ビジネスパーソンインタビュー
尾原 和啓著『プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる』より
「プロセスエコノミー」は人の本能を刺激する。トレンド化する経済思考の正体とは
新R25編集部
市場には今、低価格で高品質なサービスがあふれています。
商品やサービスたちにはそれぞれの強みがあり、どれを選べばいいのか迷ってしまう…ということも多いはず。
そんな現状に対し、発売前にも関わらずAmazonの書籍カテゴリー売れ筋ランキングで総合1位になるほど話題の新著『プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる』では以下のように語られています。
プロセスエコノミー あなたの物語が価値になるちょっとやそっとのクオリティでは、差別化が難しくなっているのが現状だと考えています。
アウトプットの差がなくなったことで、価値を出すならプロセスという感じになっているのです。
そして、プロセスに価値が増えていった先にあるのが、プロセスエコノミーです。
Google、マッキンゼー、楽天執行役員などを経験する尾原和啓さんと同書の編集者である箕輪厚介さんは、なぜ今「プロセスエコノミー」が重要だと唱えるのか?
ここ1年で話題になってきた「プロセスエコノミー」の正体・今後の可能性について、同書より一部抜粋してお届けします。
プロセスエコノミーとは
プロセスエコノミーという聞きなじみのないカタカナ言葉を、どこかとっつきにくい、難しいと思ってしまう人もいるかもしれません。
しかし、この本を手に取り読んでくださっている皆さんも、きっと生活のどこかにプロセスエコノミーを取り入れているはずです。
プロセスエコノミー的な考え方はこれからを生きるすべての人に関係がある話で、特別な人にだけ必要な概念ではないのです。
はじめに、けんすうさんがプロセスエコノミーについて最初に書いたnoteを参考にしながら説明しましょう。
「プロセスエコノミー」をわかりやすく理解するために、まず逆の概念を考えてみましょう。
これを仮に「アウトプットエコノミー」とします。
アウトプットエコノミーは、「プロセスでは課金せずに、アウトプットで課金する」というものです。
たとえば、
プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる─音楽を作っているところではお金は稼がず、できた音楽を売る
─映画を作っているところではお金は稼がず、できた映画を売る
─料理を作っているところではお金は稼がず、できた料理を売る
などです。
売り方は、お客さんから直接課金するケースもあれば、テレビのように広告モデルにするなど両方がありますが、どちらもアウトプットで稼いでいるという点では同じです。
このように、アウトプットエコノミーとは、普通の人が考える、極めて一般的な商売の仕方です。
そのアウトプットエコノミーで何が起きているかというと、すべての水準が上がり続けているという状況です。
品質もいいし、値段も手頃だし、流通もしっかりしていてちゃんと届きます。
そして、水準が上がりきった結果、差が小さくなっているというのが今の状況です。
品質の高さによって、マーケティングや流通の差を逆転させる!みたいなことが起こりにくくなっています。
そんな状況なので、プロセスが相対的に重要視されるようになってきました。
なぜプロセスを見られるようになっているかというと、「アウトプットエコノミーが一定の規模まで到達したことで、もう差別化するポイントがプロセスにしかない」となったからだと考えています。
アウトプットの差がなくなったことで、価値を出すならプロセス、という感じになっているのです。
そして、プロセスに価値が増えていった先にあるのが、プロセスエコノミーです。
プロセスに価値があるなら、究極、プロセス自体でもう課金しちゃうほうがいいんじゃない?という動きも出始めています。
プロセスから知っているので、アウトプットされたコンテンツを一瞬で消費して忘れる、ということはなく、長期的に応援してくれる人になったりします。
ジャニーズ事務所の緻密なファン戦略
実はジャニーズ事務所もずっと、プロセスエコノミーの手法でアーティストを売り出してきました。
SMAPや嵐のメンバーが、いきなり華々しくデビューしたわけではありません。
入所したメンバーはまずジャニーズに所属し、すでにデビューしているグループのバックダンサーとして下積みを始めます。
グループとしてデビューすることを夢見てがんばるメンバーのプロセスを、無名の時代からファンは応援するのです。
そんな「推し」の心情をジャニーズ事務所はよくわかっています。
ジャニーズのメンバーの人気と知名度がだんだん高まり、「推し」の密度と濃度がある段階まで高まったとき、初めてグループとしてデビューするチャンスが与えられるのです。
ジャニーズ事務所がコンサートを開くと、ファンクラブの会員だけでドームもアリーナも満員になります。
ただでさえ熱いファンばかりが集っているところに、ジャニー喜多川さんがどんな仕掛けを施したのか。
なんとコンサートの席の近くに座っていた人が、帰りの電車で同じ路線になるようにチケット配分をコントロールしていたという逸話があります。
帰りの電車の中で「今日のコンサートは良かったなあ」と余韻に浸っていると、さっき近くで座っていた人がジャニーズのグッズをもっている。
「あなたもコンサートに行ったんだ。あの曲最高だったよね」と帰りの電車の中で盛り上がり、そこから友達になって、同じストーリーを共有しファンコミュニティが生まれます。
本当の話か確認できなかったのですが、ファンを大切にされるジャニーズらしい都市伝説で、今改めてヒントになると思います。
配信サービスとオンラインコミュニティが活発化する前から、アイドルのファンはカセットテープやCDで曲をかけてみんなと一緒に聴いたり、みんなで語り合ったりしていました。
そうやってだんだんと熱量を高めていって、チケットが取れたらコンサート会場で熱量を爆発させる。
ジャニーズは昔からプロセスエコノミーだったのです。
最終成果物である音楽が無料で聴けるようになった結果、音楽マーケットは縮小していると思われがちです。
しかし実際はそうではありません。
希少性が高いライブ、コンサート市場の売上は、この10年で倍になっています。
コンサート会場での物販市場も伸びていて、チケット収入と同じくらいタオルなどのグッズがよく売れるのです。
またSHOWROOMなどのライブ配信で練習風景や日常を配信し投げ銭を受け取るアーティストも増えています。
新型コロナのせいでエンタメ市場は大打撃を受けていますが、コロナが収束すれば、生の音楽に飢えている人々が再びコンサート会場に押し寄せるでしょう。
YouTubeなどでアウトプットが無料になってもアーティストの創作活動を応援するというプロセスがファンの熱量を高め、プロセス自体で収益を生むことも可能になっているのです。
「人のために」という欲望
プロセスエコノミーを回すエンジンとなるものは「利他の心」です。
自分の私利私欲のためでは共感は生まれません。
誰かを喜ばせるビジョンのもとにみんなで助け合い、協力し合って進んでいくのです。
人間の脳みそには、あらかじめ「誰かのために行動したい」という利他の精神と行動様式が埋めこまれています。
「自分さえ良ければいい」という利己主義ではなく、「自分のことは後回しにしてでも人を幸せにしたい」と行動する。
その瞬間、オキシトシンというホルモンが脳内で分泌されるのです。
オキシトシンは「子宮収縮ホルモン」とも呼ばれます。
人間は生まれた直後、自分だけの力では生きられません。
お母さんのおっぱいを吸わないと、赤ちゃんはたちまち死んでしまいます。
「なんてかわいい子なのだ」「この子を元気に育てたい」とお母さんが思った瞬間、オキシトシンが脳内で分泌されて母乳がどんどん出るよう脳みそが促します。
さらに興味深いことに、誰かが利他の行動をしている様子を眺めているときにも、その人の脳みその中でオキシトシンが分泌されるのです。
つまり利他の行動は、人々の間にさらなる利他の連鎖を生んでいきます。
マーク・ザッカーバーグ(Facebook創業者)が運転手つきの社長車を使わず、自転車に乗って会社に通勤しているのは有名な話です。
彼は自身がもつ何兆円もの貯金を、将来的にすべて放棄することを宣言しました。
事実、彼は100億円規模の巨額の寄付を何度も繰り返しています。
巨万の富を得たザッカーバーグは、利他の人生を生きることに決めたのです。
物欲や権力欲が満たされ、所属欲求や承認欲求が満たされたとしても、人は実は満足できません。
最終的には「人のために何かをしたい」という“究極の欲望”にたどり着きます。
人々の「利他の心」をエンジンにするプロセスエコノミーは人間の本質的な欲求とも合致している仕組みなのです。
脳科学者・医学博士の岩崎一郎さんは最新の研究によると脳の「島皮質」という部位を鍛え、脳全体をバランスよく協調的に働かせることが、その人の人生を豊かに幸せにするとわかってきたと述べています。
その「島皮質」を鍛えるための具体的な方法の1つは利他の心をもつことなのです。
また、アメリカ・カリフォルニア大学アルメンタ博士らは、感謝には2種類あるとしています。
プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる恩恵的感謝(Doingの感謝):誰かに何かをしてもらったり、何かをもらったりするなど所為(Doing)によってする感謝。
普遍的感謝(Beingの感謝):感謝の気持ちをいつも感じている心のあり方(Being)。
あらゆるものに感謝の気持ちを感じている状態。
前者は自分本位で物事を捉えるので、視野が狭くなり、協力者も増えにくい傾向にあります。
後者は周囲とのつながりを常に意識し、広い視野で物事を捉えているので、結果的に多くの人の共感を呼び、協力者を得やすい。
つまり「利他の心」に基づくプロセスエコノミーは脳科学的な観点から見ても、人が人を呼び込む仕組みになっているのです。
ビジネスのみならず生き方でも、役立つ新常識
プロセスエコノミー あなたの物語が価値になるプロセスエコノミーは、そんな私たちの新しい生き方を実現するため、この大激動時代を生きる一人一人の武器にもなっていきます。
上記にあるように、同書は今の時代で残っていくために必要な新常識がわかりやすく紹介されています。
同書を手にとって、自分のビジネスや生き方を見つめなおすのはいかがでしょうか。
きっと、あなたが普通だと思っている好きなものやこだわりも“プロセス”となり、その瞬間瞬間でベストな状態に導けるようになるはずです。
〈写真撮影=千川修〉
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