ビジネスパーソンインタビュー
小嶋陽菜は、なぜ“背負った”のか。
「私が安全圏にいたら、絶対に人は集まらない」新役員を迎えた小嶋陽菜が示す “経営者の覚悟”
新R25編集部
自身がプロデュースするブランド「Her lip to」を設立して4年、ブランド運営のため「株式会社heart relation」を創立して2年。
経営者・小嶋陽菜さんが今、大きな挑戦に出ています。
【小嶋陽菜(こじま・はるな)】2005年にアイドルグループAKB48に第1期生として加入し、17年に卒業。その後18年6月にライフスタイルブランド「Her lip to」をリリース。当初は所属していた芸能事務所でブランド運営をしていたが、事業規模の拡大に伴って、より事業にコミットする体制を構築するべく2020年1月に株式会社heart relationを自ら創業。タレント活動も継続しながら、クリエイティブディレクターとして全アイテムの商品企画とクリエイティブ制作に携わるだけでなく、ブランド運営全体を執り仕切る。2022年2月より代表取締役CCOに就任。
「heart relation」は2月、新役員メンバー3名を迎えた“新経営体制”へチームを刷新。小嶋さんを中心とした「5人の経営メンバー」で、事業拡大にさらなるブーストをかけるそうなのですが…今回加わる新メンバーは全員、“元上場企業役員”などゴリゴリのビジネスのプロたち。
ここまで “ガチ”な動きを見せる芸能人プロデュースのブランド、聞いたことなくないですか…?
ということで今回は小嶋さんの事務所に突撃。新役員としてジョインした元サイバーエージェント執行役員・岡田寿代さんにもご登場いただきつつ、“経営者・小嶋陽菜の挑戦と覚悟”に迫りました。
【岡田寿代(おかだ・ひさよ)】2008年株式会社サイバーエージェントに入社し、インターネット広告事業に従事。2014年にグローバル事業を立ち上げ、海外事業の責任者として、アメリカ、韓国、中国、台湾などで現地法人を立ち上げ事業を拡大。2017年にサイバーエージェントの執行役員に就任し、同時にNewYorkに渡り米国での広告事業拡大に従事。2021年に株式会社heart relationに入社し、2022年2月より執行役員CDOに就任。
〈聞き手=サノトモキ〉
1年で10人→40人の組織へ。急拡大する組織で小嶋さんが下した“決断”とは
サノ
3名の新役員メンバーを迎え、新体制へ…
相当大きな経営決断だと思うんですけど、これってどういう背景があったんですか?
小嶋さん
あのですね…
私たち今、深刻な“人材不足”に悩まされてるんですよ(笑)。
経営者・小嶋陽菜、最大の悩みは「人材不足」
小嶋さん
ブランドを設立してから、少数精鋭のメンバー4、5人で事業を回してきたんですけど、ありがたいことに事業規模がどんどん大きくなってきて。
「扱う型数、発注数を増やしたい」「もっと少ない配送日数でお届けしたい」…
やるべき業務がどんどん増えて、じつはこの1年、めちゃくちゃ採用を強化しているんです。
サノ
小嶋さんが「採用」…!
具体的に何人くらい採用したんですか?
小嶋さん
去年の1月は10人くらいの組織だったんですけど…
この1年で足りないポジションの採用を頑張った結果、40人のチームになりました。
1年で「4倍」。とんでもない急拡大だ
小嶋さん
でも、これでもまだ足りないんですよ!
最近もよく週末に役員メンバーで経営合宿をしているんですけど、まさに先週、今年1年で実現したいことから逆算して“1年後の組織図”をつくったんです。
そしたら、必要なポジションがことごとく「不在、不在、不在」の状況で…足元の事業状況をみつつですが、今年もクリエイターを中心にまだまだ採用する計画です。
サノ
(国内のクリエイターざわめくぞこれ…)
小嶋さん
で、今回役員を新たに迎えた理由につながるのですが…
こうした組織拡大を考えたとき、私だけではこれ以上会社を大きくできない。
…と認めるところから始まったんですよ、この新体制への挑戦は。
小嶋さん
まだまだたくさんやりたいことを見据えているんですけど、私は知識も経験も足りない。
ここから先は、私が背伸びして全体を見るんじゃなくて、各分野で責任を持てるプロフェッショナルが絶対に必要だなと。
サノ
めちゃくちゃ冷静な判断だ…
小嶋さん
「チームを強化しなきゃ、これ以上いいものづくりはできない」。
そう判断して“ビジネスのプロフェッショナル”を経営陣に迎えたというのが、今回の狙いなんです。
“元サイバー子会社社長”が「Her lip to」の可能性を確信した瞬間
サノ
では、ここからは役員として新たにジョインされた岡田さんにもお話を聞かせてください!
「よろしくお願いします!」
サノ
まずシンプルに…どんな人生を送ったら小嶋陽菜さんと一緒に会社を経営することになるんですか?
岡田さん
すごい質問ですね(笑)。
私は2008年にサイバーエージェントに営業として新卒入社したあと、2010年に子会社の社長になったんです。
サノ
入社3年で社長に…
岡田さん
でも反省点もいっぱいあって、結局会社は2年で解散したんです。そのあと、別事業で責任者として頑張っていたら、2017年に上司から「海外事業に挑戦してみないか」と声をかけてもらって。
そこでアメリカ→韓国→中国へと事業を拡大させる…というようなことをやっていました。
そんななか、共通の知人から「小嶋さんがお茶したいって言ってるよ」って連絡があって。
全部急なのよ展開が
サノ
小嶋さん、これはどういうことなんですか?
小嶋さん
自分の経営者としてのレベル上げたいとか、もっとマネジメントについて学びたいとか…経験豊富な方に事業の相談に乗ってほしくて。
そんなときに「すごい突破力があって活躍してる女性がいるよ」と教えてもらって、「よかったら軽くお茶しませんか」みたいな。
サノ
すごい行動力だ…
小嶋さんのファーストインプレッションはどんな感じでしたか?
岡田さん
もうシンプルに、「あ、こじはるだ…!」ですね(笑)。
小嶋さん「それは…まあ、そうか(笑)」
岡田さん
でも、正直に言うと…けっこう冷めた目で見てたんですよ。
職業柄、タレントさんのD2C案件ってしょっちゅう目にしてたので、「小嶋さんも頑張ってるんだな〜」くらいに思ってたというか。
※D2Cとは…Direct to Consumerの略。自ら企画、生産した商品を広告代理店や小売店を挟まず、消費者とダイレクトに取引する販売方法。SNSでたびたび目にする「Mr.CHEESECAKE」や、メンズスキンケアブランド「BULK HOMME(バルクオム)」などが代表例として挙げられます。
岡田さん
その日も結局、「またなんかあれば…」くらいのテンションで帰りましたよね。
小嶋さん
ね。こんな一緒に働くことになる感じの温度感じゃなかったよね(笑)。
サノ
そこから、なぜ今の状態に…?
岡田さん
彼女が企画した「ポップアップイベント(※)」にお邪魔したとき、印象が一変したんですよ。
※期間限定で開催される、ブランドの世界観を表現したイベントのこと
岡田さん
ポップアップイベントって、普通に「服を並べて売る」だけの場合がほとんどなんですけど…「Her lip to」はレベルが違った。
会場には、ディスプレイで浜辺を演出してつくられたビーチや、お客さんがゆっくりできるカフェが併設されていて。
サノ
服のポップアップイベントに、“ビーチ”…!?
岡田さん
「Her lip to」が提供していたのは、アパレルをきっかけとした“体験”だったんです。
実際、お客さんたちはみんなビーチを背景に写真を撮ったり、カフェで話したりしながら、「#herlipto」でタグ付けして、SNSでコミュニケーションを取って盛り上がってた。
そのコンセプトにびっくりして、「これ誰がやってるの?」って聞いたら、「全部小嶋さんだよ」って。
いいエピソードで普通にうれしくなってしまったこじはるさん
岡田さん
「Her lip to」はアパレルブランドじゃなくて、“ライフスタイルブランド”。
「服」はあくまで手法にすぎず、その先の“体験”をゴールに据えてすべてを設計してるところが、本当に「粋」だなって。
私はそこにすごく事業の広がりというか、可能性を感じて。そのポップアップイベントを見た瞬間、直感でジョインを決めました。「ここで働いたら、めちゃくちゃワクワクできるかも」って。
小嶋さん
へぇ、そんなふうに思ってくれてたんだ〜(笑)。めっちゃいい。
こういう “戦友の出会い”系エピソードすこ…
「小嶋さんは社員の全Slackをチェックしてる」岡田さんが語る“経営者・小嶋陽菜”の凄まじさ
サノ
実際にお仕事をするようになって、小嶋さんの印象が変わったところってありますか?
岡田さん
「そんな細かなとこまで見るの!?」ってことですね(笑)。
私たちは社内ではSlackでやりとりしてるんですけど、小嶋さんは自分宛てじゃないメッセージまで全部チェックしてるんですよ。
サノ
全部!?
岡田さん
私も社長をやってましたけど、さすがに全部は追ってなかったんですよ。重要そうなポイントだけ拾っていたというか。
でも小嶋さんは、メンバーがどう動いているかを本当にこと細かにチェックしてる。
全然違う人と進行していた話について、「あの件だけどさあ」って当たり前のように話しかけられて、めちゃくちゃびっくりしました。
サノ
僕なんて自分にメンションが飛んでるときでさえ見逃してたりするのに…
その細かさ、疲れちゃわないんですか?
小嶋さん
それで何か抜け漏れがあって、トラブルにつながったときのほうが圧倒的に疲れるじゃないですか(笑)。
最後の最後は経営者である私の責任ですし、チェックは欠かさないです。
会社のやりとりである以上、ある意味全部“自分宛て”として捉えるべきかなと。
とんでもない責任感…言葉も表情も完全に“経営者”だ
小嶋さん
あと、私がフィードバックすることで、メンバーたちに“共通の価値観”が積み上がっていくじゃないですか。
クリエイティブの責任者がどういうことにこだわるのか、伝えることを疎かにしちゃいけないなと思うので。
岡田さん
ほんとに細かいですよ。
この間も週末に、「サイトの並び方、もっとこうしたほうがいいんじゃない?」みたいな提案を、リストにまとめてバーっと送ってきて。
見てる解像度、広さ、深さが、全然違う。責任の強さ、ブランドに対する本気度は、ちょっと異次元だなと思います。
サノ
存分に伝わってきました…。
逆に、「ここはカバーしてあげなきゃいけないな」みたいな弱点ってありますか?
岡田さん
描く未来のサイズが大きい分、それを「どうビジネスに落とすか」が私たちの出番ですね。
小嶋さんにしか思い描けないエンターテインメントの構想を、“ビジネスとしてどう形にしていくか”が、私たち新メンバーの役割なんだろうなと。
「エンタメをつくる力」と「ビジネスをつくる力」、全然違うこのパワーを掛け合わせていくのが、こっからの挑戦。
小嶋さん
…最高だね。
ちょいちょい熱いのすこ…
小嶋陽菜は、採用時にどこを見るのか
サノ
ちなみに、さきほど「絶賛採用強化中」とおっしゃってましたが…
具体的に「どんな人」を求めているんですか?
小嶋さん
とにかく幅広いポジションを欲しているので、一概には言えないですが…共通で求めるものとなると、やっぱりそれは「熱量」という答えになります。
ただ、ここで大切なのは、“何をもって人の熱量を測るか”という話で。
小嶋さん
この1年、「今どんな人が欲しいのか」を経営メンバーで徹底的に言語化したんです。
打たれ強さ、気持ちの強さ、目の前のことに没頭できる強さ…そういったものを下支えするのはやっぱり「熱量」だよねと。
じゃあ、それをどう測る?って話になって。
サノ
直感じゃなく、論理的に測り方を決めようと…めちゃくちゃ本質的な議論ですね。
小嶋さん
私たちの結論は、「やってきたことに対する熱量を、言葉にできる人」。
今の時点では、これがすごくいい指標として機能しています。
その人が語る「熱量」が嘘か本当かは、どんなことをしてきたかを聞けばわかります。
サノ
と、いいますと…?
小嶋さん
「うちに入って何がしたいか」「これからどうしたいか」みたいな“未来への熱量”って、まだ中身がないし、いくらでも綺麗な言葉にできちゃうじゃないですか。
でも、「今までやってきたことへの熱量」って、その解像度の高さとか、話の止まらなさとか…表情、言葉、態度に、一番嘘偽りなく現れるんですよ。
サノ
たしかに、納得感あるかも…
逆に、「今までやっていたことへの熱量」さえあれば、「アパレルに詳しい」みたいな要素は必要ないんですか?
岡田さん
社内にプロのメンバー達がいるので、そこは全く問題ありません。
私も、アパレルのものづくりに関しては無知だったので。
気持ちのいい笑顔で言い切る岡田さん
岡田さん
ただ、私は「0→1」で何かを立ち上げることには底なしの熱量を捧げられるんですよ。
その条件下では、人並外れた突破力を発揮できる自負があります。
小嶋さん
めちゃめちゃ勉強させていただいてますよ。私はけっこうまわりくどいというか、コミュニケーション下手なので…「こうやって突破するんだ!」って。
ひさよちゃんには、組織的に圧倒的に不足していた「突破力」を埋めてもらいたくて入っていただいたので。
そういう、うちで見せてくれる「その人だけの熱量」を感じさせてくれる人を、何より求めてますね。
岡田さん
あとは、小嶋さんの細部へのこだわりを「一緒にやりきりましょう!」って言える人。
小嶋さんの「お客さんを“いい意味”で驚かせること」への熱量とこだわりは、マジですさまじいので。
どこまでも徹底的に、仕掛けて、仕込んで、沸かせる。それについてこれる熱量を持ってる人が、たぶんうちに合ってます。
「私が安全圏にいたら、絶対人は集まってこない」小嶋陽菜が示した“覚悟”
サノ
最後にこれだけお聞きしたかったんですが…
小嶋さんは2年前、なぜ“経営者”という責任ある立場になることを選んだんですか?
設立時の肩書き通り、「“ブランドプロデューサー”という立場のままでいる」という選択肢もあったと思うんですが…
小嶋さん
私が一番リスクを背負わなきゃ、誰もついてこないと思ったんですよね。
小嶋さん
4年前、所属していた芸能事務所を経営母体としてブランドの運営を始めたんですけど…
いざ人を集めてチームをつくっていこうと考えたとき、私だけ安全圏で椅子に座ったまま「いい人採用してきてほしい」と言ったって、絶対にプロフェッショナルなメンバーが集まることはないと思ったんです。
サノ
…!
小嶋さん
私が全部の責任を負っている。私が意思決定をする。私が採用の面接に参加する。
そこまで示さないと、「芸能人が片手間でやってる」みたいなイメージは絶対に解消できない。
だから、まず私自身が全部を背負って「経営者」という立場にならなきゃダメだと思って、2年前に「株式会社heart relation」をつくったんですよね。
サノ
すさまじい覚悟だ…
よく「経営者は孤独だ」と言いますが、重圧に負けそうになっちゃうこととかはないんですか…?
小嶋さん
いや…? 正直アイドル時代も最後は自分次第というか、突き詰めて考えれば孤独な戦いだったので。
「あ、こっち(経営)もそうなんだ」みたいな(笑)。
培ってきたタフネスが違うんよ
岡田さん
小嶋さんは、とにかく背中で見せるタイプなんですよ。
多くを語るわけではなく、小嶋さん自身が誰よりもコミットして、責任持ってやる背中を見て、みんな「ついていきたい!」ってスイッチが入るチームになってると思います。
今もいろんなことを絶賛仕込み中なので…ぜひパワーアップした「heart relation」に期待していただけたら!
今日はありがとうございました!
“私が全部の責任を負っている。私が採用の面接に参加する。私が意思決定をする。そこまで示さないと、「芸能人が片手間でやってる」みたいなイメージは絶対に解消できない”
この言葉を聞いたとき、小嶋さんの覚悟がぶわっと伝わってきて、めちゃくちゃ鳥肌が立ちました。
岡田さんをはじめとする敏腕プレイヤーがビジネス面をゴリゴリ進化させ、小嶋さんが「クリエイティブと顧客体験の質的向上」に心血を注いでいく、新生「heart relation」。
今後のサプライズに、ぜひご注目ください!
ビジネスパーソンインタビュー
またスゴいことを始めた前澤さんに「スケールの大きい人になる方法」を聞いたら、重たい宿題を出されてしまいました
新R25編集部
【不満も希望もないから燃えられない…】“悟っちゃってる”Z世代の悩みに共感する箕輪厚介さんが「幸せになる3つの方法」を伝授してくれた
新R25編集部
「実家のお店がなくなるのは悲しい… 家業を継ぐか迷ってます」実家のスーパーを全国区にした大山皓生さんに相談したら、感動的なアドバイスをいただきました
新R25編集部
「俯瞰するって、むしろ大人ではない」“エンタメ鑑賞タスク化してる問題”に佐渡島庸平が一石
新R25編集部
社内にたった一人で“違和感”を口にできるか?「BPaaS」推進するkubell桐谷豪が語るコミットの本質
新R25編集部
【仕事なくなる?そんなにすごい?】“AIがずっとしっくりこない”悩みへのけんすうさんの回答が超ハラオチ
新R25編集部