「株式投資は会社員向きじゃない」

投資歴約20年のベテラン投資家が語る「資産運用初心者がやりがちな4つの失敗」

経済・マネーby 新R25編集部

先日、金融庁が公表した「公的年金以外に老後資金2000万円が必要」という報告書が話題になりました。

給料を増やすといってもそう簡単な話ではありませんし、お金を増やす手段として「資産運用」が気になり始めた人もいるのではないでしょうか。

私も危機感に駆られ、資産運用に挑戦してみようかと考え始めた人のうちの一人。

ただ、失敗して大金を失うのは怖い。初心者がやってしまいがちな“失敗の典型例”がわかっていれば、多少は回避できるかもしれないのに…

ということで、今回お話を聞かせてもらったのは、投資歴が約20年にもなるベテラン個人投資家・水瀬ケンイチさん。

これまで資産運用で経験してきた失敗と、そこから学んだ教訓を教えていただきました。

【水瀬ケンイチ(みなせ けんいち)】1973年、東京都生まれ。都内IT企業会社員として働くかたわら個人投資家として資産運用をおこなう。インデックス投資歴16年。2005年よりブログ「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)」を執筆し、日本経済新聞やマネー誌などで紹介される。著書に『お金は寝かせて増やしなさい』 (フォレスト出版)、『全面改訂ほったらかし投資術』(朝日出版・山崎元との共著)がある

森

そもそも水瀬さんは、なぜ投資を始めようと思ったのでしょう?

水瀬さん

水瀬さん

病院に勤める友人から出題されたクイズがきっかけです。

森

クイズ…ですか?

水瀬さん

水瀬さん

「老人ホームに入居するタイミングからいくら必要か?」というクイズです。その答えが「2000万円以上」という、自分の想像をはるかに超える金額だったんです。

「このまま仕事してるだけでは絶対に足りない!何かしなくては!」と思い立って調べたところ、資産運用という道があることに気づき、始めてみることにしました。

森

始めたばかりの頃から順調だったんですか?

水瀬さん

水瀬さん

いえいえ、そんなことはありませんよ。もちろん失敗もしてきました。

とくに最初はヒドかった。いわゆる「株(個別株)」を買ってしまったんですよ。

森

なぜそれが失敗なのでしょう? うまく儲けている投資家もいますよね。

水瀬さん

水瀬さん

株で儲ける主な方法は、安いときに買って高くなったら売ること。この値動きは常に起きているので、頻繁にチェックしたくなってしまうんですよ。

森

それはありそうですね。

水瀬さん

水瀬さん

そのせいで会社員としての仕事に集中できなくなってしまいましたね。

パソコンの隅にバレないように小さく株価チャート(株価の動きを見るグラフ)を出してたら、そっちばっかり気になってしまいまして…

森

ちょっとでも得したいですもんね…

水瀬さん

水瀬さん

結局、株式投資は2年ほどで卒業しました。

僕がこの失敗から学んだのは、「株式投資は会社員向きではない」ということ。

専業で運用をしていて、常に株価を追える人にとっては儲けのチャンスがあるかもしれませんが、本業と両立するのは難しいと思います。

POINT!

株式投資は会社員向きではない

資産運用のよくある失敗②:アクティブファンドを買ってしまう

森

個別株の運用を止めてからも、資産運用自体は続けていたんですよね?

水瀬さん

水瀬さん

はい。株式投資に懲りたので、プロにお金を渡して株などの運用を代行してもらえる「投資信託」に軸足を移しました。

当時は「新興国株のアクティブファンドを買うべき」といわれていたので、それを信じて買いましたね。

森

すみません…新興国株のアクティブファンドって…?

水瀬さん

水瀬さん

順に説明すると、まず「新興国株の」というのは投資信託の運用対象が新興国の株式であることを指します。

そして半自動で運用されている「インデックスファンド」に対して、プロが人力で運用しているのがアクティブファンドです。

森

アクティブファンドを選んだのはなぜですか?

水瀬さん

水瀬さん

当時は新興国株を扱ったインデックスファンドがなかったのもありますが、ほかの金融商品より儲かりそうだったんですよ。

インデックスファンドは株式相場の状況を表す「株価指数」に時価(基準価額)を連動させる投資信託。

一方でアクティブファンドはこの相場を超える利益を目指すものです。

当時はこれが「すごく儲かる」と言われていたんですよね。

森

「言われていた」ということは…

水瀬さん

水瀬さん

ご想像の通り、損しました(笑)。

森

でも、儲かるはずだったわけですよね?

水瀬さん

水瀬さん

アクティブファンドはプロが運用するため、高いリターンが期待できる一方でコスト(信託報酬)も高いんですよ。

私が買ったものは信託報酬が2%もかかるものでした。

森

2%というと、少ない気もしますが…?

水瀬さん

水瀬さん

初心者の方からするとそうでしょう。でも、株式の平均的なリターンってよくて約5%なんですよ。

もし2%が信託報酬だとしたら、半分近くが失われることになります。このことを私もきちんと認識できてませんでした。

しかも、私が持っていたアクティブファンドの運用成績は、悪化する一方。

2%のリターンですら期待できない状態だったので、2年保有したのちに売り払ってしまいました。

森

やはり、そう簡単にはいかないんですね。

水瀬さん

水瀬さん

この失敗から、「投資信託にかかるコストはたとえ1%でも高い」と身をもって知りました。

いまから始める方も「株式の平均的なリターンは約5%」と頭の片隅におきましょう。

POINT!

金融商品のコストは1%でも高いと思え

資産運用のよくある失敗③:積み立て続けることができない

水瀬さん

水瀬さん

次に買ったのがインデックスファンドです。

インデックス投資の主流は、長期に渡って定期的に同じ金額分の投資信託をただ積み立て続ける「ドルコスト平均法」というものなんですが…これが意外と難しい。

私はこのころにはだいぶ勉強をしていて大丈夫だったんですが、まわりの人はどんどんやめてしまいましたね。

森

なんでその方々はやめていってしまうんでしょう?

水瀬さん

水瀬さん

大きく分けて2つの理由があると思ってます。

理屈を理解してないとすぐ投資信託を手放しがち

水瀬さん

水瀬さん

まず1つは理屈をきちんと理解していないこと。

ドルコスト平均法は同じ金額分の投資信託を定期的に買い続けることで、“高値づかみ”のリスクを防ぎながらリターンを狙う方法です。

この理屈からすると、市場が悪化して投資信託の時価(基準価額)が下がることは、より多くの口数(量)が買えるチャンスなんです。でも慣れてないと怖くなって手放してしまう。

森

たしかに容易に想像できますね…

水瀬さん

水瀬さん

でも15年以上は投資を続けてきて、下がり続ける相場はありませんでした

「リーマンショック」や「東日本大震災」の際の市場は絶望的で、メディアにも批判めいた見出しばかりが並んでいましたが、積み立て続けていれば3年もすればほとんど元に戻りました。

その間も淡々と積み立てを続けていれば、持っている投資信託の口数が増えるので、上がった時価との掛け算でリターンが大きくなります。 (※)

※投資信託の運用成績は「投資信託の口数 × 基準価額」で表せる。安い時期なら同じ金額でもたくさんの口数を買えるため、基準価額が上がったときに口数との掛け算で多くの利益が期待できる

森

なるほど。市場の状況が悪くなっても積み立て続けることで、大きなリターンが期待できる状態になるんですね。

水瀬さん

水瀬さん

はい。インデックスファンドの積み立てを自動で行うサービスもあるので、いったん始めると自分でやることはほとんどありません

だからあえて言うなら、売りたくなっても我慢するのが唯一の仕事です。

POINT!

インデックス投資家の仕事は、売りたくなっても我慢すること

リスク許容度を明確にしてないと、ちょっとした損でも怖くなる

森

積み立て投資をやめてしまうもう1つの理由は…?

水瀬さん

水瀬さん

あらかじめ自分の「リスク許容度」を明確にできていないことです。

どれぐらい損してもいいのかを決めてないと、ちょっと損しただけで過剰に不安になりがちなんですよね。

森

そのリスク許容度って、どうやって見積もればいいんですか?

水瀬さん

水瀬さん

正直なところ、人それぞれです。「年間いくらまでの損失だったら、投げ出さずに続けられるか」と自分に問うしかありません。

森

自分に問うって難しい…。初心者向けの“基準”とかってないですかね?

水瀬さん

水瀬さん

1つの目安として「毎月貯金できる金額」を基準にするのはいいかもしれません。これはつまり、仮に失ったとしても生活がきちんと回る範囲の金額です。

この額を基準に、「貯金可能な金額の半分」などと決めて投資するのであれば、多少市場の状況が悪くなっても過剰に不安になることはないと思います。

森

「最悪なくなってもいい」と本気で思えることは大事そうですね。

水瀬さん

水瀬さん

ただ、インデックス投資の場合は長く続けるほど積み立て金額が増えるので、リスク許容度を金額で決めるのは難しくなっていきます。

慣れてきたら「年○%までの損失なら許容範囲」と、割合で決めておくと、よりいいでしょう。

POINT!

長く続けるためにリスク許容度を明確にしておこう

資産運用のよくある失敗④:やめるときに一度で現金化しようとする

森

インデックスファンドは長期保有していれば利益が見込みやすい投資法なんですよね。

でも30年後に受け取ろうというタイミングで市場が大暴落していたら、大きな損にもなり得ますよね…

水瀬さん

水瀬さん

それは「出口戦略」と呼ばれているものですね。

「どうすればもっとも得した状態で売りぬけられるのか」と聞かれることも多いんですが、残念ながらベストなタイミングはありません

森

えっ、じゃあどうすれば…?

水瀬さん

水瀬さん

ただ避けるべき方法はあります。それは一括で資産を現金化することです。

一括で受け取るとなるとタイミングを見計う必要があり、なかなか踏み切れません。

なのでいっぺんに現金化せず、積み立てにかけた時間をかけて取り崩していけばいいんです。

森

つまり20年積み立ててきたなら、20年かけて現金にしていくと。

水瀬さん

水瀬さん

そうすればドルコスト平均法と同じく、大きなリスクを避けて利益を得られるはず。追加投資はやめても運用は続けましょう

POINT!

資産運用の終盤は積み立てと同じペースで現金化しよう

私は今まで、資産運用は「余剰資金の豊富なお金持ち」や「相場が読めるめちゃくちゃ頭のいい人」だけがやるものだと思っていました。

しかしそれは資産運用の一部の話。水瀬さんが失敗を経てたどり着いたインデックス投資なら、ほとんど放置で持ちつづけさえすれば利益が期待できそう。

ズボラな私でも老後に必要な2000万円を資産運用でつくれるかも、と前向きになれた取材でした。

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今回うかがった内容がより詳細に書かれている書籍です。こちらも合わせてどうぞ。

梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)

梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)

今回お話を伺った水瀬さんが運営しているブログです。

〈文・撮影=森かおる(@orca_tweet1)/取材・編集=葛上洋平(@s1greg0k0t1)〉

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