ビジネスパーソンインタビュー
ヒットメーカーがたどり着いた、愛と熱量の教え
【リーダーの心得】佐渡島庸平さんが「ヒットを求めつづける理由」に感動しました
新R25編集部
「仕事にいまいち乗り切れない」「プロジェクトの成功をどこかで疑っている」。
そんな気分で働いていることはありませんか?
今回は、ヒット編集者として知られる佐渡島庸平さんに「ヒットを生み出す組織」や「プロジェクトへの向き合い方」についてお話をうかがいました。
“生きることが豊かになる”という、思わぬ展開に感動…。お楽しみください!
〈聞き手=村岡紗綾(新R25編集部)〉
どうすれば、ヒットを生み出すまで“プロジェクトの成功”を信じられる?
村岡
仕事でいろんなプロジェクトに携わりながら、諦めてしまう瞬間ってあると思うんです。
「仕事につまづきそうなポイントで、どう本気になりつづけるか?」を佐渡島さんに聞いてみたいです。
佐渡島さん
自分のプロジェクトをどう愛するかってことだと思うのね。
村岡
愛…
佐渡島さん
「みんながいいって思ってるもの」を握りしめちゃうことってあるよね。
たとえば恋人に対して、「クラスの人気者だから」「東大だから」とか。
でも、本当は、みんなじゃなくて自分がいいって思う要素がないと付き合い続けられないでしょ。
村岡
そうですね…
佐渡島さん
「これは自分のプロジェクトだと思う」っていうのは、「この愛は、誰かの基準じゃなく自分がいいと思っている」って信じ込むこと。
『ドラゴン桜』も、“海外で生活していて落ちこぼれるんじゃないかと不安だった中3の自分に向けてつくる”という軸が定まったときに、「自分のプロジェクト」になった。
そういう“図々しいオーナーシップ”を持てるかどうかだと思うんだよね。
村岡
図々しくてもエゴでもいい。
佐渡島さん
今、YouTubeやTikTokが伸びてるというけど、本当にヒットするものをつくれている人は、「TikTokならどういう音楽がいいか…」っていうことを、エゴや愛を持って考えてるはずなんだよね。
「アルゴリズムをハックすればいい」っていう話では絶対ないのよ。
「だって、恋人も趣味嗜好をハックすればいいっていう話じゃないじゃん」
佐渡島さん
もっと言えば、「なんでヒット作を生み出したいか?」っていう話も“愛”に尽きるんじゃないかと。
うちは子どもが3人いるんだけど、そうすると自分1人で生きてるときとは世の中が全然違う見え方するんだよ。
僕にとって、同様に「プロジェクトは自分の子どもみたいなもの」なんだよね。
愛情を持ってプロジェクトを通して世の中を見ると、生きることが豊かになる。
村岡
あ~、なるほど…!!
佐渡島さん
どうやったらこの子が成長するか? その問いを抱えながら世の中に触れることで、人生がとても楽しくなる。
その結果としてヒットがある。
これが正しい向き合い方だと思うね。
これが佐渡島さんの言う「愛」…。つまづきようがない
チームに熱量を伝播させる「ジャンプ作品のある特徴」
佐渡島さん
ただ、僕、若いころとは「愛」や「熱量」への考えが変わってきてて…
マンガっていう仕事柄、少人数のチームで世の中を動かすことに慣れてて、スゴイ燃えてたのね。
「テンションに着いてこれないヤツはいなくていい!」「いま試合中なんだから話しかけんな!」みたいな。
村岡
はい(笑)。
佐渡島さん
だんだんね、本当に人を巻き込む場合は、相手がいいなと思う熱量に変換しなきゃいけないってわかった(笑)。
村岡
自分を振り返ってそうなった?
佐渡島さん
そうね。三田(紀房)さんの静かな情熱にリードされていた(※佐渡島さんは新入社員のときに『ドラゴン桜』を立ち上げています)。
情熱を表に出して「やるぞ!」が許されるのって若いときだけ。
佐渡島さん
あるとき、「このままだと自分の生涯でヒット作を5~6個しかつくれない」って気付いたんだよね。
でも、考え方を共有できている人がたくさんいる組織がつくれれば何十と生み出すことができる。
だから、“個人の熱”を“組織の熱”にして再現性を出すにはどうしたらいいのかっていうのがコルクでの挑戦。
村岡
そのチーム内に「熱量」を伝播させる方法の最新版を教えてほしいなって思うんです。
佐渡島さん
「場」とか「ルール」を設計することだなーと思っていて。
ジャンプのヒット作品って、一つひとつヒットしている理由があると思うの。
ただ、根底の「場」に“新人主義、アンケート至上主義、専属作家”っていう3つのルールがあった。
村岡
なるほどなるほど。
佐渡島さん
たとえば、ジャンプのヒット作の主人公って顔や体に傷があるって知ってる?
僕の世代だとケンシロウとかだから古いんだけど…(笑)。
あなたはどのキャラを思い浮かべましたか?
佐渡島さん
あれは、見るだけでキャラクターが背負っている過去がわかるという意味があるんだって。傷が視覚的に見えるのがジャンプ作品の特徴。
『島耕作』(※講談社『モーニング』掲載作品)だったら、見てもどんな傷を負ってる人かわかんないでしょ?
村岡
ジャンプ作品に共通する工夫なんですね。
佐渡島さん
あるいは、歌舞伎って“見栄を切る”でしょ。同じように、ジャンプ作品はみんな何かしらポーズを取るよね。「ジョジョ立ち」とかね。
村岡
たしかに…
佐渡島さん
つまり、新人に読み切りを描かせてアンケートで判断する…っていうルールがあるからこういう視覚的な工夫が生まれてくる。そこから、印象に残るヒットが生まれる。
じゃあ、「傷がある主人公にしたらヒットするのか」「ポーズがあればヒットするのか」っていうと、やはりそんなことはない。
それを統合する“想い”がないとヒットしない。
佐渡島さん
いろいろと話してるんだけど…
「俺は本気です」って言う人はけっこういるじゃん。
じゃあ何をもって本気というのか?という話で…
インタビューの続きは…「新R25メンバーシップ」にて!
『ドラゴン桜』『宇宙兄弟』『ゼロ』を手がけた編集者、佐渡島庸平さん。ベストセラーを生み出した実体験から「ヒットの法則」に迫りつつ、プロジェクトを成功へ導くためのチームリーダーの心得や、ヒットメーカーとして大事にしたい習慣について語っていただきました。
〈文=天野俊吉(@amanop)〉
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