ビジネスパーソンインタビュー
「厳しい場所にいると、どうしたってネガティブになってしまう。でも…」
戦っている人ほど、ネガティブにも努力家にもなれる。中田花奈「やめよう」からの“返り咲き”のワケ
新R25編集部
今、麻雀界をにぎわせている人がいます。
アイドルグループ・乃木坂46を卒業後、「プロ雀士」宣言をしてからわずか2カ月でプロテストに合格。プロ雀士の道を歩みはじめた中田花奈さん。
一方で、中田さんはアイドル卒業後に芸能界引退を考えていたぐらい、思い悩んでいた時期もあったのだとか。
悩みながらも歩みを止めない彼女の努力の源をきいてみると…乃木坂46時代の経験と、徹底したネガティブ思考がありました。
〈聞き手=いしかわゆき〉
【中田花奈(なかだ・かな)】1994年生まれ、埼玉県出身。2011年、乃木坂46の1期生に。デビューシングル「ぐるぐるカーテン」で、選抜メンバーに初選出。2019年、テレビ番組『トップ目とったんで!』の麻雀バトルで優勝し、冠番組を勝ち取る。2020年、乃木坂46を卒業。2021年、日本プロ麻雀連盟第37期後期プロテストに合格。初のタイトル戦「桜蕾戦」では決勝へ進出する
厳しい場所で戦っていると、ネガティブになるし、努力家にもなる
いしかわ
短い期間でプロテストに合格した中田さんですが、乃木坂46時代も“ブログ更新率1位”になってたじゃないですか。「努力家」な印象をすごく受けました。
中田さん
努力家…というかネガティブなんですよ。自己評価は人よりも低い。
何かに満足することはないですね。たぶん一生…
ホメたのに暗いスタートになってしまいました
中田さん
麻雀のプロテストは、正直実力不足なのが自分でもわかっていたから、短期間で頑張れたんだと思います。
ブログも、初期は自分に仕事が来ないのを「特徴がないからかな…」と思って、どういう人間か知ってもらうために更新してたんですよ。
「努力できる」っていいふうに見えるかもしれないけど、実際は、「もうダメだ、ダメだ」と思いながらやってます。
いしかわ
すべての原動力が「ネガティブ」なんですね。
中田さん
それは乃木坂46っていう“厳しい場所”で戦ってきたからこそなんです。
厳しい場所で戦っていると、どうしたってネガティブになってしまう。でも「努力家」にもなれるんですよね。
中田さん
乃木坂46にはシングルの表題曲を歌う「選抜メンバー」と、それ以外の「アンダーメンバー」がいるんですけど、このシステムが自分をネガティブにもさせたし、逆に努力家と言われる存在にもさせてくれたと思ってて。
いしかわ
常に「順位」を意識させられる環境ですもんね…
中田さん
乃木坂46に入ってからシングル3枚連続で選抜メンバーにしていただいて、フロント(前列のメンバー)もやってたりしたのに、4枚目で急にアンダーに落ちちゃって、それ以降お仕事が少なくなって…
しかも、ちょうど活動に専念するために大学受験を諦めたタイミング。
ほんと、「厳しさ」を味わいましたよね…(笑)。
いしかわ
そこからどうされたんですか?
中田さん
若干開き直りましたね。
「3つ嫌なことがあったらやめよう」って決めました。
いしかわ
ええっ。3つあったんですか…?
中田さん
ありましたね。
2019年に出た乃木坂46のアルバムで、はじめて収録曲がなかった(=オリジナルアルバムの初収録曲に参加がなかった)んです。
「あぁ、もう私はいらないんだ」と思ってしまったし、仕事からも自分の必要性を感じなくなるようなことがあって、もともとネガティブだからこそ過剰に感じてしまった。
中田さん
ホント、芸能界で頑張ったことで性格ゆがんだ部分もあると思うし(笑)、自己肯定感もなくなっちゃった。
でも、ここまで来れたのはそういう辛い経験があったおかげ。アイドルっぽくはなくなっちゃったけど、独自の感性は生まれたんじゃないかな。
うれしくても、喜びは1秒で終わる。「私なりのネガティブの飼い慣らし方」
中田さん
それで、乃木坂46を卒業したら、芸能界から引退しようと思ってたんです。「乃木坂46」って看板がなくなった私に、仕事なんて来るわけないと思ってた。
でもそんなときに、レギュラー番組を懸けた麻雀対決で優勝して、自分の冠番組が決まったんです。そこから初のソロ写真集や、趣味でやっていた投資の本も出版されて…。すぐに引退しなくてよかったな、と思いましたね。
いしかわ
卒業してからは、自分らしい活躍ができていると…
中田さん
いや、今もすごい苦しいですよ。
プロテストの合格発表の瞬間も、「む、無理です!!」ってなっちゃって…
またネガティブに陥っている中田さん
いしかわ
無理というのは…?
中田さん
プロになれたことはうれしかったんですけど、喜びは1秒ぐらいで終わりました。
実は「桜蕾戦」という30歳未満のプロが出る試合がその週末にあって、「桜蕾戦が始まっちゃう!」という気持ちが勝ってしまったんですよ。
プロとしての打ち方が数日で勉強できる自信がないし、もうちょっと練習期間をくれ! って(笑)。
何かゴールを達成しても、すぐ次にやらなきゃいけないことが思い浮かんで、全然喜べない思考なんですよ。わかりません?
いしかわ
正直ちょっとわかります…
ただ、何をやっても達成の喜びがそんなにないのに、頑張れるのはなぜなんですかね…?
中田さん
それが私なりの「ネガティブの飼い慣らし方」だから。
常に頑張ってないと、ふとした瞬間にネガティブな部分が世に放たれちゃう(笑)。
努力をすることで、ネガティブを飼い慣らしてるんです。
「ネガティブを飼い慣らすために努力する」これは正直共感してしまいました
「つながるのは10年後かもしれないけど…」芽ぶいた瞬間を逃さないように
いしかわ
麻雀や投資って、自分で意識的に“種まき”をしていたことだったんですか?
中田さん
いや、逆です。
麻雀をやったこともなかったし、投資家と名乗って仕事をするなんて思ってもみなかった。仕事につなげようと思ってなかったんですよ。
中田さん
でも、やってきたことが何かしらにつながる。“アイドルとして輝く”という夢とは直結していなかったとしても、別の形で花開くんだと思いました。
だからみんな、つながるのは10年後かもしれないけど、目の前のことにちゃんと向き合うのはすごい大事だよって言いたいですね。
いしかわ
気付いたら、自分も知らない花が咲いてると。
中田さん
ただ、芽ぶいた瞬間は逃さないほうがいい。
私は、ネガティブだから、何でもかんでもつかめるんだと思います。
中田さん
自己評価が高いと「これは私に合ってない」とつかめなかったりするけど、わたしは兆しを感じたらとりあえずつかむ。
麻雀だって、全然打てないときに仕事が来たけれど、「ちゃんとやろう」と取り組めたのは、ネガティブのおかげなのかもしれません。
いしかわ
お話を聞いていると、ネガティブがすごく良いことのように思えてきました…
中田さん
ネガティブって悪いことだと言われがちなんですけど、私は自分のネガティブのこと、そんなに嫌いじゃないんですよね。
危機管理能力が高いと思うし、自分に満足できないから努力できる。ネガティブがゆえによかったことがたくさんあった。
いろんなチャレンジをするなかで、道が開けたときに、「あぁ、また頑張らなきゃいけないな」って思う反面、「またネガティブを飼い慣らして頑張るかぁ」って思って前に進みます(笑)。
プレゼント用のチェキにサインをしてもらいました! 中田さんありがとうございました
「ネガティブ」は頑張るためのエンジンになる。
中田さんの努力論、同じようにネガティブを自分のなかに飼っている人にすごく刺さるのではないでしょうか…。
落ち込んでしまったときは頑張っている中田さんの姿を見て、「同じように頑張っているネガティブな人がいるんだ…」と自分を奮い立たせようと思います。
〈取材・文=いしかわゆき(@milkprincess17)/編集=天野俊吉(@amanop)/撮影=中澤真央(@_maonakazawa_)〉
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