ビジネスパーソンインタビュー
言語化でストレスは9割解消する
アウトプットで初めて“がむしゃら”になれる。精神科医と考える「“健やかに”成果を出す方法」
新R25編集部
コロナ禍を経て、自宅で過ごすことが増えたことで、心身の健康に向き合うようになった人が増えてきています。
宅トレやメディテーションサウナ、瞑想アプリなど、「ご自愛」をベースとしたサービスも数多く登場しました。
しかし、自分の心身を大切にしたいと思う一方で、「もっとがむしゃらに働かないと結果が出ないのでは…!?」と葛藤を抱えているビジネスパーソンもいるはず。
そこで今回は、新刊『もしも社畜ゾンビが「アウトプット大全」を読んだら』を上梓された精神科医の樺沢紫苑先生と、自身のメンタルダウン経験をもとにしたライフハックを発信し、『メンタルダウンで地獄を見た元エリート幹部自衛官が語る この世を生き抜く最強の技術』(ダイヤモンド出版)も出版された元陸上自衛隊のサラリーマン・わびさんの対談を実施。
「健やかに結果を出したい!」と願うビジネスパーソンの悩みに効く処方箋を出していただきました。
日本人は休むのが苦手だからこそ…没入感のある休息を
樺沢先生
まずね、「仕事が好きなので朝から晩まで働けちゃう!」という人は、大体病気になるよ。
わびさん
(いきなり辛らつなの来た…)
樺沢先生
この前居酒屋で新卒の子たちが「仕事頑張るぞ! 睡眠時間4時間も辞さないぞ!」と話していて、思わず「やめて〜!」と突っ込みたくなっちゃった。
真面目で一生懸命な人ほど燃え尽きちゃうんですよね。どんなに好きなことでも、“緩急”をつけなければいつか倒れてしまうんです。
わびさん
樺沢先生は普段どのようにして“緩急”をつけるようにしていますか?
樺沢先生
参考までに、僕の毎日のスケジュールを置いておきますね。
朝:
・温冷シャワーで目を覚ます
・15~30分散歩をしてセロトニンを活性化
午前中〜昼過ぎ:
・MTGなどを入れず、ガッツリ仕事に集中!
午後:
・ランチで息抜き
・仕事場所を変えて効率アップ
夕方:
・運動をすることで、集中力をリセット&脂肪を燃焼
夜:
・遊びや楽しい出来事を夜に
・読書やストレッチでリラックス
・睡眠は8時間しっかり取る
わびさん
理想的ですね!
樺沢先生
忙しく働いたあとは、きちんと抜くのがポイントです。
疲れてから休んでもなかなか本調子に戻すのは難しいので、1日のなかで帳尻を合わせています。
なかでも1番大事なのは睡眠時間かな。
何時に起きるかは関係ないけど、夜の眠りを深くするためには、セロトニンを活性化させるのが必要不可欠なので、午前中には起きて光を浴びるのがベストです。
わびさん
そういえば、私のメンタルダウンのきっかけも、激務で睡眠時間が物理的に確保できなくなったことから始まりましたね。
樺沢先生
メンタルを病む3大要素は、「睡眠不足」「運動不足」「昼夜逆転」なんですよ。
これらを続けていると、①注意・集中力の障害が起き、②睡眠障害・食欲低下・全身倦怠感、そして最終的には③興味・喜びの喪失が起きて鬱状態になります。
わびさん
私はある日、食事がおいしくなくなり、休日に寝たきりになり、嫌な記憶ばかりで頭がいっぱいになり、最終的には「死にたい」という思いがチラつくようになりました。
当時は「ただ疲れているのかな?」と思って放置していたら大変なことに…
樺沢先生
日本人は休むのが苦手なので、「休んで!」と言っても全然休んでくれないんだよね。
だから、映画を観たり、読書をしたりと、「休む」と思うのではなく、没入できるようなことを意図的に取り入れてみると自然と休めるんじゃないかな。
「アウトプット」がないと、本当にがむしゃらに働いているとは言わない!?
わびさん
でも…正直、樺沢先生のようなスケジュールを遂行できる人ってすごく少ないと思うんです。
それに、健康的な生活を送っていても、メンタルを崩す人と崩さない人がいますよね。
その違いは何なんでしょう?
樺沢先生
そう。実は、健康管理と同じくらい大切なことがあります。
それは、「アウトプット」です!
出た!
樺沢先生
たとえば仕事においては、「コントロール感があるかどうか」がとても重要なんですよ。
マニュアル通りでインプット過多の「やらされてる感」のある仕事をしていると病みやすい。
わびさん
そうですね。
樺沢先生
そこで、ビジネスパーソンにぜひ実践してほしいのが、「仕事術を学んで実践すること」。
ほとんどの人は会社で教えられた情報だけで仕事を進めようとしますが、それでは成長は望めません。
効率化やアウトプット術、先人たちのノウハウを自分の業務に取り入れるだけでも変わると思います。
言われたことをマニュアル通りにやっているだけだと、“社畜ゾンビ”になりますよ!
わびさん
それ、すごくわかります!
そして、主体的に働くためには「自分の武器」を見つけることが大事なんじゃないかと。私は若いころに、がむしゃらに頑張ってよかったと思ってるんです。
最初は自分に何が向いてるのかがわからないからこそ、がむしゃらに考えて行動して、「これが得意かも?」と思うものを武器にする。
受け身の姿勢でやっても何も身につかないので、「武器を見つけるぞ!」と思いながら取り組んでみるといいですよね。
樺沢先生
それに、がむしゃらに働くことって、睡眠時間を削って働くことではなくて、正しい方向に成長していくことですからね。
僕が唯一の成長法則だと考えているのが、「インプット→アウトプット→フィードバック」のサイクルをまわすことです。
『アウトプット大全』
樺沢先生
まず、インプットとアウトプットの割合は3:7がベストです。インプットの2倍はアウトプットをすると意識してください。
次に、人間の脳は、重要な情報を長期記憶として残し、重要でない情報は忘れるようにつくられています。記憶に残りやすくするために、2週間に3回以上のペースでアウトプットするのがオススメです。
そして、アウトプットをすることで発生するフィードバックも重要です。インプットとアウトプットの反復に加え、改善や方向修正などのフィードバックを加えてサイクルを回すんです。
これらを高速でまわすのが、本当の“がむしゃらにやる”ってこと。
睡眠時間を削らないと終わらない仕事、どうすればいい?
わびさん
先ほど睡眠時間が大事だというお話がありましたが、一方で期限内に終わらせなければいけない仕事もありますよね。
樺沢先生はどうしていますか?
樺沢先生
えーと…夏休みの最終日ってものすごいスピードで宿題が終わるじゃないですか。
わびさん
終わりますね。
樺沢先生
人間は追い詰められたとき、ノルアドレナリンという物質がドバッと出るんです。
これが出ると、普段よりも数倍高いパフォーマンスを発揮できるんですね。これは仕事にも応用できます。
ただ、これが毎週、毎月続くとノルアドレナリンが欠乏して鬱になります。
わびさん
ある意味、最終奥義ですね。
樺沢先生
だから、数カ月に1度だけね。
たとえば、納期が迫った「ケツカッチン仕事」がある場合、僕はあえて21時に映画を予約します。
締め切り厳守にしないとノルアドレナリンは出ないんですよ。「終わらなければ残業すればいいや」という状態じゃダメ。「必ず終わらせて帰る!」状態をつくるんです。
ぜひ試してみてください。明らかに普段よりハイスピードで終わりますから。
わびさん
あと、これはちょっと話がズレるんですが、組織の仕事って、いくら自分が完璧に仕上げたとしても、そのあと修正がされていくものだと思うんです。
だから、100%じゃなくても、最終的に「組織として完成させる」という心持ちでやるのも大切だと思います。
そして、組織のなかで働いているのだから、しんどいときはまわりに助けを求めること。
私は毎日ギチギチにスケジュールを入れるのではなく、ピンチのときに誰かを助けられるように、あえて余裕を持って働くようにしています。
樺沢先生
助けを求めるのは勇気がいると思うので、「雑談」から始めるといいかもしれないですね。
みんな頑張ってひとりで解決しようとするけど、ちょっと雑談がてら進捗を共有してみて、何かしら突っ込まれたら、それはひとりでできない仕事なのだと自覚したほうがいい。
それに、言語化でストレスは9割解消するんですよ。
カウンセリングでも、事態は何も変わってないけど、話すだけで気持ちがラクになるでしょ?
わびさん
たしかに…!
樺沢先生
今はリモート化が進んで、雑談の機会が減ってしまったけど、オンラインでも「最近あった出来事」を話す機会を設けてほしいですね。職場の雑談は必要不可欠なんです。
アウトプットは“癒し”でもあります。
ほかの人に共有することで、承認欲求が満たされたり、自己肯定感が高まったりして、安心につながるんです。
健やかに働くことは、アウトプットをすることである
わびさん
仕事に効くだけでなく、心の健康にも繋がるアウトプット…万能すぎですね。
樺沢先生
お気づきですか?
人はアウトプットなしでは生きられない。アウトプットにより自己成長し、人とつながり、癒される。
「健やかに働くこと=アウトプットをすること」といっても過言ではないんです!
わびさん
書籍『もしも社畜ゾンビが「アウトプット大全」を読んだら』のなかにもアウトプットの方法がたくさんあって迷うのですが、オススメのアウトプット方法はどれですか?
樺沢先生
まず、メモを取ることから始めてみるといいと思います。
仕事での気づきや上司から言われたことって、どうしても自分のなかから抜け落ちてしまうんですよ。
そのまま仕事をやっても、70点にしかならないでしょ?
わびさん
メモはすごく有効ですよね。
私も「どっちの仕事からやろう?」と思ったら書き出すようにしています。
アウトプットをして、脳のフリースペースを確保することで目の前の仕事に集中できるようになりますね。
樺沢先生
そうそう。あと、本を読むときにすべてをTODOに落とし込もうとする人がいるけど、欲張ると絶対に続かないからね。
まずは1つの気付きを1つのTODOに落とし込んで、当面はそのTODOをやる。それが身に付いたらまた1つ、と増やしていく。
わびさん
私は習慣化のためにTwitterを使っていますね。本を読んで感じたことをツイートして、それにリプライをする形で実際にやったことを書いたりしています。
朝散歩を始めたときもツイートして、お地蔵さんやお寺の花などの写真を撮ってアップしてたら、自然と習慣化しました。
樺沢先生
書籍を読んで、3つも習慣化できればそれだけで1500円の書籍は10倍以上の価値があると思います。
まずは小さなアウトプットから始めてみて、脱社畜ゾンビを目指してほしいです!
〈取材・文=いしかわゆき(@milkprincess17)/編集=福田啄也(@fkd1111)〉
『もしも社畜ゾンビが「アウトプット大全」を読んだら』好評発売中!
シリーズ累計90万部を突破し、日本中にアウトプット旋風を巻き起こした大ベストセラー『学びを結果に変えるアウトプット大全』の超実践的コミックが誕生しました。
主人公はIT企業に務める28歳の健(たける)。真面目な性格から自ら社畜的生活を送る彼は、いつしか思考停止でモチベーションも湧かない「社畜ゾンビ」となってしまいます。そんななか、ある清掃員との出会いを皮切りに、仕事との向き合い方に変化が現れて…?
漫画を通じてアウトプットの本質を楽しく理解できます。今の自分の働き方に疑問を抱いている人や、うまく結果が出せずにモヤモヤしている人は、ぜひチェックしてみてください!
『この世を生き抜く最強の技術』も好評発売中!
「心が折れる前に、逃げよう」。
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メンタルダウンを経験した当事者だからこそ、読者に優しく寄り添う語り口調に肩の力が抜ける1冊です。
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