ビジネスパーソンインタビュー
佐藤純著『ビジネスパーソンのための低気圧不調に打ち勝つ12の習慣』より
梅雨〜夏の天気痛は体内の水分量に注意。医師が教える季節ごとの気象病対策法とは
新R25編集部
「頭が痛くなる」「憂うつになる」「耳鳴りがする」「めまいがする」…
雨の日になると決まって、このような辛い症状に悩まされる人も多いのではないでしょうか?
天気痛ドクター・医学博士の佐藤純さんは、「国民の4人に1人は天気痛の可能性があるのではないかと感じていますが、天気痛は適切な予防と対処法によって、ずいぶん軽減されることもわかってきました」と言います。
佐藤さんの著書『ビジネスパーソンのための低気圧不調に打ち勝つ12の習慣』から、天気痛が起こる原因や、どのように体調管理するのがベストなのかを抜粋してお届けします。
日本人の体は「温度変化」に対応する機能を備えていない
日本は昔から、1年の中で季節の移り変わりがあり、気圧や気温の変化もゆっくりとしていました。
しかし、近年は、異常気象で春が短かくなったり、夏が終わったらすぐ冬になったり、日本の気候自体が亜熱帯気候のようになってきています。
以前の日本の気候を考えると、そもそも日本人の体は、急に温度が上がったり、急に温度が下がったりするということに、対応する機能を備えていないのです。
それがひずみとなって表れているのが、天気痛や気象病だと私は考えています。
私の外来に来る患者さんの中で、気圧の変化だけが苦手という人は2割もいません。
ほとんどが、気圧と同じく温度変化が苦手なのです。
温度変化が苦手な人にとって、「寒暖差」は大敵です。
寒暖差といっても、春のように寒いほうから暖かいほうに変わる寒暖差と、秋口のように暖かいほうから寒いほうへと変わる寒暖差の2通りがあり、症状が出るのは人それぞれです。
【冬〜春の天気痛対策】発汗の働きを目覚めさせよう
冬は、寒さから体を守らないといけないために、基本的には基礎代謝が高く交感神経が優位になっている状態です。
血管を収縮させて、体の中に熱を溜めこんで、体温が外に逃げないようにしています。
しかし、暖かくなってくると、交感神経の興奮が下がってきて、昼間でも副交感神経が少し目を覚ましてきます。
春になると体がだるくなったり、眠く感じたりするのは、そのせいです。
健康な人でも、昼寝が気持ちよかったり、なんとなくやる気が出なかったりします。
しかし片頭痛の人は、交感神経が優位な状態に慣れてしまって、気温が上がっても血管が拡張せずに熱を放出することができず、ちょっとしたことで頭が痛くなります。
気温の上昇に対応するためには、汗をかき、体の熱をうまく放出できるようにすることが大切です。
放熱ができないと、熱を体に溜めこみ、熱中症のような症状が出ることもあります。
冬から春にかけては、暑さに体を慣らす「暑熱順化(しょねつじゅんか)」を目指します。
少し熱めの温度の湯船に浸かったり、入浴時間を少し長くして、汗を軽くかけるような体に戻していくのです。
春が来るのが不安という方は、冬の間にとにかく準備をしておくことです。
私がよく言っているのは、「12〜2月の一番寒い時期に、ぬくぬくしないように」ということです。
夜、寝るときだけは温かくしてもいいですが、日中は怖がらずに外に出て体を動かすようにしましょう。
自律神経を鍛えるには、ずっとエアコンの効いた室内にいるのではなく、暑いときには暑く、寒いときには寒くというように、ある程度ストレスをかけることが大切です。
そうすることで、自律神経が鍛えられ、体が熱をつくれるようになり、そして熱が逃げないようになって、冬をうまく乗り切ることができます。
そして、この自律神経を鍛えることが、春の不調の対策にもつながります。
【梅雨〜夏の天気痛対策】とにかく体の除湿をしよう
5月の下旬ぐらいから、梅雨が始まります。
冬の間に自律神経を鍛え、春に暑熱順化ができた人はそれほど問題がありませんが、汗をかく機能がうまく働いていない人は、梅雨の時期に体調は最悪になってしまいます。
なぜなら6月になって、完全に天気が梅雨モードに入ると、湿度が高くなり、体が汗をかけなくなるからです。
体内に水分を溜めこんでしまうので、当然、内耳もむくんでリンパ液の流れが滞り、頭痛やめまいの原因となります。
そこで、梅雨時期は、体の除湿をするのが第一です。
湿気を逃すような素材でできた肌着や服を着るとよいでしょう。
また、体の湿気をとるような漢方薬もおすすめです。
梅雨が明け、本格的な夏の到来となる7〜8月は、体を冷やすような食べ物(キュウリやスイカなど、水分を多く含んだ野菜や果物)を食べて冷却をしたり、室内と室外の気温差に気を付けたり(エアコンや服で体温調節をしてから、外に出るなど)と、対策をしておけば次第に体は楽になっていくでしょう。
夏は、暑熱にさえうまく体が慣れていると、意外に体調がよい状態で過ごせる人が多いようです。
湿気を逃す「麻(リネン)素材の服」がおすすめ
夏や梅雨時は、湿気の多い時期ですので、湿気を逃がす通気性のよい素材の洋服を着るようにしましょう。
気温が高くなると、私たちの体は、汗をかいて体を冷やそうとします。
その汗は、水蒸気となって蒸発しますが、通気性の悪い服を着ると、その熱や汗が服の中にこもってしまいます。
昔から、通気性や吸水性、速乾性に優れた素材として知られているのは、麻(リネン)です。
麻には熱と湿気を取り除く性質があり、触るとひんやりします。
化学繊維でも、通気性や吸水性に優れた素材も多く開発されていますから、そういった素材の機能性インナーもおすすめです。
また寝ているときの格好も、夏でも半袖半ズボンにせずに、長袖長ズボンにする。
さらに速乾性があり、熱がこもりにくい生地のパジャマを着るようにしましょう。
もちろん、人によっては、長ズボンではとても眠れないという人もいることでしょう。
そういう方は、その人なりの体温調節パターンがあるので無理強いはしませんが、「半袖半ズボンなのに暑い」という人や、「パンツ1丁でも暑くて寝られない」という人は、ぜひ、長袖長ズボンを試してみてください。
【秋と冬の天気痛対策】体の熱を逃さないようにしよう
秋は、台風の季節です。
気圧の変化に振り回されてしまいがちですが、そういったピンポイントな天候の変化には、即時的な効果のあるもので対応することが重要です。
タイミングを見計らいながら薬を飲んだり、「くるくる耳マッサージ」をしたり、天気が変化したときに内耳に入ってくる気圧の変化を緩やかにできる天気痛用の耳栓をするなど、ピンポイントの攻撃から逃げる対策をしましょう。
ビジネスパーソンのための低気圧不調に打ち勝つ12の習慣
冬に備えて、まずは秋口から保温を意識するようにしましょう。
特に寝るときに首を冷やさないようにすることが大切です。
首とは、「(胸の)首」「手首」「足首」のことです。
体を温めるもの(ネギ、大根、生姜、ニンニクなど)を積極的に摂るようにしましょう。
冬本番、天気が比較的安定しはじめた頃は、頭痛や腰痛など、持病の改善に取り掛かるベストタイミングです。
天気痛を治すには、薬やマッサージといった即効性のある対処法も有効ですが、最終的にはもともとの持病を治さなくてはいけません。
もともとの病気を治していくタイミングは自分でつくっていかないといけないのです。
根底にある慢性痛を改善させるタイミングを逸したまま2〜3カ月過ごしてしまうと、年中天気に左右されっぱなしということになります。
調子が悪くなることは避けられないとしても、「調子の悪い期間をできるだけ短くする」ことを意識してみてください。
「着圧ソックス」は、夜ではなく昼に活用すべし
人間の体の中で、一番冷えやすいのは下半身です。
その理由は、足の裏を通じて「冷え」が上がってくるからです。
ですから、足の温度を下げないようにすることが大切です。
心臓から押し出された血液は、心臓から100ぐらいの圧力で出たとしても、重力の関係もあり、足先にいくにつれて圧力は下がっていきます。
そして、足先に届いた血液の血圧は、ほとんどゼロになっています。
では、そこから、どうやって心臓まで引き上げるのでしょうか?
それは足の筋肉を使って、ポンプのように血液を上に持ち上げていくのです。
「ふくらはぎは第2の心臓」と言われるのは、それが所以なのです。
おすすめなのが、筋肉の代わりの働きをする着圧ソックスです。
もちろん、一番重要なのはウオーキングや筋トレなどで、足をはじめ体に筋肉をつけることですが、着圧ソックスをはけば、足に水分を溜めにくくすることができます。
天気痛予防や天気痛の症状を改善するには、昼間に着圧ソックスをはいて、家に戻ったら脱ぐという方法がおすすめです。
日中、着圧ソックスをはくことで、血液・リンパ液といった水分を足に溜まりにくくし、余計な水分を、尿として排出することができます。
夜に着圧ソックスをはいたまま寝ると、頭のほうに水が行くように、着圧ソックスで余計に圧をかけていることになりますから、さらに体調が崩れる原因となります。
また、足のむくみを解消するために、夜、足を上げて寝る人もいます。
しかし、これも頭が痛くなる原因になりますので、できるだけ避けたほうがいいでしょう。
そして最終的には、筋力をつけ、筋肉が自前の着圧ソックスになることを目指していきましょう。
気圧による体調不良をなんとかしたい方の必読書
『ビジネスパーソンのための低気圧不調に打ち勝つ12の習慣』では、痛みの傾向を知る方法から痛みの元となる慢性痛への対応まで、12のカテゴリに分けて紹介されています。
気圧による体調不良が辛い人や、どんな天気でもいつもの調子で仕事をしたい人は、ぜひ読んでみてください!
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