評価されている人ほど、新たな挑戦が難しい…

「自分本位に生きてはいけない」は本当なのか? ウエンツ瑛士が語る“挑戦心”と責任

仕事
転職や独立、留学など、R25世代のキャリアには“転換”がつきものです。

ただ、「新しいことに挑戦してみたい」と思っても、「今の仕事での立場や責任を考えると、決断できない」と、自分の願望を隠してしまう人も多いのではないでしょうか。

挑戦心と責任を天秤にかけてしまうとき、どんな選択をすればいいの? ということで、今回はある「挑戦」をした、この人にお話を伺いました。
【ウエンツ瑛士】1985年生まれ、東京都出身。4歳でモデルとして芸能界デビューし、1995年から5年間『天才てれびくん』(NHK)にレギュラー出演。その後モデル、俳優、タレント、歌手と活動の幅は多岐にわたる。2018年10月から海外留学のために日本国内の活動を休止し、2020年3月に『火曜サプライズ』(日本テレビ)で、芸能界復帰を発表した
2018年に「舞台の勉強をしたい」と1年半のイギリス留学を決断し、今年3月に帰国したウエンツ瑛士さん。

多くのレギュラー番組を抱えていたのにもかかわらず、自分の「やりたいこと」を優先して番組を降り、海外行きを決断したことについては批判的な意見も見られました。

ご本人はどう思っていたのでしょうか?

〈聞き手=ほしゆき〉

「あなたの決断によって人に迷惑がかかる」という引き留めの言葉

ほし

ほし

ウエンツさん、そもそも留学してた理由は…
ウエンツさん

ウエンツさん

演劇の勉強をするためですよ!!

1年半で戻ってくるって、いろんな番組でもちゃんと言ってましたよ!
「いろいろ噂が流れてたみたいですが、それ以外の理由はないですよ!」
ほし

ほし

レギュラー番組を何本も抱えているなか留学することに、否定的な声もありましたが…

どういった経緯で留学することになったんですか?
ウエンツさん

ウエンツさん

30歳を越えてすぐぐらいのときに、自分のなかで“行こう”と決心したんです。

それで事務所に話して…実現までは2年間ぐらいかかりました
ほし

ほし

2年間も…!?

最初に「留学したい」という希望を伝えたときは、どんな反応でした?
ウエンツさん

ウエンツさん

「え?」って
ウエンツさん

ウエンツさん

あと「仕事はどうするつもりなの?」「番組はどうするつもりなの?」みたいな質問ですよね。
ほし

ほし

そういった声を、どう説得したんですか?
ウエンツさん

ウエンツさん

一番精神状態が悪いときは、「俺の人生だから関係ないじゃん!」って思ってました。
「いや、あくまでめちゃめちゃ精神状態が落ち込んでるときですよ!」
ほし

ほし

グレてる。
ウエンツさん

ウエンツさん

でもまわりの相談していた人には「今までウエンツの人生を手伝ってきたんだよ?」と言われるし、それもわかっているからこそ何度も悩みました。

あなたの決断によって迷惑がかかる人もいるよ」という意見があるのはわかるし…
ほし

ほし

ビジネスパーソンが転職を考えるときも、引き止められると「今まで育ててもらったから」と立ち止まってしまう人は多いと思います…
ウエンツさん

ウエンツさん

でも、「これまで助けられてきたんだから、自分本位に生きてはいけない」という意見を鵜呑みにはしたくないんです。
ウエンツさん

ウエンツさん

いや、わかってる! 本当はそんなこと思っちゃいけないんだけど、「思っちゃいけない」っていう風潮めちゃくちゃ強くないですか!?
ほし

ほし

仕事をしている以上たくさんの人に助けられていますし、お世話になっている人のことを考えないのは、恩知らずだと言われることも多いですよね。
ウエンツさん

ウエンツさん

言い出すほうも、まわりの人への迷惑や自分の責任について十分考えたうえで伝えてるんですよ。今回僕は、それを痛感しました。

「人が何かを決断したときに、どんなスタンスで耳を傾けるべきか?」をすごく考えるきっかけになりましたね。
ウエンツさん

ウエンツさん

少なくとも僕は、“すでに決断してる人を止めるのは、結局ムリ”だと思います。

今後、自分が逆の立場で「○○に挑戦したい」って言われたら、止めません。止めてもムダだから、「この先の人生で、もう一度この人と交わる機会があったら、どんなに面白いことをできるか考えよう」と思います

それしかないですね。

「“仕事を投げ出したら、大成功を収めないといけない”っていうプレッシャーが強すぎる」

ほし

ほし

「挑戦が終わったあと」についてもおうかがいしたいです!

ウエンツさんは復帰後、バラエティ番組で「無責任なヤツ」「何してきたの?」などトゲのあるいじられ方をされる場面がありますよね。
ウエンツさん

ウエンツさん

ネットとかでは行くときに「行かないで」って声もあったし、戻ってきたら「なんで戻ってきたの?」って声もある。

ややこしいなぁと思います(笑)。
ほし

ほし

どっちなんだという…
ウエンツさん

ウエンツさん

どうも、「一度仕事を投げ出したら、すごい大成功を収めないといけない」っていうプレッシャーが強い気がするんですよね。
ほし

ほし

たしかに。
ウエンツさん

ウエンツさん

でも、失敗してもいいし、同じ場所に帰ってきてもまったく問題ないと思いませんか?

必ずしも、誰もが認めるような飛躍をしなくちゃカッコ悪いのか?

僕はそうじゃないと思う
ウエンツさん

ウエンツさん

その人が挑戦したことって、5年後に花開くか10年後に花開くか、わからない。挑戦した直後にわかりやすい成果が見えるわけでもない。

だから、芸能界復帰後の僕に対する批判的なコメントについては…
ほし

ほし

はい。
ウエンツさん

ウエンツさん

仕方がないと思ってます

外野の声はどこまで行ってもあるので、自分のモチベーションで乗り越えていくしかない

留学前後もいろんなこと言われましたけど、「行かなきゃよかった」とは1ミリも思ってないですからね。
ウエンツさん

ウエンツさん

「人がどうこう言うから」って気にしすぎる環境にいたら、いつまでも自分の人生楽しめない…って30歳超えて気づきましたよ。

年齢制限のある挑戦もあるので、若いうちにいくらでも迷惑をかけて、飛び出して行っちゃえばいいと思いますよ。
ほし

ほし

「まわりが止めるなら、もう少し我慢して今の場所にいつづけたほうがいいのかな…」と思ってしまうこともありそうですが…
ウエンツさん

ウエンツさん

いや~、読者の人がもし25、26歳だとしたら、まだいろんなことがわからない年齢でくだす決断に、罪悪感や責任感なんて持たなくていいと思いますけどね。

昔は終身雇用が前提だったからそんな考えは通用しなかったかもしれないけど、今は“道”の数が多いですから。

「元の場所に戻れるか」と不安な人に、ウエンツさんが伝えたいこととは…

ウエンツさん

ウエンツさん

まあ、僕も不安がなかったわけじゃないんですけどね。

多くの人が自分のレギュラー番組を持つことを目標にしている世界で、自らそれを捨てるって「暴挙」と言われても仕方がないですし、悪い印象を抱いた人もいると思うので。
ウエンツさん

ウエンツさん

でも、もし当時の僕と同じように「もうこの場所には二度と戻ってこれないかもしれない」というプレッシャーがあって、新しい場所に飛び込む決断をできない人がいたら…

ぜひこう伝えたいです。
ほし

ほし

なんでしょう?
ウエンツさん

ウエンツさん

戻れるから

みんな今のポジションを、自分で1回は獲得できてるわけじゃん。その実力って、急に失われたりしないと思うんです。

それどころか、さらに経験値を上げられたり、新しい武器を得られたりするわけでしょ?
ほし

ほし

そう言ってもらえるのは心強いな。

ウエンツさん、レギュラー番組にもしれっと戻ってるし…
ウエンツさん

ウエンツさん

そうそう!

むしろ、「ウエンツっていなかったっけ?」って思ってる人いるんじゃないですか。他人から意識される自分なんてそんなもんなんですよ。

挑戦がうまくいかなかったとしても、いっときの評価なんて気にしなくていい。「今の評価はしょせん、人生の途中でしかないんだから」って思ってます。
過去のウエンツさんが「責任があるし」と諦めつづけていたように、もしかしたら今、自分の挑戦心に“諦め”でフタをしようとしている人がいるかもしれません。

葛藤の末に「それでも手放す」と動いてみたウエンツさんの言葉は、きっとそんなR25世代の背中を押してくれるもの。

責任との狭間で悩みながら今日も戦っているビジネスパーソンを、ウエンツさんは心から応援してくれました。
〈取材・文=ほしゆき(@yknk_st)/編集=天野俊吉(@amanop)/撮影=長谷英史(@hasehidephoto)〉
ヘアメイク:輝・ナディア(有限会社スリーピース) スタイリスト:丸本達彦(UNFORM)

ウエンツさん出演の舞台『わたしの耳』。9月9日から公演スタート!

『アマデウス』『エクウス』の作者としても有名な英国の劇作家ピーター・シェーファーが、1962年5月に初演し人気を博した2作の男女3人芝居。
『わたしの耳』キャスト:ウエンツ瑛士/趣里/岩崎う大
作:ピーター・シェーファー 上演台本・演出:マギー
公演期間:2020年9月9日(水)~9月18日(金)
公演会場:新国立劇場 小劇場
チケット料金:S席6500円/A席4500円
9月12日(土)ライブ配信あり


『あなたの目』キャスト:小林聡美/八嶋智人/野間口徹
作:ピーター・シェーファー 上演台本・演出:寺十吾
公演期間:2020年9月22日(火・祝)~10月1日(木)
講演会場:新国立劇場小劇場
チケット料金:S席6500円/A席4500円
9月26日(土)ライブ配信あり
詳細はこちらからチェック!