須藤憲司著『ハック思考』より
「退学率を減らしたい」「特定のアイテムを売りたい」5つのハックトレーニング問題
新R25編集部
WebサービスのUI改善を実現する「Kaizen Platform」を立ち上げた須藤憲司さん。
2003年にリクルートに入社し、マーケティング部門、新規事業開発部門を経て、リクルートマーケティングパートナーズ執行役員を務めた超優秀なビジネスパーソンです。
2013年に「Kaizen Platform」を立ち上げてから、現在までさまざまな組織の課題を洗い出し、改善しています。
そんな須藤さんの思考の原点にあるのが、書籍タイトルにもなった『ハック思考』。
今回はその実態について、同書より一部抜粋してお届けします。
ハック思考とは、言ってしまえばとんち
世界をHackするためには、
人と違う規則性や法則を見つけて、…①
その規則性や法則を構成するシステムのスキマに介入する。…②
というたった2つのステップで実行できるとお伝えしてきました。
ハック思考は一朝一夕で身につくものではありません。
目の前の課題について2つのステップを意識しながら日々考え続けること、それを習慣づけることが必要です。
もし課題がパッと見つからない、課題はあるけれどどのように思考を展開していけば良いのかわからない…という人のために、いくつかケーススタディを用意しました。
僕の答えも載せていますが、これが正解というわけではありません。「ああ、こういう考え方もあるのか!」と参考にしてもらえたらと思います。
ハック思考とは、言ってしまえばとんちです。手品のトリックです。人間の心理の裏をかいた、あっと驚くような発見です。
ぜひ頭をぐにゃぐにゃにして、楽しんでハック思考を鍛えていってください!
Q:「退学率を減らしたい」
『ハック思考』①人と違う法則を見つける:友達がいないと辞めやすい
②その法則を構成するシステムのスキマに介入する:入学式でバディを組ませる
自分が新しいコミュニティに入っても、すぐ辞めてしまったときに何が起こっているのかを考えると、周囲が知らない人ばかりだったとき。友達がいないと辞めやすくなる。
じゃあ友達をつくるときってどういうとき?と考えると、不安なときですよね。
一番不安なときは入学式です。
つまり、退学率を減らすためには、入学式に「バディを組む」というイベントを入れて、半ば強制的に友達をつくらせます。
そして、「自分はどうしてこの学校に入学したのかをバディとシェアしてから、様々なオリエンテーションを受けてください。終了後は一緒に相談しながら受講するカリキュラムを決めるようにしてください」と伝える。
すると、「困ったときや挫折しそうなときは、この人に相談すればいい」という頼り先が確保できるので、結果的に退学する人の数が減るのです。
Q:「大規模な営業組織の売上を高めたい」
『ハック思考』①人と違う法則を見つける:人の能力は変わらないので、当たる順番を変える
②その法則を構成するシステムのスキマに介入する:提案内容ではなくタイミングの精度を高めて訪問する
売上をあげるために、よく「個々人の提案力を高めよう」「ベースの能力を底上げしよう」と言われますが、自分自身を振り返ると、能力って一朝一夕に劇的に上がるものではないということはわかりますよね。
ではどうすればいいのか。
提案内容ではなくて、提案のタイミングの精度を上げればいいのです。
どんなにサービスやプロダクトが優れていても、それを購入するかどうかを決めるタイミングでお客さんのところに行かないと商談にはなりません。
例えば、インターネット回線は頻繁に変えようと思いませんよね。
変えるとしたらマンションの更新など引越しのタイミング。
だから、「こちらのマンションの更新はいつですか?」と聞けばいいだけ。
皆営業を頑張ろうと思うと提案内容をブラッシュアップする度にアポを取ったり、ローラー作戦だと言ってとにかく会いに行ったりしますが、それは意味がありません。
けれど上司は、どのくらいの頻度で足を運んでいるかといった行動量で評価しがちなので、タイミングが一番重要だということになかなか目が向かないのです。
Q:「婚活マッチングアプリでマッチング率を上げたい」
『ハック思考』①人と違う法則を見つける:人を好きになりやすいのは、失恋したとき
②その法則を構成するシステムのスキマに介入する:失恋した瞬間に登録してくれた人には1000円プレゼントする
好きな相手を口説くベストタイミングについて友人らと話していたときに思いついたのですが、人は失恋したてのときに優しくされると好意を持ちやすくなります。
付き合いたての人に告白するより、傷心の人に告白するほうがOKされる確率は高い。
だから、マッチングアプリでマッチング率を上げたいのであれば、そもそもマッチしやすい人が登録していればいいので、失恋した人へ「1000円プレゼント」といった特典をつける。
失恋した人が集まる婚活マッチングアプリ。これはかなり面白い気がしますよね。
Q:「ある特定のアイテムを売りたい」
『ハック思考』①人と違う法則を見つける:「捨て」の選択肢をつくると人は迷わない
②その法則を構成するシステムのスキマに介入する:他アイテムとの差を極端にする
ものを購入するときに悩むのは、差がはっきりしないときです。
デザインも大きく違わないし、値段も同じくらい、だからどっちも良くて決められない。どっちの選択肢も捨てられないのです。
ということは、あえて「捨て」の選択肢をつくってあげれば良いのです。
つくるときのポイントは、差を極端にすること。そうすれば悩みません。
例えば、値段の差を極端にする。
この本の取材中、編集者の箕輪さんから、オリジナルサンダル「ミノサン」を完売させるにはどうしたら良いかと相談を受けました。
黒、白、青、黄の4色展開で40足ある、でもダサイから売れる気がしないと。
僕は「デザインはまったく一緒で色が違うだけだと悩んでしまうので、1足だけ13万円、他は100円で売りましょう」と提案しました。
13万円という値段設定は原価が回収できる金額です。
多くの人は100円のものを選ぶので、それは完売するでしょう。
でも13万円のものが売れないと原価が回収できないので、「100円のものを買った人は13万円のものを買った人に絶対ありがとうと言う」という仕掛けもつくりました。
その結果、箕輪さんの「ミノサンの黄色は1足限定で13万円。他は100円です。黄色が全経費分回収してるので100円のミノサンを買った人は黄色ミノサンを履いている人に会ったら必ずありがとうございますと言いましょう。黄色ミノサンを履いてるとお金持ちだと分かるので確実にモテます」というツイートがバズり、13万円のミノサンも売れました。
Q:「新規顧客を開拓したい」
『ハック思考』①人と違う法則を見つける:新規顧客を開拓せざるをえない仕組みをつくる
②その法則を構成するシステムのスキマに介入する:評価制度を極端にするか、新規専門部隊をつくる
そもそもなぜ新規開拓がうまくいっていないんだろう?と考えたとき、苦手だから、嫌いだからという理由が挙がったとします。
その場合は強制的に新規開拓をする必要性をいかに感じさせるかがポイントです。
例えば、新規顧客の売上と既存顧客の売上の評価を雲泥の差にする。
新規はめちゃくちゃ評価する一方、いくら既存顧客の売上を伸ばしてもまったく評価されない。
この評価は給与に響くので、頑張らざるをえないというわけです。
もし会社の人材リソースがあるならば、新規顧客の開拓が得意な人だけを集めた専門部隊をつくるのが良いでしょう。
要は、得意分野だけに特化すればいい状況をつくってあげるのです。
新規が苦手な人に無理やり開拓させるよりも、絶対に売上があがるので、会社としては専門部隊をつくったほうがメリットが大きいのです。
ハック思考で、目の前の課題を見つめなおしてみよう
「特別な才能や知識がなくても、パパっと成果が出たら最高だな~」
そんなフワッとした願望を、具体性のあるものに変えていく方法を、須藤憲司さんの著書『ハック思考』は教えてくれます。
「自分なんて平凡だから…」と諦めている人こそ、ハック思考を身に付けて、大きな成果をゲットしていきましょう!
〈撮影=中澤真央(@_maonakazawa_)〉
ビジネスパーソンインタビュー
「それ、嫌われてるに決まってるじゃん(笑)」Z世代慶應生がプロ奢ラレヤーに“友達がいない”悩みを相談したら、思わぬ事実が発覚
新R25編集部
「ビジネス書を読んでも頭に入らない…」インプットの専門家・樺沢紫苑先生に相談したら、さまざまな“間違い”を指摘されました
新R25編集部
【老害おじさん化回避】若者と絡むな、パーカー着るな。“いいおじさん”のすべて【イケオジへの道】
新R25編集部
「仕事と家庭で“顔”を変えろ」本音が話せない28歳にコミュニケーションのプロ・安達裕哉さんが“シーン別の戦い方”を教えてくれました
新R25編集部
またスゴいことを始めた前澤さんに「スケールの大きい人になる方法」を聞いたら、重たい宿題を出されてしまいました
新R25編集部
「学生時代の経験を活かそうとか、論外です」北の達人・木下社長に“社会人1年目の働き方”を相談したら、キャリア観が180度変わりました
新R25編集部