ビジネスパーソンインタビュー
現場の反発と戦いながらDXを推進。須藤憲司が問いたい「デジタル化して幸せになったこと」

「DXしても、ふだんあまり感謝されないんです(笑)」

現場の反発と戦いながらDXを推進。須藤憲司が問いたい「デジタル化して幸せになったこと」

新R25編集部

2021/11/03

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皆さん、毎日楽しんでいただいてありがとうございます!!!

ただ、これまであった通常のお題にくわえ、より専門ジャンルに限定したハイレベルなものも見てみたい…と思うようになりました。たとえば、あるジャンルでのトッププレイヤーが“最近、問うてみたいテーマ”は何か?

今回は、Kaizen Platform社の創業者であり、10月7日にDXをテーマにした書籍『総務部DX課 岬ましろ』を上梓されたスドケンこと須藤憲司さんに、お話を聞いてみました。

〈聞き手=天野俊吉(新R25副編集長)〉

天野

これは…どういう関心なんですか?

須藤さん

僕たちは今、「人間の価値観が変わる可能性がある数カ月を過ごしてる」と思ってるんです。

今、コロナウイルスのワクチン接種率が上がってきてるじゃないですか。気をつけながら経済を回そうという方向に向かうと思うんですけど、その先が重要だと思ってて。

仮に「やっぱり感染が増えました」「新しいナントカ株が出てきました」ってなってしまったら、「ああ、これって続くんだ」ってみんな思うじゃないですか。

天野

「ワクチンが希望の光だ」って思ってたのに、「やっぱダメなんだ」みたいな。

須藤さん

次そうなったらかなりキツいと思ってて。「やっぱりあと5年はこのままの生活かもです」ってなったら、人間が求めるものが変わってくるんじゃないかと思ってるんです。

消費者心理も変わると思うし、ビジネスの投資判断もきっと変わってくるなと。それが僕のなかで一番の関心事なんです。

だから、「この数カ月、人がどういうときに幸せ、喜びを感じるか」に注目してるんですよ。

「ルンバがかわいい」コロナによって消費の“幸せ”はどう変わってる?

須藤さん

僕の仮説としては、まず消費の形が情緒的なものに流れてるんじゃないかなっていう感覚がありますね。

天野

モノを買うときにも「情緒」?

須藤さん

そう。僕、最近ルンバを買ったんですよ。今まで、まじでルンバをバカにしてたんですけど…

なぜルンバをバカに…

須藤さん

昔、オフィスでルンバを使ってたことがあったんですけど、すぐ引っかかっちゃうから回収しなきゃいけなくて。

でも最新のルンバを買ったら、まず機能もめちゃくちゃ便利で、あんまり引っかかったりしない。

そのうえで、なんか…すごいかわいいんですよ。「ルンバ…頑張ってるな」みたいな(笑)。

天野

ルンバがかわいい…

須藤さん

一番すごいと思ったのは、おそうじロボとしてはどうでもいい機能だと思うんですけど「名前をつけられる」ところ。うちのは小次郎っていう名前なんで「小次郎、頑張ってるな」みたいな。

帰るときもこう…シューッてなめらかにカーブしながら戻っていったりするんです。かわいすぎて、家族でルンバを追いかけちゃう(笑)。

小次郎をめちゃくちゃかわいがっている須藤家

須藤さん

だから、僕の仮説としてはお金を払うタイミングでは「機能」で買うんだけど、その後「情緒」を感じた瞬間に顧客が満足してるんじゃないかと考えてます。

仕事で関わっているオンラインスクールの会社でも、バナー広告とかで効果があるのは、「こういうことが学べます」っていう機能の訴求。でも、入会してくれた人のなかで人気になる授業って「人生哲学」とか、情緒的なものなんです。

実用性で買うんだけど、その後実用的じゃない情緒的な部分に魅力を感じるっていうのが今っぽい消費の形なのかなと思ってますね。

大事なのは“デジタル”じゃない。DXで成果を上げ、幸せを感じるには?

天野

これも「人々が幸せを感じるのはいつか」という話から来てるテーマなんですかね?

須藤さん

そうですね。僕はDXの仕事をしてるので…やっぱり現場でDXのプロジェクトをやってると、本当に大変なことが多いんですよ。

だから、DXで幸せになった話を聞きたいっていうのもあります(笑)。

須藤さん

たとえば、どの会社の経営者の方と話してても「DX人材がいないからうまくいかない」っていうんですよ。

でも、気付いたんですけど、DX人材ってそもそも存在しないんです。

みんな「デジタルの知識がないとDXができない」って思ってるけど、大きな誤解。「デジタルにくわしい人材がいればDXができて、成果が出るようになる」ってわけじゃないんですよね。

天野

じゃあ…どういう人がいればDXが成功するんですか?

須藤さん

「人望がある人」です

須藤さん

たとえば僕がどこかの会社に転職して「DXして成果が出せますか?」って言われても、出せないんですよ。だってその会社のことよく知らないし、そんな僕が何か言っても誰も動いてくれないですから。

事業の本質に対する深い理解があり、変革できる人材人望があってリーダーシップを持っている人。そういう人材のほうがはるかに大事なんです。当たり前ですよね?

DXっていう言葉もミスリーディングだと思ってて。「D(digital)」が大事に見えるじゃないですか。でも、「X(transformation)」のほうが大事なんですよ。

天野

DXの本質は、デジタル化することより、変革して成果を上げることだと。

須藤さん

そう。だから僕が最近やってるワークショップは、そこの会社の本業のエースみたいな人たちに、「DXを使って何ができるか?」ってことを伝えたり一緒に考えたりしてるんです。

これはすごい面白い。新規事業や、既存のワークフローを変えるみたいなアイデアがたくさん出てくる。

例で言うと、インドで日系企業をクライアントにしてる会計事務所があって「インドに関する情報を発信するツイッター」を始めたんですよ。商習慣とか、レストランや病院の情報が知りたいとか、ニーズがあるじゃないですか。

天野

なるほど。

須藤さん

今までは人づてに会社を紹介してもらってたんだけど、「これからは顧客集めをDXでしていきたい」って始めたらめちゃくちゃフォロワー増えてて(笑)。

小っちゃいDXに見えるけど、顧客開拓っていう成果につながってて、本当に面白いですね。

天野

ちなみに、DXで「幸せになった」みたいな話は、普段あまり聞かないんですか?

須藤さん

うーん、「変革」って基本みんな嫌いなんですよ。DXでムダをなくそうとすると、いろんなところで抵抗されます。

たとえば、ある会社さんが取り扱ってる商品の価格のシステムへの登録が合っているかをチェックするために、紙に印刷して、一段ずつ定規を合わせて見てるっていうんです。

正直、定規でやる必要はないじゃないですか。「これ…なんでやってるんですか?」ってきいたんです。

天野

理由はなんだったんですか?

須藤さん

これをやるのが営業の仕事なんです」って。

須藤さん

この作業をやらないのは営業としてどうなんだ」と(笑)。笑い話だと思うじゃないですか?でも、こういう脈々と受け継がれている様式美みたいなものって、どの会社でもあるんですよ。

サイバーエージェントみたいなIT企業に行っても、きっと「なんでこんなことやってんすか?」みたいなのは絶対あるんですよ!(笑)

天野

たしかに。外から見たら「えっ?」っていう文化はどの会社にもあるかも…

須藤さん

きっと意味があるんだとは思うんです。だから抵抗したくなるんだと思う。

でも、時代背景とか会社のことを考えると、変えなきゃいけないことは当然あるので、そこを変革していきたいと思ってるんですけどね。喜ばれるシーンにはなかなか立ち会えない(苦笑)。

スドケンさんがテーマに回答してほしい人とは?

天野

最後に、そんなテーマに答えてほしい人を教えてもらいたくて。

須藤さん

そしたら起業家の人たちに聞いてみたいかな。

令和トラベルのしのちゃん(篠塚孝哉さん)…。それから、

LayerXの福島良典さん

Goodpatchの土屋尚史さん

マネーフォワードの辻庸介さん

BASEの鶴岡裕太さん

freeeの佐々木大輔さん

メルカリの小泉文明さん

とかが考えてる、消費やデジタルにまつわる「幸せ観」が聞けたら面白いですよね。

天野

すごい面々だ…

須藤さん

というか今、すごい面白いなと思って…。新R25ワイドショーが何を狙ってるのかが理解できた気がします(笑)。

天野

わかりました?(笑)

須藤さん

取材の40分、50分かけて今ようやくわかりました(笑)。要はボケとツッコミというか、ポーンと出した質問にみんながどういう反応をするか知りたいってことですよね? これはなかなか新しいなあ。

常に分析&ハック思考なスドケンさん。さすがでした

コロナ禍やデジタル化によって変化する、人間の幸福観。

あなたが日常生活や仕事において感じた移り変わりを、ぜひ回答してみてください!

〈取材・文=天野俊吉(@amanop)〉

スドケンさんの新刊は小説『総務部DX課 岬ましろ』

天野

DXといえば、スドケンさんの新刊ですが…これはなぜこういう表紙に?

須藤さん

この「ましろちゃん」は、会社員4年目のOLなの。

「DXってデジタルの知見がすごい人じゃないとできない」って言われるから、「いや、そんなことないんだよ」と伝えたくて、ストーリー展開で理解できるようになってるんです。

Twitterも完全にましろちゃん化しているスドケンさん

DX担当となった主人公・岬ましろがSaaSの導入、アプリ開発、ビジネスモデル変革にまで挑戦する、DXプロジェクト推進ストーリー。

Kaizen PlatformがこれまでDXを支援するなかで目にしてきた課題をもとに執筆されたという本書は、R25世代のビジネスパーソンにも共感たっぷりに読めるはず。

あわせて、「スモールDX」の実現を目指すコミュニティ「やさしいDXラボ」も開設されているので、興味ある方はぜひ覗いてみてください!

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