ビジネスパーソンインタビュー
滝沢 秀一著『ゴミ清掃芸人の働き方解釈』より
お笑い芸人→ゴミ清掃員にキャリアチェンジ。マシンガンズ滝沢が「逃げの副業」に賛成するワケ
新R25編集部
ふと、「自分はなんでこんなに働いているのだろう」と考えたことはありませんか?
多くの人が一度は、目的を見失い、労働に対して苦しい思いをした経験があるはずです。
ゴミ清掃芸人の働き方解釈仕事という名の絶対的な教祖から洗脳を解くには働き方改革よりも働き方解釈が必要なのではないかと思う。
と語るのは、お笑い芸人のマシンガンズ・滝沢秀一さんです。
滝沢さんはお笑い芸人として活動するかたわら、ゴミ清掃員として働いており、Twitterで『ゴミ清掃員の日常』などを書いています。
ダブルワークをこなし、“働くこと”を考えぬいた滝沢さんは6月に著書『ゴミ清掃芸人の働き方解釈』を発売しました。
今回は同書より一部抜粋し、当たり前に捉えられつつある“働く”ということを見つめなおすきっかけをお届けします。
お笑いで売れることはないとわかったとき
この時はまだお笑いに対して希望を持っていた20代、30代前半の頃の話で、その軸があればそれでも様々なことを乗り越えることができた。
問題は、ゴミ清掃員を始めて少し経った頃、はじめは「ラッキー、助かったぁ」と思っていたゴミ清掃だったが、時間が経つにつれ、本当はゴミ清掃じゃなくお笑いの仕事だけで生活がしたいと思うようになり、ハードな肉体労働が徐々に精神を蝕んできた。
そして先程も話したお笑いに対しての嗅覚、ライブ等で肌身で感じる客の反応、目線、自分がどの程度の位置にいて、テレビをつければこれから狙うべきポジションも見当たらず、八方塞がりの状態で、この頃のぼくの一番重要な仕事は現実から目を背けることだった。
まともに自分と向き合ってしまえば、間違いなくお笑いをやめる。
それまでのお笑いで売れれば、他のことは何でもいい、どんな苦行にも耐えるという軸はグラグラに揺れ、それはもう軸とは呼べなかった。
もうお笑いで売れることはない、とわかっている時に、ぼくはどの心持ちでゴミ清掃と向き合えばいいのかわからなくなっていた。
セレンディピティとの偶然の出会い
コロナ禍になって以降のことだが、最近「セレンディピティ」という言葉に出会って強い興奮を覚えた。
この“言葉”こそ、読者の方々に知ってもらい、欲をいえば、覚えてもらいたい。
このセレンディピティが意味することは何かというと、偶然の出会いから、何らかの価値を見つけることである。
これこそが、ぼくの仕事に対する向き合い方だ。
こういう価値観、発想が注目されているとすれば「みんな、偶然の出会いから何の価値も見いだせないことがほとんど」という現実の裏返しだろう。
考えてみれば偶然の出会いは日々、誰もが、無数に経験しているわけで、すべての出会いに特別な価値を求めていたら大変なことになる。
ただ、どんな出会いにも感謝の気持ちで接することは気持ちひとつでできるので、それはすぐにできる。
その出会いを通じて特別な価値を発見できるかどうかの保証はなくても、感謝の気持ちがあれば、出会いから可能性は拡がるはずだ。
ぼくはこの概念を知ったとき、「まさしくこれはぼくのことだ」と叫んでしまった。
本当はお笑い芸人だけで生活したいのに、それがままならないのでアルバイトを見つけようと、九社面接に行った。
そしてそれらすべてに落ち、お笑い芸人を廃業しようとしたときに、元芸人の坪井とゴミ清掃に救われた。
しかし、働いているうちあまりのハードワークに音を上げそうになったが、年齢が原因で他のアルバイトを落とされているので辞めるに辞められない。
そのなかでぼくが何を見つけたかというと、「漫才以外に何ができるか」という自問だった。
何もなかった。
何もないのであれば何かできるようにしなければならない。
だったら目の前のこのゴミ清掃という仕事を極めて、日本一のゴミ清掃員になろうと決めた。
これがぼくにとってのセレンディピティだった。
誰のために何の仕事をするのか?という問い掛けから始めることにした。
まずは自分のためだった。
家族のために働いてはいるが、ぼくの感覚では自分が満たされなければこの先もずっと働き続けることができないような気がした。
そして、ネガティブな要素から検討することにした。
一体、ゴミの仕事の何が嫌なのか?
もちろんさまざまな要素はあるが、お笑いで売れないから仕方がなくゴミ清掃員をやっているということも、この仕事が嫌だという要因になっていた。
ゴミの仕事とお笑いを切り離した。
いちばんの苦痛は何かというと「感情が動かないこと」だと気づいた。
ゴミ清掃員として働きながらも、心の中はお笑いで売れるためには、どうしたらいいのだろうと考えながら従事していたので、今、行っている作業に対しては何の感情も動かなかった。
これがいちばんつらかった。
目の前のことに集中していなかったので、驚いたり、感心したり、知識を蓄えようという気持ちがなかった。
怒りはマナー違反に向けて多少はあったが、これは仮の姿で芸人としての自分が本来の姿だから、今、目の前で起きている理不尽はぼくの人生に何の意味も持たないことだと思っていた。
ぼくはそれからしっかり腹を立てることにした。
腹を立て、どうしたら住民のみなさんたちの理解を得られるか、ゴミに関心を持ってもらえるにはどうしたらいいか、ゴミを回収する特殊なテクニックを身につけてそれで人を驚かせる日が来ればいいなと研究をしてみたり、逆にゴミ清掃員のことを配慮してくれる主婦のテクニックに感動してみたり、ひとつひとつを吸収しようとすることで、さまざまなことが見えてきた。
自分が怒った対象をすべてメモに残した。
それはいつか来るであろう芸人として特技を披露する何かの番組のワンコーナーを目標にして、ゴミ清掃員という副業を本業に活かそうと思ったのだった。
副業と本業がひっくり返ってから
すると。
見事に副業と本業がひっくり返った。
ぼくにとってはもうどっちが本業でどっちが副業かなど別段、問題ではなくなった。
その当時は、芸人仲間でも「ゴミ清掃の仕事をしている」と舞台でいわない方がいいという人も多くいた。
彼らは、お客さんは必ず芸人のサクセスストーリーを期待しているのだからといった。
今でもSNSなどでは、本業の漫才がままならないのにゴミ清掃員としての話ばかりして恥ずかしくないのかと罵声を飛ばされることもある。
しかしぼくには、それはもうどうでもいい問題になっていた。
人が何を言おうが自分は自分の人生を歩むと決めていたのだ。
たまに夏の炎天下、走り続けるハードワークをこなしていると、何も考えないロボットになりたいと思うこともある。
手も足も機械で、息も切れない、お腹も空かない存在になりたいと思いながら、仕事をすることもある。
それはそれとして一時的なものであるので、その気持ちもメモをして、今ここで書いている。
それすらも役に立っている。
感情はすぐに忘れてしまうのですべてメモをしておくことをぼくは勧める。
10代には10代にしか感じられないものがある。
人生でいちばん若いのは今日である。
今日の日に感じたその気持ちをメモに残して20年後に読み返してみるのも面白いのかもしれない。
逃げる形でのダブルワークもあり
たとえば自分の働いている会社の理不尽な上司や環境を変えて行こうという姿勢を持つのも大事だが、それがこじれているようなら他に自分の能力が発揮できる場所を求めてもいいと思う。
それがダブルワークだ。
逃げる形でも構わないが、副業が本業を助ける、副業が本業を成長させるような働き方がいちばん望ましい。
会社に不満を持っているのに、働くことに関して解釈もせずに、同僚と愚痴ばかりをいっているのでは楽しい未来が待っているとは思えない。
それはそれで楽しいのかもしれないが、仕事が終わってまで会社の人間と建設的でない話をして居酒屋代を使うのならば、それを習い事に使ったり、異業種交流の参加費に当てたりするほうがいい。
違う業界の人の話を聞き、興味があれば、自分がそこで働けるのか?など情報を仕入れたほうが、まだ明るい未来が待っているように思える。
生まれつき実家が金持ちで、仕事が嫌だからやめようかというならば、別にやめればいいし、ぼくがとやかくいう問題でもないが、もし家族がいたり、この先を考えれば、どうしてもやめられない等の理由があるのならば、再度この本に戻ってきてほしい。
この本は、働くことに対して、気持ちが折れたときに読む本だ。
この本を読むということは、今やっている仕事に対し、何かしらの不満を抱えていることだろうと思う。
そんな人でも、間違いなく何かしらの可能性を必ず持っている。
何ひとつ持っていないと思っていたぼくがこうやって今、本を書いている。
良いか悪いか置いておいてこれもひとつの可能性である。
しかし、可能性は何かしらの行動を取った人のみに与えられる。
働き方を解釈して解決できるのならば、これから先も今の仕事に没頭すればいいし、もしそれができないのならばダブルワークで副業に頼るのもいいだろう。
あなたという人間が人に迷惑をかけず、前向きに進むのであればどんな形でもいい。
塞ぎ込む時期があっても、生きていれば勝手に進むのだからそれでいい。
塞ぎ込んでばかりいたら疲れるので勝手に前を向くだろう。
大事なのは解釈力
働いていく中で、不平不満はたくさん出てきます。
不満を吐き出すことはできても、なかなか改善までに持っていくことは難しい…
そんな働くことにつかれた時、同書を読むと背中を押してもらえます。
ゴミ清掃芸人の働き方解釈人生ももちろんそうなのであろうが、こと仕事に関していちばん大切なことは、目の前のその困難をどう解釈するのか、に尽きる。
ないものを求めて苦しむのならば、あるもので楽しむ。
もしそれでも求めるのならば、その機会を作る。
働くことの解釈を変えれば、今まで辛かったものも前向きに捉えられるようになっているかもしれません。
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