構築」と「人間的信頼関係の構築」

「ビジネス的信頼関係」はロジカルなつながりで、役立つ情報をあげることで構築できるようなイメージ。そして「人間的信頼関係」はエモーショナルなつながりのことで、「人としてなんか好きだな」と思ってもらうもの。
冨田さん

冨田さん

ビジネス的信頼関係の構築は、人工知能の発達などで人間以外にかなり任せられるようになると思うんですけど、人間的信頼関係は生身の人間にしか築けない

となると、一部のプロが担うようになって、より希少価値が高くなるはずです。
篠原

篠原

ロジカルとエモーショナル。特にエモーショナルな部分が重要だと。
冨田さん

冨田さん

はい。それを踏まえると、これからの営業の理想像はドラえもんなんじゃないかと思うんですよ。
篠原

篠原

ドラえもん…!?
冨田さん

冨田さん

ドラえもんって、のび太くんに泣きつかれたらひみつ道具というソリューションを提案するとともに、親身になって話を聞いてますよね。

そんな風に、高い問題解決能力と顧客に寄り添える人間臭さを併せ持つ、ドラえもんみたいな存在が、これから求められる“理想の営業”なんじゃないかなと思います。
「営業の極意」についてのお話でしたが、自責で捉えるマインドや「ビジネス的信頼関係」と「人間的信頼関係」の話は、営業だけでなくあらゆる職種に通じる原理原則だなと感じました。

冨田さんの営業に対する熱いパッションに触れて、「営業だったころの自分に聞かせたい!」と思ったのと同時に、何だかもう一度、営業にチャレンジしたくなりました。営業、最高!

〈取材・文=篠原舞(@maichi6s)/撮影・編集=葛上洋平(@s1greg0k0t1)〉

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