ビジネスパーソンインタビュー
【『今日好き』流・共感設計術】中高生を夢中にさせるプロデュースのキモは「離れない」「決めつけない」

【『今日好き』流・共感設計術】中高生を夢中にさせるプロデュースのキモは「離れない」「決めつけない」

新R25編集部

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2025/11/19

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“恋の修学旅行”をコンセプトにしたABEMAの超人気恋愛リアリティショー『今日、好きになりました。』(以下、『今日好き』)。Z世代の中でも特に中高生から圧倒的な支持を集め、その人気ぶりは社会現象と言っても過言ではありません。

なぜ、ここまで現代の若者に響くコンテンツをつくり出せるのか?

今回はその制作の裏側やこだわりを探るべく、番組プロデューサーの瀧川理香子さんと広告プロデューサーの杦野莉鈴さんに、「リアルなZ世代の価値観」から「Z世代を熱狂させるモノづくり極意」まで、たっぷりインタビューしてきました。

〈聞き手=渡辺将基(新R25編集長)〉

Z世代の恋愛観は成熟している!? “ギブアンドテイク”が基本

渡辺

まず、『今日好き』をプロデュースするなかで感じている“リアルなZ世代の特徴”を教えていただけますか?

瀧川さん

恋愛観で言えば、自分を犠牲にしてまでガムシャラに頑張るというより、「自分のありのままを受け止めてほしい」と思っている子が増えていると思います。

自分が好きならいいというより、ちゃんと自分を好きでいてくれる人を見つける、平等な恋愛を求めているというか。恋愛観が大人びていて、私たちとなんら変わらないなと思います。

渡辺

恋愛観が成熟しているのは、何が影響しているんでしょうか?

瀧川さん

TikTokやInstagramでいろんな人の恋愛を見て、「やっぱりこうなった方が女の子は幸せなんだ」みたいなことを知ってしまっていると思うんですよね。

渡辺

たしかに自分の息子も、「お金持ちになっても幸せじゃないよね」みたいなことをよく言ってます(笑)。

SNSでいろんな人の体験を“先取り”して、達観しているというか。それがいいことなのかは悩ましいですけど。

作り手は“クリエイター然”とせず、視聴者の代表であれ

渡辺

『今日好き』視聴者の反応を見ていて感じるZ世代の特徴はありますか?

瀧川さん

「Z世代はコスパ・タイパ意識が強い」ってよく言われるじゃないですか。それに通じる部分もあると思うんですけど、自分の意見が反映されないものとか、リアクションが返ってこないものにあまり興味がないような気がします。

渡辺

あーなるほど。「双方向性」や「参加感」という観点でのコスパ。

瀧川さん

そうです。私は視聴者の意見をくまなくチェックして番組に取り入れるタイプなんですが、Z世代をターゲットにした番組をつくるときには、それがすごく大事なんじゃないかなと思っていて。

「新しいことをやってやろう」とか「革新的なことをやってやろう」じゃなくて、みんなが求めてるものを忠実に作りつづける意識を持っています。

渡辺

自分の娘も『今日好き』をよく見てるんですけど、人気のTikTokerの動画のコメント欄に「◯◯ちゃん『今日好き』に出てほしい」ってコメントが集まることが多くて、それが実現すると盛り上がると聞きました。

やはり、そういうSNSの声もチェックしてるんですか?

瀧川さん

はい、よくしてますね。

渡辺

でもたしかに、自分の声が番組に反映された気がして嬉しくなりますね。

瀧川さん

K-POPアイドルが人気になった理由もそうだと思うんですが、最近のインフルエンサーはこまめにリプを返してあげたり、直接会えるイベントを頻繁に開催したりしている人が支持を集めている気がします。

やっぱりダイレクトに好きって気持ちを伝えたらリアクションがあることが、今のZ世代には大事なんだなと思います。

高校生の感性から離れない。作り手は常にターゲットと“同期”する

渡辺

視聴者の代表としてモノづくりをするとなると、常に高校生の感性を自分ごと化しなければいけないですよね。その苦労はないですか?

瀧川さん

私は元々『今日好き』のファンだったんですが、正直今でも高校生と同じような感覚で生きてると思います(笑)。

アサイーが流行ってるときはよくアサイーを食べてたし、今は「ラブブ」にもハマってます。

渡辺

なるほど、完全に“同期”してるんですね。

瀧川さん

だから、「どうやって高校生に刺さるモノづくりをしてるんですか?」という質問にはいつも困ります(笑)。

渡辺

視聴者を外から見ていないということですよね。

でも、となるとターゲット層とズレた感覚を持つ人が『今日好き』のプロデュースをするのは難しそうですね。

瀧川さん

まさにそうで、私自身の感覚が視聴者と離れることにはすごい危機感を持ってます。

なので、早い段階で若いプロデューサーにバトンタッチしたいと思ってますし、作り手の新陳代謝を生みつづけることが『今日好き』の生存戦略なんじゃないかなと思うんです。

渡辺

「重鎮プロデューサー」がいてはいけないということか… 面白いです。

1年で9シーズン!『今日好き』が“短期決戦”で番組を成立させられるワケ

渡辺

あと『今日好き』の大きな特徴といえば、配信頻度ですよね。年間9シーズンも配信しているという。

瀧川さん

はい。「毎週やっている」というのは、他のリアリティショーと圧倒的に違うところだと思います。

基本的に毎回メンバーは入れ替えになりますが、シーズンをまたいで参加する人もいて、うっすらストーリーがつながっていく。そのバランス感も大事にしています。

渡辺

なるほど。格闘技でいうと、「BreakingDown」の成功事例にも近いと思いました。

…ただ、回転が速い分、やはり運営はずっとバタバタするんじゃないですか?

瀧川さん

はい。私はほぼ毎月ロケに行ってるんですけど、ロケの合間に次のシーズンのオーディション映像をずっと見てます(笑)

渡辺

自転車操業ですね(笑)。

瀧川さん

ただ、誤解を恐れず言うと、『今日好き』って“足りないところ”が番組の魅力になることもあるんですよ。

高校生だから立ちふるまいが下手でもかわいらしく思えるし、むしろそのほうが視聴者は自分と重ねて共感できる面もあるというか。

渡辺

なるほど! 一般的にはマイナスに思えるものも、Z世代にとってはプラスに変わるんですね。

瀧川さん

さらに言うと、『今日好き』って2泊3日や3泊4日の短いロケで1シーズン分の動画をつくってるんです。要は、一般的なリアリティショーと比較すると使っている素材(シーン)が多いんです。

渡辺

そういうことか。でもそれって、使いどころが豊富にあるからこそできることですよね。

瀧川さん

使いどころが豊富にあるというよりも、“使う”んです。

たとえば『今日好き』では、ギャルっぽい参加者が「初めまして」って部屋に入ってきたときにドアをキッチリ閉めたとか、そういうシーンまで使います。

渡辺

なるほど。たしかに視聴者って意外とこまかいところ見てるし、そういう何気ないシーンで性格って伝わりますよね。

瀧川さん

そうなんです。劇的な展開をつくることよりも、素材をフルに使って参加者のキャラクターや個性を伝えることを重視してます。

参加者の「人選」は命。オーディションで見ているのは“表現力”

渡辺

そうなると、やはり参加者の人選が重要になりますか?

瀧川さん

人選は本当に大事だと思います。

渡辺

オーディションでは応募者のどこを見ているんですか?

瀧川さん

表現力ですね。こちらからの質問に対して、たくさん話せる子かどうか。

瀧川さん

たとえば番組内で「〇〇君とのデート、どうだった?」って聞いたときに、「楽しかったです」だけしか答えられないと、そのときの感情が見えづらいじゃないですか 。

一方で自分からたくさん話す子って、表情豊かで魅力的に映りますよね 。なので、自分の言いたいことをどれだけ言葉にできるかを見ています。

渡辺

納得です。

瀧川さん

あとは、その人の好きなタイプや過去の恋愛は徹底的に聞きます(笑)

やっぱり、タイプの子がいたら恋愛が加速するので。

渡辺

愚直に参加者の恋愛に向き合ってるんですね。

瀧川さん

『今日好き』は短い時間で恋が生まれることがゴールなので、参加者の相性や組み合わせにはすごくこだわってます。

渡辺

『今日好き』の参加者は演じることを意識していないピュアな高校生だから、“リアルな恋が生まれる設計”が生命線になるんですね。

「変わらないエモさ」と「変わるアプローチ」の協業がヒットの鍵

渡辺

ちなみに、クリエイティブ演出面で意識していることはありますか?

瀧川さん

『今日好き』は若いプロデューサーとベテラン演出家の協業がかなりうまくできていると思います。

渡辺

具体的にどういう役割分担をしてるんですか?

瀧川さん

どんな恋愛リアリティショーでも、恋愛の根幹にあるものや見ている人が心を動かされるような出来事って、あまり変わらないと思うんです。そこは時代を経ても変わっていない。

渡辺

それはたとえば、こういうときに人を好きになるとか、人を好きになるとこういう反応をするとか?

瀧川さん

そうです。だから、現場で生まれた高校生の恋物語をドラマチックに魅せる面では、ベテランの方の編集経験がすごく生きます。

一方で私たちがやることは、「表面のパッケージをどう新しく見せていくか」だと思っていて。

渡辺

もう少し詳しく聞いてもいいですか?

瀧川さん

たとえば、スポーツを見るときの高揚感や感動って今も昔も変わってないじゃないですか。だからこそ、若い人でも高齢者の方でも楽しめるわけで。

そのうえで、私たちは今のZ世代に試合を配信で見てもらったり、会場に足を運んでもらったりするために、「SNSに投稿されるようなオシャレな来場グッズをつくりましょう」「選手をよりカッコよく魅せるためにこういうポスターをつくりましょう」「SNSで話題になっている2人にセットで番組に出てもらいましょう」みたいなことをやっている。そんなイメージです。

渡辺

なるほど、分かってきました。

ちなみに、若手プロデューサーがやるべき「表面のパッケージづくり」にはどのようなものがありますか?

瀧川さん

先ほど話した参加者の人選はもちろんそうですけど、細かいところでいうと予告動画を解禁するときにどの表情を見せるべきかとか、この物語にどういうタイトルをつけるべきかとか。そういうところは私たちが考えないといけないと思います。

渡辺

なるほど。若い感性とベテランの経験をそうやって融合させてるんですね。勉強になります。

Z世代に“スルーされない”広告をつくるための必須姿勢

渡辺

杦野さんは『今日好き』の広告プロデュースを担当しているとのことですが、Z世代に支持される広告を作るうえで意識していることは何ですか?

杦野さん

少し前から「広告疲れ」っていうワードをよく目にするようになったと思うんですけど、最近の中高生はすごく順応が早いので、広告に疲れているというよりも、もはや広告を見ない、無関心の人が増えている感覚があります。

杦野さん

なので、スポンサーさんも含めた全員で「視聴者のほうを向く」「視聴者のためになることをやる」という姿勢を持つことがすごく重要だと思っています。

それが広告づくりの起点にないと、「見てもらう」というスタートラインに立てないのかなと。

渡辺

それ、簡単なようで難しいことですよね。

『今日好き』における「視聴者のほうを向いた広告」って具体的にどういうものですか?

杦野さん

たとえば、同じシーズンに出てた仲良し3人がそのままCMに出たりすると、すごく視聴者の反応がいいんです。

逆に、本編であまり絡みのなかった子たちが仲良しのシチュエーションでCMに出るとか、失恋したばかりの子が急に笑顔でCMに出るみたいなことをしてしまうと、視聴者の心を置いていっちゃいますよね。

瀧川さん

なぜこの子たちを起用するのか」をよくチームでも議論するんですけど、『今日好き』のCMは本編のストーリーとの接着をすごく大切にしてます。

渡辺

『今日好き』は年間9シーズンも配信していて出演者の分だけストーリーもあるので、それらを絡めた共感性の高いCMをつくることができるのは強みですよね。

瀧川さん

そうですね。

そこを大切にしてCMをつくると、視聴者はその子にCMのオファーがあったことをすごく喜んでくれて、スポンサーさんの好感度も上がります。

多くの発話が生まれる『今日好き』のタイアップ事例

渡辺

具体的に『今日好き』と相性がよい商材や、『今日好き』が得意とするタイアップのパターンを教えてもらえますか?

杦野さん

ホットペーパービューティーさんの案件では、(髪を切りたくなる卒業式に合わせて)実際に高校を卒業する出演者の卒業式を演出するCMを制作しました。

そういった中高生ならではのモーメントに絡めて没入・共感しやすいクリエイティブをつくるのは得意です。

渡辺

それは『今日好き』の視聴者なら絶対に見ちゃいますね。

杦野さん

アットホームさんとのタイアップでは、卒業後の上京や引っ越しをテーマにしました。

渡辺

なるほど、なるほど。すごいイメージ湧いてきました。

杦野さん

あと、やっぱり「恋を応援します」っていう見せ方は『今日好き』ならではだと思います。

たとえばコスメのCMでも、『今日好き』の場合は「肌がキレイになる」じゃなくて、「このアイテムでちょっと恋がうまくいくかもしれない」とか「これをつけたらちょっと勇気が出るかもしれない」みたいな、高校生の恋愛や青春に刺さるエモーショナルな訴求をすることが多いです。

『今日好き』を活用してもらうというより、「一緒に高校生にアプローチしていきましょう」みたいな雰囲気で広告をつくっています。

渡辺

自分もメディア運営をしていて広告のプロデュースをすることも多いですが、理想的な取り組みだなと思います。

そういった施策がうまくハマると、どんな現象が起きるんですか?

杦野さん

『今日好き』のタイアップは、すごく発話が出ることが多いです。

コメントが目に見えると、クリエイティブが視聴者に届いていることを実感してもらいやすいと思います。

渡辺

今の中高生の拡散力はものすごいですもんね。それは大きな強みだと思います。

ちなみに、タイアップしている商材はやはり女性向けが多いですか?

瀧川さん

今はほとんどが女性向けです。ただ、男性向けの商材にもっとトライしてみたくて。

渡辺

『今日好き』視聴者の中に男性ってどれくらいいるんでしたっけ?

瀧川さん

実は3割くらいいるんです。

渡辺

あ、そんなに多いんですか。意外です。

瀧川さん

今は男性の美容意識も高まっているので、メンズコスメとかもすごく相性がいいと思います。

まだ事例も少ないので、『今日好き』で男性向けのタイアップをやったらすごく目立ちますし(笑)。

渡辺

たしかに、男子高校生に訴求したい企業は今がチャンスですね!

Z世代とのコミュニケーションのコツは“ちょっと背中を押す”

渡辺

最後にまとめ的に聞きたいのですが、企業がZ世代とコミュニケーションを取っていくうえで一番大事なことは何だと思いますか?

杦野さん

決めつけない」「押しつけない」だと思います。

渡辺

決めつけない、か… なかなか難しいですね。広告施策って仮説や狙いを持ってやるものだとも思うんですが。

杦野さん

たとえば、「Z世代はSNSネイティブだから、投稿キャンペーンをやったらどんどん発話が広がってプロモーションになるんじゃないか」って考える企業さん、結構いると思うんです。

ただ、今の中高生は懸賞に対してリアクションをしていることを恥ずかしいと感じる傾向があるし、下手したら裏アカで投稿されてあとから投稿を削除されるキャンペーンになってしまう可能性もあります。

渡辺

あー、なるほど。要は「Z世代の解像度が低い」ということですね。

「Z世代はSNSが得意だから、SNSで何かやりたい」じゃダメで、「実際にターゲット層がSNSをどう活用しているか」まで踏み込まなきゃいけない。

杦野さん

そうです。私は、“ちょっと背中を押してあげる”くらいがちょうどいいと思うんです。

渡辺

というのは?

杦野さん

道を全部つくってしまうと、大人にやらされてる感が出てしまうというか。今の中高生はそういうものにすごく敏感なので。

そうじゃなくて、ちょっと背中を押してあげれば、自発的に動いてくれる世代だと思います。

渡辺

何かを“やらせる”んじゃなくて 、「能動的に動き出すきっかけを提供する」ということですよね。

Z世代とコミュニケーションをするうえで大切な企業姿勢がよくわかりました。

今日聞いた話はZ世代マーケティングの教科書になりそうです。インタビューさせていただき、ありがとうございました!

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