ビジネスパーソンインタビュー
中島徹著『メガヒット・マーケティングの法則』より
ダイエットサプリ広告の真の狙いとは? 購買意欲をかき立てる“4つのテクニック”
新R25編集部
ビジネスパーソンとしてさらに成長したいと思ったとき、マーケティングの知識はあっていいはず。
ただ、マーケティングを学ぼうと思っても、専門用語が多く、何から手をつけていいのか分かりづらいですよね…。
そんな人々に向けて、ハーバード大学客員研究員などを経て東京大学で助教授をされている中島徹さんは、今年1月に発刊した『メガヒット・マーケティングの法則』(ディーエイチシー)の中で次のように語っています。
「一見複雑に見える経済活動でも、普遍化された法則から俯瞰し当てはめてみれば、大半の成功したビジネスも、パターン化して理解することができる」と。
うまくいっているビジネスには、どんなパターンがあるのでしょうか。
私たちの身近な事例を紹介しながら、マーケティングの基本を解説している同書より、抜粋してお届けします。
モノを売るテクニック①繰り返すこと
すべてのセールスは顧客の望む未来を相手に伝え、再現性を感じてもらうことです。
そのためにも「繰り返す」必要があります。
例えば、日記は経験を常にアウトプットするという習慣でもあり、反復しないと忘れてしまう人にとっては素晴らしい行為です。
自身が興味のある分野に関しては、当然多数の知識を有している人もいます。
例えば、『ワンピース』や『ドラゴンボール』などの熱狂的なファンの中には隅々まで調べて、漫画家や編集者も意識していないような事実を知識として蓄えている人もいるはずです。
しかし、たとえ知識がありそうな人でも、教育をする際には油断できません。
「人は反復していないと忘れてしまう生き物」だからです。
好きなことでもしばらく接していないうちに、いつしか忘れてしまっていたという経験は誰でも思い当たるはずです。
どのようなメリットでも一度教育しただけでは忘れ去られてしまうため、顧客には繰り返し伝える必要があります。
優れたセールスマンは、手を替え品を替え、同じ内容をアピールし、相手がしつこいと感じるくらい繰り返し主張し続けます。
「繰り返し」の行為は、一見地味ですが威力は抜群。
粘り強く伝え続けることで、相手の頭に問題意識として定着し、商品のメリットや必要性をより深く理解してくれます。
モノを売るテクニック②一つのことに絞って語る
人に物事を伝える際は、内容を絞るべきです。
複数の事柄を一気に主張すると、話が分散してしまい、相手は理解しきれません。
丁寧に説明しても、すべての話が印象に残らず、結果的に何一つ覚えていないといった事態が起こります。
選択肢を増やすと、その数だけ説明が増え、商品のメリットやベネフィットの伝達が中途半端になる可能性があります。
複雑になればなるほど、ものが売れない確率は上がるため、あらかじめ選択肢を減らすという行為は有効なのです。
まずは、伝えるポイントを一つに絞り、成果が出たら他の内容にも注力すれば良いのです。
受験勉強をしたことがある人は、思い返してみてください。特定の一教科で高得点を出せると、連鎖的に他の教科も点数を伸ばせるケースがありませんでしたか?
これは、成果を出すコツが掴めて、一段階上の視座で物事を見られるようになるから。
教科の枠を超えて問題の読み解き方やポイントが感覚的に掴めるようになったのです。
ビジネスの世界でも同様です。特定の分野で成功体験を得た人は上達のコツを掴み、他の分野でも活躍できるようになります。
モノを売るテクニック③余計なことを言わない
余計なことは基本的に言わないようにしましょう。
余計なことを言うと、相手の思考が分散して、本当に注目してほしい商品・サービスの価値が落ちることすらあります。
わかりやすいように、スマートフォンとおじいちゃんを例に解説します。
おじいちゃんはスマートフォンのことを何も知らないので、売るときは使い方や効果を教える必要があります。
店員が次のようなセールストークをしたらどうでしょう。
店員 「今スマートフォンを手にするなら最新のiPhoneがいいですよ。以前のタイプよりもカメラの画素数が大幅にアップしましたし、Macとの互換性も今まで以上によくなって…」
こんなセールストークは最悪ですよね。スマートフォン自体を知らないおじいちゃんにとっては、意味不明だからです。
自分が知っていることを、相手もわかっていると思うのは大間違い。
相手は、「いや、その話が聞きたいのではないのに…」「余計な話はいいからさっさと本題に入ってくれ…」という気持ちを抱いているかもしれません。
余計なことを言うのは、自分の価値を落とすことにも繋がるのです。
モノを売るテクニック④第三者の事例のように話す
人は、歳を取れば取るほど素直になれなくなります。
年齢と共にプライドが高くなり、自分が培ってきた経験を否定できなくなるからです。
頑固でプライドの高い人には、教育をしても聞き入れてもらえない可能性があります。
しかし、一度人の言葉を受け入れると、それまでの態度がウソであるかのように、こちらの言葉を盲目的に信じるケースがあります。
この状態が続けば、勧める商品は何でも購入してくれるようになるはずです。
相手の信頼を掴むためには、「間接メッセージ」を伝えてください。
やり方としては、相手と同じような状況の人を「過去の自分や他人」として設定して、ひたすら否定するのです。
ピンとこない人も多いでしょうが、次に挙げる「太っているモテない男性向けのダイエットサプリA」の広告を思い浮かべると理解しやすくなります。
『メガヒット・マーケティングの法則』僕はAのおかげですっかり痩せて最高の人生を歩んでいます。
正直、少し前までは「太っていても別に困らないし、少しくらいバカにされてもいいや」と思っていました。
けれど、ある日、合コンでめちゃくちゃタイプの女の子Cちゃんに出会い、必死で連絡先を交換したのに、デートに誘ったところで断られました。
同じ合コンに参加していた友人に理由を聞いたら、Cちゃんは「太っている人とかダサくてマジでありえない。論外」と話していたそうで、ものすごいショックでした。自分では何とも思っていなくても、太っているってそんなにヒドいことなのかと。
そんなときに友人が、ダイエットサプリAをくれたのです。
半信半疑でしたが、僕は悔しかったのでAを毎日欠かさず飲み続けました。すると本当に体重が落ちていったのです。
合コンにいた友人が痩せた僕の写真をCちゃんに送ったところ「え! マジでイケメンじゃん! 紹介してよ!」という感じで、あっちから誘われるくらいになったのです。
この広告を見ると、否定しているのは「太っていた自分」ですが、これを見た相手も太っているモテない独身男性であれば「…自分も痩せなきゃヤバいかも」と少なからず思ってしまうわけです。
自然に、「Aというサプリ、俺にも効くかな?」と考えるようになり、頭ごなしに否定していたはずの商品をいつの間にか信用してしまうのです。
「間接メッセージ」は応用も簡単にできます。
紹介したダイエットサプリAのように、「過去の自分や他人」を設定して、否定する様子を相手に見せればいいだけですから、商品の教育をしていくときにぜひ試してみてください。
「教える」こと自体が商売になる理由
お客さんは手間を一切かけたくないと思って商品を選んでいます。
人が何かを調べるときは、本当に必要性に迫られたときだけといっても過言ではありません。
さらにいえば、必要性に迫られたときでさえ、人は「やりたくない」と面倒に感じ、お金を払って解決するならそれでいいと思っているのです。
だからこそ、「教えてあげる」のがビジネスになります。
「スマートフォンの各種設定作業」など、若い人から見れば「ちょっとスマホに触れば誰でもわかるでしょ…なんで、こんなのにお金払うの?」というサービスが成り立つわけです。
年配者にとってスマートフォンは未知なる道具であり、何も知らないのが普通。
だからこそ「教える」という行動に価値が生まれるのです。
年配者だけではなく、老若男女どの層にも「調べる」ことを面倒と感じる人は数多くいます。
「これさえ教えてもらえれば一気に進む」「ここがわかれば今よりも確実に前に進む」という思いを抱えている人に、「正しい知識を丁寧に教えてあげる」ことによってお金を稼ぐことができる、つまりビジネスになるわけです。
「丁寧に」というのは、優しくしたり親切に教えたりすることではありません。
「相手が知りたい情報を的確に教えてあげる」ということです。
スマートフォンをおじいちゃんに売るときは、画素数や互換性のことなんて無視して、「お孫さんとテレビ電話ができますよ。画面でお孫さんの顔を見ながら通話することができるのです」と言う必要があるのです。
「テレビ電話ができる」だけだと弱いかもしれません。おじいちゃんは「テレビ電話」がどのようなものかすら知らない可能性だってあります。
そのときは、「画面でお孫さんの顔を見ながら通話することができる」と加えれば、すぐに理解してもらえるでしょう。
おじいちゃんがスマートフォンに興味を示してくれたのであれば、実際にテレビ電話をしてみると効果的です。
実演することで、「孫の顔を見ながら電話できるなんて本当だろうか?」という疑念を一瞬で払拭できます。
これが「教育」であり、この細かさが「モノが売れる、売れない」の分水嶺になってくるのです。細部に神は宿ると言いますが、まさに商売にも当てはまりますよね。
人は基本的に警戒心が強いため、最初は「信じさせる」ことが重要です。
だからこそ、丁寧に教えてあげてください。情報格差は商売になるのです。
ビジネスが下手な人は「こんなの調べればわかるのに、なんで買うんだ」とか「こんなことに金を払ってる人は情弱」とか「こんなのお金を払わなくてもGoogleで調べたり、図書館に行けば調べられるわ」というようなセリフを言いますが、本質を理解していないだけでなく、丁寧に教える重要性をまったく捉えていない証拠です。
「自分基準」で物事を考えている典型例ですが、購買時における状況を客観的に捉えなければ、ビジネスはできません。
自分らしい「売り方」を知る本
「マーケティング」というと、3C、4Pなど、フレームワークを覚えるだけでもちょっと大変そう…と、尻込みしてしまう人は多いかもしれません。
しかし、中島徹さんの『メガヒット・マーケティングの法則』には、今から実践できる、具体的な答えが、わかりやすく解説されています。
『メガヒット・マーケティングの法則』本書では僕が実際に学び、そして、世の中でも著名な結果を出している事例や知識などを筆頭に紹介していく。
その中には就活に失敗して引きこもりのニートのような状態から、30歳でサラリーマンの生涯年収に相当する利益を上げ、日本だけでなく海外でもビジネスで活躍するように化けた人だっている。
この人は何を学び、人生を変えることができたのか。その答えが本書に書かれている。
まずひとつ、ぜひ自分の一番身近なところで実践してみてください。
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