ビジネスパーソンインタビュー
田端 信太郎著『部下を育ててはいけない』より
堀江貴文、前澤友作…田端信太郎がド肝を抜かれた“すごいリーダー”列伝
新R25編集部
NTTデータ、リクルート、ライブドア、LINE、ZOZOなど名だたる大手企業を渡り歩いてきた田端信太郎さんの新著『部下を育ててはいけない』。
田端さんは同書のなかで「これからのリーダーは、“部下を育てる”というこれまで正しいと信じられてきた価値観から、真逆に転換しなければならない」と、強く主張しています。
ただ、部下を育てずにパフォーマンスを発揮させるマネジメントとは、一体どのようなものなのでしょうか…?
これからの時代に成果を上げるマネジメントの指南書である同書より、田端さんが考える「一目置かれるリーダーの鉄則」を抜粋してお届けします。
すごいリーダー列伝① 「ここぞ」でハッタリをかます、リクルート時代の上司・田中耕介
リーダーには危機に際して「どうすべきか」を冷静に判断する力も欠かせないが、とはいえいついかなる時にも冷静沈着である必要はない。
リーダーは時に「ハッタリをかます」くらいの演技ができてはじめてチームをまとめることができる。
私がリクルート時代、創刊に深く関わったフリーペーパー『R25』は首都圏全域に、 買えば300円くらいする、内容が充実した週刊誌クオリティの紙メディアを、無料で60万部、週刊で配布しよう、というまったく新しい試みだけに、取締役会が創刊のゴーサインをなかなか出さずにいた。
このままでは『R25』を刊行できなくなってしまうという土壇場に立たされた時、助け舟を出してくれたのが、リクルート時代の上司・田中耕介さんだった。
一体どうしたか。
なんと田中さんは、リクルートの経営陣と、広告代理店の双方に対して同時にハッタリをかますという、離れ業のような芸当をやってのけたのである。
私は横で聞いていて正直、「そんなことを言って、本当に大丈夫なのか?」と不安になったし、同時にハッタリを堂々と言ってのける田中さんの態度に思わず吹き出しそうになったものだ。
会議の後、私が田中さんに「大丈夫なんですか?」と尋ねると、田中さんはこう言った。
「いざとなったら俺がクビになったらええねん。田端。お前までクビにはならんわ」
この田中さんのハッタリがあったからこそ前代未聞のフリーマガジン『R25』は晴れて世に出ることができた。
上司は普段は穏やかで冷静沈着であるべきだ。
しかし、困難な状況にぶつかった時に問われるのは人としての胆力の差ではないか。
胆力、気力、気迫のある上司ほどいざという時に頼りになる存在はない。
上司は万能である必要はないし、部下への指示についていつも解決策を持つ必要はない。
しかし、「ここぞ」という場面では強い決意と情熱を持って事にあたる必要がある。
そんな上司ならば部下は絶対に信頼するし、上司と一緒に難しい課題にも率先してあたる気概を持つようになるのだ。
すごいリーダー列伝② 「抜き打ちテスト」で本質を見抜くとある社長
エンジニアをアーティストと呼び、仕事はチームスポーツだと信じていたスティーブ・ジョブズが滅茶苦茶厳しいリーダーであったことは周知の事実だ。
ジョブズとたまたま同じエレベーターに乗り合わせた社員がジョブズからの突然の質問にうまく答えることができず、エレベーターを降りる時にはクビを宣告されたという逸話も存在するほどである。
この逸話だけ見れば、あまりにシビアな暴君に映るかもしれない。
しかし、仮にその質問がジョブズによる「抜き打ちテスト」だと考えてみると、合点がいく。
リーダーは時に、唐突な抜き打ちテストでチームメンバーの能力や信用度を推し量るものである。
私がとある社長にはじめて出会った時の話である。
業界では、とても有名な方で、私もその社長が出した著書は何冊も読むくらい、尊敬している人だった。
その方から、私が以前に在籍していた企業のトップについて「田端君、彼の部下だったんだよな?」と聞かれた。
自分のかつての上司である。
当然のごとく「はい」と答えると、その社長はなんと、私の元上司のことを散々批判しまくり、「彼に、かくかくしかじか、こんな不義理をされたんだけど、君はどう思う?」と聞いてきた。
私はあまりのことに面食らってしまい、
「そんなことがあったとは知りませんでした。 最近は私自身あまりご連絡を差し上げていませんが、部下として一緒に仕事をしていた時は、仕事がしやすい社長だったんですけどね。人間、いろんな面もあるもんですね。 あはは」
と返すのが精いっぱいだった。
その時のことは強烈に印象に残っていて、「どうして出合い頭に、あの社長は、あんなことを私に聞いてきたんだろう」とずっと考えていたが、ある日、はっと気がついた。
「あれは俺の人間性チェックだったんじゃないか」と思い至ったのだ。
あの時の私と同じような質問をされた人の中には、もともといた会社のことやトップについて、目の前の偉い人である、その社長の発言に、つい調子を合わせて悪く言ってしまう人もいるはずだ。
そのような人間を見て、彼はどう感じるだろうか。
「俺に媚びて、こいつは元上司を裏切るんだな」と受け取るのではないだろうか。
そして心中で密かに「こいつは信用するに値しない奴。俺に媚びて元親分を裏切る人間なら、次は俺が裏切られるかもしれない」と烙印を押し、二度と自分から関わることはないかもしれない。
リーダーの抜き打ちテストにはそんな怖さもあるのだ。
すごいリーダー列伝③ 経費に対する独特の哲学をもつ、堀江貴文・前澤友作
リーダーがハンコを捺すものの1つに「経費の精算」がある。
そして経費の使い方に関しては会社のカルチャーや、トップの考え方が色濃く反映される。
私が部下として仕えた実業家・堀江貴文さん、前澤友作さんは、双方とも経費に対して独特の哲学を持っていた。
驚いたことに堀江さんは接待交際費を「1円も認めない」姿勢を貫いていた。
堀江さんの考えはこうである。
食事をしながらビジネスパートナーとコミュニケーションをとること自体は否定しない。
しかし、「会社のお金を使う」というリスクゼロの「サラリーマン根性」を捨てなければ、突き抜けた結果は出せない。
たとえば、広告営業の世界では「飲み代に一晩で何十万円使った」というのはよくある話だ。
この状況を堀江さんが目撃したらおそらくこう言うはずだ。
「それで売り上げが増えなかったら誰が責任をとるの?」と。
責任の所在もはっきりさせることなく、 「会社の金で飲み食いしよう」という他力本願な仕事のやり方を、堀江さんは嫌った。
与えられた仕事を自分事としてとらえているビジネスパーソンなら、担当業務に関する会食で「どうせ会社の金なんだし、いくらでも好きに使えばいいや」などとは考えないはずである。
「もし高額の接待をして本当に売り上げが上がる自信があるのなら、まずは自分のお金でリスクをとってやればいい。それで本当に成果が出たら、後で給料を上げてやる」というのが堀江さんの哲学である。
一方前澤さんは、会社の経費については堀江さんほど細かくはなかったが、前澤さん自身が使う経費については、「飲み食いは基本ポケットマネーでやる」というルールを徹底していた。
たとえば前澤さんが一晩で飲み食いに100万円使ったとする。
それを企業としてのZOZOに接待交際費として回すことはもちろん可能だったはずだ。
しかしその分、ZOZOの利益が100万円減ったとすれば、結果的に、会社の株価も下がってしまう可能性もある。
すると、ZOZOの筆頭株主(私が執行役員として在籍していた時は確か 40%弱を保有)である前澤さんは結果的に、自分の個人資産も100万円以上、減らしてしまうことになるかもしれない。
会社の経費を使うことで株主に不利益を与えるよりは、身銭を切って飲み食いする方が会社を私物化しないという意味で上場企業経営者のモラルとしても正しいだけでなく、株主として経済合理的でもあったのだと考えることもできる。
株価や株主の利益を気にしないで済むサラリーマン社長が、平気で多額の接待交際費を使って、結果的に会社の利益を減らし、株価も下げているとしたらどうだろう。
前澤さんや堀江さんのようなオーナー社長の方が経費に関してははるかにシビアだし、 まっとうな考え方と言えるのではないか。
もう迷わない。田端さんの「上司力改革25箇条」で上司道を学ぼう
これまでいくつもの企業で、新規事業の立ち上げやマネジメントに携わってきた田端さん。
同書には、実体験を通して身につけた「部下を通して圧倒的な成果を上げる方法」が、驚愕のエピソードとともにまとめられています。
部下とのコミュニケーションをうまく図りながら、常に「最善の選択」を迫られて悩む上司にとって、田端さんの言葉は解決のヒントになるはずです。
「迷える上司」を「成果を上げる上司」に変える「上司力改革25箇条」を、ぜひご自身の目で確かめてみてください!
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