

将棋をこよなく愛する脳科学者が熱弁!
あらゆるビジネススキルが身につく!? 茂木健一郎が「子どもの脳を育てるには“将棋が最強”」と断言するワケ
新R25編集部
今、「将棋」が盛り上がりを見せているのをご存知ですか?
あの藤井二冠のタイトル初防衛戦となる「ヒューリック杯棋聖戦」が佳境を迎えた今こそ、将棋にハマるのに絶好のタイミングなんです。
「この機会に、大人だけでなく子どもにも将棋の楽しさを知ってほしい!」
藤井さんが監修を務めるゲーム『棋士・藤井聡太の将棋トレーニング(通称:将トレ)』の担当者からそんな意気込みを聞いた新R25は、大の将棋好きとして知られる脳科学者・茂木健一郎さんに取材を依頼。
三児の父でもある新R25編集長・渡辺が、「将棋と“子どもの脳”の関係性」について聞いてきました。
〈聞き手=渡辺将基(新R25編集長)〉
【茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)】1962年、東京都生まれ。脳科学者。脳科学を切り口にさまざまなメディアに出演している。著書多数
脳科学者・茂木健一郎いわく「子どもの脳の発達において、将棋は最強」

渡辺
今日のテーマは「子どもの脳と将棋の関係」なんですが…

茂木さん
よくぞ聞いてくれました!
小学校に上がる前から将棋を嗜んでいたという茂木先生。本日もテンション高めです

茂木さん
もうね、子どもの脳の発達において、将棋は最強でしょう。

渡辺
そこまで言い切るほどなんですね。

茂木さん
そうだよ!将棋をやれば、ありとあらゆるスキルが身につきますから。

渡辺
あらゆるって…具体的にはどんなスキルが身に付くんですか?

茂木さん
それを話し出すと1日ぐらい経っちゃうんだけどねぇ…
そこをどうにか…(簡潔に)お願いします!
将棋が最強な理由①:粘り強く考える「集中力」が身につく

茂木さん
まず外せないのは「集中力」。
編集長、あの有名な「マシュマロ・テスト」を知ってますよね?

渡辺
いや、知らないです…

茂木さん
ダメじゃないですか!
ごめんなさい

茂木さん
子どもたちを集めて、目の前にマシュマロを置いておく。すぐ食べずに我慢できた子には、もっとたくさんのマシュマロをあげるよっていう実験です。
結果、すぐ食べずに我慢できた子のほうが、のちに優秀な子に育ったというデータがあるんですよ。
そして我慢できた子の脳を調べたら、「集中力」に関する脳の部位の活発度に、明らかな差があったと。

渡辺
へぇ!

茂木さん
将棋はまさに、目の前のマシュマロを我慢する力が身につくんですよ。

茂木さん
将棋ってのは盤面にひたすら集中しないと勝てないから、前頭葉が活発化して、脳の集中力が上がるんですよ。
しかも、長い時間かけてしつこく指し手を考えるでしょ?この粘り強い集中力が、その子の将来のパフォーマンスを高めてくれるわけです。

渡辺
たしかに、今流行ってるゲームはスキマ時間で遊べるような中毒性はあるものの、将棋ほどじっくり考えるゲームはそうそうないような…

茂木さん
そう! だからこそ、盤面に向かってず〜っと考えられるような子は、見どころありますよ。
将棋が最強な理由②:相手の気持ちを想像しつつ「最良な選択をする力」が身につく

茂木さん
編集長、ちなみに将棋はどのくらい詳しいですか?

渡辺
駒の動かし方くらいはわかります。

茂木さん
じゃあ、指し手の選択肢が1つとは限らないのはわかりますよね?
いろんなパターンのなかから、「これなら勝てるぞ!」っていう手を自分で選ばなきゃいけない。

渡辺
そうですね。

茂木さん
人生だって選択の連続です。
あらゆる可能性を加味して選択する力は、どんな仕事でも求められますよ。

茂木さん
しかも将棋は、「相手」を想像したうえでの選択を迫られるわけですよ。
よく“三手の読み”って言うんですけど。

渡辺
三手の読み?

茂木さん
自分がこう指すと、相手はこうくるはず。じゃあ自分はこうしてやろう、と“三手先”まで展開を想像することなんだけど…
これに慣れてないと、相手は自分に都合のいい手を指してくると思っちゃうんです。

茂木さん
実際は相手も勝とうとしてるんだから、自分にとって一番イヤな手を指してくるに決まってるんですよ。
それも想像したうえで作戦を立てるっていうのが、将棋の非常に重要なポイントなんです。

渡辺
なるほど。ビジネスにおいても、“対人間”が基本ですもんね。

茂木さん
まさに! 交渉ごとでも、「相手は一番イヤな条件を出してくる」って想像できるかどうかで形勢が変わりますから。想像力はすごく重要ですよ。
恋愛だってそう。「彼女はこうしてくれる」って都合よく考えてるかもしれないけど…そりゃオマエのファンタジーだろっ!
将棋に強くなるとモテるのかもしれません
将棋が最強な理由③:右脳と左脳がどちらも鍛えられる

茂木さん
あと、意外と見逃せないのが「感情」。
当然ですけど、強い棋士は「負けてもいいや」なんて思わないんですよ。
不利な局面でも諦めずに戦いつづけることで、精神面も鍛えられます。

渡辺
僕も、仕事で結果を出すためには粘り強さや胆力が一番大切なんじゃないかと思います。
将棋は左脳・右脳の両方を使うマインドスポーツなんですかね?

茂木さん
おっ、なんか専門的なことを言い出したな?(笑)
でも、まったくその通りですよ!
正解を出した渡辺

茂木さん
記憶力とか論理的な思考は「左脳」。戦術や戦法を見極めるパターン認識とか感情は「右脳」。
まさに、右脳と左脳をまんべんなく使うスポーツだということです。
そういう意味でも、将棋は最強なんですよ。誰かが脳を鍛えるために考えたんじゃないの?って思うぐらい。
子どもが将棋にハマるために必要な「上」と「下」のアプローチ

渡辺
将棋が子どもの脳を育てるのにとてもいいのはわかったんですが…
子どもにやらせてみても、うまくハマれないケースもあると思うんですよね。

茂木さん
たしかにねえ。脳を鍛えるなら将棋を超えるものはないと思うけど、今は将棋以外にもおもしろいものがたくさんあるから…

渡辺
子どもたちが将棋にハマるためには何が大事なのか、先生の見解を教えていただけますか?

茂木さん
そうだなぁ…「上」からのアプローチと「下」からのアプローチ、両方が必要だと思いますね。
まず「上」っていうのは、活躍してる棋士の姿を見て興味を持つこと。
今で言うと「藤井聡太さん、カッコイイ〜〜!!」これですよ!
茂木先生、絶対に藤井ファン

茂木さん
僕も小さいころからNHKの『将棋の時間』を見てたんですけど、当時は加藤一二三さんが大活躍していて。
「この人の頭脳、どうなってるんだ!?」って思ったのが、将棋にのめり込んだきっかけですからね。

渡辺
先生は“ひふみん”に憧れてたんですか。

茂木さん
今はおもしろいおじいさんみたいになってるけど、当時は本当にかっこよかったんだよ。「神武以来(じんむこのかた)の天才」と言われた人ですから。

渡辺
…茂木先生も昔はかっこよかったですもんね。

茂木さん
うっさいわ!
気になる人は昔の茂木先生をググってみてください

渡辺
「下」からのアプローチというのは?

茂木さん
やっぱり、“小さな成功体験”が大事じゃないかなぁ。
脳内物質の「ドーパミン」が分泌されると、行動回路が強化されて、続けることが苦にならなくなるんですよ。
たとえば詰め将棋を自力で解けたとか、相手に勝てたとか…

茂木さん
そういう小さな成功体験によってドーパミンが分泌されることが将棋にハマるきっかけになると思いますね。

渡辺
なるほど。茂木先生の場合は、親や友だちとの対戦で成功体験を積んでいったんですか?

茂木さん
そうですねぇ。最初はボロ負けしましたけど、勝てるようになるとうれしいもんですよ。
現代は進化したAIと戦うことで、成功体験を積むことができる

茂木さん
でも今は、AIがものすごく進化してますから。小さな成功体験という意味では、将棋のゲームでAI相手に戦うのもすごくいいと思いますよ。

渡辺
強いAIが出てきているってことですか?

茂木さん
強いだけじゃなくて、うまい具合に手加減もしてくれるのがすごいんですよ。
初心者でも「勝てるじゃん!」って思わせてくれて、いい具合にやる気を引き出してくれるんです。

渡辺
まさに今回紹介したい『将トレ』は、そんな優秀な将棋AIを搭載しつつ、初心者のお子さんでも楽しく本格的に学べる、Nintendo Switch™️専用のゲームソフトなんです。

渡辺
簡単にゲームの概要を説明すると、まずは先ほどから名前が挙がっている藤井聡太さんが監修しているのが大きな特長です。
ゲームの中身にも初心者がハマれる仕掛けがたくさんあって…
まず「将棋プラネット」では、ストーリーを進めるごとに将棋の基礎知識や技術を学べます。

渡辺
駒の動かし方から丁寧に教えてくれるので、完全な初心者でもイチから勉強できるんですよ。

茂木さん
なるほど。子どもたちが好きなRPGとか、クエスト型のゲームを応用してるんですね。

渡辺
まさにそうです。そして、ストーリーがある程度進むと、「レーティング戦」で自分の実力に合ったAIと対決ができます。

茂木さん
僕、事前にちょっとやってみたんですけど、このレーティング戦はものすごくよくできてましたよ!
まさに、強さと手加減の味付け具合が絶妙で。いいところで少し甘い手を打ってくれたりするので、脳が喜びます(笑)。

渡辺
しかも、対戦して終わりじゃないんですよね。「棋譜検討」というモードがあって…

茂木さん
これもすごいんですよ!なんと藤井聡太さんが、自分の指し手を採点してくれるんです。
むしろ食い気味に解説してくれる先生。思ったよりやり込んでくれてた

渡辺
まさに! レーティング戦をもとに棋譜を分析してくれて、自分のミスや傾向に合わせた復習問題を自動で生成してくれる機能があって。
復習問題や問題集で勉強して、またレーティング戦に臨む…そうやって棋力を上げるための「PDCA」が回せるゲームなんです。

茂木さん
贅沢なつくりですよね〜。このゲーム、やり始めると止まらなくなるんですよ。
僕もレーティング戦の20級(一番最初の級)から始まって、すでに8連勝してます。

渡辺
茂木先生、せっかくなのでこの場で続きをプレイしていただけませんか?
今日は将トレのプロデューサーさんもいらしてるので、開発秘話なんかもお話いただけるかと。

茂木さん
やっちゃいましょう!AI野郎には負けませんよ!
大人気ない茂木先生
茂木先生いわく、将棋は“最強の脳トレスポーツ”。
将棋が盛り上がり、学ぶ環境も整った今こそ、親子揃っての将棋デビューに格好なタイミングと言えそうです。
そして、次回は茂木先生による「将トレ・実践編」。
熱狂あり、笑いあり、暴言あり(?)と、想像以上に盛り上がった茂木先生のゲーム実況。新R25始まって以来の異色コンテンツに仕上がってしまいました…!
茂木先生、最後は崩れ落ちてましたからね
次回の記事は6月18日(金)公開。乞うご期待!!
〈取材・編集=渡辺将基(@mw19830720)/文=石川みく(@newfang298)/撮影=中澤真央(@_maonakazawa_)〉

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