ビジネスパーソンインタビュー
青野慶久・サイボウズチームワーク総研著書『「わがまま」がチームを強くする。』より
多数決は“わがまま”の採用にもっとも向かない。サイボウズが提唱する「問題解決メソッド」とは
新R25編集部
組織で働いていると、さまざまな働き方に関する要望があります。
「自宅で作業したい」「週休3日がいい」「夜型なので、昼に出社したい」
一見、「わがままだ!」と思うような意見ですが、サイボウズ代表・青野慶久さんは、そのわがままこそ「社会を変えるかもしれないアイデアだ」と唱えます。
青野慶久さん・サイボウズチームワーク総研著書『「わがまま」がチームを強くする。』より、“一人ひとりのわがまま”がチームの力に変える方法をご紹介します。
わがままをチームの力に変える「チームワーク5カ条」
サイボウズでは、チームワークを発揮する――わがままをチームの力に変える――ために必要な条件として、次の「チームワーク5カ条」を設定しています。
『「わがまま」がチームを強くする。』より①理想をつくる
②役割分担する
③コミュニケーションする
④情報を共有する
⑤モチベーションを上げる
①の理想とは、メンバー共通の理想、会社全体で言えば企業理念です。
たとえば、サッカーチームの場合、「優勝するぞ」という人と「ベスト8でいい」という人、「楽しければいいよ」という人がチームに混在していると、チームとは呼べなくなります。
みんなが共感する理想をつくることが、チームワークには一番大事です。
メンバーみんなが優勝するぞと思っていなかったら、そのチームは優勝できない。
会社も同じです。
企業理念やスローガン、目標に社員が共感していなかったら、結局、モチベーションが上がらないので、それを達成することはできないでしょう。
②の役割分担では、各メンバーの強みと弱みを把握したうえで、それぞれが担う役割を明確にします。
ここで大事なのは、メンバー一人ひとりが、理想や目標を達成するために必要な自分の果たすべき役割をしっかりと認識していることです。
そして、メンバーそれぞれの役割がチーム全体で認識されていることも大事です。
③のコミュニケーションとは、メンバー同士が自分の考えや意見、思ったり感じたりしたことを伝え合うことです。
コミュニケーションは、メンバー同士のより適切な役割分担をするためにも重要です。
役割分担が明確なら、隣の人がどういう人か、何をやっているのかを知らなくても仕事に支障はないと思うかもしれませんが、それはまったく逆です。
適切な役割分担を実現するためにこそ、コミュニケーションが必要なのです。
④の情報共有とは、プライバシー情報やインサイダー情報以外の情報をすべてオープンにすることです。
情報共有というのは、案外、ないがしろにされやすい要素です。
たとえば、サッカーチームで、次の試合に関する情報をキャプテンだけが知っている状況では、練習内容や試合の戦略を立てることができません。
みんなが情報を共有しているから、みんなで次に備える練習ができるわけです。
ところが会社では、チームリーダーだけがその情報を知っているというケースがよくあります。
「情報格差」があっては、建設的な議論はできないし、判断や決定に対する納得感も生まれず、チームワークは成立しません。
⑤のモチベーションとは、理想を実現するためのやる気のことです。
モチベーションは、チームワークを発揮するために必要な条件であると同時に、①〜④が行われた結果として得られるものでもあります。
魅力的と思える理想(わがまま)があり、その実現に向けて自分の強みを生かせる役割が持てたときに、モチベーションは上がります。
また、丁寧なコミュニケーションと圧倒的な情報共有によってこそ、モチベーションの向上は可能になると、われわれは考えています。
そして、そのようなコミュニケーションを実現するための方法論が、次節でお話しする「問題解決メソッド」です。
遠慮なくわがままを言いやすくする「問題解決メソッド」
わがままとわがままがガツガツぶつかって摩擦が起きたとき、普通は上司とか人事担当者とか、社内のしかるべき調整役が乗り出してくるでしょう。
しかしサイボウズでは、調整役がいなくても本人同士で解決できるように、「問題解決メソッド」というフレームワークをつくりました。
これは、遠慮なくわがままを言いやすくするためのメソッドです。
わがままのぶつかり合いは、どうしても感情的になりがちです。
でも、議論の進め方をルール化して、みんながそれを共有していると、感情から事実を明確に切り分けることができ、お互いのわがままについて建設的に議論できるようになるし、クリエイティブな解決策を見つけられるようになります。
サイボウズでは、さまざまな議論が問題解決メソッドで行われています。
これが、「問題解決メソッドの概念図」です。
見てわかるように、問題解決メソッドとは、要するに「問題を解決して理想とする状態を実現する」ための議論の手法です。
まず、問題とは何か。
図表にGap (問題)とあるように「Vision (理想)とReality (現実)のズレ、隔たり」のことです。
たとえば、人材採用の目標が80名の会社で、実際の採用人数が60名だったら、理想と現実の間に20名のギャップがある。
だから問題になって、「なぜ60名なのか、みんなで原因を探求しよう」ということで議論が始まるわけです。
問題があることは悪いことではありません。
理想があるから問題があるのであり、個人・チームの成長には問題の認識――理想(わ
がまま)と現実のズレの確認――が不可欠です。
次に、Cause (原因)とは何か。
「理想と現実のギャップを引き起こしている事象や人の行動」のことです。
採用人数が足りない原因が「採用担当者がサボっている」ということもあるでしょう。
けれども、それだけが原因ではないでしょう。人事制度が悪い、採用サイトが魅力的でないなど、人の行動以外のさまざまな事象も問題の原因になりえます。
原因は必ず複数存在します。原因を探求することで、より効果の高い解決方法を見つけることができるでしょう。
問題があって、原因があって、それを解決する方法がネクストアクション(NextAction)――理想と現実のギャップを埋める人の行動――です。
人事担当者やウェブ担当者にスキルが足りないなら、スキルが身につくトレーニングをしようとか、スキルのある人を採用しようとか、解決方法は必ず人の行動として提示します。
ネクストアクションで気をつけたいのは、その「実行者とスケジュール」を決めなければ意味がないということです。
「誰がいつやるか」を決定し、具体的に実行することで初めて理想は実現されます。
また、「コスト・効果」など、さまざまな観点から最適なネクストアクションを検討することが大切でしょう。
問題解決メソッドを使って、会議の議題を共有すると、お互いのわがままについて建設的に議論でき、スムーズに会議が進むようになります。
とはいえ、サイボウズの社員が仕事の会議で、常に問題解決メソッドを使っているかというと、ぜんぜんそんなことはありません。
むしろ大事なのは、「事実」「解釈」「現実」「理想」「問題」「原因」「ネクストアクション」といった、問題解決メソッドの言葉のエッセンスを日々の会話の中で使うことです。
たとえば、「売り上げがよくないんですよね」「それは解釈ですよね?事実は何ですか?」とか、「現実はわかったけど、理想は何ですか?」といった具合です。
そうすることで、解釈の違いから余計な誤解が広がったり、堂々巡りで問題が明確にならずに、ネクストアクションがいつまでたっても出てこなかったりといった無駄な議論がなくなっていくのです。
多数決は、わがままの採用を決めるのに向かないシステム
どのわがままを採用するかを決める際、もっともよくないのが多数決です。
なぜなら、判断基準である理想(企業理念など)とわがままの関係についてきちんと議論されることなく、採用か不採用かが数の力で決まってしまうからです。
多数決はいかにも民主的で、多くの人の幸せに対応しているように思えますが、じつは一人ひとりの幸せには対応できません。
特に、マイノリティ(社会的少数者)の要求(わがまま)の採用にはつながりにくい仕組みです。
では、どのように議論をすればいいか。
サイボウズの答えはこうです。
会議などでみんなが自由に思っていることを発言することは、大いに結構。
ただし、その活発なコミュニケーションから、ちゃんと前向きな結論が出るようにする――そのためにサイボウズでは、「問題解決メソッド」を使って、建設的な議論を徹底するようにしています。
徹底的に議論をする際に特に重要なのは、「チームワーク5カ条」の「①理想」と「②役割分担」です。
この2つの実現に最も時間がかかるし、かけていいものです。
たとえば、「多く発生しているクレームを少なくしたい」という理想の場合。
「月に50件ある」という事実に対して、それをゼロにするのか、5件にするのか、半減するのか、という具体的な目標を設定するのは、それほど簡単ではありません。
リーダーが一人で決めてメンバーに号令をかけるのが手っ取り早いでしょうが、それでは、メンバーの共感が得られないし、積極的に動いてくれないでしょう。
理想や目標は、やはりチーム全体で議論して、メンバーみんなが納得するように決めることが不可欠です。
そして、決まった理想や目標を達成するために、メンバーそれぞれの役割分担を決めるわけですが、その役割に納得できなければ、積極的に動くはずがありません。
やはり話し合いで決める必要があります。
端的に言えば、理想と役割分担を、時間をかけて納得感のあるものにするために、コミュニケーションと情報共有が必要です。
これがしっかりできたら、メンバーの納得感を高められ、モチベーションも高まりますから、チームとしての成功にぐんと近づくというわけです。
「わがまま」を許容するチームづくりとは
『「わがまま」がチームを強くする。』には、売上4倍、離職率は7分の1にまで成長したサイボウズのチーム力の秘密を教えてくれる一冊。
流してしまいそうな小さなわがままこそ、耳を傾けてみれば、チームの大きな力になるかもしれません。
モチベーション高く仕事に取り組むためにも、チームの大切な「わがまま」をしっかり拾っていきましょう!
ビジネスパーソンインタビュー
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