ビジネスパーソンインタビュー
尾原 和啓著『プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる』より
メルカリでは野菜を売れ。プロセスエコノミーはジャングルクルーズ型とバーベキュー型に分かれる
新R25編集部
市場には今、低価格で高品質なサービスがあふれています。
商品やサービスたちにはそれぞれの強みがあり、どれを選べばいいのか迷ってしまう…ということも多いはず。
そんな現状に対し、発売前にも関わらずAmazonの書籍カテゴリー売れ筋ランキングで総合1位になるほど話題の新著『プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる』では以下のように語られています。
プロセスエコノミー あなたの物語が価値になるちょっとやそっとのクオリティでは、差別化が難しくなっているのが現状だと考えています。
アウトプットの差がなくなったことで、価値を出すならプロセスという感じになっているのです。
そして、プロセスに価値が増えていった先にあるのが、プロセスエコノミーです。
Google、マッキンゼー、楽天執行役員などを経験する尾原和啓さんと同書の編集者である箕輪厚介さんは、なぜ今「プロセスエコノミー」が重要だと唱えるのか?
ここ1年で話題になってきた「プロセスエコノミー」の正体・今後の可能性について、同書より一部抜粋してお届けします。
1億総発信者時代の「Why」の価値
実際にどのようにプロセスを公開していくことがポイントなのか具体的に考えていきます。
ただ単に商品の制作プロセスをオープンにするだけでは、なかなか人は魅力を感じてくれません。
プロセスエコノミーを実践するうえで最も大切なのは、あなたの中にある「Why」(なぜやるのか・哲学・こだわり)をさらけ出すことです。
誰もが「インフルエンサーになりたい」とYouTubeやInstagramで発信しまくる中、もはや平凡なインフルエンサーは生き残れません。
1億総発信者社会では人もモノも埋もれてしまい、なかなか見つけてもらうことすらも難しいのが現実です。
たとえ一時的にフォロワーやチャンネル登録者数が増えても、他の人気者が出てきた瞬間たちまち淘汰されてしまいます。
インフルエンサー市場は完全にレッドオーシャン状態であり、既存のインフルエンサーも一夜にして無価値化してしまう可能性があるのです。
何千万人がYouTubeやSNSで発信するようになると、「What」(アウトプットの内容)だけでは差別化できません。
たとえば「What」を伝えるのがうまい学習系コンテンツであれば、ひろゆきさんやメンタリストDaiGoさん、オリエンタルラジオの中田敦彦さんがいます。
そんな戦場で一般のサラリーマンや主婦も戦うことになります。
「What」だけで勝負しようとしても、レッドオーシャンの市場で勝ち残るのはとても難しいのです。
なぜ「What」が生み出せるのか、「How」(技)も見せながらギャラリーの注目を集める。
そして最も大事なのは、「How」ではなく、なぜやるかという「Why」(なぜやるのか・哲学・こだわり)なのです。
「What」「How」は一定のモノサシで測れるものであり優劣が決められますが、「Why」はその人の生き方に拠るものです。
1億総発信者時代のレッドオーシャンの中で、どうにか注目を浴びようと思うと、どんどん過激になっていったり、今売れているモノに似たモノを作ったりしてしまいます。
しかしながら、それをすればするほど、オリジナリティはなくなり、他と同じようなモノになり、結果的に埋もれます。
あなたの中にある「Why」を開示して狭くても深い支持を得ることが大切なのです。
ジャングルクルーズ型かバーベキュー型か
プロセスエコノミーでお客さんとプロセスを共有するにはジャングルクルーズ型とバーベキュー型の2つがあるという話をご紹介します。
ディズニーランドのジャングルクルーズというアトラクションは、なぜあんなに人気なのでしょうか。
アトラクションに乗りこんだ客は、一人一人が冒険の仲間です。
「右から弾が飛んできた!」「後ろからも来るぞ!」と船長の呼びかけが聞こえると、みんなキャーキャー騒ぎながら冒険の最前列に陣取っている感覚を味わえます。
プロセスエコノミーによって集まった人は、あたかもジャングルクルーズに乗っているようなワクワク感を味わえます。
そんな夢を実現する冒険を、実際には危険のない場所で共に味わうことが最大の価値なのです。
また一方で、一人一人が実際に手を動かし、みんなで作り上げるバーベキュー型のプロセスエコノミーもあります。
バーベキューは、色々なタイプの人が参画しやすい隙間があらかじめ設定されています。
バーベキューでの役割は、肉を焼くことばかりではありません。
ウチワで辛抱強くあおぎ続けて空気を送り、木炭の火起こしをするのが得意な人もいます。
洗い場を探してキレイに野菜を洗い、食べやすいように包丁で切る仕込みもあるわけです。
みんながお腹いっぱい食べたあと、片付けをする人もとても大切です。
一方で仕事は何もしないけれど、お酒を飲んで場を盛り上げる人がいてもいいわけです。
バーベキューというのは、ある意味でお金を払って「仕事」をするという極めてプロセスエコノミー的な体験です。
大切なのはそのプロセスの中には、多様な人が楽しく参加できる小さな役割がたくさんあるということです。
つまりプロセスエコノミーをバーベキュー型で展開するためには小さな役割をたくさん用意し、居場所を作ってあげることがキーになるのです。
つまり、コミュニティを作るうえでは、余白を敢えて作って、役割をたくさん用意することが重要なのです。
ジャングルクルーズ型で挑戦プロセスの目撃者にするか、バーベキュー型でみんなで共にプロセスを作り上げるか。
プロセスエコノミーの手法は1つではありません。
プロセスエコノミーをうまく活用している企業を参考にして、自分の「Why」を伝えるには、どのような型が合っているのか考えていきましょう。
メルカリでは野菜を売れ
メルカリの機能は、中古品、不用品を売買するリサイクルショップだけではありません。
かしこい農家は、メルカリを産地直売のお店として使っています。
農家が作った新鮮な野菜を、消費者のもとに安く直接届けるのです。
メルカリで野菜を売ることのメリットは2つあります。
第1に、お客さんと直接やり取りするので価格を安く抑えられることです。
農協を通じて作物を売ると、流通の過程で農協や卸業者に利益を中抜きされてしまいます。
スーパーマーケットや青果店は多額の家賃や光熱費、人件費をかけていますから、当然利益を分配しなければなりません。
しかしメルカリで直売すれば、中間業者に中抜きされていた利益を総取りできます。
梱包材のコストや送料代を差し引いても、十分収益が出せるでしょう。
プロセスエコノミー的には第2のメリットが重要です。
それは生産者とお客さんの直接のつながりができ、リピーターとして野菜を買い続けてもらうことで、あたたかいファンコミュニティを作れることです。
「今日は嵐で大変でしたが、こんなトマトができあがりました」「今年の青森ニンニクは出来がすごいですよ」と、生産者本人が書く。
写真と一緒にミニ新聞にまとめて、野菜と一緒に同封することもできるのです。
するとお客さんはその人から野菜を買うのが楽しみになっていきます。
アウトプット(野菜)を買いながら、プロセス(農家の物語)も一緒に楽しんでしまう。
メルカリを介したプロセスエコノミーによって、農業も変わっていきます。
BTSが世界市場で突き抜けた理由
さて、アメリカでブレイクする前に、BTSが一番稼いでいた国はどこでしょう。
意外なことに中東のUAEなのです。
BigHit(BTSの所属事務所)の社員はUAEに引っ越して、住みこみで仕事を始めます。
現地の「ARMY」と交流しながら、BTSの良さを中東で広めていく方法それ自体を現地のファンと一緒になって考えていきました。
お客さんを、ファンに、そして共犯者にしていったのです。
2018年、BTSがアメリカの音楽チャートBillboard(シングル部門)で第1位に輝きました。
2019年、2020年には2年連続でグラミー賞授賞式にゲストとして招待され、2021年にはグラミー賞にノミネートまでされました。
BTSはワールドツアーも大成功させており、完全に世界基準のトップアーティストです。
これはハーバード・ビジネス・スクールで研究論文が出ているくらいおもしろいテーマです。
1つの要因としてK-POPは、プロセスエコノミー的な仕掛けをしたことによって、世界的なコンテンツとして成長しました。
ミュージシャンにとっての最終成果物(アウトプット)は、アルバムのリリースですが、BTSは7人のメンバーの肖像権にガチガチの縛りをかけていません。
「ARMY」と呼ばれる熱烈なファンはクラウドファンディングによってオカネを出し合い、渋谷の109にあたるような一番目立つ場所に自腹でBTSの広告を掲載します。
一般の人が少額を出し合い、広告を出すのです。
その広告にメンバーの写真を使っても、事務所はクレームをつけたりしません。
またYouTubeでBTSの曲を流し、ファンがダンスの動画をアップロードしたりコメントをつけたりするのも自由です。
ファンはBTSのダンスを研究し、どうすれば完全コピーできるか細かく紹介して動画を発信していくのです。
このようにして仕掛け人たちは、BTSを自発的に応援・宣伝してくれるセカンドクリエイターをどんどん増やしていきました。
まるで宣教師がミッションを果たしていくように、未開の地でK-POPの魅力を伝えるセカンドクリエイターを育てていく。
プロセスエコノミーの方式でBig Hitは「ARMY」を固め、UAE以外の各国でも次々と連帯を広げていきました。
そして彼らが歌う歌詞には、ドキッとするほど哲学的なフレーズが入っていたり、政治的とも読み取れるフレーズが書きこまれていたりします。
ただ楽しく歌って踊って幸せになるのではなく、口ずさんでいる人が「あれ、これって私の問題でもあるよね」「これって私が暮らす社会の問題だよね」とハッとする。
「Why」が、一人一人の人生のストーリーにしっかり落としこまれていく。
そうやってプロセスを共有し、BTSとファンは一緒に歩んでいくようになるのです。
緻密な戦略によって作りこまれたBTSがブレイクしたのは、必然的な結果でした。
ビジネスのみならず生き方でも、役立つ新常識
プロセスエコノミー あなたの物語が価値になるプロセスエコノミーは、そんな私たちの新しい生き方を実現するため、この大激動時代を生きる一人一人の武器にもなっていきます。
上記にあるように、同書は今の時代で残っていくために必要な新常識がわかりやすく紹介されています。
同書を手にとって、自分のビジネスや生き方を見つめなおすのはいかがでしょうか。
きっと、あなたが普通だと思っている好きなものやこだわりも“プロセス”となり、その瞬間瞬間でベストな状態に導けるようになるはずです。
〈写真撮影=千川修〉
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