ビジネスパーソンインタビュー
「今の日本って、逆にチャンスですよね?」
「少子高齢化対策、やめちゃえば?」キンコン西野さんに“高齢化問題”を考えてもらった
新R25編集部
発想力豊かなアイデアマンに未解決の難題をふっかける企画、「アイデアマンはこの難題をどう解く!?」。
前回は、稀代のアイデアマン・キングコング西野亮廣さんから「若者の投票率を上げるには、下心をデザインせよ!」という目からウロコなアイデアが飛び出しました。
今回のテーマは、「少子高齢化社会」。
長生きはけっこうなことですが、よく考えると、日本にはなかなか“地獄な老後”が待っている気がしませんか?
今の20代が老後を迎える2060年、高齢者率は約40%に達するとも言われており、人口の半数近くを年金で支えられるわけないし、定年までの貯金で100歳まで食べていくのもキツそうだし、僕ら、老後もずっと働かなきゃいけないのでは…!?
…ということで西野さんに、「“僕らの老後”に希望をください」と相談してきました。「少子高齢化問題」、アイデアマンはどう解く!?
〈聞き手=サノトモキ〉
今回の取材場所は、西野さんのオンラインサロンメンバー限定で利用できる会議室「ZIP」。「えんとつ町のプペル」の世界観をモチーフにデザインされている非日常の空間は、アイデアがめちゃくちゃ湧いてきそう…!
サノ
西野さん、僕らに幸せな老後って待ってるんですかね…
西野さん
暗っ!(笑)
世の中への不信感が顔に漏れまくっている筆者
サノ
年金はどうなるかわからないし、老いた身体に鞭打って老後も労働、略して“老働”コースまっしぐら…もうお先真っ暗としか思えなくて。
西野さん、僕らの老後に希望をください…!
西野さん
うーん、そうですねえ…
とりあえず、少子高齢化対策をやめちゃえばいいと思います。
サノ
えっ?
見たことないタイプの変化球が返ってきた!
少子高齢化は止めなくていい!? その真意とは…
サノ
少子高齢化対策はもういらない…?
今の日本は、「教育無償化」とか「子育て支援」とかで高齢者を支える若者の数を増やして、高齢化社会に備えようとしてるみたいですよ?
西野さん
そもそも、子どもを産む産まないなんてそれぞれの自由ですし、「若者が老人の生活を支える」というのは国の都合であって、個人の都合ではない。
そこを頑張るよりも、どうやったらおじいちゃんおばあちゃんが老後を楽しく、かつ自立して暮らしていけるかを考えたほうがよくないですか?
サノ
たしかに、少子高齢化なんて今さら何をしても限界のような気も…
西野さん
理想論に聞こえるかもしれませんが、日本はおじいちゃんおばあちゃんが大活躍する「“老人先進国”のモデル国家」を目指しちゃえばいいんですよ。
今そのモデルとして一番いい位置にいるのって、間違いなく“世界一の高齢社会”である日本なんで。
※日本の「高齢化率(65歳以上の老年人口が総人口に占める割合)」は27.7%(2017年時点)で、2位に大差をつけてのぶっちぎりの世界1位
「だって1位っスよ、1位!」
西野さん
少子高齢化って、たぶんほっといても世界中の先進国が今後ぶち当たるわけでしょ? だったら、その最先端を走ってる日本が「こうやれば高齢者が多くても回せるわ」っていうビジネスモデルを作って、そのパッケージを海外に売ればよくないですか?
これが7番目とか8番目だったらどっかに先を越されちゃうけど、今は日本が最強なんだから、めちゃくちゃチャンスです。
サノ
ワーストランキングをひっくり返して、1等賞を獲りにいく…ポジティブ!
暗めの相談しにきたのに急に楽しい会議になってきたぞ…!!
西野さん
こういうでっかい波って食い止めることばっか考えるんじゃなくて、その波を止められない場合に備えて、いっそのこと乗りこなしちゃうベクトルでも準備しておけばいいと思うんですよね。
「どうすれば老後も楽しくお金を稼げるか」なんてまだ誰も解いてない問題だからめちゃくちゃ価値あるはずだし、考えるの絶対面白いじゃないですか(笑)。
なんで今日は、超高齢国家としてトガりまくる方向で考えてみましょ!
高齢化問題とか暗い話ばっかりだから、こういう意見を待ってたんだ…
「愛される欠陥」こそが老後最大の武器
サノ
でも、歳をとるとどうしても体力とかいろんなパフォーマンスが落ちてきちゃいますよね。
老後も活躍するための能力って、何かあるんでしょうか?
西野さん
歳を重ねることによって手に入る能力は、「愛される欠陥」です。
サノ
また新たな西野語録が…詳しく説明してもらってもいいですか?
西野さん
えっと、たとえば、僕が通っている沖縄の居酒屋に、カウンター越しに一生懸命お酒に付き合ってくれるおじいちゃん店主がいるんですけど、ひとつだけ問題があって…
このお店、店主が一番最初に酔いつぶれるんです。
なにそれかわいい
西野さん
もう次のお客さんが入ってきて注文取りに来るの待ってるのに、畳の部屋で完全に寝ちゃってるわけですよ。
でも、たくさん話を聞いてくれるいいじいちゃんだから僕も他のお客さんもついつい助けたくなっちゃって、注文を取りに行ったり、場合によっては近くのコンビニまで走って缶ビール買いにいったりするんです。
結果的に、店主が寝てる間に勝手にお店が回っていく。
サノ
すごい…!
西野さん
こんなお店、20~50代じゃ絶対に作りだせないんですよ。「ちゃんと仕事しろよ」ってなっちゃうから。
「愛される欠陥」というのは、「一人では生きていけない(欠陥)×助けてあげたい(愛され力)」の度合いです。人間の人生においてはU字曲線で、赤ちゃん時代と老後にココが伸びる。これは「支配力」とイコールです。まわりを巻き込んでしまうわけですね。
サノ
たしかに、おじいちゃん店主に少しぐらいミスされても許せちゃうかも。
西野さん
ただ、赤ちゃん時代と決定的に違うのは、老後の「愛される欠陥」は、「愛され力」を磨いてきた人しか手に入れられないというとこです。
西野さん
今Twitterで人の批判とか不平不満ばっかり言うのが習慣化してる人たちは、「愛され力のあるかわいいおじいちゃん」とは真逆の「頑固じじい街道」を邁進中なので、老後は本当に苦労すると思います。
口を開けばとにかく誰かのこと否定してるだけのじーさんばーさんとか、誰も一緒に仕事したくないでしょ?
サノ
たしかに…
西野さん
逆に、愚痴も悪口も気楽に言えちゃうこの時代に、「あえて言わないポジション」に張ってる人はそれだけですごく強くて、「愛され力」もグングン上がっていく。老後も勝ちつづけていくのは絶対こういう人です。
まわりから助けてもらえる老後を迎えるためにも、Twitterで悪口書くのは今日でやめましょ(笑)。
気をつけます
歳をとるのが楽しくなるエンタメを。オンラインサロンで構想中の「R60バー」とは…!?
西野さん
あと、「おじいちゃんおばあちゃんのためのエンタメ」も成長産業だと思います。
とくに、「老後楽しめる場所を自分たちで用意する」みたいなケースが増えていくといいんじゃないかな。
サノ
それって、今のおじいちゃんおばあちゃんが自分たち向けのエンタメを作っていくイメージですか?
西野さん
いや、彼らはもうじゅうぶん頑張ったから、年金の恩恵を受けてゆっくりしていいと思うんですよ。
だから、僕らっすね。今の30~50代くらいまでの人が、今のうちに次の手を打っておかなきゃいけない。
僕のサロンでもすでにいくつか構想があって、たとえば「老人ホーム」ももう、自分たちで作っちゃえばいいと思っています。
西野さん
老人ホームも合う合わないってあると思うし、家族に無理やり入れられるくらいなら、自分で好きに作っちゃったほうが楽しそうじゃないですか。
だから、僕今兵庫県に美術館を建てていて、そのまわりに町を作ってるんですけど、最終的にはそこに自分が入りたくなるような老人ホームを作りたいんです。
独身のまま80歳になっても、今つるんでる友達とかスタッフ、サロンメンバーが近くに住んでて、軽く飲みに行けたり、会いたいときにぱっと集まれたりする老人ホームがあったら幸せだなあと。
サノ
「夢のマイホーム」みたいに、「老後に仲のいい人と暮らす老人ホーム建てる」が人生の目標のひとつになったらめっちゃ素敵かも!
西野さん
あと、“年齢を重ねること”自体をエンタメ化する「『R60』バー」企画も進行中でして。
この間50歳くらいのサロンメンバーが、「サロンで大学生とかと話せるのは楽しいけど、話についていけなかったりして、歳をとることに劣等感もある」って言ってたんですね。
サノ
まあ、「年齢差」ってどうしても気になりますよね。
西野さん
そこで、「60歳以上じゃないと入れないバー」を作ることにしたんです。
同世代だけで楽しめる「R指定コンテンツ」なら「年齢」というコンプレックスを隠さなくていいし、年齢制限のある魅力的なエンタメがたくさん待ってたら、歳を重ねるのも楽しくなると思うんですよね。
R60バーは僕がデザインするんですが、当然僕もまだ客としては入れない(笑)。20年ぐらい楽しみに待ちつづけます。
サノ
老若男女誰でも一緒に楽しめるエンタメだけじゃなく、歳を重ねるのが楽しみになるようなエンタメを考える、か…
「高齢化時代を楽しむ目線」がわかってきた気がします!
老後に向けて貯金はしたほうがいい?
サノ
ただひとつ…そもそも「リタイアまでにお金を貯金する方法」を考えられれば老後働く必要はないと思うんです。
最近は資産運用とか長期分散投資に手を出しておけば老後の心配はないみたいな話も話題ですし…
西野さん
お金の勉強はきちんとしておいたほうがいいと思いますが、「ここに投資しとけば老後は安心!」みたいなのに釣られて投資するのはやめたほうがいいですね。
カモにされて終わるので。
サノ
じゃあ、西野さんは老後に向けてとくべつ貯金とかしてないんですか?
西野さん
一切してません!
今僕月の生活費7万だし、老後も年金と収入あわせて月15万くらいあれば全然生きていけると思ってるんで。
むしろ、お金を使えば出会えるはずだった人や知識、アイデアを、貯金のために40年近くまるっと諦めちゃうほうが断然やばいと思います。
サノ
完全にそうなりつつありました…
西野さん
貯金ばっかして失敗することから逃げてたら「愛され力」も身につかないので、老後のことを考えたらお金は使ったほうがいいっすよ。
楽しい経験・苦い失敗にお金を使って「愛され力」を貯蓄して、楽しく稼ぎつづけられる老後を迎えましょう!
…という、今回させてもらったような話を、ホリエモンかひろゆきサンが言ってましたよ。
サノ
え?
西野さん
ギャハハ!(笑)
今回の取材で個人的に一番衝撃だったのは、アイデアマンは本当に見方ひとつでピンチをチャンスに変えちゃうんだな、ということでした。
老後お金が足りなくなるのは心配だし、やっぱりなんだかんだ貯金もしていくと思うんですけど、西野さんの話を聞いて老後のことを少し前向きに考えられるようになった気がします。
あんまり幸せを先送りしすぎず、きちんと「今この瞬間」もフルに楽しんで、「生涯現役!」と胸を張れる「かわいいおじいちゃん」になっていきたいと思います。
なおこちらの「アイデアマンはこの難題をどう解く!?」企画、次回のテーマ絶賛募集中です! アイデアマンに解決してほしい難題があれば、ライター・サノのTwitterアカウントまでご連絡を! お待ちしております~~!
〈取材・文=サノトモキ(@mlby_sns)/編集=天野俊吉(@amanop)/撮影=長谷英史〉
西野さんとさまざまなアイデアを実現できるオンラインサロンはこちら!
西野さんのアイデアやプロジェクトに関わることができるのはもちろん、今回取材場所となった会議室「ZIP」の利用をはじめ、サロンメンバーだけの特典も盛りだくさんの「西野亮廣エンタメ研究所」。
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