

「想定をつくりすぎない」ハイレベルな仕事術でした
「だんだん準備を減らすんです」こじるりに“安定感ある仕事術”をきいたら、大変な展開になった
新R25編集部
「この人は仕事に安定感があって頼みやすいな」
一緒に仕事をしていて、そう思う方が何人かいます。ムラがあって安定していない自分も、ぜひ学びたい…。
そこで、今回お話を伺ったのは、“こじるり”こと小島瑠璃子さん。
スポーツキャスター、バラエティ番組のMCやゲストなど、多くの番組で安定感抜群のクオリティで場を盛り上げる様子は「こじるり無双」と言われるほど。
そんな彼女に、「安定感」の秘密を聞いてみました。
〈聞き手=いしかわゆき〉
【小島瑠璃子(こじま・るりこ)】1993年生まれ、千葉県出身。2009年、「第34回ホリプロタレントスカウトキャラバン」でグランプリ受賞。2012年、TBSのスポーツ番組『S☆1』に「初代S☆1ガール」として進行キャスターに大抜擢。以降、グラビアやスポーツ番組のMC、バラエティ番組などで幅広く活躍中
安定感のためには、経験を重ねるごとに「意識的に準備をしなくする」こと

いしかわ
今回はこじるりさんに「安定感」をテーマにお話を聞きたいんですけど…

小島さん
安定感かぁ…ありますかね? 安定感。
こじるりになかったら我々は何なんだ

いしかわ
こじるりさんといえば、2017年の『池上彰の総選挙ライブ』で、レポートが政治記者に引けを取らないと話題になったことが印象的です。
やっぱり、お仕事の準備は入念にされていくんですか?

小島さん
逆かなあ…
たしかに昔はたくさん準備をしてたんですけど、だんだん意識的に、準備を減らしていきました。

いしかわ
準備を減らす!? 「安定感」がなくなっちゃうのでは…?

小島さん
安定感って、もちろん「準備力」も必要だとは思うんですけど、それよりも「瞬発力」がないといけないと思うようになったんですよね。

小島さん
なんかねぇ…準備しすぎると目標が下がって、結果的にいい仕事にならない気がするんですよね。
「準備してきたものを全部言おうスタンプラリー」をコンプリートするのが目標になっちゃうっていうか。

いしかわ
ほう…?

小島さん
番組でも「箇条書きにしたものを読んでますね!」っていう感じになる。感情がなくなるんですよ!
準備したことは言えるかもしれないけど、本当に大事なのって、その場の流れとか、文脈に合わせて、ベストな答えをつくっていくことじゃないですか。
準備するってことは、自分のなかに「想定をつくる」ってことなんですよ。瞬発力より、「クリアしないと、クリアしないと!」が優先になってしまいがち。

いしかわ
なるほど…こじるりさんの「安定感」は、“台本通り”じゃなくて、期待を必ず超えてくれるっていう、高いレベルの安定感…!
この人やっぱりすごかった

小島さん
だから、「最低限の準備」がどこまでかを考えて、そこまでやったら未来の自分に任せます。

いしかわ
じゃあ、選挙特番のときも準備なしで…!?

小島さん
そうですね。あれは開票所に行って、当落情報をレポートする仕事だったので、現場に行かないとわからない情報がたくさんあったんです。
事前にできることは政党や候補者のことをちょっと調べるぐらい。
現場に到着してから放送するまでの間に、いろんな情報を聞いてメモをアップデートして、あとはアドリブで。
びっしりと書かれた取材メモは大きく取り上げられました

小島さん
スポーツ番組(『S☆1』)をやっているときにも感じたんですけど、インタビューするとき、用意した質問を読んでるだけだとうまくいかないんですよ。
むしろ、取材対象の選手が話したそうなことや言ってくれそうなことを、話しながら探していくほうが、いいインタビューになるって気付いたんです。

いしかわ
そういう「瞬発力」が安定感につながってるんですね…

小島さん
そうですね。
ただ、最低限の準備はやっぱり大事だとも思います。相手に関する知識をおさえておくのは、リスペクトを伝える最低限の準備なので、当然する。
準備した武器だけに頼らない。“いかにその武器を見せずに戦えるか”みたいなイメージですね。
「桃太郎で言うなら、“ほれ、きびだんごだよ~”と見せびらかさない感じね」

いしかわ
そういう瞬発力は、昔から身についていたんですか?

小島さん
いや…下積みのおかげかな。
私、ホリプロのオーディション(2009年「タレントスカウトキャラバン」)に合格してから、3年間泣かず飛ばずだったんですよ。
正直、もっと売れると思ってたんだけどな~(笑)。
「人生設計が狂いましたね」

小島さん
仕事も月に1、2個ぐらいで、ひっそり原稿を読む練習をしてました。
でもそのおかげで、「どんなに長文でも噛まずに大勢の前で読める」という技が身についた。だから、オーディションでも原稿の文章をスラスラ読めるようになってたんです。
『S☆1』のオーディションはちょうどそのタイミングで…

いしかわ
そこから「若いのにすごい進行上手な子がいる」と名前が売れていったんですね…
下積み時代のトレーニングが、小島さんの安定感の源でした
仕事のモチベーションは「爪痕残そう」じゃない。“現場の醍醐味”が一番

いしかわ
ちなみに、ご自身ではまわりの人から「安定感がある」と評価されてる理由は、どこにあると思いますか?

小島さん
「自分がこうしたい!」というよりも、「こうしてほしいのかな?」とニーズに応えたい気持ちが強いのはあるかもしれませんね…
自分が「面白かったよ!」と言われるよりも、番組自体が面白かったと言われるのが一番うれしい。
自分は一言も喋らなくても、それによって番組が面白くなるならいい。自分のことは、番組を構成する要素のひとつとしか思っていないから、“爪痕を残そう”とか思わないんですよ。

いしかわ
もはやディレクター目線じゃないですか。私だったら、「○○取材したんだよ! ドヤ!」と“自分の仕事”アピールしちゃうんですけど…
じゃあこじるりさんのお仕事のモチベーションはどこにあるんですかね?

小島さん
「現場が楽しい」のがすべてかな…

小島さん
バラエティ番組で、カメラマンのアシスタントさんとかまで大笑いしちゃってたりとか、収録が終わったあとに芸人さんたちが「いやー、やったな!」ってニコニコしてたりとか…
あの「現場感」ってあるじゃないですか。あれが仕事の醍醐味ですよね。
あの気持ちよさがあれば、自分がオンエアされてなくても全然いいです!!(笑)

いしかわ
もしかして「結果」ってあまり気にしていないんですか…?

小島さん
あんまりこだわってないかも…
別に自分が主役じゃなくていい。パーツでいいんですよパーツで!

いしかわ
自分は結果にこだわりがちなので、すごくハッとさせられました…

小島さん
私も、番組がオンエアされたあとツイッターでエゴサして、「もっとこうすればよかった…!」って思っちゃうときもあるんですけど…
でも結果だけを追い求めすぎると、後悔でゾンビみたいになっちゃいますから(笑)。
目の前の現場を、いかに楽しくするかを考える。そうすれば結果もついてくるんじゃないかな。
インタビュアーが“取材での目標”を伝えたら、大変な展開になった

いしかわ
さっきトレーニングっていう話が出ましたが、こじるりさんって番組を拝見していると、ワイプでも目を見開いたり手を叩いたり、大きなリアクションをしてるじゃないですか。

小島さん
それも下積み時代のおかげっていうか…
事務所のバラエティ用のレッスンで「手は高い位置で叩きましょう!」みたいなのがあったんですけど、それがクセになっちゃったんですよ。

いしかわ
私、このインタビューの目標があって。
「?」

いしかわ
こじるりさんについて調べてたら、「リアクションが大きすぎ」みたいな…辛らつな記事がたくさん出てきたんですよ。

小島さん
あー、たしかに…(笑)。

いしかわ
でも、トレーニングで身につけたことを実践して、ちゃんと現場のスタッフに評価されてるわけですよね。
こじるりさんのそういう魅力を、少しでも伝えたいって思ったんです。
「えー、ありがとうございます!!」

いしかわ
あ…

小島さん
すみません(笑)。
すごい…うれしくて。
急遽出動するメイクさんと、慌てふためく編集部

小島さん
私、勢いだけで喋ってしまって、いろんなニュアンスをうまく伝えられてないことが多くて…一昨年とか去年ぐらいからとくにその辺がうまくいかなくて、なかなかしんどいなって思ってたので…
そうやって見てくれてる人がいるっていうのはすごくうれしいです。

いしかわ
今回はじめてお会いして、すごく自然体で、こんなに明け透けに話してくれるんだって感動しました…

小島さん
でも、すごくありがたいって思うのは、一緒に仕事してくれた人は、共演者の方ともスタッフさんともすっごく仲良くなれることが多くて。
やっぱり、対面して一緒に仕事をしてくれる方に評価されていればいいのかなって…
そのまま自分らしく頑張っていれば突き抜けられるんじゃないか…って最近は思ってます。
絶対それでいいと思います!

小島さん
現場で瞬発力を発揮して頑張って、一緒に仕事をした人に認めてもらえる。そういう瞬間に…脳でドーパミンが出てるなって思うんですよ(笑)。
私、やりたいことってとくになくて、ただ“走っているのが楽しい”と思う人なんです。それが「安定感」って評価してもらえるなら、そのまま自分らしくやっていこうかなって…

いしかわ
私も「やりたいこと」や大きな目標がないんですけど、こじるりさんもそうなんですね。

小島さん
うん、これっていう目標がない人ってたくさんいると思ってて。
そういう人は自分のうれしいこと、好きなこと、気持ちいいと思えることをしてみていいと思うんです。
そのうえで、自分なりにしてきた努力を仕事にプラスできたら、きっと「安定感のある結果」って言われるようになるんじゃないかな。
前後の関係で、1時間ほど遅れて取材がスタートしたのですが、「お待たせして申し訳ありません!」とこちらが恐縮するほど頭を下げてくださったり、スタッフさんに元気よくあいさつをしたりしている姿を見て、彼女の“安定感”はこうして丁寧に積み上げられてきたのだなと実感しました。
まさかの展開になりつつも、取材が終わってみれば、笑いの絶えない時間だったことにハッとして、「これがこじるり無双か…」という驚きも…。これはまぎれもなく「いい現場」でした。
仕事がうまくいかないときって、もしかしたら自分が楽しめていないからなのかもしれない。暗雲が立ち込めてきたら、「今、相手も自分も楽しめてるかな?」をベースに考えてみると、突破口が見えてくるかもしれません。
〈取材・文=いしかわゆき(@milkprincess17)/編集=天野俊吉(@amanop)/撮影=中澤真央(@_maonakazawa_)〉
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