ビジネスパーソンインタビュー
「今、うちも働き方改革中ですから…」
西野亮廣「働き方改革を鈍らせている元凶は、“下”がサラリーマンの働き方しか知らないこと」
新R25編集部
発想力豊かなアイデアマンに未解決の難題を吹っ掛ける企画、「アイデアマンはこの難題をどう解く!?」。
今回のテーマは…「働き方改革」です。
国が主導で準備を進めてきた「働き方改革」。取り組む企業も増え、ここ数年、労働環境や働き方のスタイルが少しずつ変わってきた気もします。
しかし!まだまだホワイト企業を名乗るための「名ばかり改革」になってる企業も少なくないようで、「残業禁止」と言いつつ家で仕事をさせたり、「同意のない転勤はない」と言いつつ圧力をかけて「同意」させたりしている企業もあるのだとか。
そこで今回は、アイデアマン・キングコング西野さんだったらどんな「働き方改革」をするのか、丸投げしてみることに。
「西野さん×働き方改革」…。やはり、“あの話題”も飛び出します。
〈聞き手=サノトモキ〉
【西野亮廣(にしの・あきひろ)】1980年生まれ。1999年に漫才コンビ「キングコング」を結成。活動はお笑いにとどまらず、絵本の制作、オンラインサロン「西野亮廣エンタメ研究所」の運営など、未来を見据えたエンタメを幅広く生み出しつづけている
サノ
ということで、今回は「進んでいるようで進まない働き方改革、西野さんだったらどうする!?」がテーマです!
ふがいない日本の現状を、思いきりぶった切っていただけると…!
西野さん
まあ、今うち(吉本)も絶賛「働き方改革」中ですから、話せることはいろいろと…ゲフンゲフン。
あわてて口をふさぐ西野さん
西野さん
ただ真面目な話…
「働き方改革」が行き詰まってるのって、「下」発信の改革が起こってないからだと思うんですよね。
サノ
えっ。
会社が悪いんじゃないんですか…!?
「改革を起こすべきは、上より“下”」。その理由は…
西野さん
いや、お偉いさんだって、残業がなかったり、副業OKだったり、社員の要望が叶うほうがいいなんてことはわかってるんですよ。
ただ、経営サイドには「そうしたくてもできない理由」があるわけで。
そこを理解して「会社側のメリット」まで考慮したアイデアを提案できる「下」の存在が不可欠なんです。でも今は、そういう人が少なすぎる。
「今変わるべきは、上より『下』です」
西野さん
以前吉本でも、先輩方が「給料を上げろ!」と社長に言った件があったんですけど、結果はあえなく撃沈でした。
それも当然ですよね。「会社にメリットをもたらしつつ自分たちの給料を上げるアイデア」がなかったので。
サノ
たしかに、下からの改革って“反抗”のレベルにとどまりがちかも…
西野さん
だから僕、1年前に、「給料アップ」問題と「闇営業」問題をまとめて解決しつつ、経営サイドにもメリットがあるアイデアを吉本に提案したんです。
サノ
あっ、結局「闇」の話いいんですか…?
スイッチが入ってしまった西野さん。さっき口をふさいだのはなんだったのか
西野さん
僕は、「芸人が自分で直接仕事を募集できるクラウドファンディングサービスを作って、手数料15%を吉本に落とす仕組みにすれば、芸人も吉本もWin-Winになる」と大崎会長にメールしたんです。
吉本が「闇営業」を煙たがるのは、「反社チェックができないから」と「会社にお金が落ちないから」という二つの理由があると思うのですが、この方法だとそこもクリアできるし、芸人の仕事が増えて収入も上がる。
サノ
たしかに、両者の事情を完璧にクリアしてる…
そのアイデア、結局どうなったんですか?
西野さん
大崎さんから「いいよー」の二つ返事をもらって、日本初の芸能事務所のクラウドファンディングサービス「シルクハット」が生まれました。
サノ
おお。会社側の対応も早かったんですね。
西野さん
会社側の「そうしたくてもできない」を解消できるアイデアなら、経営サイドだって即採用するんですよ。
「まわりを勝たせて自分も勝つ」みたいな、「自分の一人勝ち」以外の勝ち方を発想できる人が「下」に増えると、働き方改革は進みやすくなると思います。
ただ希望を伝えるだけじゃ、改革は進まないんです。
「下」の立場にいながら吉本に働き方改革を起こそうとした西野さん。言葉に重みがあります
サラリーマン最大の不幸は、「サラリーマンの働き方」しか知らないこと
サノ
でも、普通のビジネスパーソンが「シルクハット」みたいな斬新な働き方を考えるのは難しい気がするんですけど…
そういうアイデアが出る人と出ない人の違いって何なんでしょうか?
西野さん
働き方の選択肢をどれだけ知ってるか、でしょうね。
サラリーマン最大の不幸にして、改革を鈍らせている元凶ってなんだと思います?
みなさんはわかりますか?
サノ
難問すぎて全然思い浮かばない…何なんでしょうか?
西野さん
「サラリーマンの働き方しか知らないこと」です。
今、情報格差がありえない速度で加速してると思うんですよ。テレビで「クラウドファンディングとクラウドソーシングでお金とスタッフを集めてます」とか言うと、ホントに宇宙人みたいな扱いを受けますから(笑)。
「なんかよくわかんないけど、悪いことしてるんでしょ?」みたいな。
サノ
たしかに僕も、「会社からお給料をもらう」以外の働き方、あんまりよくわかってないかも…
西野さん
結局、「自分の意志で選ぶこと」が人間の“幸せ”につながってると思うんですよね。
サラリーマンの働き方、フリーランスの働き方、オンラインサロンの働き方…いろんな働き方のいいところ悪いところを知ったうえでサラリーマンを選んだ人は、かなり幸福度が高いはず。
でも、サラリーマンの働き方しか知らないと、サラリーマンの悪いところしか見えないんです。不満や文句は出ても、いいところや改善策は出てこない。
サノ
つまり、「サラリーマンの働き方しか知らない人」のほうがマジョリティで、国や企業など「上」側からのアクションしか起きてないことが、今の働き方改革の問題点だと。
盲点すぎる…!!!
西野さん
だから、働き方改革を本気で前に進めたいなら、みんなそろそろ一回先入観なしで、堀江(貴文)さんみたいな「普通と違う働き方」をしてる人のことを見たほうがいいです。
“今までと違った働き方”を“会社のメリット”込みで主張できるビジネスパーソンが増えない限り、働き方はきっと変わらないので。
会社も、オンラインサロンみたいに「集合と解散」をカジュアルに繰り返せばいい
西野さん
サラリーマン側の話をしましたが、「会社側」のほうにもちょっと思うところがありまして。
会社はもう、「事業に必要な人材を雇って、固定給を支払う」という働き方をやめたほうがいいと思います。
サノ
そ、そんな根本から!?
西野さん
“会社”という仕組みの一番のネックは、「一度チーム(部署)を作ったら、仕事がないときでもお金を払いつづけなきゃいけないこと」だと思うんです。
たとえば、とあるクリエイティブ企業に映像チームがあったとすると、「今月映像の仕事なかったな~」って月でもメンバーには月給を払わなきゃいけない。
サノ
でも、そんな根深いネックを克服できる働き方なんてあるんでしょうか?
西野さん
これからは、“「集合と解散」スタイル”の時代です。
「集合と解散」スタイル…明らかに大事そうな単語出てきた
西野さん
「集合と解散」はオンラインサロンの世界の働き方で、プロジェクト単位で必要な人材をサロン内から集めて、プロジェクトが終わったら解散するんです。
たとえば、僕が仮に「ミュージックビデオ撮りたい」って考えたとしたら、サロン内で撮影班、照明班、セットの建設班とかを募集するわけですよ。で、プロジェクト分のギャラをお支払いして、終わったら解散。
サノ
オンラインサロンってそんなことができる人も集まってるんですか?
めっちゃ失礼ですけど、いわゆる“西野ファン”が集まってるだけかと思ってました。
西野さん
いやいやサノさん、ちゃんと知識をアップデートしてください!
オンラインサロンは今や、会社より大きな集合体なんです。
西野さん
たとえば僕のサロンにも、上場企業含めた会社の社長さんがたくさんいます。
映像、建築、照明、いろんな分野のプロフェッショナルチームがいるので、参加企業はわざわざ自社で固定給の発生する専門家を雇わなくても、サロンに外注すればいい。
逆に、自社の専門分野の仕事は受注もできるわけです。
サノ
サロンが一つの大きなチームになって、互いに必要な戦力を補いあえる場になってるんだ…
まさに会社を超えた組織ですね。
西野さん
業種を超えて理念を共有できる企業たちで大きな集合体(サロン)を作り、プロジェクトごとに集合と解散をカジュアルに繰り返していく。
それくらい短いスパンでトライ&エラーを回せる働き方のほうが、あっという間に需要が変わるこの時代では、会社も生き残りやすいと思うんですよね。
サノ
そうなると、社内に人を抱えすぎる必要もないから、大きな会社が減って、少数精鋭の専門チームみたいな会社が増えそうですね。
「安定」とか「働き方」の定義が、大きく変わりそう。
西野さん
まあ、こういうデカイ規模の「働き方改革」は国とか社長とかに任せて、一般のビジネスパーソンの人は、“下から変えていく発想”を持つ。
その二つの軸があれば、「働き方改革」はうまくいくんじゃないですかね。
どんな難題を振っても必ず「EXIT(出口)」を見つけるアイデアマン。ありがとうございました!
もともとは「残業削減」「副業解禁」など、今進められている「働き方改革」をベースに話を聞くはずだった今回の企画。
アイデアマンは例によって、思いっきり予想をひっくり返して嵐のように去っていきました。「働き方改革」の成否は僕たち一人ひとりに賭かっているというメッセージは、恥ずかしながら今まで全部国や会社に押しつけていた筆者の心にはかなり響きました。
なおこちらの「アイデアマンはこの難題をどう解く!?」企画、次回のテーマ絶賛募集中です! アイデアマンに解決してほしい難題があれば、ライター・サノのTwitterアカウントまでご連絡を! ご応募お待ちしております~~!
〈取材・文=サノトモキ(@mlby_sns)/編集=天野俊吉(@amanop)/撮影=長谷英史(@hasehidephoto)〉
西野さんとさまざまなアイデアを実現できるオンラインサロンはこちら!
西野さんのアイデアやプロジェクトに関わることができるのはもちろん、今回取材場所となった会議室「ZIP」の利用をはじめ、サロンメンバーだけの特典も盛りだくさんの「西野亮廣エンタメ研究所」。
「集合と解散」以外にも新しい働き方をどんどん学べるはずです。
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