“凡人”の戦い方、ここにあり。
「丸投げされなきゃうまみがない!」上司のムチャ振り対処法を“畳み人×ハック思考”が解説
新R25編集部
皆さん、毎日上司にムチャ振りされてますか?
…急にすみません。でも、リモートワークになって、Zoom会議でふわふわと盛り上がった話が、まとまらないまま現場に振られてくることが増えている気がします。
上司のムチャ振りって、どう対処すればいいの? そんな全国のR25世代の悩みを解消すべく、このお二人に相談することに。
【設楽悠介(しだら・ゆうすけ)】写真左。1979年生まれ。マイナビを経て幻冬舎に入社。同社でコンテンツビジネス局を立ち上げ、電子書籍、Webメディア事業などを担当。「あたらしい経済」編集長。著書に『畳み人という選択』(プレジデント社)/【須藤憲司(すどう・けんじ)】写真右1980年生まれ。史上最年少(当時)で、リクルートマーケティングパートナーズ執行役員に就任。2013年、アメリカでKaizen Platform社を起業。著書に『ハック思考』(幻冬舎)、『90日で成果をだす DX入門』(日本経済新聞出版社)
出版社・幻冬舎にて数々の新規事業に“参謀”として入り、『「畳み人」という選択』という著書もある究極の畳み人(ビジネスで大風呂敷を広げる人に対して、きれいに畳む=実行に移す能力がある人)・設楽悠介さん。
独自の「ハック思考」によってリクルートで史上最年少執行役員まで務め、現在はKaizen Platform代表である須藤憲司(通称スドケン)さん。
ビジネスの第一線でさまざまなムチャ振りをまとめまくるこのお二人に、現場の“実行力”について聞いてみました!
〈聞き手=天野俊吉(新R25副編集長)〉
「仕事の丸投げ」は、“いい我田引水”のチャンス
天野
今日は、組織で「実行力」を発揮してきたお二人に、“ムチャ振り上司”の対処法を教えてもらえればと思います。
設楽さん
はい、お願いします! 僕みたいな普通の会社員が『新R25』に出るのは珍しいんじゃないですか?
天野
そうですね、若干その…、地味というか…
背景でここぞとばかりに「宣伝の全部乗せ」してきてる設楽さん
設楽さん
何か言いましたか?
天野
なんでもありません!取材をはじめましょう。
まず相談させてもらいたいのが、上司からの「仕事の丸投げ」。細かい話になると「あとやっといて」と丸投げされてしまうことが多いんですが、どうしたらいいでしょうか?
設楽さん
僕はずっと、丸投げされるのは自分の成果をつくるチャンスだと考えています。
丸投げは「品のいい我田引水」のチャンスですよ。
天野
どういうことですか?
設楽さん
リーダーや社長などのポジションで大風呂敷を広げて、まわりを魅了するのが「広げ人」。広げ人たちは、アイデアを思いついたらそれが一番の目的になっちゃう人種なんです。
天野
設楽さんのまわりにも強烈な人がたくさんいますもんね…
設楽さん
彼らはテンション上がれば上がるほど「いいんだよ! やるんだよ!」って、言うこと聞かなくなるから、反対してもムダ。
僕は「いいっすねえ! 僕が設計していいですか?」って巻き取っちゃうんです。
そこから“自分の部署に都合のいいように”“自分の実績につながるように”設計するのが、現場の仕事の醍醐味なんですよ。
画面越しの圧がつよつよですが、皆さん離脱しないでください
設楽さん
僕は会社で電子書籍事業も担当しているんですが、それとは関係ない別の新規事業のムチャ振りに「いいっすね、その事業のPRのために電子書籍も出しましょう!」とか言って、自分の担当事業にもメリットがあるように促したりしてました。
天野
さりげなくコントロールしてるのか…
設楽さん
広げ人のアイデアに共感する姿勢を見せて、信頼を得たうえで「丸投げ」してもらうことは、自分がやりたいように仕事できるチャンス。たとえば広げ人から「アプリつくって!」ってムチャ振りされたら、以前から仕事したい、会いたいと思っていた有名なクリエイターにお願いすることもできるわけです。
「会社のメリット」というプライオリティーを間違っちゃいけないですが、それを踏まえて“品のいい我田引水”を積み重ねるのは、自分のキャリアにもメリットが大きい。
天野
なるほど…。会社にも自分にもプラスになる方法を見つければいいんですね。
スドケンさん
上司の熱量をこっちのエネルギーに変えちゃう、合気道的な考え方ですよね。
設楽さん
むしろ、「丸投げ」じゃなく全部設計されちゃったら畳み人のうまみがなくなりますよ!
上司の言ってることがコロコロ変わるのはなぜ?
天野
次に相談したいのは、「上司の言ってることがコロコロ変わる」こと。これは困りますよね…
設楽さん
僕はそれも、そんなにイヤだと思ったことないんですよねえ。
天野
なんでですか?
よく訓練された社畜すぎないか?
設楽さん
日々情報に触れてれば、「言ってることが変わる」のは自然なこと。
ただ、多くのリーダータイプや「広げ人」は、そのプロセスをまわりに伝えるのが極端に下手なんです。心変わりの理由を説明できない人が多い。
天野
本当は理由があるのに、説明できてないんですか?
設楽さん
そう。僕が仕事をしている佐々木紀彦さん(NewsPicks Studios CEO)も、言ってることがコロコロ変わるんですけど、彼は「自分の中ではロジックがある」と言うんです。
でも、伝えるのをめんどくさがる。というか「言わなくてもわかれよ」と思ってるフシがあるんですよ。彼らの仕事は周囲に気を遣って説明することじゃなく、アイデアを研ぎ澄ますことですからね。
天野
たしかにそうです…
設楽さん
そこで現場の人間がやるべきは、「なんで話が変わったのかを推測してあげること」。
“自然現象”に対して「雨降るなよ!」って怒ってもしょうがない。「なんで雨降ったのかな?」と考える。昨日誰かと会食したから、こういう話が出たんじゃないか?とか推測して対処法を考えましょう。
スドケンさん
僕も賛成で、仕事って昔のバッティングセンターみたいなもんなんですよね。
スドケンさんの背景もクセが強いな
スドケンさん
昔のバッティングセンターって、今みたいに映像がないから、いきなり穴からボールが飛んできてたじゃん。
仕事もそれと同じで、こちらからは見えないところに内在してる論理があって、それを自分なりに解釈して打ち返していく力が重要なんです。
僕の持論「ハック思考」では、「観察、考察、推察、洞察」という4つの察する力が仕事の基本になると考えてます。
上司の考えが理解できないとき…あなたは「2番目に踊る人」になれますか?
天野
なるほど…
では、そもそも「○○をやろう!」って言われても、上司の意図が理解できない、納得できないときはどうすればいいですか?
スドケンさん
「上司の考えを理解しなきゃ」って発想自体を変えちゃったほうがいいですね。
上司は、「2番目に踊る人がほしいだけ」って場合がけっこうあるんですよ。
踊る…?
スドケンさん
「社会運動はどうやって起こすか」っていうプレゼンのなかで紹介された、有名な動画があるんだけど…
ざっくり言うと、
①ある男が1人で踊りはじめる。
②最初はみんな無視してるんだけど、別の男が出てきて一緒に踊りだす。
③何か面白いことが起きてる気がして、みんな仲間に入れてほしくて踊りだす。
っていう内容なんです。
社会運動はどうやって起こすか
デレク・シヴァーズが、ある驚くべき映像の助けを借りながら、社会的な運動というものが実際にはどのように起きるものであるかを解説しています (ヒ
「最初のフォロワーというのは 過小評価されていますが 実はリーダーシップの一形態なのです」「最初のフォロワーの存在が 1人のバカをリーダーへと変えるのです」
スドケンさん
つまり、大きなムーブメントが起きるとき、最初に踊る人以上に重要なのは、2番目に踊る人だっていう話なんです。
上司が1人で踊ってるときに、傍観してるんじゃなく、“最初のフォロワー”になってあげる。自分のなかで答えが出てなくても、2番目に踊る人になるっていう選択肢はアリだと思います。
天野
僕も最近、上司が「これからの時代はYouTubeだから、会社のみんなでYouTuberになろう」って言ってて、よくわからないなと思ってたんですが…(実話)
スドケンさん
そうしたら、いきなり1人でYouTuberデビューしてみたらいいかもしれないね。
まわりのメンバーがついてくれば最高だし、もし失敗しても、失敗の事例が集められるから評価されるはずです。
天野
マジか…ちょっと考えてみます…
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畳み人ポジションって、評価されないから損じゃない?
天野
いろいろ実践的な教えをありがとうございます。ひとつ気になってたことをききたいんですが…
設楽さんやスドケンさんは、「目立つ人ばっかり持ち上げられてて、自分の評価が低い」とイラっとすることってありませんか? 畳み人って損なポジションな気がするんです。
設楽さん
まあ、若いころはあったんですけど今はまったく思わないですね。
現場で立ち回れる人は、中長期的には社内および業界内で非常に評価されます。『新R25』とか『NewsPicks』には目立つ人しか出ないだけで、わかる人にはわかるから大丈夫ですよ。
「ちゃんとした広げ人は、ちょいちょい『設楽さんのおかげで…』とか言ってくれますしね」
設楽さん
僕がやっている仕事の「NewsPicksアカデミア」(会費を払うとイベントに参加できたり、書籍が届いたりするサービス)で、「実際に本を発送しているのになぜ赤字になっていないのか」とか、サービス全体を動かす現場の仕組みをつくった僕以外にわかる人ってあんまりいないんですよ。だから、社外からも僕に話を聞きに来る人が多くいます。
派手なことやって「最近あいつ何もやってない」とか叩かれる人より、上下の波が小さくキャリアを登っていけると思いますね。
スドケンさん
世の中で有名になることより、身近な人たちの評価を上げたほうがいいんですよ。自分の支持基盤をちゃんとつくったほうがいい。
実名は出せないけど20代で有名なヤツとか、一緒に仕事してみるとだいたいヤバいからね。なかにはホンモノもいますけど、ほとんどはポンコツですよ。
あっこれはたまに出る怖いスドケンさんだ
スドケンさん
20代で有名になることに憧れてる若いコが多いけど、支持基盤がモロいうちに有名になりすぎるのは危ない。
“人気子役”で、その後まで生き残れる人がどれだけいますかって話です。
設楽さん
打席をもらうためにある程度名前を売るのは大事なんだけど、そのテクニックだけうまくなっても意味がない。
それより、いろんな仕事に「呼ばれるようになること」が尊いんです。
バラエティ番組で言えば、ギャグで目立とうとするんじゃなくて、特段ギャグはないけど毎回ひな壇に呼ばれる人を目指すのが、凡人の戦い方と言えるんじゃないでしょうか。
思うところがいろいろあったらしく、お二人の口から熱い言葉が飛び出しました
天野
自分も頑張ろうと思えてきました…
最後に、『「畳み人」という選択』のなかに「いずれは広げ人になれる」と書いてあったんですが、自分が「広げ人」やリーダーになるタイミングってどう見極めればいいんでしょうか?
設楽さん
タイミングというより、状況を見てどちらの動き方もできる人になったほうがいいと思います。
本田圭佑も日本にいたら前のポジションですけど、海外に行ったら下がるときもあるじゃないですか。そういう状況に合わせられる人が有利になる。
35歳ぐらいで、“自分はどっちの動きをしているときが幸せか?”を考えて、ゆるやかに決めていけばいいと思いますよ。
スドケンさん
僕らが言っているのは、むしろ“王道の仕事論”なんですよね。20代のうちに、トリッキーな出世術じゃない、王道の仕事観を身につけてほしいと思います。
天野
これは凡人であるすべてのビジネスパーソンが意識すべき大事な話だ…!
地味とか言っててすみませんでした!!
とはいえ宣伝しすぎだと思いますけど
というわけで、新R25史上トップクラスのシブめな取材でしたが、終わってみれば“凡人”である僕らがすぐにでもマネすべき教えをたくさんいただけました。
取材を通じて感じたのは、お二人とも「ムチャ振り」や現場の苦しみを、ポジティブに解釈して楽しんでいるということ。
どんな仕事にも共通する、大事な姿勢な気がします。
リモート期の仕事にモヤモヤしていたR25世代のみなさん。今日はぜひこの記事を同期のメッセグループに送ってあげてください!
〈取材・文=天野俊吉(@amanop)/須藤さんサムネイル画像撮影=森川亮太〉
お二人の著書はこちらをチェック!
究極の「縁の下の力持ち」である畳み人。華やかな広げ人にはなれなくても、畳み人の道を突き進むという選択肢を教えてくれる設楽さんの著書です。記事に共感した方は、ぜひご一読を!
スドケンさんの著書『ハック思考』では、観察力や発想の転換によって、劇的に成果を出す方法が解説されています。新R25のスドケンさんインタビューと合わせて、ぜひ読んでみてください!
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