ビジネスパーソンインタビュー
「10万いいねバズっても“一発屋”にすらなれない時代」にマキシマムザ亮君が追い求める“いいね”

「それではお聴きください、『哀しき欲しがり野郎たちの唄』」

「10万いいねバズっても“一発屋”にすらなれない時代」にマキシマムザ亮君が追い求める“いいね”

新R25編集部

2021/05/21

X
FacebookLINE

この記事をシェア

リンクのコピー

最近、いろいろな意味で「広告」が話題になることが多いように思います。

今週の新R25は、「いい広告って何だろう?」という疑問を掲げ、2人の広告人にお話を聞きます。

【マキシムザ亮君(まきしまむざりょうくん)】ロックバンド・マキシマム ザ ホルモンの「歌と6弦と弟」担当。全楽曲の作詞作曲を担いつつ、CD・グッズなどのデザイン、プロモーション・キャッチコピーなどバンドに関わる全ての企画のディレクションに携わる

“愛される広告とは? をテーマにお話を聞いた昨日に続き、本日も音楽不況の時代においてトップクラスのセールス実績を持つロックバンド・マキシマム ザ ホルモンのマキシマムザ亮君が登場。

今回のテーマは、「ファンが生まれる広告とは?」。

熱狂的なファンを多数集める一方で、頑ななまでに地上波テレビの音楽番組に出演せず、ホルモンのことをまったく知らない人も存在する異色のバンド。

・今の時代に「拡がる」コンテンツとは?

・亮君が決めた、広告における「やる/やらない」の線引きとは?

・「言えないこと」だらけの時代、広告のあるべき姿とは?

などなど、「ファンマーケティングのあるべき姿」を教えてもらいました。

〈聞き手=サノトモキ〉

「世の中バズ狙いの風潮がありますけど…」 今、“バズより追いかけるべきもの”とは

サノ

マキシマム ザ ホルモンと言えば、ファンの方々の熱量が異常に高いイメージがあります。

前編では「嫌われる広告」「いい広告」についてお聞きしましたが…

後編ではさらに具体的に、「ファンが生まれる広告」について教えてください!

マキシマムザ亮君

うーん、僕が常に思ってるのは…「バズに期待するな」ってことで。

え!?

亮君

今のSNSでバズるのって、「ちょっと薄まったコンテンツ」だと思うんです。一言で言えば、第三者による口コミ・感想。

クリエイター本人が自分で「これ作りました!超自信作です!」って想いを込めて投稿するより、「なにこれw」って赤の他人に雑に紹介された方が広まることが多い気がします。

サノ

ああ、その現象めっちゃわかります。

亮君

僕なんてすぐ「あの部分が苦労した」だの「あそこにはこんな意味があって」だの自分の作品を自画自賛して、ファンにスルーされたお気に入りポイントに自らスポットライトを当てたがる「欲しがり野郎」なんですよね。

そう、クリエイターとは「哀しき欲しがり野郎」です。

では、お聴きください、「哀しき欲しがり野郎たちの唄」

…え!?

亮君

自分が愛撫されたいピンポイントを、ドンピシャで探り当ててくれる人なんて存在しないんです。

つまり、ファンは都合良く巨大なリアクションをしてはくれない。バズなんて期待しちゃいけません。誰かが勝手に広めてくれたらラッキーくらいなもんで。

今は世の中がみんなバズを期待しまくる“バズ狙いの風潮”がありますけど、僕は「バズは贅沢!贅沢は敵!」と思うようにしてます(笑)。

サノ

でもやっぱり今の時代、ファンを増やそうと思ったら少なからずバズも必要なのでは…?

亮君

どんなかたちにせよ、バズって多くの人に関心を持たれる事は素晴らしいことだと思うんですが…

今って、たとえ10万超えのバズを叩き出しても、昔でいう「一発当てた」の“一発”にはカウントされないと思うんです。

昔は一発屋でも一発当てたら、ずっと食えたんですよ。でも今は、SNSでバズったりYouTubeで一つの動画が何千万回再生まわっても、それがキッカケでその後も生活が安定してる人ってそんないないと思います。

バズやいいねじゃ、食えない

サノ

なるほど…たしかに「いいねはうれしいけど、全然単行本売れない」みたいな漫画家さんの嘆きツイートとか見たことあるかも。

亮君

ようは、「バズる=応援される」って単純な話じゃないってこと。これ、“現代バズの落とし穴”ですよね。

選ばれしトップのインフルエンサーが凄いのは、やっぱり1000発くらいバズり続けてますから(笑)。

そこに対抗するには、数字のデカさ以上の「本当のいいね」をもらう事だと思うんです。

スマホの画面には決して表示されない、血の通った「本気のいいね」に出会いにいくことを大切にしたい。バズることなんかより。

「本気のいいね」と出会いにいく…これ発信してる人なら誰しも意識すべきことかも

「歌番組には出ないけど、『タモリ倶楽部』なら出る」。“薄まるならやらない”広告哲学

亮君

だから僕自身、広告の「やる/やらない」の線引きをすごくはっきりさせてるんです。

ホルモンのファンマーケティング哲学は、「薄めるくらいなら、やらない」。

亮君

たとえば、「音楽番組の演奏出演」。

地上波で演奏できるって、それこそ自分たちの事を知らない人に知ってもらえるチャンス。

言ってみればプロモーション効果を期待できる「広告」。

サノ

そうですね。

亮君

でも、僕らってまず地上波で使えない言葉の歌詞が多いので(笑)。必然的に歌詞を変えるか、そういったパートをカットしないと出演できない番組が多くて。それは絶対に嫌。

こだわりがそこまでなかった昔は「テレビ出れる!芸能人会える!」って素人丸出しで出演して演奏したこともあったんですが、見れたもんじゃなかったですね。僕らライブハウスで輝く生き物なんで、地上に出ると死ぬんです、深海魚みたいに(笑)。

だから、「苦手な場所で味が薄まるくらいなら音楽番組も出ない」と決めました。

ただ、音楽番組断るくせに『タモリ倶楽部』には出るバンドなんで(笑)。メンバーのキャラが活きるバラエティ番組の方が向いてる。

「ちなみに僕は、バラエティよりこういうインタビュー系が好きです」

亮君

本当は紅白歌合戦だって、歌詞変えずに歌ってOKとか、客席に陰毛を投げてOKとか…あ、僕ライブでステージに登場する時いつも●●毛抜いて客の頭にふりかけたりしてるんですけど、そういうのOKなら全然出たい(笑)。

ここまでギリギリの戦いを繰り広げてきましたがついに伏字を使用しました

「言えないことが多い時代」に、亮君は広告とどう向き合う?

サノ

ただ今ってコンプライアンスというか、「言っちゃいけないこと」「気をつけなきゃいけないこと」がめちゃくちゃ増えてますよね。

広告も表現できることがどんどん減って、自然と薄まってしまうのでは…?

亮君

ああー、でも逆に、制限されたことで「深まる表現」もありますね。

亮君

たしかに今はコンプラで、昔以上にいろいろ「言っちゃダメ」って状況になってます。

でもそこで「じゃあ言うの我慢しよう」じゃなしに、「じゃあどう変換したろか」って。

お笑い芸人さんなんかもみんなそういう風に前向きにシフトチェンジしていってるみたいです。

サノ

届ける内容じゃなく、今の時代に合った伝え方を変えると。

亮君

ゲームだって、どんどんステージを進んでクリアーして2周目に入ると、「次はこれを使わずにクリアせよ」みたいな難易度の高い制限が出されて、その縛りのなかでクリアするのが上級者の楽しみ方じゃないですか。

なので、「制限=自分の表現レベルを上げてくれるもの」だと思える人は、ネクストステージに行ける気がします。

それこそ今のコロナなんて、世界中が次のステージに進まないといけない。新しい制限が生まれるからこそ、新しい表現が生まれるというか。

急にめちゃくちゃカッコいいな…

最後に。亮君にとって「広告とは?」

サノ

結論、ファンが生まれるような「愛される広告」ってどんなものなんでしょうか?

亮君

…わかんない(笑)

そんなのわかってたら、こっから先は有料ページに飛ばしたいですよ(笑)

でもまあ…広告って結局「伝えること」ですからね。

好きな人にどうやって気持ちを伝えるべきか、悩んで悩んで、書いては消してを繰り返すLINEのような、思春期の青春パワーで向き合いたいですよね。

亮君

僕にとって「広告」も「バンド」も最終目標は、“友達が欲しい”ってだけなのかもしれない。

ファンマーケティングなんて言うけど…僕は「そもそも自分ごときにファンが存在するわけがない」って思ってるんで。

だって自分の事を正確に伝えることによって「わかるわかる!」「いいね!」「好き!」って第三者が思ってくれて、そしてお金を出して自分の商品を買ってくれるなんて、それってもはや親友じゃないですか(笑)

なので、「広告とは親友探し」ですね。僕にとっては。

戦略的かつアツい広告論、ありがとうございました!

なんか偉そうに広告論語ってもこっぱずかしいので、基本、“次元の低い中学生”みたいな見せ方でお願いします(笑)

取材後そう笑いながら去っていった亮君。ごめんなさい、次元高すぎて無理でした

亮君の広告論、前後編通して広告を少し面白がれるようになった気がします。とくに後編は、誰もが発信できるようになった一億総クリエイター時代に必要な学びだらけ。

自分も、バズほしさに「薄めた発信」をしないよう心掛けていこうと思います…!

〈取材・文=サノトモキ(@mlby_sns)/編集=天野俊吉(@amanop)/撮影=長谷英史(@hasehidephoto)〉

マキシマム ザ ホルモンの新作「はじめてのマキシマム ザ ホルモン マスク ESSENTIALS」が絶賛発売中!

コロナ禍で発売された今作には、ホルモン仕様に仕上げたコッテリー黒マスク(全3種)と、スタイリッシュなアッサリー白マスクの2枚セットに、ホルモン2号店(コロナナモレモモ)のラスト・シングル『LUST』(全8 or 9曲入りCD)を同梱。

同商品は、ホルモン・ファンが働く飲食店を中心とした「腹ペコえこひいき加盟店」での先行販売も実施。(コロナ禍で大変な状況にある、全国のホルモンファンが働くお店を応援したいという前代未聞の試み…!

マキシマム ザ ホルモン最新作、気になった方はぜひチェックしてみてください!

ビジネスパーソンインタビュー

「ビジネス書を読んでも頭に入らない…」インプットの専門家・樺沢紫苑先生に相談したら、さまざまな“間違い”を指摘されました

「ビジネス書を読んでも頭に入らない…」インプットの専門家・樺沢紫苑先生に相談したら、さまざまな“間違い”を指摘されました

新R25編集部

【老害おじさん化回避】若者と絡むな、パーカー着るな。“いいおじさん”のすべて【イケオジへの道】

【老害おじさん化回避】若者と絡むな、パーカー着るな。“いいおじさん”のすべて【イケオジへの道】

新R25編集部

「仕事と家庭で“顔”を変えろ」本音が話せない28歳にコミュニケーションのプロ・安達裕哉さんが“シーン別の戦い方”を教えてくれました

「仕事と家庭で“顔”を変えろ」本音が話せない28歳にコミュニケーションのプロ・安達裕哉さんが“シーン別の戦い方”を教えてくれました

新R25編集部

またスゴいことを始めた前澤さんに「スケールの大きい人になる方法」を聞いたら、重たい宿題を出されてしまいました

またスゴいことを始めた前澤さんに「スケールの大きい人になる方法」を聞いたら、重たい宿題を出されてしまいました

新R25編集部

「学生時代の経験を活かそうとか、論外です」北の達人・木下社長に“社会人1年目の働き方”を相談したら、キャリア観が180度変わりました

「学生時代の経験を活かそうとか、論外です」北の達人・木下社長に“社会人1年目の働き方”を相談したら、キャリア観が180度変わりました

新R25編集部

【朗報】誰もが『頭のいい人』になれるたった一つの方法を学んだら、Fランでも無双できそう

【朗報】誰もが『頭のいい人』になれるたった一つの方法を学んだら、Fランでも無双できそう

新R25編集部