中島徹著『メガヒット・マーケティングの法則』より
【入門編】堀江貴文、Appleなどの実例で「マーケティングファネル」を丁寧に解説
新R25編集部
ビジネスパーソンとしてさらに成長したいと思ったとき、マーケティングの知識はあっていいはず。
ただ、マーケティングを学ぼうと思っても、専門用語が多く、何から手をつけていいのか分かりづらいですよね…。
そんな人々に向けて、ハーバード大学客員研究員などを経て東京大学で助教授をされている中島徹さんは、今年1月に発刊した『メガヒット・マーケティングの法則』(ディーエイチシー)の中で次のように語っています。
「一見複雑に見える経済活動でも、普遍化された法則から俯瞰し当てはめてみれば、大半の成功したビジネスも、パターン化して理解することができる」と。
うまくいっているビジネスには、どんなパターンがあるのでしょうか。
私たちの身近な事例を紹介しながら、マーケティングの基本を解説している同書より、抜粋してお届けします。
重要なのは「濃いお客さん」
ビジネスにおいては、顧客の情報や属性を正確に把握することが欠かせません。
商品に対する興味や理解度に応じた適切なアプローチを行い、購入に繋げる必要があるからです。
顧客情報を収集し、属性を分類する際には「マーケティングファネル」(※)が役立ちます。
※「マーケティングファネル」とは…見込み顧客を引きつけて、自社の顧客に変えるように設計されたモデルを指します。イラストのように漏斗(じょうご=ファネル)の形をしているため、マーケティングファネルと呼ばれています
マーケティングファネルとは、顧客の購買行動を逆三角形の図で表したマーケティング用語です。
次の図を見てください。最上位層の「Webサイト閲覧」から最下層の「コンサル」まで、訪問した顧客を各属性に分類した逆三角形になっています。
僕たちは、顧客の属性に合わせて最適なアプローチを行わなければなりません。
たとえば、Webサイトを初めて閲覧した顧客には、メールマガジンの案内を表示して登録を促します。
登録後は、次のステップとしてオンラインサロンの案内を出すなど、深い層へ推移していくにつれて適切な行動は異なるため、属性を把握する必要があるのです。
各属性は、「認知→興味→検討→購入→顧客維持」「アクセス→興味→サンプル請求→商品購入→リピート→信者化」など、商品に応じて表現方法をアレンジできますが、すべてマーケティングファネルを表す逆三角形の枠組みに位置づけられます。
なお、最終目標となる購入に結びついた顧客の中には、さらに一段階深い層にあたる「共有」へ推移するケースもあり、商品を購入した上で、家族や友人などに勧めてくれる存在なので、「大ファン」や「信者」ともいえます。
成功の秘訣は「信者を作る」ことです。
「信者を作れ」という言葉は、「人を騙している」と悪い印象を持つ方もいるかもしれませんが、それは間違いです。
「信者」は、本来悪い意味ではなく、この本も、さまざまな知識を教えてくれた人たちを僕が「信じた」からこそ、完成しました。
もし信者化しなければ、この本を書き上げることはできなかったでしょう。
僕も含め、多くの人はさまざまなもののファンであり、信者化しています。
たとえば僕はアップル信者で、加湿器や玄米の信者でもあるので、それらは定期的に購入しています。
結果的には、お客さんが信者にならないと成功自体が難しくなるのです。
事例①「堀江貴文」の事業からわかるバックエンドの大切さ
顧客を獲得するためには、単体では利益にならない「無料オファー」にも力を入れる必要があります。
マーケティングファネルで、顧客が最初に接する最上位層の無料オファーに魅力を感じなければ、下層のフロントエンド(最初に客に提供する商品・サービスのこと)やバックエンド(フロントエンド商品提供後に販売する商品・サービスのこと)等に興味を示すはずがありません。
堀江貴文さんの事業をマーケティングファネルに当てはめると理解が深まります。
堀江さんは、上位層で提供する無料オファーとして、ブログやYouTubeを用意しています。
誰でも閲覧でき、認知拡大やフロントエンド以降の商品を販売するための広告として寄与するわけです。
フロントエンドでは、書籍やメールマガジン等の比較的小額な商品を販売し、バックエンドまで推移すると、オンラインサロンやコンサルティングなどの高額商品を販売しています。
無料のコンテンツを提供するだけでは当然赤字です。
また、有料のフロントエンドであっても、イベントや懇親会を数千円で開催したとしたら、参加人数や会場代によっては、マイナスになるかもしれません。
しかし、堀江さんの場合は、イベントでの交流をきっかけに、バックエンドとして用意している数百万円のコンサルティング契約を結べる可能性もあります。
ビジネスモデル次第では、無料オファーやフロントエンドで経費が発生しても、バックエンドの収益により、一気に黒字へ転換できるわけです。
商品を販売するためには、異業種交流会やイベント・懇親会等で、顧客と直接会うことが重要です。
オフラインで交流する機会は、顧客にとって非常に価値の高い体験であり、販売者のバックグラウンドや人となりを知るきっかけとなります。
顧客の信頼を得たタイミングでバックエンドを提供すれば、成約率は上がり、一契約で赤字を解消することも可能でしょう。
将来的には、開催した交流会自体も実績となり、無料オファーなどのコンテンツとして流用できるようになります。
事例②「iPod」がアップルの信者を増やした
アップルの場合、過去に「iPod」をフロントエンドと位置づけていました。
一世を風靡したiPodは世界中でアップル信者を生み出し、バックエンドであるスマートフォン(iPhone)やパソコン(iMacやMacPro)などをすべてアップル製品で揃える人も次々に登場しました。
すでに、Macの熱心な信者はある程度存在していたわけですが、iPodによってさらに数を増やしたのです。
MacProは、最低価格でも50万円以上(2020年12月現在)ですが、彼らは平気で購入するだけでなく、カスタマイズをした数百万円のモデルにも喜んで手を出します。
当然、アップル信者と呼ばれる人も、入り口はiPodをはじめとした安価なフロントエンドでした。
購入ハードルを下げた製品に対して好感を抱いたことで、アップルというブランドイメージ全体の印象アップに繋がり、後に登場するiPhoneなどのバックエンドを購入するきっかけになるわけです。
バックエンドの品質が良いという体験は、「アップルの新製品は要チェック」というマインドを生み出し、最終的には「新製品が出たら取りあえず予約しよう」といった形で、濃いファンから「信者」を醸成します。
フロントエンドの満足度が高いとバックエンドに推移するのは人間の性であり、購買行動の原理原則ともいえます。
堀江さんのマーケティングファネルでも言及した通り、フロントエンドで利益を上げる必要はなく、最終的にバックエンドで黒字化できれば問題ありません。
僕が知る限り、うまくいっているビジネスモデルは、すべてこの構造で回っており、持続可能なあらゆるビジネスモデルに踏襲されています。
事例③「AKB48」ほど参考になるビジネスモデルはない
マーケティングファネルを活用したビジネスを極めるためには、「無料オファーやフロントエンドの質を上げて、バックエンドの数を増やす」のが大事です。
アイデアさえあれば、バックエンドは、いくつ用意しても問題ありません。
高品質な無料オファーやフロントエンドの先に、高額なバックエンドが複数あれば、当然収益は拡大します。
また、バックエンドを購入する顧客数は、無料オファーと比べて相対的に少ないため、サポートの手間も軽減できます。
「AKB48」や「乃木坂46」などのアイドルグループも、フロントエンドとバックエンドを極めて効果的に使いこなしている好事例です。
公式YouTubeチャンネルやテレビ番組の無料オファーを見てファンになった視聴者の中から、フロントエンドにあたる握手券付きのCDを購入する人が現れます。
実際に会って握手をすると、さらに一定数のファンが、ライブに参加してグッズを大量購入する「濃いファン」に推移するわけです。
総選挙では、投票券目当てにCDを何百枚も購入する熱狂的なファンも登場しました。
濃いファンが無料オファーやフロントエンドをきっかけに次々と増えていき、運営者もイベントやライブツアーなど数多くのバックエンドを提供する形で、アイドルグループの事業規模はスケールする仕組みが確立しているのです。
AKB48の歴史をマーケティングファネルの観点で振り返れば、SKE48やNMB48、NGT48などの派生グループが次々と誕生した理由もわかるでしょう。
AKB48ほど参考になるビジネスモデルはなかなかありません。
アイドルグループのマーケティングには、収益化のヒントが数多く隠れています。
ファンは、さまざまなビジネスを成功に導く重要なファクターなのです。
ミドル・バックエンドに置く商品を「気軽に」用意してみよう
マーケティングファネルの構造は、費用対効果が抜群に良いのも特徴です。
ミドル・バックエンドの高額商品を紹介する相手は、少額のフロントエンドで集客した質の高い顧客であるため、広告宣伝費などが発生しません。
マーケティングファネルを理解し、実際のビジネスにも適切なミドル・バックエンドを導入すれば、効率よく利益を伸ばせるのです。
皆さんも、身近なビジネスシーンを分析してみてください。
自分がビジネスを始めるときにも、楽に使いこなせるようになります。
もし、同業者が効果的なモデルを構築しているのであれば、真似していくべきです。
ゼロから考える必要性がなく、自身もうまくいく確率が必然的に高まります。
これからビジネスを始める人は、ミドル・バックエンドに設置する商品に悩むでしょうが、まずは売れなくてもいいので、何かしら作ってみてください。
居酒屋であれば、10万円を超える高価なシャンパンを置いてみたり、英会話サービスであれば、月20万円の24時間フルサポートコースを設けるなど、とりあえず作ってみればいいのです。
たとえ売れなくても「この値段や商品だと売れない」というデータが取れますし、仮に売れたら収益を一気に伸ばせます。
ミドル・バックエンドは、気軽な気持ちで用意しておくことをお勧めします。
自分らしい「売り方」を知る本
「マーケティング」というと、3C、4Pなど、フレームワークを覚えるだけでもちょっと大変そう…と、尻込みしてしまう人は多いかもしれません。
しかし、中島徹さんの『メガヒット・マーケティングの法則』には、今から実践できる、具体的な答えが、わかりやすく解説されています。
『メガヒット・マーケティングの法則』本書では僕が実際に学び、そして、世の中でも著名な結果を出している事例や知識などを筆頭に紹介していく。
その中には就活に失敗して引きこもりのニートのような状態から、30歳でサラリーマンの生涯年収に相当する利益を上げ、日本だけでなく海外でもビジネスで活躍するように化けた人だっている。
この人は何を学び、人生を変えることができたのか。その答えが本書に書かれている。
まずひとつ、ぜひ自分の一番身近なところで実践してみてください。
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