

カル・ニューポート著『デジタル・ミニマリスト スマホに依存しない生き方』より
「通知を切る」「寝る前にスマホを見ない」では治らない。スマホ依存症から開放される3ステップ
新R25編集部
今や生活に必要不可欠なスマートフォン。
しかし一方で、「通知が気になる」「SNSを見ていると、気がついたら時間が経っていた」など、どこか不自由さを感じている人は多くいるのではないでしょうか。
そんな現代の世相を科学的に分析し、現代人をデジタルのしがらみから解放しようとしているのが、ジョージタウン大学准教授でコンピュータ科学者のカル・ニューポート氏。
著書『デジタル・ミニマリスト スマホに依存しない生き方』(ハヤカワNF文庫)の中で、次のように語っています。
「現代のデジタル・ライフについて議論するうえで繰り返し耳にしたキーワードは“疲労感”だった。(中略)デジタル・ミニマリストは知っている。現代のハイテクな世界で生き延びていくために必要なのは、テクノロジーを使う時間を大幅に減らすことだ」
技術が急速に進化するデジタル過多な現代で、私たちは新たなテクノロジーとどのように付き合っていけばよいのでしょうか。
同書から一部を抜粋してお届けします。

デジタルとの付き合い方を変えるなら一気に実践せよ
デジタル・ミニマリズムには試す価値がありそうだと納得してもらえたと想定し、次のステップとして、このライフスタイルに移行するための最善のプランを示そう。
私の経験からいうと、習慣をちまちまと変えていく方法は成功率が低い。
注意経済(アテンション・エコノミー)が提供する製品は人の注意を引きつけることに特化しており、またその便利さも摩擦抵抗となって、それから逃れようとするあなたの力を弱めるからだ。
“デジタル安息日”を設ける、夜はスマートフォンをベッドに持ちこまない、通知を切ってマインドフルに過ごす…といった控えめなアプローチに惹かれるわけは理解できる。
なんといっても、自分のデジタル・ライフについて思い切った決断をせずにすむのだから。
何かをきっぱりとやめたり、スマートフォンがもたらすメリットの一部をあきらめたりする必要はないし、友達を怒らせる心配も、重大な不便をこうむるリスクもない。
しかし、このタイプのちょっとした軌道修正を試したことがある人ならおそらくもう気づいているように、意思の力や小さな工夫、漠然とした決めごとだけでは、ユーザーの意識に横暴に侵入してくる新しいテクノロジーを退けるのには力不足だ。
気づくとあなたは、スタート地点に逆戻りしているだろう。
だから、一気に移行してしまうことを勧めたい。
充分な決意をもって、短期間のうちにやり遂げてしまう方法だ。
このほうが成果は長続きする。
これから提案する短期決戦のプロセスを、私は“デジタル片づけ”と呼んでいる。
その手順を次に挙げよう。

デジタル片づけのプロセス
このライフスタイル実験は、家の大掃除のようなもの。
長年ためこんできた注意をそらすツールや習慣性のある行為をまとめて処分し、その代わりに、より意識的な行為をミニマリストらしく最適化した状態で呼び戻し、それまで生活から締め出されがちだった大事なことを中心に据え直す。
ステップ1:テクノロジー利用のルールを決める
30日のリセット期間中は、“必須ではない”テクノロジーの利用を休止する。
したがって、リセットの最初のステップは、現在利用中のどのテクノロジーを“必須ではない”カテゴリーに分類すべきかを判断することだ。
このステップの重要なポイントをまとめると、以下のようになる。
デジタル・ミニマリスト スマホに依存しない生き方・デジタル片づけの主な対象は新しいテクノロジーである。
コンピューターまたは携帯電話のスクリーンを介して利用するアプリ、ウェブサイト、ツールなどがこれに含まれる。
ゲームや動画配信サービスもおそらくこのカテゴリーに加えるべきである。
・“必須ではない”に分類したテクノロジーの利用を30日間、休止する。
“必須ではない”テクノロジーとは、それがなくても仕事やプライベートな生活に悪影響が及んだり重大な問題が発生したりしないものを指す。
必須ではないテクノロジーをすべて全面禁止してもいいし、別に運用規定を定め、いつ、どのような場合なら利用を許可するか、具体的に決めておくのでもいい。
・禁止するテクノロジーと関連する運用規定のリストが完成したら紙に書き出し、毎日かならず目にする場所に貼っておく。
リセット期間中にやっていいこと、いけないことを明確に線引きしておくことが成功のカギとなる。
ステップ2:30日間、ルールに従って休止する
テクノロジー利用のルールが完成したら、30日間、そのルールに従って過ごすというデジタル片づけの次のステップに進もう。
重要なポイントをまとめると、以下のようになる。
デジタル・ミニマリスト スマホに依存しない生き方・リセット開始から一、二週間は、おそらく困難を感じることになる。
禁じられたテクノロジーをチェックしたい衝動と闘わなくてはならない。
しかしその感覚はまもなく消え、代わりに訪れる“毒が抜けた”という感覚は、リセット完了時に明快な判断を下す役に立つだろう。
・デジタル片づけの目的は、うっとうしいテクノロジーから一時的に離れることにとどまらない。
このひと月のリセット期間中に、必須ではないテクノロジーを利用しなくなって空いた時間を埋める、もっと価値の高い活動を積極的に探さなくてはならない。
リセットの30日は、精力的に試行錯誤を繰り返す期間となる。
・リセット期間の完了までに、真の充実感を生むような活動を再発見し、より意義深い目標の達成を後押しするためだけにテクノロジーを活用するような生活を作り上げていく自信をその活動から得ていることが望ましい。
ステップ3:テクノロジーを再導入する
30日のリセット期間を終えたら、いよいよ最後のステップだ。
必須ではないテクノロジーを生活に再導入する。
このステップはおそらく、あなたが想像している以上の難関だ。
以下の条件を満たしたテクノロジーだけをリセット期間明けに再導入する。
デジタル・ミニマリスト スマホに依存しない生き方<ミニマリストのテクノロジー選考基準>
(1)大事なことがらを後押しする(何らかのメリットがある程度では不充分)。
(2)大事なことがらを支援する最善の方法である(最善ではないなら、代わりに別の方法を考える)。
(3)いつ、どのようにそのテクノロジーを利用するかを具体的に定めた標準運用規定に沿った形で生活に貢献できる。
このステップの重要なポイントをまとめると、以下のようになる。
デジタル・ミニマリスト スマホに依存しない生き方・30日間、必須ではないテクノロジーを休止したことで、あなたのデジタル・ライフはリセットされた。
この白紙の状態から始めて、意識的かつミニマリスト的なやり方でデジタル・ライフを再構築していく。
そのために、候補のテクノロジー一つひとつを三段階の選考基準に照らし合わせる。
・この選考プロセスにより、新しいテクノロジーが大事な目標をくじくのではなく、後押しするようなデジタル・ライフが築かれる。
意識的な決断を心がけて慎重に再導入を行なえば、あなたもデジタル・ミニマリストの仲間入りだ。
テクノロジーの奴隷になっていないか?
スマホが必要不可欠と言われるようになったいま、「携帯依存症」という言葉は、もはや死語になったかと思われましたが、「必要不可欠」という言葉の裏で「依存」に無自覚になっている状況が往々にしてあるのかもしれません。
同書を読むと、私たちがどれだけテクノロジーに振り回されているか、深いレイヤーで気づくことができます。
著者であるカル・ニューポート氏は強く訴えます。
「デジタル・ミニマリズムのような哲学が、いまこそ必要なのだ」
本当に大切な時間の使い方とは何か?私たちそれぞれにとっての答えを、自分自身に問い直すときなのかもしれません。
〈画像提供=Penny Gray Photography〉

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