田端信太郎著『これからの会社員の教科書』より

これを知っている営業マンは、雲の上に行ける。ビジネス世界で戦う3つの最低装備

仕事
NTTデータ、リクルート、ライブドア、コンデナスト・デジタル、NHN JAPAN、LINEそしてZOZO

最強のサラリーマン・田端信太郎さんの経歴です。

時代を動かす企業を渡り歩いた経験と、圧倒的な発信力をあわせ持つ田端さんは、新R25のインタビューでも必ず新しい学びを届けてくれます。

そんな田端さんが上梓したのが『これからの会社員の教科書』。

田端さんが経験から導き出した「仕事の基本」をまとめた同書より、「仕事の基礎」「ビジネスの常識」「情報収集」「会議の立ち振るまい」を4記事にわたってご紹介します。

ビジネス世界の最低装備①ビジネスのルールを知らない人が多すぎる

ビジネスをやるからには、ビジネスというゲームのルールをわかっておかなければいけません。

あたりまえのことです。

もちろんまったくルールがわからない人はさすがにいないでしょうが、ものすごく浅い知識で戦っている人はたくさんいます。

きちんとルールを知らないというのは、マージャンの「役」を知らずに、とりあえずツモっては捨てる、ツモっては捨てるということを、ドンジャラみたいなレベルでやっているようなものです。

役を知っていれば、最後の段階で点数を何倍にもすることができるのにそれを知らない。

野球のルールでいえば、満塁なのかどうかという文脈もわからずに「とりあえず打てばいいんでしょ」とバットを振り回すようなもの。

そういうレベルの人は、知らず知らずのうちに損をしているのです。

たとえば「BS/PL」というのはビジネスにおいては点数計算のルールです。

一定のレベル以上の法人営業なら「この投資をやったときに、お客さんの『BS/PL』にどのように影響するか」という観点から話せないとダメです。

役員クラスに提案するとなると、そういう目線は絶対に必要です。とくに上場企業ならば、BS/PLへの影響はとても気にします。

そういうときに「え? 減価償却ってなに?」「キャッシュフローと利益ってどう違うんだっけ?」などと言っているのは論外です。

その瞬間「話す価値がない人だな」と思われてしまいます。細かい部分がわからないくらいならいいですが、キャッシュフローと利益の違いといったような大原則がわかっていないのはありえません。

企業が大きいシステムに投資するとき、それがどのように費用や資産として計上されるのか把握できていると、どういうタイミングでどのように納品するのがベストかわかります。

通常は、納品した瞬間にお客さんのBSに乗ります。プロセスが長い場合は「分割計上」といって、完成していなくても売上高に計上させることもあります。

得意先からたまに「田端くん、今期は儲かりすぎているからなにかおもしろい話ない?」と話が舞い込むことがあります。

「儲かりすぎている」ということは、利益調整が必要だということです。

そのときに税務署が認める、費用に計上できるものをパッと提案できるか。そういう話を打てば響くように、サクッと打ち返せる人は、役員以上の人から「こいつ使えるな」と思われます。

普通の営業マンが決算書税制について知っていると、いきなり雲の上に行けます。

ビジネス世界の最低装備②一般教養レベルの経済学をわかっておけ

経済学もビジネスパーソンだったら、ぜひ学んでおくべきでしょう。

基本的な経済学の理論や概念、用語は語れないとヤバい

たとえば「機会費用」とか「需要と供給」とか「需要の価格弾力性」といった概念について語れるか。

特に「需要の価格弾力性」については、ある市場に対しての大局観を身につけるという意味でも大切でしょう。

30年以上前、通信の業界で自由化が起きました。

それまで電電公社しかなかったのが、NTTになり、第二電電(DDI:今のKDDIの前身)ができた。

昔は国際電話がKDD、国内がNTTだったのですが、NTTコミュニケーションズなら0033で国際電話ができるようになり、KDDで国内の電話もかけられるようになりました。

お互い「自由に競争しましょう」となり、通信サービスは一企業の独占ではなくなったのです。

通信業界の自由化が起こって、ものすごい価格競争と、サービスの進化が起きました。

今では、単なる通話はLINEなどの登場もあって、実質的に無料になったほどです。

通信やコミュニケーションの需要は、なかなか飽和しません。通信の料金が安くなれば、そのぶん「つながりたい」と思い、無限に需要を増やしてしまうのが人間の欲求です。

いまでは遠距離恋愛のカップルや単身赴任のお父さんと家族が、LINEをつなぎっぱなしにしてご飯を食べたりしています。

3年くらい前に、今度は電力が自由化されました。

それまでは東電のような地域独占の電力会社しか電力を売れませんでしたが、今ではエネオスもソフトバンクも東京ガスも参入しています。

電力の自由化が発表されたとき「通信の自由化のときのようにものすごいことになる!」「競争が起きて、業界に大変化が起きる!」と盛り上がっていた人たちがいました。

ただぼくは、そんなに大きな変化は起きないんじゃないかと思っていました。

それは「需要の価格弾力性」を理解していたからです。

人間の欲求の中にも、飽和しやすい需要そうでないものがあります。

たとえば、「食欲」は飽和しやすい需要です。お米の価格が10分の1になったからといって10倍お米を食べるかというとそんなことはない。

一方で、コミュニケーションの需要は、いわば無限大にあります。

「需要の価格弾力性」というのは「価格が変化することで、需要がどれだけ伸び縮みするか」という概念です。

価格が安くなることで需要がものすごく増えるのであれば「需要の価格弾力性が高い」という言い方をします。

その視点で電気について考えてみるとどうでしょうか?

たとえば電気が2割引きになったとして、人は1.5倍電気を使うようになるでしょうか? 

おそらく使わないでしょう。使う電気の量はほとんど変わらずに、単に電気代の支出が減るだけです。

つまり、電力が自由化したところで業界の規模は収縮するだけ。電気の自由化で起こることは、競争が起きて盛り上がるどころか、業界が小さくなるだけなのです。

電力と通信はどちらも「インフラ」で、似ていますが、根本的に需要の性質が違います。唯一確実に言えることは、そこなのです。

それを考えずに脳天気に「すごいことが起こる!」と騒ぐのは滑稽です。

経済学に出てくる「比較優位」という概念も知っておくといいでしょう。

たとえば、タイガー・ウッズは自分の家の庭の芝刈りをすべきなのか?

タイガー・ウッズは実は芝刈りも大好きで、そこらへんの庭師の兄ちゃんよりも上手に芝生を刈れるかもしれません。よって彼は自分の家の庭の芝刈りをすべきだろうか?

比較優位を知っていれば、すべきでないのは明らかです。いくら芝刈りが上手でも、タイガー・ウッズと庭師は立場を奪い合う関係にはありません。

むしろお互いが得意な分野に特化することで、双方ともにメリットを得ることができるのです。

これは、貿易の基本的な概念です。

ところが、タイガーウッズがたまたま上手に、芝を刈っているところをみたら、庭師は「あいつ、芝刈りもうまいのか! 仕事をとられてしまう!」と騒ぎます。

これは「中国人が安く働いたら、ぼくらの仕事がとられてしまう」と考えるのと似ています。

でも、国際貿易の原則からして、いくら中国人が低賃金で働いたとしても、一方的に日本人全体が損するなんて、ことにはならないのです。

経済学については、大学の一般教養レベルは絶対にわかっていたほうがいいでしょう。おさえておいたほうがいいのは、マンキューという人が書いている経済入門書です。

マンキューはアメリカの経済諮問員会の委員長で、アメリカ大統領の経済アドバイザーのトップを務めるような立派な人です。

よって、本質を突きながらもわかりやすく書かれています。

ビジネス世界の最低装備③英語はせめて読めるようになれ

英語の勉強はどうやればいいのでしょうか?

そもそもそういう質問は愚問です。

普通にマンツーマンの英会話でもいいし、NHKのラジオ英会話でもいい。まともな辞書すらない夏目漱石の時代ではないのだから、日本にいても英語の勉強をする素材は山ほどあります。あとはダイエットみたいなもので「やるかやらないか」しかありません。

それでも「せめて何から手をつければいいのかだけ知りたい」という人は、まず「英語を読めるようになる」ことを意識して勉強してみてください。

英語の習得には「読む、書く、話す、聞く」の4つのレベルがあります。

このなかでビジネスマンなら最低でも「読める」レベルまでは習得しておかねばなりません。

自分が疑問に思ったことを英語でネット検索して、英語で読めるようになると、得られる情報の量も価値も格段に上がるのです。

たとえば経理の部署で働いている人だったら国際的な経理の現況、法務だったら世界的な法務の流れ、料理人だったら海外のシェフが発表した最新のレシピ。そういったものを英語で検索できるかどうかです。

自分の専門性を国際水準で、日々アップデートできていないとしたら、その原因は、英語が読めないせいかもしれません

インターネットにはものすごく膨大な知識がありますが、その9割くらいは英語。大半の知識が英語なのです。

日本語だけで情報を得ていると、マックスでがんばったとしても世界の知識の1割くらいしか手に入らないことになります。

多くの人がウィキペディアで調べることがあると思いますが、ウィキペディアも英語版を見ると、すごくおもしろいです。日本のことを英語版のウィキペディアで調べてみるといろんなことがわかります。

たとえばぼくは慶應義塾大学を出ていますが、慶應大のことを英語版のウィキペディアで調べてみたことがあります。すると「1858年にできた日本の最古の近代教育機関である」「西洋の知識を輸入して、福澤諭吉が建てた」と書いてありました。

これが欧米、世界からみた慶應大の見え方、評価です。

ウィキペディアをどこまで信じていいかという問題もありますが、まず英語のウィキペディアを「読めるレベル」になっておくことはマストです。

今後は何かを調べるときに「英語でググる」ようにしてみましょう。

英語で調べなかったら、その人はものすごいハンデを負うことになります。ホワイトカラーのビジネスは結局「頭脳労働」「知識ビジネス」です。

たとえるなら、英語のウィキペディアを読める人は、一人前の「すし職人」と言えるでしょう。いちばんいいネタが揃う豊洲から直接仕入れることができるのです。

一方で英語が読めない人は、近くのスーパーマーケットからパックの切り身しか買えません。

たしかに「聞く」「話す」はレベルが高い。でも、ほとんどの英語の記事は大して難しくありません。わからない単語は辞書を引けばいいのです。高校レベルの英語力があれば読めるでしょう。

このレベルができないのは本当にヤバい。

はっきり言って英語のリーディング能力は、このネット時代に最低限のマストの条件です

21世紀のビジネスパーソンのあり方を考えさせてくれる一冊

これからの会社員の教科書 社内外のあらゆる人から今すぐ評価されるプロの仕事マインド71

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ビジネスマン同士の「ルール」や「マナー」を教えてくれる『これからの会社員の教科書』。

同書には「ロジックで勝てると思ってるやつは0点」「おっさんはメンツが8割」など、田端さんの経験から得た学びがユニークな切り口で落とし込まれています。

年末年始に同書を読むことで、これまでの自分の働き方を振り返るきっかけになるはずです!