フィリップ・デルヴス・ブロートン著『なぜハーバード・ビジネス・スクールでは営業を教えないのか?』より

優秀なセールスマンは「ハッピーな負け犬」。“打たれ強さ”を身に着けている人の共通項とは?

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さらば! 就職ブルー

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多くの企業で内定式がおこなわれたとのニュースが流れています。

実際に働く現場でのイベントを通じて「働く」ことがリアルになったぶん、期待と同時に不安も抱いている内定者も多いのではないでしょうか?

「希望の配属先じゃなかったらどうしよう」「就職先の給料が安そう」「先輩社員たちの働き方がブラック」…。

新R25では、そんな悩みをビジネス賢者に相談し、キレイさっぱり解消してもらおうと、特集を行います!

その名も「さらば!就職ブルー」…!!
そして今回は、「入社前に読んでおいたほうがいい一冊」を、「さらば!就職ブルー」で登場していただいた先輩方にピックアップしてもらいました。

今回は、32歳にして6度の転職を経験し現在6社目。リクルート、楽天などを渡り歩き、現在年収は1,500万円、副業年収4,000万円のスーパーサラリーマン・motoさんです。
motoさんが選んだのは、ハーバード・ビジネス・スクール出身のジャーナリストであるフィリップ・デルヴス・ブロートンさん著・関美和さん翻訳の『なぜハーバード・ビジネス・スクールでは営業を教えないのか?』(プレジデント社)。

「営業とは一体なにか?」を探るべく、世界中のビジネスエキスパートたちに聞いた“営業の真実”が詰まった珠玉の一冊です。

読み進めていくうちに痛感するのが、「営業はモノを売るだけではない」ということ。

職種関係なく、仕事で大切にしたいマインドが学べる同書から、2記事を抜粋してお届けします!

営業は、拒絶と許容の試練である

ビジネスとは、つまるところモノをつくって売る活動である。

僕らはみんな、いつも何かを売り込んでいる。ほしいものを手に入れるために、人生のなかのさまざまな「上司」を口説いている。

セールスは、人生につきものの拒絶と許容の試練以外の何ものでもない。自分が信頼されているのか、インチキ野郎だと思われているのかを目の前に突きつけられるのだ。

自分が売り込む商品に100パーセントの自信があればいいが、たいていは演じたり、大げさに伝えたり、真実を隠さなければならなかったりする

売り込み、説得し、奉仕する能力は、自分のアイデンティティーと切っても切り離せないものなのだ。経理のような仕事とはワケが違う。

打たれ強さは、成功に不可欠

マジードは、打たれ強さを「ゆったりした上着」にたとえる。

打たれ強さはセールスマンだけでなく、人生での成功を望む人すべてに必要な資質でもある。

それは、逆境で心の平穏を保つ能力だ。ラドヤード・キップリングは『もし』という詩のなかで、それを「勝利も敗北も等しく受け止めて、惑わされない力」と呼んでいる。

幸いなことに、心理学者によると、打たれ強さは想像以上に多くの人に共通する力で、その力がどのように育まれるのかが解明され始めているという。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)を患う兵士についての初期の研究では、悲惨な体験はかならずなんらかの心理的なトラウマにつながると思われていた。

しかし、最近の研究では、そうとは限らないことが示されている。

研究者たちはPTSDの患者だけに注目し、PTSDにならなかった大多数の兵士や、悲惨な体験や目撃の後でもすぐに立ち直った兵士たちに目を向けてこなかった。

人間は、みんなが思うよりもずっと打たれ強いのだ。

わざわざ心理学者の力を借りなくても「問題を整理」したり、不幸な体験に「ケリをつける」ことができる人は大勢いる。

僕らの多くは、不幸な出来事を自分なりに受け入れ、持てるものに感謝し、前に進んでゆくのである。

コロンビア大学の心理学者ジョージ・ボナンノは、打たれ強さはさまざまな要因から生まれると書いている。

支えてくれる家族やよき友人。幼少時の不運や困難の経験。神経質でないこと

要因がひとつの場合も複数の場合もあるが、これらが「しなやかさ」を生み出すのだとボナンノは言う。

それは厳しい冬や過酷な剪定(せんてい)を経て毎年花を咲かせる植物が持つ力強さにも似ている。

人間の打たれ強さとは、「人生の意義を見つけようと努力する力。自分が環境や結果を変えられると信じる力いい経験からも悪い経験からも学べると思う気持ち」だとボナンノは言う。マジードは間違いなくこの力を持っている。

上着の襟をヒラリと開いて、「ゆったりした上着」があればいいのさ、と軽く言ってのけるが。これから紹介する偉大なセールスマンはみな、拒絶と失敗を受け入れ、それを糧にして最終的な成功へとつなげている。

彼らは拒絶から顔をそむけず、それを受け入れて抵抗力をつけ、セールスマンが職業柄受ける打撃に耐えている。

「ノー」が多い人ほど、売り上げ金額が多い

多くのグローバル企業と協力してきたフランス人心理学者のクロテール・ラパイユは、優秀なセールスマンを「ハッピーな負け犬」と呼ぶ。

彼らは拒絶を勝利への第一歩と受け止めるからだ。英雄伝説の主人公のように、拒絶を自己変革のバネにするのである。

このマインドセットの根っこにあるのは、子供時代になにかを売り込んだ経験だ。

その経験が頭のなかにずっと生き続ける。たとえば、レモネード売りの経験だったり、学校をずる休みしたくて親を説得しようとした経験だったり。

最初の「ノー」は、毒にもなるし薬にもなる。売り込みが怖くなったり、嫌いになったりする子供もいるだろう。

セールスマンの資質がある子供なら、そこでなんとか「イエス」と言わせたくなるものだ。

ラパイユは、数企業で毎週セールスマンたちとミーティングを持ち、その週に受けた「ノー」の数を訊ねていた。

すると、受け取った「ノー」の数が多いほど、売上の金額も多いことがわかった。

それらの「ノー」は、彼らの努力創意工夫の表れだったのだ。

「ノー」の多いセールスマンほど、顧客への訪問回数が多く、新たなことを試し、失敗も重ねていた。

そのことは、拒絶に対する打たれ強さを示すだけでなく、いったん相手に受け入れられたらそのチャンスを限界まで活用する積極性をも表している。

たとえば、お客様がすでにドレスを二着とベルト、セーター、上着まで買っていても、優秀なセールスマンはまだ勧め続ける。

お洋服にぴったりの靴はいかがですか?」。

こうしていると、商談はかならず「ノー」で終わるはずだが、そこに至るまでに十数回の「イエス」があるのだ。

セールスマンを採用するとき、企業は販売の成功実績よりも失敗への受容性を見るべきだとラパイユは勧める。「人生でどれだけ失敗してきましたか?」と聞くべきなのだと。

成功しか味わったことがないというなら、それはとりも直さず浮世離れした人生を送ってきた証拠だし、そういう人が営業の仕事につけばかならずコテンパンに潰されてしまうだろう。

ラパイユは、セールスのスリルはキツネ狩りのスリルのようなものだという。みないっせいに出かけていくが、多くが脱落したり怪我をしたりする。キツネが逃げおおせることもある。

だが、追いかけっこのスリルこそが、ハンターを興奮させるのだ。

自分を信じて突き進めるか?

優秀なセールスマンとだめなセールスマンの違いは、自分に正直に行動していると信じられるかどうかにある。

営業は、自分自身との葛藤も、また周囲との葛藤も避けられない職業だ。そうした葛藤に折り合いをつけられなければ、セールスマンとして成功できない。

彼らの共感力と自我の折り合いを批判する人はいるだろうが、彼ら自身は自分の行動に対して葛藤があるようには見えない。

売り込みのたびに落ち込むことを恐れたり、大切な関係が壊れることを怖がるようでは、成功できないのだ。

自分の行動をどこまでなら許せるか、どこまでなら自分に言い訳ができるのかを決めるのは、自分しかいない。

闘いそのものを愛し、勝つか負けるかの博打を心から楽しむことが必要なのだ。生まれつき内向的で、気が弱くて状況判断が苦手な人もいるだろう。

だとしても、セールスマンの役割とそれに何が伴うのかをはっきりと理解する力を養えば、生まれつきの資質があっても自分を知ろうとしない怠け者よりも、最後には強い武器を手にすることができるのである。

営業がなければビジネスは成り立たない。営業はビジネスのなかでもっとも平等なものだ

その道は誰にでも開かれ、個人に力を与え、完全に計測が可能である。

正しく行われた場合には、セールスは企業文化の抑圧から人々を解き放ち、個性と運命を個人の手に取り戻す手立てとなる。

営業という仕事は、正式な教育を受けていなくても忍耐力の豊富な人間が成功するための手段である。

営業には正解はない。ただ、いい営業には共通点があると教えてくれる一冊

営業」と聞くと、つい苦手意識が出てしまう人も多いと思います。

しかし、営業の真髄を学ぶことこそが、ビジネスの世界をうまくサバイブするヒントかもしれません!

エキスパートたちのマインドを取り入れて、4月から好スタートを切りましょう!