早野實希子著『世界一予約のとれない美容家が教える 生き抜く人がしている68の行動』より

状況適応、聞き方、自己認識…成功者たちが実践する、3つの“センスのいい振る舞い”

仕事
英国王室御用達医師が主宰のサロンや、ロンドンの五つ星ホテル「The Lanesborough Club & Spa」で活躍している美容家の早野實希子さん

早野さんはオスカー女優や、政治家、企業家、王族貴族など、数々の大物を相手にするなかで、成功する人たちに共通するマインドや行動を見つけることができたといいます。

早野さんの新著『世界一予約のとれない美容家が教える 生き抜く人がしている68の行動』のなかより、私たちもすぐに取り入れることができる部分を一部抜粋してお届けします。

「プロトコール」を柔軟に考える

私の知人が、ヘンリー王子とメーガンさんの結婚式に招待されたときの話です。

王子の結婚相手がアメリカ人で、英国国教会の信者でもないことから、どのような式になるのか予想がつかなかったそう。

彼はオーソドックスな伝統を守り、式に出席しました。

ご存知のように、式ではゴスペルが歌われ話題になりました。

典型的な英国国教会の結婚式とは少し違いましたが、プロトコールというのも流動的であっていいのだと印象的だったといいます。

人種、文化、宗教、慣習の異なる国家が円滑に交渉、コミュニケーションをとるための基礎的なルールを「プロトコール」といい、国際儀礼と訳されています。

語源はギリシャ語で「ニカワ」だそうで、ものとものをくっつけるという意味ですから、そのほうがわかりやすいかもしれませんね。

王族は足を組まないとか、競馬場での帽子についてなど細かいルールやしきたりがありますが、伝統も流動し、時には根幹は守りつつも対応していかなければいけない時代だと思います。

かくいう私も冷や汗をかいた記憶があります。

留学時代の友人のトルコ人の新婦、ギリシャ人の新郎の結婚式がイスタンブールで行われました。

土地もエキゾチックなので、トルコの伝統にのっとった式と想像し、服装もイスラム教に配慮して露出も色も抑えた服装で参列しました。

ところが、イギリス留学時に知り合ったふたりの式は、完全にヨーロッパ式のウエディングだったのです。

私は地味で、祝いの席で気が引けたのを昨日のことのように覚えています。

思い込みではなく、できるだけ情報を収集し、フレキシブルに対応することが大切だと痛感したものです。

もちろん外国では、慣習でのタブーもインプットしておきたいものです。

宗教的なタブーを知らずに無視するようなことになると、仕事がうまくいくどころか大問題にもなりかねません。

ビジネスでのフレキシブルな対応は必須です

周囲への配慮を忘れない。

あるベンチャー企業の創業者は、

「相手にプレゼンテーションするときも、相手の反応を見て対応できるよう、A案、B案と必ず用意しておく。

案が1つだと、少しでも疑問を持たれたときに、そこから挽回するのは大変だからね。

でも、自ら選択肢の中から選んだように相手に思ってもらえたら、うまく進む可能性は高くなる」とのこと。

友人にランチの場所を提案するときもそうです。

複数提案することでスムーズにいくことは多いと思いませんか?

先の創業者曰く、コンペに勝ったり、成功したときにこそ、modest―控えめにしなさい、と社員に教えますと。

そしてプレゼンテーションはうまくいった後の態度も大事だと。

ビジネスでは勝者がいれば敗者もいる。

社会は共存共栄、いわばお互い様。

競争に勝ったことを吹聴して周囲への配慮を欠いてはならない、ということです。

根底にリスペクトがあれば、単純に勝ち誇ることはできないはずです。

「聞く姿勢」を意識する

話す内容の大事さとともに、非常に大切なのが「聞く」ことです。

相手が話しやすいようにすることで、意外な情報を聞けたり、より親密になれたりします

会話のやりとりをしながら、情報を得る。

一問一答形式の、テニスのラリーの打ち返しのような質問ではなく、相手が話しやすいような流れを作れば、自然にいろいろ話してくれるでしょう。

それは国際問題の話し合いの場でも、お受験ママ同士の情報交換の場でも、競争意識を見せず、戦友のような共有感を根底に話すことで有意義な会話になります

イギリスのある投資家の方はおっしゃいます。

子どもの頃に、病気の馬の世話をしたことで、仕事の基本を学んだと。

朝早くから廐舎に行って、バケツで糞をとり、馬にブラシをかける。

馬の調子を見て、声をかけながら世話をする。

そこでニンジンをあげるとき、自分ひとりだけであげるのではなく、近くにいる小さい子にも、「ほら、やってごらん」と言って渡したりする。

そのときに、馬の調子をどう思うか聞くと、皆意見が違ったそうです。

自分は馬の表情を見ているとき、その子は脚の状態を見ていた。

自分とは違う着目点を聞き、それを馬の世話に取り入れることで、馬がどんどん元気になったそうです。

毎朝、早起きするのは大変だったけれど、日々の積み重ねで学んだことはかなり多かったと言います。

目の前の知識や経験を、自分だけで引き出しに入れても、広がりには限界があるのです。

まわりのことを考え、工夫して対することで、自分が持っている以上の知識や経験も自分の引き出しに加えることができるのではないでしょうか。

自分の「コア」をもう一度、確認する

「プロトコール」に気を遣い、良好な人間関係を築くために、人の話を聞き、多くの引き出しを作って話題を豊富にする。

コミュニケーションに必要な要素ですが、本来の目的は友好で有効な関係を築くこと

相手を尊重するあまり、ただ相手に合わせているだけでは両者の関係に発展性がありません。

空気を読む=自分を抑えること」になってしまうと、それが「普通」になり、それが常態化し楽になり、自らの意志や新しい発想が生まれにくくなるかもしれません

成功するには、ある瞬間、あえて「空気を読む力を捨てること」も必要なときがあると思います。

わかっていて空気をあえて読まないのはきついことです。

無用な敵を作らないようにしなければいけませんし、新たな価値を生むように意図し、それを実践して成功に導かなければいけないのです。

そのためにも、自分の目指す方向を見極めておかなければいけません。

そしてどこでどう生きるか、受け入れられる場所を見極めるセンスが必要です。

自分の仕事、人生などで目標だと思っているものを考えてみることで、自分の特性や合っている仕事、環境が見えやすくなると思います。

長く生きていると、何がコア(自分が大切にしている根幹)か、明確ではなくなってしまうことがあります。

私が仕事で接する方はどなたも多彩な方たちですが、何がコアか、家族なのか仕事なのか(それも、どのジャンルの仕事なのか)を判断するようにしています。

コアと多彩さの両輪が大切なのです

体を鍛えるトレーニングでも、インナーマッスルと呼ばれるコアな部分だけではなく、先端のさまざまな部位を鍛えることが必要だと思います。

「コア/先端」です。

トレーニングもそれぞれの部位を意識して強化すると効果が増すように、今、具体的に日々行っている仕事やミッションと、自分の大事な目標や価値観をただ並列にするのではなく、「コア/先端」の間をいくつかに区切って、より具体的にする意識が必要です。

そうすることで、多彩な対応力と定まった方向性を兼ね備えることができるのです。

自分の映画を作る

著名なインテリアデザイナーのジョナサンとコアについて話したときのこと。

彼は「自分の映画を作る」と考えてみるといいよ、と言ってくれました。

自分の履歴書を作る―つまり自分の人生がどのように展開してきたか、「ゴール=結末」はどこにあるのか。

自分のモチベーションは何か、自分の映画のストーリーの中で一番のデシジョン(決断)は何だったか。

そして、自分の映画を他人が観ることを考える。

どういうところが面白いのか、何が惹きつけるのか、ファクター、エレメントを考える。

強み、苦手、弱さも見えてきます。

自分の価値観もふくめ、客観的に見ることができるのだそうです。

自分を分析しようとしても、なかなか難しいですが、分を「1本の映画」と思うと、いろいろな気づきがあるものです

譲れないところ、こだわってしまうところがコア

私自身の映画。

それは、30歳で薬剤師としての場所を離れたことが大きなデシジョンでした。

コアは生後7ヶ月から14歳までの闘病でしょうか。

薬の副作用で苦しんだ経験から薬学部に入学し、研究の道に進もうとしましたが、全人医療(ホリスティック)に興味が湧き、東洋医学の道に。

それもストーリーの大事なピースになって、今につながっているのです。

“自分らしさ”が突破口

世界一予約のとれない美容家が教える 生き抜く人がしている68の行動

世界一予約のとれない美容家が教える 生き抜く人がしている68の行動

同書では厳しい世界で成功した人たちに共通していることの根本は「自分らしさ」だと紹介されています。

「何かに悩んだり、自分には今以上のものはできないという停滞を感じたときは、自らの素の五感を研ぎ澄ませることが突破口になると思います」

同書を読んで、本当の“自分らしさ”を突き詰めてみてはいかがでしょうか?