「失敗をする人」のほうが得になる
これから「役に立つ人」の価値は薄れていく。キンコン西野が“コンビニにあるもの”で解説
新R25編集部
記事提供:キングコング 西野 公式ブログ
基本、VoicyおよびYouTubeは、ボクの過去の著書や、去年や一昨年、場合によっては、それよりもっと前にサロンに投稿したような内容を喋っているので、サロンメンバーからすると、復習のような形になってしまうのですが、今日も、だいたい、そんな感じです。
昨日、狭山というところで講演会があったんですね。
1400人ぐらいですかね。
いつもより、ちょっと大きめの講演会です。
会の中で、「失敗することが怖くて、なかなか踏み出せない人はどうすればいいのか?」という質問をいただいたのですが、たぶん、これに関しては多くの方が同じように悩んでいると思うので、講演会の中でお答えした内容を、ここでも共有したいと思います。
まず、「失敗を恐れている人」というのは、「失敗したら損をするかもしれないから動けない」と、【損得】で物事を見ていると思うので、そういう人の背中を押すには「郷にいれば郷に従え」で、【損得】でお話しした方がいいと思います。
つまり、「失敗した方が得をするよ」という説明ができれば、この問題はクリアですよね。
これを説明する上で、山口周さんの「ニュータイプ」という本がオススメなんですけど、その本の中では「役に立つもの」と「意味があるもの」について言及されていて、たとえば、コンビニの商品を「役に立つもの」と「意味があるもの」で分けて考えてみてください。
「ハサミ」や「ホッチキス」って、「役に立つもの」ですよね?
一方、「タバコ」なんかは「意味があるもの」ですね。
「俺は、ガツンとくるタバコが好き」だとか、「僕は、当時、憧れの先輩が吸ってたこのタバコが好き」といった。
次に、「棚に並んでいる種類の数」を見て欲しいのですが、「タバコ」の棚にはたくさんの種類が並んでいるのに対し、「ハサミ」や「ホッチキス」の棚は、それぞれ一種類しか並んでいない。
これは、すなわち、「『役に立つもの』は一つでいい」という結論です。
2番目に切れ味の鋭いハサミや、2番目にとめられる「ホッチキス」なんて要らないんですね。
「2番目にとめられる」ってなんだ(笑)。
「役に立つ人」の行方
人も、この感じに似ていて、これまで「計算の速さ」を売りにしていた人は、電卓が生まれた瞬間に、一気に、必要とされなくなりました。
「知識の量」を売りにしていた人は、グーグルができた瞬間に、一気に必要とされなくなりました。
今、「こういう場合は、こうすればいい!」「こういう場合は、こう!」といった感じで、パターン認識でブイブイ言わせている人は、今度、AIの台頭で一気に必要とされなくなるでしょう。
つまり、正解を出し続ける「役に立つ人」というのは、今後、どんどん価値が薄れていく。
なかなか受け入れがたい現実ですよね。
学校では今日も明日も相変わらす「正解を出せ」と、「役に立つ人になる訓練」がされているので。
でも、そこは文部省の方も、学校の先生方も、キチンと勉強しなくちゃいけません。
「AIが台頭する時代に重宝される人材とは何か?」という課題からは、目を背けちゃいけない。
とくに、日本の場合は、数年後に大人になる子供達が背負わなきゃいけない負担が今後どんどん大きくなるので、言ってしまったら「稼げない大人」を量産している場合じゃない。
「人の価値」がどこに発生しているのかを逐一、確認・軌道修正しながら、教育を進めなきゃいけないと思います。
「役に立つ人・モノが要らない」という話ではなくて、「一番役に立つ人・モノ以外は要らない」という話です。
なので、一番役に立つ人になっちゃえばいいのですが、さすがに、それって難しいですよね。
AIって、メチャクチャ賢くて、確実に正解を出してくるんで。
じゃあ、どうすりゃいいの?
こうなってくると「役に立つ人」ではなくて、「意味がある人」を目指す必要が出てくる。
たとえば、「アイツ、ポンコツだけど、憎めないんだよあ」という。
車でいうと、ランボルギーニとか。
「どうやら、扉が縦に開くらしい」と(笑)。
利便性は怪しいところですが、「カッコイイから」で選ばれている。
役に立つ人のセールスポイントって、「機能性」ですよね。
じゃあ、意味がある人のセールスポイントは何になるのでしょう?
一つは「ストーリー」だと思います。
今、あなたが応援している人を、頭の中に、一人思い浮かべて欲しいのですが、おそらく、その人よりも、その業界で、能力的に長けている人はいるハズです。
でも、あなたは、能力的には長けている他の人よりも、その人を応援している。
その応援理由の一つに、「その人の苦労や挫折、その人が歯を食いしばって踏ん張った瞬間などを見てきたから」というのがあると思います。
つまり、あなたが、その人を選んだ理由の一つに「その人のストーリー」が含まれている。
その人が順風満帆で、何の悩みも苦労もなく、今まで来ていたら、もしかすると、あなたは、その人を応援していなかったかもしれません。
ストーリーには「浮き沈み」が必要なんです。
成功したり、失敗したりすることが必要なんです。
「失敗があるから、ストーリーが生まれて、『意味のある人』になれる」という話です。
挑戦すれば「ストーリー」は生まれますが、挑戦しなければ「ストーリー」は生まれない。
「ストーリー」が生まれない限り、現代において最も致死率が高い「役に立つ人」の競争に参加し続けなきゃいけなくなる。
人生の選択を迫られた時に、「成功するか、失敗するか」で判断するのではなくて、「ストーリーが生まれるか、ストーリーが生まれないか?」で判断した方がいいと思います。
そう考えると、挑戦しない手はないよね?
頑張ってください。
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