ビジネスパーソンインタビュー
普段、どんな情報に触れてますか?
あの人の名言「やる気のある者は去れ」の真意とは… 売れっ子企画者が語る“インプット術”
新R25編集部
日々の仕事やアイデアの源泉となるのが「インプット」。よいインプットをしないと、良質なアイデアが出ないとはよく言われます。
しかし、さまざまな仕事術のなかで「インプットのコツ」ってあまり表に出ない気が…。
そこで今回は、テレビ業界で大ヒットに携わる3人のプロデューサー、放送作家たちに「インプットのコツ」を聞いてみました。
一流の「インプットのコツ」を学びつつ、あなた流の「コツ」も、ぜひ新R25ワイドショーに投稿してみてください!
〈聞き手=天野俊吉(新R25副編集長)〉
『ぐるナイ』、ABEMA『1000万シリーズ』売れっ子放送作家・桝本壮志さん「三角形をイメージしてインプット」
最初にお話をうかがったのは、人気地上波番組から、『朝倉未来にストリートファイトで勝ったら1000万円』(ABEMA)、史上初“テレビ局の枠を芸人に買わせた”番組『とろサーモン久保田、テレビ局で枠を買う。』(チバテレビ)など、奇抜な企画を生み出し続ける桝本壮志さん。
吉本NSC“10年連続人気No.1”講師は、なぜ「ネタ1000本ノック」的指導を否定する?|新R25
ズバ抜けて“ピュアだった”生徒は「EXIT兼近です」
新R25では以前、「見抜き力」というテーマで取材。話題となりました
桝本さん
インプットは、小難しく考えず“学生時代に得意だった科目の延長戦”くらいのイメージでいいっていうのが持論なんですよ。国語が好きだった人は文字情報からとか、音楽が好きだった人は耳から入ってくる情報からとか。
僕は美術が好きだったから、企画を考えるときは必ず、文字じゃなくGoogleで画像検索をするんです。
天野
画像検索でアイデアを探すってことか…したことないですね。
桝本さん
たとえば、画像検索でどんなものが「トレンド」なのかをインプットします。
僕は常に「①トレンド」「②ニーズ」「③主観」っていう三角形を頭にイメージしていて…
桝本さん
たとえば、この後お話を聞かれる木月洋介さん(フジテレビ)と一緒にやった番組についての話なんですが…
「①トレンド」をつかもうと「流行ってる人」で画像検索をしていたら、又吉直樹さんが芥川賞を獲って話題になってたんです。ほかにも博多華丸・大吉さんとサンドウィッチマンさん、DJ KOOさんが人気だった。
その人たちの共通点を考えてみたら「全員“やさしい人”だな」って思ったんです。
天野
たしかにやさしい…
桝本さん
次に「②ニーズ」を考える。このやさしい人たちが出て、より視聴者に見てもらえる番組はなんだろう?と考えると…一緒に参加してもらえる「クイズだな」って思ったんですよ。
そこからさらに自分の「③主観」で考えて、「やさしい」にくわえて、「今までのクイズ番組とは違うクイズ番組がつくりたいな」と思った。
当時、「○○じゃないと○○できない」っていうワードが自分のなかで面白いと思ってたんですよ。たとえば「黒の服を着てる人しか入れないレストラン」とか。
それで、「やさしい人だけが解けるクイズがあったら面白いな」っていう①②③を結ぶ三角形で企画が成立したんです。これが、ゴールデン番組『クイズやさしいね』になりました。
2015~2017年放送。内村光良さん、加藤綾子さん、坂上忍さんらが出演しました
桝本さん
ほかにも、最近だと『とろサーモン久保田、テレビ局で枠を買う。』という番組も同様で…
まずは「①トレンド」として“ちょっとアウトローな芸人が人気だな”と思ったんです。さらに、「②ニーズ」は、“お金をパーッと使っているところを見たい”という欲求があった。仲里依紗さんの「爆買い」企画とかね?
天野
なるほど。たしかに人気のYouTuberがハデに散財する企画はテッパンかもしれません。その場合、桝本さんの「③主観」はどこにあったんですか?
桝本さん
テレビの仕事をしているからかもしれないんですが…「立場が逆転する」って面白いなと思ったんです。
「“起用される”側の芸能人が逆にテレビを操ったら?」っていう、ある意味で自分の職業が揺るがされるような。
それで、アウトローな芸人・とろサーモンの久保田さんに、自腹でお金を使ってもらい、好き放題してもらうという企画にしたんですよね。
絶妙にマッチしたキャスティングでした
桝本壮志さんのインプットのコツ⇒「画像検索して、①トレンド、②ニーズ、③主観 の観点から分析する」
『いいとも!』伝説の最終回を演出…木月洋介さん「スケジューリングで“無駄”を拾う」
次に話を聞いたのは、『新しいカギ』『スカッとジャパン』『今夜はナゾトレ』『キスマイ超BUSAIKU!?』『久保みねヒャダこじらせナイト』などを手掛ける、フジテレビの総合演出・プロデューサー・木月洋介さん。
2014年には、あの『笑っていいとも!』の最終回の演出を担当したことでも知られる、フジテレビのエース的プロデューサーな御方です…!
木月さん
僕がやってることは、タモリさんの教えなんですよ。
天野
タモリさんの教えというと「遊びは本気でやれ」みたいな?
木月さん
「やる気のある者は去れ」っていう有名な言葉あるじゃないですか。
本当によく言ってるから、「どういういうことですか?」って昼飯のときに直接聞いたことがあるんです。
あの名言の真意を昼飯のときに…! 気になる…
木月さん
そしたら「やる気のある人は中心しか見ない」って言うんです。「何が当たってるか」しか見ないと。
そうじゃなくて、「今、周縁にあるものが中心になる。いつでもそうなんだ」と。「それを見つけられる人は、遊び心のある人だけだ」と。
天野
なるほどお…タモリさんご自身も、もともとは“周縁”的な人だし。
木月さん
そう、アングラからバラエティの中心に来た人ですよね。
インプットしようと思っても、やる気があるやつには大事なものは見つからない。サボってるやつにしか見えないって言うんです。
天野
でも、仕事に“無駄”や遊び心を取り入れるって、余裕がないとできなくないですか?
木月さんはめちゃくちゃお忙しいと思うんですが、どうやったら“無駄”に時間を割いてるんでしょう?
木月さん
そこがキモで、「スケジュールに入れる」ってことですね。無駄をスケジュールに組み込む。無駄って言うと会ってくれてる人とかに悪いけど(笑)。
「ここはイケそうだな」っていう時間帯があったら、人に会う、人とご飯を食べるとか、舞台を見るとか、仕事以外の予定をスケジュールとして強制的に入れちゃいます。
天野
スケジューリングがインプットのキモであると。
ただ、そんな「遊び」が実際に仕事につながったことってあるんですか?
木月さん
ありますよ。2015年ぐらいに母校・東大の会ったこともない学生から就職相談させてくれませんか?と頼まれたので、特に考えずに会ってみたら、その学生が「謎解きサークル・Another Vision」を立ち上げた人だったんですよ。
そこからつながって、その後、当時大学2年生の謎解きクリエイター・松丸亮吾くんと出会うことになるわけです。
天野
!!!
木月さん
彼の名刺の裏を見たら、謎解き問題が書いてあったんです。
それを見て、「『IQサプリ』『マジカル頭脳パワー』の時代から進化してる!」って思ったんですよね。ひっかけみたいなクイズじゃなく、伏線回収型で“答えると気持ちいい”問題になってて。
『今夜はナゾトレ』っていう番組を立ち上げるときに「彼に出演してもらって、そのままコーナーを作っちゃおう」って「東大ナゾトレ」を始めて、それが本になって、今160万部ですから…
天野
すごい。自分だったら正直「学生に会っても…」って思っちゃいます。
無駄に思えても、スケジュールに入れてたことでブームが生まれたのか…
木月さん
そう。普通に仕事してると、やっぱりそんなに無駄なことってしませんから。
スケジューリングして、無駄な出会いをつくる。それが「インプット」の一番大きいところな気がしますね。
この(取材の)話を受けるのもそうですよ。こうしてお話しして「ああ、なるほど。自分の考え方はそうなんだ」って改めて整理できるから、きっと無駄じゃないんです(笑)。
木月洋介さんのインプットのコツ⇒「スケジュールに“無駄”を組み込み、周縁から中心に来るものを探す」
『高校生クイズ』『水ダウ』放送作家の矢野了平さん「子供向けの商品もヒントに」
最後にお話しいただいたのは、放送作家、クイズ作家の矢野了平さん。『全国高等学校クイズ選手権』などのクイズ番組はもちろん、『水曜日のダウンタウン』などの人気番組にも放送作家として参加されています。
矢野さん
自分以外の年齢層をターゲットにしたものをインプットしてみるのは面白いと思いますよ。ウチは息子がいるんで、子ども向けの商品とかをチェックしてるんですけど…
最近思ったのは、「くくり方」でヒットってつくれるんだなってことなんです。
『ざんねんないきもの事典』ってベストセラーになってるじゃないですか。
天野
「リスはほお袋で食べ物がくさって病気になる」みたいな悲しい習性をまとめたやつ…
矢野さん
あれって要するに、いろんな動物の習性のトリビアではあるんですよ。
それを「ざんねんな習性」っていう企画に“くくること”。 あれ以降、そういうふうに何か1テーマで“くくってる本”がたくさん出てるんですね。
天野
なるほど。「トリビア」自体は昔からあったけど…
矢野さん
くくるときに「ざんねんな」っていう絶妙な表現を使ったのも新しいと思ってて、クイズをつくるときも取り入れてますね。
たとえば「動物の求愛」というテーマだったら、「ラブラブな」とか「胸キュンな」と言い換えるとかね。
矢野了平さんのインプットのコツ⇒「違う年齢層のものから“新しさ”を学ぶ」
テレビの第一線で活躍するトッププレイヤーたちの教えは、すぐにマネできそうなものから、「いつかは役に立つかもしれない」という幅広いものでした。
あなたも、“強靭な好奇心”を鍛えるために、さまざまなインプット方法を取り入れてみてはいかがでしょうか。
〈取材・文=天野俊吉(@amanop)/執筆協力=山田三奈(@l_okbj)〉
YouTubeやSNSでは人気回答を紹介しています!
新R25のYouTubeチャンネル/Twitter/Instagramでは、新R25ワイドショーの人気回答を紹介しています。この機会にぜひチャンネル登録&フォローをお願いします!
ビジネスパーソンインタビュー
またスゴいことを始めた前澤さんに「スケールの大きい人になる方法」を聞いたら、重たい宿題を出されてしまいました
新R25編集部
【不満も希望もないから燃えられない…】“悟っちゃってる”Z世代の悩みに共感する箕輪厚介さんが「幸せになる3つの方法」を伝授してくれた
新R25編集部
「実家のお店がなくなるのは悲しい… 家業を継ぐか迷ってます」実家のスーパーを全国区にした大山皓生さんに相談したら、感動的なアドバイスをいただきました
新R25編集部
「俯瞰するって、むしろ大人ではない」“エンタメ鑑賞タスク化してる問題”に佐渡島庸平が一石
新R25編集部
社内にたった一人で“違和感”を口にできるか?「BPaaS」推進するkubell桐谷豪が語るコミットの本質
新R25編集部
【仕事なくなる?そんなにすごい?】“AIがずっとしっくりこない”悩みへのけんすうさんの回答が超ハラオチ
新R25編集部