ビジネスパーソンインタビュー

「僕にモチベーションなんてあると思う?」糸井重里さんに“走りつづけられる理由”を聞いてみた

「右肩上がりの人生」は、大いなる勘違い。

「僕にモチベーションなんてあると思う?」糸井重里さんに“走りつづけられる理由”を聞いてみた

新R25編集部

2022/09/11

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「次の5年」と聞いて、少しだけ途方に暮れてしまったのは、僕だけでしょうか。

仕事を頑張るって大変なこと。人生100年時代と言うけど、この先の5年ですら、“モチベーション”を保って走りつづけられるのかわからない…というのが、筆者の率直な本音でした。

今回、そんな本音を正直に企画書に綴り取材をお願いしたのが、糸井重里さん。

【糸井重里(いとい・しげさと)】1948年生まれ。株式会社ほぼ日代表取締役社長。1978年、矢沢永吉の自伝「成りあがり」の構成と編集を担当。1980年代以降「不思議、大好き。」「おいしい生活。」(西武百貨店)や、スタジオジブリ作品などの数々のキャッチコピーをはじめ作詞やエッセイ執筆、RPG「MOTHERシリーズ」制作など、多彩な分野で活躍。1998年にスタートしたウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」では、『ほぼ日手帳』をはじめ、AR地球儀『ほぼ日のアースボール』、「人に会おう、話を聞こう。」をテーマにアプリ・Webでお届けする『ほぼ日の學校』などさまざまな商品開発、企画を手掛ける

「生きろ。」(『もののけ姫』)、 「おちこんだりもしたけれど、私はげんきです。」(『魔女の宅急便』)、「トンネルのむこうは、不思議の町でした。」(『千と千尋の神隠し』)、「大人も子供も、おねーさんも。」(『MOTHER2』)。

心に残る数々の広告コピーを生み出し、73歳となる現在も「ほぼ日」の社長として世の中に“面白い”を届けつづける糸井さんが語る、「モチベーション」の正体とは。

〈聞き手=サノトモキ(新R25編集部)〉

新R25の前身、『R25』創刊時のインタビューを懐かしむ糸井さん(当時2004年!筆者はまだ11歳でした)

糸井さん

なぜ、僕が今日のインタビューを引き受けようと思ったのか。

まずは、そこからお話ししてもいいですか?

サノ

ぜひ、お願いします。

糸井さん

僕には、自分が「何か強烈なモチベーションがあるから長く仕事を続けてこれた人」と思われたことが、面白かったんですよ。

僕、本当に大したモチベーションなんてありませんから

サノ

え…ないんですか!?

糸井さん

ない。…というか、「モチベーションはこれだ」なんて考えたこともないです。

だからこそ、今日いっしょに話してみたいと思ったの。知ってることを話すだけの取材は退屈だけど、自分もわからないことをいっしょに考えられるなら、楽しそうだなと。

なので今日は、インタビューじゃなくてミーティングです(笑)

糸井さんとのミーティング。いったいどうなるのか…よろしくお願いします!

みんな何かを目指しすぎている。「こうなりたい」では、続かない。

サノ

糸井さんのこの5年を振り返ると、「生活のたのしみ展」「ほぼ日のアースボール」「ほぼ日の學校」などたくさんの仕事のトピックスがありますよね。

50年近くビジネスの最前線に身を置いているお方が「大したモチベーションなんてない」って…どういうことなのでしょうか?

糸井さん

僕は、みなさんが少し「かっこいいモチベーション」を探しすぎてるんじゃないかと思うんですよ。

言い換えると、「つねに何かを“目指しすぎている”」。

サノ

目指しすぎている?

糸井さん

うん。「すごいサービスをつくりたい」「賞を獲りたい」「あの人みたいになりたい」。そういう、“どこかを目指すこと”をモチベーションにしようとしている人が、けっこういるなと。

それはたぶん、「わかりやすい」からそうするんです。人はわからない状態が怖いから。「自分は今、このために頑張ってるんだ」と思えると、すごく安心するんです。

サノ

…よくわかります。

糸井さん

でもそれって「わかりやすい」だけで、本当に「絶対叶えたいこと」かと言われると案外そうでもないんだよね。

だから、やっぱり…“長持ちするモチベーション”ってたぶん、遠い未来の「こうなりたい」じゃなくて、すぐ足元の「うれしい」なんですよ。

「言われた通りの成果を上げる」だけでは仕事の動機は生まれない

糸井さん

僕は、「動機」「実行」「集合」。この3つをぐるぐる循環させるのが仕事の理想のサイクルだと思っているんですね。

「こんなことやってみよう」と思いついて(動機)、実際にやってみて(実行)、世の中なのか友達なのか、何かしら「集合」のなかに放り投げて反応を見て、そこでまた新しい「うれしい(動機)」を見つけると。

サノ

なるほど。でも、僕も毎日「実行」してるはずなのに、新しい「動機」に出会えていないのですが…?

糸井さん

それは、「いい仕事をすること」ばかりに目が向いちゃってるんじゃない?

糸井さん

「実行」においては、“ミスなく、言われた通りの成果を上げること”が最高の価値になるわけですよ。

上からはそこを褒められるし、本人のなかでも一定の誇りにはなる。でも、「それが一番うれしいんだっけ?」という話で。

サノ

どういうことですか?

糸井さん

たとえば、お寿司屋さんってみんな、シャリをひとつかみして「何グラムです」って言えるんですって。素人からすると「かっこいいな」と思いますよね。

でも彼らは、「シャリの量が均一だねえ~!」って褒められてもうれしくないわけ(笑)。やっぱり、思わず「…うまい」と唸る姿を見たときに「もっとうまいもんつくりたい」と思うわけじゃない。

サノ

たしかに。

糸井さん

何が言いたいかというと、「動機」はいつだって「実行」じゃなく「集合」のなかにあるということ。

“正しく実行する”というのは、誇りにはなっても「動機」にはならないんですよ。それは、“他人の動機”だけで動きつづけるロボットと同じだから。

お掃除ロボットなら「言われた通り掃除できてえらいな」「いえ、自分の仕事をやったまでです(キラン)」って感じでしょうけど、人間はそれじゃ続けられないんだよね。

糸井さん

芸人さんが「とにかく板場(※ここでは舞台の意味)でやらなきゃダメ」とよく言うのも、結局“目の前でお客さんがウケてる”以上に「また頑張ろう」と思える瞬間はないからだそうです。

結局は、そういうすぐ足元のシンプルな「うれしい」が、一番長持ちする「動機」になっていくんだよね。

人生を、もっと儚め。「右肩上がりの人生」は大いなる勘違い

糸井さん

あとね、もうひとつ。僕は最近「儚む(はかなむ)」って言葉が好きで…

みんなもっと、「自分の人生を儚んだ」ほうがいいんじゃないかと思うんです。

人生をハカナむ…?

糸井さん

僕もそういう性分なんだけど、「俺はなんてしょうもない人間なんだ」「この先、いいことなんて何もないんじゃないか」ぐらいに思ってる人のほうが、案外仕事を頑張れると思うんですよ。

サノ

どうしてですか…?

糸井さん

実際の人生は、全然右肩上がりじゃないからです。

物語になったり取材されたりするのはいつだって「右斜上への直線を描く成功ストーリー」ですが、それは“珍しい”からなんですよ。

「人生とは、“右斜上への直線”を描いていくべきものだ」みたいなイメージは、そもそも大いに間違ってるんじゃない?

サノ

…!

たしかに「ずっとモチベーションを維持しなきゃ」というのも、そのプレッシャーに囚われてたのかも。

糸井さん

“しょうもない自分”でいればいいんです。疲れたら、立ち止まればいいじゃない。

そこで「うれしい休み方」をクリエイティブすることのほうが、よっぽど大事

仕事も暮らしも、「自分なんて大したことない」と儚んで等身大の“うれしい”をクリエイティブできる人のほうが、結果的に長く走りつづけられると僕は思いますよ。

サノ

儚み、足元の「うれしい」を動機にしたほうが遠くまで行ける。…すごく腑に落ちた気がします。

糸井さん

とりあえず、力を抜いたらいいですよ。仕事は、あくまでも人生を豊かにするための「道具」のひとつですから。

道具のほうに力点を置きすぎないほうがいい「自分」が見えなくなっちゃうから

5年後を考えるときも、「仕事」より先に、どういう「自分」でありたいか。…そこからじゃない?

ひたすらモチベーションの不安をぶつけた、1時間の取材。

糸井さんはおそらく、言葉や切り口を変えながらずっと、「まあ、落ち着きなさい」と言ってくれていました。仕事は大変だし、しんどいこともあるし、立ち止まっちゃいそうになるときもあるけど…小さな自分を認めたり、小さな「うれしい」を見つけたり。走りつづけるためのヒントは、意外と足元に転がっているのかも。

ここまでの5年を受け止めて、またここから5年、新しく走り出す。等身大のモチベーション、ちょっと見つけられそうな気がしてます。

〈取材・編集=サノトモキ(@mlby_sns)/文=天野俊吉(@amanop)/撮影=オカダマコト〉

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糸井重里×近未来

©Eiichiro Oda/SHUEISHA

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9月1日発売となる"2023年版"のテーマ は 、「生まれる」。「上手に自分を管理するための手帳」ではなく、「何かを生む素(もと)になる手帳」になってほしいという糸井さんの願いが込められています。

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©Eiichiro Oda/SHUEISHA

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