ビジネスパーソンインタビュー
堀江貴文著『ハッタリの流儀』より
いいスライドは「解説するための資料」ではない。ホリエモンの“ハッタリ”プレゼン術
新R25編集部
起業家・堀江貴文が突出した存在になれた理由。
それは「大きなハッタリをずっとかましてきたからだ」と堀江さんは言います。
プロ野球の球団やフジテレビの買収、選挙に出馬、ロケット打上げなど、まわりから無謀とも言われるチャレンジをして、日本中にホリエモンという名を知れ渡らせました。
そんな堀江さんの著書『ハッタリの流儀』では、みんなが腰を抜かすようなことを言いつづけ、それに挑みつづけることで、自分の株を上げる方法が語られています。
同書より、自分の価値を上げる堀江さんの「ハッタリ術」を3記事でお届けします。
「いいプレゼン」の絶対条件
ハッタリが、とても実用的に機能するのが「プレゼン」の場面である。
「いいプレゼンとは何か?」
いまだに多くの人が、パワーポイントで美しい資料を作り、ビシッとスーツを着こなして、いかにも「デキる人」という調子で商品説明をすることだと誤解している。
実際、僕もよくそういったプレゼンを見せられることがある。
しかし、いくら巧みな話術を駆使されても、凝った資料を見せられても、そのビジネスやその人自体に将来性を感じなければ、当然のことながら僕は、投資を決めるなんてことはない。
逆に、たとえプレゼン自体は拙くても、資料が多少不格好であったとしても、その事業やその人自身に成功を見込めるのなら、僕は喜んでベットしていく。
勝負は、実はプレゼンに入る以前──すなわちプレゼンをする相手を選ぶ段階から始まっている。
もし、あなたが「まったく新しいビジネス」を提案したかったとする。まずは周りを見回してみよう。話を聞いてくれそうな人の中に、新し物好きな人はいないだろうか?
そういう人に会いに行き、まずは気に入られること。これが、プレゼンの第一手である。
僕は、起業した当初、アルバイト時代に仲良くなった人たちから、新し物好きのおじさんをたくさん紹介してもらった。
僕は、どちらかと言えば、営業に向いていないタイプの人間である。そんな僕でも、いろいろな場所にプレゼンに行って、多くの仕事や投資を成立させてきた。
それは、「知人に紹介してもらった人にしか会わなかったから」である。飛び込みに近い状態でのプレゼンは極力避けるべきである。
人を紹介してもらうなんて難しい。そう感じるかもしれない。しかし、事は意外と単純である。「そういう人いないですかね?」と知り合いや友人にとことん尋ねればいいだけだ。飲み会や立ち話のときに、アンテナをはり続けるべきだ。
チャンスはどこに転がっているかわからない。巧みなプレゼンをしたり、キレイな資料作りをしている時間があるならば、自分の提案を欲しがりそうな相手を探すことに時間をかけたほうがいい。
いい資料を作ることよりも、自分のプレゼンを求めている人と出会うこと。常にその嗅覚を研ぎ澄ましておくことのほうが大切だ。
プレゼンはプレゼンをする前に勝負が決まっている。「プレゼン術」より「ハッタリ力」だ。
相手の心をつかむハッタリ実例
ここでいきなり「プレゼンの場では、こうすればよい」と概念的な説明をしても、読者の皆さんが実際に使うにはどうすればよいか、わかりにくいだろう。
そのため、ここでは「ある事業を開始するにあたって、出資者を募るためのプレゼンを行うとしたら…」という前提で、僕が実際に行うであろう会話の例を示したいと思う。
では、早速始めていこう(話の途中に入るカッコで括られた文章は、要所要所での簡単な解説である)。
(自己紹介とアイスブレイクが終わった後に…)
『ハッタリの流儀』昔、僕の部下が『コンタクトレンズ店が儲かる』って話をしていまして。その元部下の会社は、コンタクトレンズを売っていたんです。
それが、コンタクトレンズといっても、非常に特殊なコンタクトレンズで。たとえば猫の目の形になるコンタクトレンズとか。
人間の目というのは黒目のところで物を見るので、白目の部分は視覚にまったく関係ないらしく、そこに模様を描いたりとかできるんです。
ワンデーアキュビューみたいなメジャーどころは、ちょっとだけ黒目の部分を大きく描くというマイルドなものですが、彼の会社のは、ビジュアル系バンドのアーティストが着けるような感じの派手な目になるんです。
いろんなバリエーションがあって、それを180種類も売っているんです。
(…といった感じで、最初は脈絡がなさそうだけど、でも何だか大事そうな話。つまり、「よくわからないけど、何かビジネスの種っぽい話も含まれているみたいだし、聞いておいたほうがいいのかな?」と思わせるような話を“唐突に”始める。それによって、「お、もしかしたらこいつの話は聞いておいたほうがいいのかな?」と、相手の関心を一気に引きつけていき…)
『ハッタリの流儀』その会社の親会社というか、スポンサーになっている企業のひとつが、熊本にあるメガネの小売チェーン店なんです。
その企業は地域の財閥のような会社で、厳密に言えば財閥ではないのですが、地方には小財閥みたいな会社があるんです。
県レベルになると、県内ですごく幅を利かせているミニ財閥みたいなところがいっぱいあって。それらはいまだに同族企業だったりして、莫大なお金を持っています。
そういう会社が、地方のいろんな商売を独占してやっているんです。
たとえばコカ・コーラボトラーズジャパン。コカ・コーラの自動販売機にコカ・コーラの缶とかビンとかペットボトルとかを入れていくような会社がありますよね。ああいった会社は、地域ごとにオーナーが違います。
ドコモショップみたいな携帯電話の販売会社なんかも、地域の財閥の人がスポンサーになって売っていたりとか。
あるいは、トヨタのディーラー。レクサスとかトヨペットとかのディーラーの親会社も、トヨタではなくて地元の財閥がオーナーだったりするんです。
その小売メガネチェーンも、そういった企業のひとつなんですけど…
(…と、本題に入る前に、〈本題に関連してくる〉「業界の裏ネタ」みたいな話を挟み込んで、「こいつはもしかしたらただ者ではないのかも」といった相手の関心をさらに引きつけつつ…)
『ハッタリの流儀』僕がすごいなぁと思ったのは、その地方の財閥が手がけている、携帯電話販売のビジネスにまつわる話です。
これ、さっき話したコンタクトレンズのビジネスにもからんでくることなんですが、コンタクトレンズ店に行くと、大体眼科医、目のお医者さんとセットになっていますよね。
そこにすごい盲点があって。そのときの医者って実は、眼科医である必要はないんです。法律上、医師免許さえ持っていれば、どの分野であっても処方箋は出せることになっているので。
医者は、内科とか外科とか、いろんな専門群に分かれていますが、眼科医を選ぶ人は、何十人に一人しかいません。
とはいえ、医師免許自体は単純に「医師免許」ひとつだけなんです。
つまり、医師なら誰でも『眼科医だ』と名乗るだけで、眼科医になれるんです。経験がなければ眼科医になれないといったルールはないし、一応基礎知識はあるわけですから、別に眼科医を名乗って構わない。
だから、コンタクトレンズ店に併設されている眼科は、医師免許を取ったんだけど一人前になっていないような研修医が、マニュアル通りに目の検査をして処方箋を出していることが多い。
そうやって、大幅なコストカットを行っているわけです。
僕がすごいと思ったのは、それをうまく利用して商売をやるたくましさと、眼科の専門医じゃなくてもいいんだってことに気づいたこと。こういうのって、すごいビジネスの盲点を突いていると思うんですよね。
(…といったように、「話が盛り上がって、“つい”微に入り細を穿うがち熱く語ってしまいました!」という雰囲気で、「儲けのカラクリの核心」みたいな話を、バーっと一気に、かつ熱心に語り、「これはちょっと本当に、こいつの話はちゃんと聞いておかないと損するかもしれないな…」と思わせておきながら…)
『ハッタリの流儀』僕もコンタクトレンズの話は何となく知っていましたが、彼が教えてくれたのは、その先の話で。そのメガネの小売チェーングループというのは、携帯電話会社と一緒になって補聴器を売っているそうなんです。
その補聴器というのがまた、ものすごいビジネスで。補聴器ってちょくちょく調子が悪くなるらしくて、一年に一回くらいメンテナンスをしなきゃいけないんです。
それで、今は高齢の方でも携帯電話を当たり前に持っていますよね。その携帯電話店で、一緒に補聴器販売のビジネスもやっているそうなんですよ。
すると、携帯電話店に来るお客さんに補聴器の提案をするだけですから、ものすごく効率よく営業ができるわけです。
しかも、どうしてそのビジネスにメガネの小売チェーン店が手を出しているのかと言えば、補聴器の調整をするには、耳鼻科の処方箋が必要になるからなんです。
すると今度は耳鼻科医が必要になりますが、耳鼻科医も眼科医とまったく同じ仕組みで、医師免許を持っていたら耳鼻科医を名乗ることができるんです。
つまりそのメガネの小売チェーン店は、コンタクトレンズを売るのに使っている眼科と補聴器の耳鼻科を、一緒くたにして運営しているというわけです。
研修医たちに、効率よく動いてもらうことで、ものすごく低コストにビジネスを回して、莫大な利益を収めています。そういうことを知っているのが、地方の財閥が財閥になりえたゆえんなんです。
(…と「儲けのカラクリの“最も核心的な部分”」について話をし、次のような最終提案に入るのだ)
『ハッタリの流儀』それで今度、その補聴器を売るビジネスを、東京でうちがやることになりました。
つきましては、ご投資いただくことで、一緒にそのビジネスを大きくしていきませんか?
…このように話を展開すれば、「この話を他に持っていかれたら損するな…」と、相手に思ってもらうことができる。
プレゼンでやるべきなのは、キレイな資料や完璧な演説を披露することではない、相手が前のめりになるような興味のあるつり糸を垂らして、ハッタリに食いつかせることなのだ。
プレゼン資料はシンプルが一番
ここまで、話し方の例を一対一の商談形式で紹介してきた。だから、「一般的なプレゼンの場面では、どういう話し方をすればいいのだろう?」と迷った人がいるかもしれない。
しかし実は、プレゼンでの話し方というものは、一対一の商談形式でも、一対多数の典型的なプレゼンの形式でも、ほとんど変わらないものである。
先ほどは、スライドなどを使用しないような場面を想定して話したが、その場合と、多数に向けて行ういわゆるプレゼンとの違いは何かと言えば、「シンプルなスライドを作り、それをスクリーンに表示しながら話す」という程度のものである。
スクリーンに映し出すスライドは、「何かを解説するための資料というよりも、口頭で次の話題を出すためのきっかけにすぎない」と考えてほしい。
シンプルに、箇条書きで、必要な項目を列挙してあれば十分だ。
たまにスライドに書いてある文字をそのまま読む人がいるが、それはありえない。聞いているほうは興ざめする。
要は、「プレゼンの途中で次の話題は何だったかを確認するために、箇条書きでお題を書き留めたようなもの」が、僕の考える「いいスライド」なのである。
シンプルなものにするべき理由は、すでにお話しした通り。「資料の作成に手間ひまをかけるのは本質的ではないから」である。
結局のところ、僕の言う「プレゼン資料」とは、スクリーンに投影しながら使う、「話の目次立て用のツール」なのである。
フォントは、見やすさを優先するため、太めのゴシック体をおすすめする。ソフトについては、使い勝手がいいからという理由で、キーノートがベターだと思う。
また、箇条書きがいいとは言ったが、臨場感を演出するために、スライドの中に適宜、写真や動画を盛り込むのは有効な手だてである。
たとえば「美味しい肉の説明をしたい」といった、「視覚的に説明したほうが、口頭や文章で説明するよりも明らかに早い」というとき。
シズル感のある写真や、「ステーキが焼けてジュージュー音を立てているような動画」をスライド上に掲載したほうが、肉の美味しさがより強く伝わる。
資料なんか伝わればいいのであって細かなテクニックなど必要ない。シンプルにプレゼンを補助するようなツールにすぎないのだ。
ハッタリをかますときに小手先の資料作成スキルや、プレゼンスキルは必要ない。
自らが面白い人間になり、相手のことをよく知っておく、そして形式にとらわれず、テンポよく、気持ちよく話を展開することが大事だ。
相手が前のめりになるようなトークを繰り出すのだ。
「ハッタリ」を武器に成長する方法はこちら
「ハッタリ」と聞くと、つい「ウソ」や「騙す」といったネガティブなイメージを抱きますが、堀江さんに言わせれば“自分を突き抜けた存在にする”ためのツールなんだとか。
ハッタリをかまして、それを実現させるために努力することを繰り返すことで圧倒的に成長できると言います。
堀江さんの『ハッタリの流儀』を糧にして、自分の成長スピードを底上げしましょう!
『ハッタリの流儀』の特設サイトはこちら
光本勇介さんの『実験思考』で実施された「価格自由」の取り組みが『ハッタリの流儀』でも採用されています。
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「ハッタリをかまして、行動していきたい」という人はぜひのぞいてみてください!
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