田端信太郎著『これからの会社員の教科書』より

出世のいちばんの近道は「議事録」。新人に求められる会議の立ち振るまいとは?

仕事
NTTデータ、リクルート、ライブドア、コンデナスト・デジタル、NHN JAPAN、LINEそしてZOZO

最強のサラリーマン・田端信太郎さんの経歴です。

時代を動かす企業を渡り歩いた経験と、圧倒的な発信力をあわせ持つ田端さんは、新R25のインタビューでも必ず新しい学びを届けてくれます。

そんな田端さんが上梓したのが『これからの会社員の教科書』。

田端さんが経験から導き出した「仕事の基本」をまとめた同書より、「仕事の基礎」「ビジネスの常識」「情報収集」「会議の立ち振るまい」を4記事にわたってご紹介します。

新人が会議で期待されていること

会議は基本的に無駄です。必要最小限にしたほうがいい。

会議をしただけで「仕事したつもり」になっている人たちはいまだに多くいます。

会議はあくまで「手段」です。連絡をし、情報を伝えるだけなら、いまどきはLINEやスラックといったツールで十分です。

よって「なぜ会議をやるのか?」。そこに立ち返ることが大切なのです。

…というのは、よく言われることですが、会議が多い会社に入ってしまったらどうすればいいでしょうか? しかも目的がはっきりしない会議があるとしたらどうふるまうべきでしょうか?

まずは、その会議がどういう目的で行なわれるものなのかを考えて、理解することでしょう。

「会議」とひとことで言っても、いろんな会議があります。ブレストもあれば、意思決定のための会議もある。あるいは、伝達、説明会みたいなものもあります。

下っ端の社員としては「会議にはいろいろな種類がある」ということ、そして「出席する会議がどういう目的の会議なのか」を把握することが重要です。

会議の目的が「ブレインストーミング」だとしたら、どんどん発言すべきです。上司も部下も関係ありません。

アイデアを出す場面ではみんな平等です。むしろ若者が積極的に発言することが求められます。

たとえば「うちの新卒採用を増やしたい。いまの学生にどうやったらうちの会社に興味を持ってもらえるか、新入社員に聞いてみよう」といって開かれる会議があったとします。

こういうとき、新入社員は「こうあるべきだ」と意見を言うべきです。遠慮してはいけません。新卒で入ってきた新入社員は、会社の中でいちばん大学生のマインドに近いわけです。

いちばん発言する資格がある。そういう場ではどんどん意見を言うこと。意見を言わないのであれば出ないほうがマシです

新人は上司や先輩から「あいつを呼ぶと、なにかおもしろいこと言いそうだ」と思われることが大切です。お座敷での「芸者」、テレビのお笑い芸人のようなものです。

よって、よくわからないときでも「よくわからない」と言ってすませるのではなく、自分なりに貢献しようとどんどんアイデアを出したほうがいい。

そのためには日ごろから24時間365日油断してはいけません

あいつ、おもしろいアイデア言うかもしれないぞ」と思われることは、ものすごく価値の高いことなのです。

そのチャンスが訪れるときのために、必死にネタを仕込んでおくべきです。アイデアを出すような会議に5年たっても10年たっても声がかからないようではダメです。

部署の定例会議にだけ出ているような人間は付加価値のない社員です。

会議に出たら「どうすればその場にいちばん貢献できそうか」を自分なりに考えること。

あらゆる場面で考えておくことが大切です。そういう心構えでいると、どんどんチャンスは広がっていきます。

さて、一方で「意思決定」が目的の会議では、新人はどう振る舞うべきでしょうか?

注意すべき点がひとつあります。

それは「決定されるまでは自由に議論してもいいけれど、ひとたび結論が最終決定されたらは、その結論にはきちんと従う」ということです。

最低なのは、決定したあとにごちゃごちゃ言い始めるような人です。「本当はあのとき反対だったんだよ」は反則。それが真っ当な大人の態度というものです。

もちろん意見が違うから出て行く、という選択はあってもいいでしょう。

ただ、決定後も「意見が違うから」とごちゃごちゃ言っていたら組織としてまとまりがなくなってしまいます。

個人プレー、スタンドプレーはあってもいいけれど、だからこそ組織にいる以上は、そういう最低限のルールを守らないなといけないのです。

たとえばぼくは、ZOZOの前澤前社長の経営方針について、すべて賛成ではなかったですが、SNSで社長を公然と否定するようなことは絶対にしません。

なぜかというと、そもそも社長が好きだということもあるし、そんなことをやったら自分の株も下がります。もちろん、会社を辞めたとしてもやりません。

もし否定的なことを言うのなら、まず本人に面と向かって言ったほうがいい。面と向かって言って無視されるのなら、経営会議のような場面で言うべきでしょう。そこで決定されたら、決定には従うべきです。

その決定に従えないのなら、辞めればいい。組織としての意思決定は、そこにいる以上、絶対です。それに従えないのなら、辞めたほうがいいのです。

出世のいちばんの近道は「議事録」

議事録書いて」と頼まれるのは、たいてい新入社員です。

若手が「権力の階段」を駆け上ろうとしたとき、いちばんの近道が実はこの「議事録」作成です。議事録を通じて会社でどううまく振る舞えるか。それが鍵になります。

上司は議事録を見ることで、新入社員が会議の内容をどれくらい理解しているかをチェックしています。

新人からすれば、上司に対して自分が理解できていることをアピールする機会になります。

議事録では、情報の整理力・編集力も試されます。

すべてを記録するだけなら、ボイスメモでも充分です。議事録を作成するのは「情報の圧縮」をするためです。

会議に出たら1時間だけど、議事録を読めば3分でわかる。それは20分の1に情報を圧縮できているからです。

もしその3分で会議を再現できていれば、時間を生んでいることになります。会議に出なかった人が57分得したことになる。そのあいだ他の仕事をすることができます。

議事録はそういう意味で、組織の生産性を上げるために大切にして、ときに神聖なものなのです。

また、これはあまり大きな声では言えない「裏技」のようなものですが、議事録を記録するなかで、日頃から自分が「この会社はこうあるべきだ」と思っている方向へ、会社の方向性をさりげなく捻じ曲げていくことができます。

「捻じ曲げて」というと語弊があるかもしれませんが、さりげなく誘導していくことが可能になるのです。

議事録は、取材して本を書いているようなものです。記録に残すというのは、いろいろな影響力を読み手に与えることができるわけです。

もちろん言ってもいないことを書いてはダメですが、そうではない範囲でいくらでも印象操作できるのです。

この人がこう発言した」という事実はひとつです。しかし切り取り方次第で、失言にすることもできます。政治家の失言の多くはこれです。

議事録にどこまで書いて、どのように取り上げるか。どういう人たちに配布するか。議事録を使えば、社内での印象をコントロールできてしまうのです。

たとえば、さんざん議論が紛糾して、55対45でAという方針に決まったという場面。

そのときに、もし書き手が「Aという結論で正しい」と思っていたら、議事録の1ページ目の目立つところに「決定事項:A」と書くでしょう。

そして「出席者、日時、会議、議題、今後のアクション事項」を書く。議論の経緯は、2ページ目以降に適当に要約して書けばいいのです。

ほとんどの人はだいたい1ページ目しか読まない。すると「結論Aになったんだな」と多くの人が思います。

ところが書き手が「Bの意見のほうが正しい」と思っていた場合。1ページ目にはさんざん反対意見を書きます。そして議事録の最後の最後に「Aという方向で模索することになった」と記す。

すると、会議に参加していなかった人に対して、表面的にはAという方向で決まったようだが「反対意見が多かった」「これは前途多難で問題山積みだ」「ひょっとすると方針変更の可能性もあり得る」というイメージを醸し出せるのです。

議事録が恐ろしいのは、こうしてかならず誰かの意図が入るということです。ニュートラルな議事録などないのです。

議事録というものは「誠実で平等な文章」なのではなくて「誰かの目線で、何らかの意図をもって書かれている文章」くらいに思っておいたほうがいい。

少なくともビジネスの現場での議事録とはそういうものです。

歴史を見ても、「議事録を書く」ことは権力者の特権です。

ソビエトなど共産主義の国では、偉い人を「書記長」と呼びます。キムジョンイル総書記もそうです。

「書記」というと「下っ端」のようなイメージがありますが、オープンに議論がなされない、開かれた議会が機能していないような国だと、書記長は最高権力者なのです。

政治もビジネスも、意思決定の場においては、「実際にどうだったか」というよりも「何が文書に記されたか」のほうが事後的には大切になってきます。

だから、書記や議事録とは神聖にして大切なものなのです。

NTTデータ時代は、お客さんとの会議でも議事録を書いていました。これはとても重要な儀式でした。

なぜかというと、出来あがった議事録に対してお客さんにハンコを押してもらうのです。それによって「あのとき、こういいましたよね」という証拠にするわけです。

それくらい議事録は重要な存在であり、会社の行方を左右することもあります。

あまり印象操作に躍起になってもらっては困りますが、まずはそれくらい重要なものなのだと理解しておくだけで、これからのビジネスライフが変わってきます。

21世紀のビジネスパーソンのあり方を考えさせてくれる一冊

これからの会社員の教科書 社内外のあらゆる人から今すぐ評価されるプロの仕事マインド71

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ビジネスマン同士の「ルール」「マナー」を教えてくれる『これからの会社員の教科書』。

同書には「ロジックで勝てると思ってるやつは0点」「おっさんはメンツが8割」など、田端さんの経験から得た学びがユニークな切り口で落とし込まれています。

年末年始に同書を読むことで、これまでの自分の働き方を振り返るきっかけになるはずです!