守屋実著『起業は意志が10割』より
起業家の必須科目は「道徳・国語・算数」。新規事業の立ち上げに求められる教養とは
新R25編集部
2020年、新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって、日常が一変しました。
先行きが不透明になったことで新たなチャレンジに慎重になる人もいるなか、これまでラクスル・ケアプロなど50以上の新規事業を手掛けてきた新規事業家・守屋実さんは、「既成の価値観が覆る今こそ、“新たな事業の力”が必要だ」と言います。
守屋さんが先が見えにくい現代において「商機あふれる時代」と言う理由とは、一体なんなのでしょうか...?
著書『起業は意志が10割』より、大きな変革が求められる時代の「起業のポイント」を抜粋してお届けします。
新規事業は「道徳・国語・算数」が一気通貫してこそ成功する
起業で大切な教科は、道徳、国語、算数であると僕は考えている。
そして、その大切さの大きさ、順番も、道徳 国語 算数、だと思っている。
と、これだけ伝えても、「一体、何のことだろう?」とキョトンとされそうだ。
もちろん、小学校の頃に習った内容とは、少々違う。
僕の定義は、以下の通りだ。
起業は意志が10割道徳は、心根の話。人としてのそもそも論
国語は、意思疎通。仲間としてのそもそも論
算数は、数字感覚。思考と行動と数字の一気通貫
何を思って行動し(道徳)、どう表明し(国語)、それがどのような数字(算数)になって現れてくるかという一連の流れは、起業をするうえで欠かせない。
しかし、残念ながら、僕が見る限り、思考と行動と数字が一致している起業家は多くない。
そして僕自身も簡単にはいかず苦心している点でもある。
だからこそ、僕は、そのような起業家やこれから事業をスタートさせたいと考えている方に、起業における道徳、国語、算数の重要性を伝えていきたい。
詳しく説明しよう。
道徳は「意志・信念・ミッション」
道徳は、あなたの意志や信念、ミッションなどを指す。
事業に込めた想いであり、この事業で社会の課題をどう解決したいと思っているのか。
他人事ではなく、自分事にして、あなた自身が強く成し遂げたいと思っていることが大事だ。
その肚落ち、ブレない心が必須である。
それがなければ、起業は始まらない。
起業において、テクニックから入りスマートに儲けようと考えていたり、その場の損得だけで自分が戦うマーケットを選ぼうとしたりする人がいる。
その時点で「負け」がほとんど確定している。
「今どの領域がキテますか?」といった質問をもらうことがあるが、そういう方々に僕が返すのは、「あなたはそもそも何がしたいのですか?」ということだ。
起業は予想できないことやうまくいかないことの連続だ。
それなのに「これだ!」という信念も持てていない領域に突っ込んでいっても、絶対にうまくはいかない。
「あれもよさそう」「これも儲かりそう」とフラフラした気持ちでいるようでは、苦境を突破できず、人もついてこない。
つまり、自分が何を主戦場にするのか、「これを貫き通す」という経営者としての道徳がなければ起業で成功することは難しいのだ。
国語は「コミュニケーション能力・言語力」
次に、国語だ。
国語は、自分の意志を伝えるコミュニケーション能力や事業の詳細を説明する言語力のことである。
自分の頭の中を他者にアウトプットする力だともいえる。
なぜこの力が必要なのか。
それは、自分だけでできることは多くないからだ。
自らの志を仲間たちや取引先に伝えて、賛同を得ることで、事業を拡大していくことができる。
消費者にも同様だ。
メッセージをきちんと伝えられなければ、自社の商品・サービスを選んでもらうことはできない。
当然だが、思っているだけでは他者には伝わらない。
自分が何を目指し、どんな課題を解決したいのか、それをきちんと語れたり発信できたりする国語力が欠かせない。
しかも、浸透するまで何度も何度も伝える根気を持ってである。
組織の問題は、スタートアップであっても大企業であっても、いつの時代もどの会社も、付き物のようになくなることのないノックアウトポイントだ。
国語を疎かにして、組織が健やかであるはずがない。
算数は「おカネ・時間」
そして、最後に算数。
これは、起業家が持っているべき数字感覚のことだ。
代表的に大事な数字は、「おカネ」という数字だ。
当たり前だが、事業である限り、儲かるように仕組み化しなければ続かない。
企業に雇われている側の時には気づきにくいが、私たちは会社に存在しているだけでカネを食っている。
もっともわかりやすいのは給料やオフィスの家賃だろう。
他にも、電気をつければ電気代がかかり、トイレに入れば水道代などがかかる。
自分で事業を始めてみると、おカネの問題は避けて通れないことだと思い知る。
おカネという数字に対する感度が鈍いと、「儲かる」と思っていた事業が最終的には赤字になったり、「これはトントンかな」と思っていたものが大赤字になったりする。
時間という数字も、とっても大事だ。
スピードという言葉に置き換えてもいいかもしれない。
成果も成長も儲けもない非生産的な時間の過ごし方に強烈なストレスを感じることは、当たり前で健全な感覚だ。
その感覚を大事にしてほしい。
ビフォー・コロナであれば間時間や細切れの時間、ウィズ・コロナであれば「ながら時間」をどうやって活かすかを考える。
また、自分ですべきことなのか、人にお願いしたほうがよいことなのかを見極めるべきだ。
自分の時間価値を最大化する感覚が身についていないと、あらゆるものが遅くなってしまう。
スピードは価値である。
時間という数字に対する感度が鈍いことは、事業をおこなううえで致命的になることを覚えておいてほしい。
コロナ禍で新たにアップデートされた「新道徳・新国語・新算数」とは?
新型コロナウイルス感染症の蔓延は、3教科にそれぞれどんな影響を与えたのだろうか。
端的にいうと、道徳も国語も算数もすべて転換を求められた。
強制的に進化した社会では、道徳と国語と算数のアップデートも必要だ。
そこで、新道徳、新国語、新算数という新たに求められるようになった新教科の特徴について伝えていこう。
新道徳は「仕事のプロ」
ウィズ・コロナ時代となり、既存の道徳から新道徳への最大の変化点は、「会社のプロ」から「仕事のプロ」への進化だ。
会社にいると、ともすれば課長よりも部長のほうが偉いというヒエラルキーが、そのまま「仕事の充実感」となってしまう。
しかし、「仕事のプロ」の場合はそうではない。
「社会に対して自分が何をなし得たか」が充実感となる。
新国語は「リモートコミュニケーション」
続いて、新国語への進化をお伝えしよう。
日本の企業の国語は、これまで定まりきった礼儀を重んじ、行間を読むことが当たり前の「ローカルコミュニケーション」が前提だった。
ウィズ・コロナの時代となり、「リモートコミュニケーション」が主流となった。
直接会うことのない相手に信じてもらえるか、あるいは信じることができるか。
リモートトラストを築いてコミュニケーションできるか否かは事業を左右する大きな問題となる。
新算数は「動く力」
最後に、新算数では何が変わるのか。
これまでの算数は、規模が正義で、所有者が強かった。
社会の先行きが不透明となった今は、変化に対応する機敏さがある者が勝ち抜ける。
持っていなくても、あらゆる領域にまで広がったシェアリングを活用すれば、仮想現実的にすべてを所有することができる。
「持つ者」が強いのではなく、「動く者」が勝ち抜ける世の中なのである。
強者だと思っていたのに、ある時、突然転落する。
それほどまでに先の見えない時代になったからこそ、動く力が、いままさに求められているのである。
『起業は意志が10割』は、起業のプロによる新規事業のバイブル
「信念を持って課題解決に挑む人が混沌の中で未来を拓く」
そんな力強いメッセージから始まる守屋さんの著書『起業は意志が10割』では、起業のプロだからこそわかる、実践的な「起業・新規事業の成功法」が紹介されています。
これから起業を考えている方はもちろん、企業で新規事業を興そうとしている方にとってのバイブルになる一冊です。
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