坊垣佳奈著『Makuake式「売れる」の新法則』より
資金ゼロの映画が大ヒット作に!? Makuake流「応援購入体験」で顧客を巻き込む方法
新R25編集部
アタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake(マクアケ)」が成功した理由。
それは、「クラウドファンディングの仕組みをアップデートさせて、新しい商品開発の方法を提示できているから」だと、運営に携わる坊垣佳奈(ぼうがきかな)さんは言います。
事業者やプロジェクト自体に資金力や宣伝力がなくても、これまでにない数々のヒット商品を生み出せた裏には、一体どのような秘策があったのでしょうか?
坊垣さんの著書『Makuake式「売れる」の新法則』より、「ファンを巻き込む方法」「これからの時代の“売れるもの”の条件」「うまくいくブランディングの法則」について抜粋してご紹介します。
「応援購入体験」で、事業者とサポーターを繋ぐMakuake
Makuakeは創業当初、いわゆる「クラウドファンディング」と呼ばれるシステムを用いてスタートしました。
クラウドファンディングは「群衆(crowd)」と「資金調達(funding)」を組み合わせた造語で、主にプロジェクト遂行のために不特定多数の人からインターネットを通じて資金を募る手法を指して使われます。
現在のMakuakeは「応援購入サービス」と自らを定義して、プロモーションやテストマーケティングにも適した「新しいものや体験」が生まれる場として成長してきているのが特色です。
「新しいものや体験」を提供したい事業者がMakuakeで先行販売を開始すると、興味を持ったユーザーが金額ごとに設定された返礼品(リターン)を選び、決済します。
決済したユーザーは「サポーター」となり、事業者は決済で集まったお金を活用して「新しいものや体験」を作り上げ、サポーターへ提供します。
プロジェクトの中には数千万円、最高では5億円を超える応援購入総額を集めた事業者も登場するなど、日々誰かのチャレンジを後押しできている実感を得ていますし、私たちの業績も成長を続けています。
たとえば飲食店の開業支援プロジェクトは、世界規模で見ると例はそれほどありません。
しかし、Makuakeでは初めてオープンする新店舗から老舗の新店展開、また会員制の飲食店まであらゆるプロジェクトが誕生し続けています。
これも実は、一つの「発明」でしょう。
Makuakeがプロジェクト実行者からも、あるいは応援購入してくれるサポーターからも必要とされていると感じる瞬間は、年々増しています。
戦時中の広島を舞台にしたアニメ映画『この世界の片隅に』がヒットした2つの理由
サポーターをあなたのプロジェクトに巻き込んでいくには、商品の発売前やプロジェクト開始前からの動きが重要です。
それだけの関係を事前に築いておかなくてはなりません。
Makuakeでサポーターの存在が大きく働いた例でいうと、アニメーション映画『この世界の片隅に』製作委員会によるプロジェクトです。
今でこそ、第40回日本アカデミー賞の「最優秀アニメーション作品賞」に輝いた他、数多の映画賞を受賞して、テレビドラマ化もされるなど、確かな評価を得ている作品ですが、資金調達には苦労しました。
マンガ家・こうの史代さんと片渕須直監督は、それぞれが知る人ぞ知る存在であり、このコラボレーションには大きな期待が持てるものの、一般的な認知までは得られてはいませんでした。
企画段階で業界のプロたちから「ヒットの要素が見当たらない」と評価され、製作資金の調達は難航します。
製作準備に4年を費やし、シナリオと絵コンテを完成させるところまではたどり着いたものの、作品を次のステップへ進めていくためのスタッフの確保や、パイロットフィルム(営業用)の製作にあてるための資金を必要としている状況でした。
そこで、Makuakeを活用し、自らの手で資金を集めることになったのです。
ヒットの理由① 「エンドロールに自分の名前!? 」ファンを巻き込んで話題化
現実的な資金もなく、広報的な手段も持たない。
けれど、ファンを巻き込んで話題化し、ファンの力を借りて製作しようという発想です。
そのため、リターンの内容も「製作支援メンバーとしての登録」を前提に、「エンドロールに氏名をクレジット」や「片渕須直監督を囲んで行う製作支援メンバーミーティングへの参加権」などが設定され、ファンを巻き込む設計になっています。
プロジェクトが公開されると、こうのさんのファン、原作マンガのファン、片渕監督のファン、広島にお住まいの方...と、すでにそれぞれで存在していたコアなファンたちや関わりのある人、言わば「既存顧客」が率先して応援購入を始めてくれました。
彼らサポーターによって生まれた勢いは凄まじく、目標金額は2160万円と高い設定でありながら、最終的には3900万円以上が集まりました。
そして、それだけの期待を集めているという実績が説得材料となり、映画の配給会社も決定。
既存顧客がベースとなったサポーターたち、その勢いに巻き込まれて新たにサポーターとなった人たちにより、封切り日には立ち見が出るほどの盛況ぶりだったといいます。
もちろん、映画そのものも大きな楽しみでしたが、「自分の名前がエンドロールにクレジットされているのをいち早く見たい」と思った人も多かったようです。
さらに、その封切り日の盛況が「公開初日から映画館に行列ができている」と、ニュースで報道されると、これまで得られなかった一般認知の層にまで情報が行き渡りました。
こうして、サポーターの存在を超えた人々にまで魅力が伝わり、大ヒット作になったのです。
ヒットの理由② 舞台は細部までこだわる。「聖地巡礼」で街も活性化
『この世界の片隅に』は、テーマである「戦時下の広島での日々の暮らし」と真摯に向き合っていたのも重要なポイントだったと考えます。
舞台となる広島の町並みなどを精巧に描画しようと、現地視察が繰り返され、作品当時の世界のあらゆる細部を知るため、スタッフルームにはたくさんの資料も集められました。
その徹底したこだわりが、舞台となった広島の地で暮らす人々の心もつかみました。
映画で主人公たちが暮らす呉市ではスクリーンに描かれたスポットを訪れる「聖地巡礼」が流行し、街の活性にもつながったといいます。
インターネットやSNSというツールが増えてきた中で、その取り組みやすさは格段に上がりました。
『この世界の片隅に』プロジェクトが教えてくれるのは、何かを始めようとするとき、すでに関係のあるファン=既存顧客がいるケースでは、彼らをいかに巻き込んで、“初速の勢い”を生む着火剤とするかを考えることの大切さです。
新規顧客ばかりに気を取られずに、既存顧客をうまく巻き込み、自分事化してもらい、応援団として一緒に盛り上げてもらう。
実は、そういったサポーターとの向き合い方に実直に取り組んだのが、『この世界の片隅に』プロジェクトだったのだと思います。
売り手と買い手が直接繋がれる時代の「ものの売り方」
SDGsやエシカルなどが重要視され、消費者の「ものを選ぶ基準」が変わってきている今、“伝統”や“らしさ”を大切にしながら、新しい価値を生み出し続けているサービス・Makuake。
『Makuake式「売れる」の新法則』では、Makuake式のマーケティングの考え方や、「新たなものの売り方」についての参考事例がいくつも紹介されています。
売り手と買い手が直接繋がれる時代の「ものの売り方」を知りたい方は、ぜひ読んでみてはいかがでしょうか。
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